マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
今回は前回載せていなかった幻想体の情報をあとがきに載せておきます。興味のある方はご一読ください。
デッキにモンスターを破壊するカードが入っていない。その俺の言葉にタニヤの表情が少し変わる。どうやら俺の考えは合っていたようだな。
『なぜそう思ったのかって顔だな。……これは言うまでもないことだと思うが、デッキにはそれを作った奴の考えがもろに出る。それでだ。これまでの戦い方や言動なんかを見るに、このデッキのコンセプトは
タニヤはモンスターの攻撃力を変動させるカードや蘇生させるカードばかり使っていた。モンスターそのものを破壊したり除外する方が大抵の場合は手っ取り早いのにだ。
『思えば最初に使うデッキを選ばせるのだって、相手に対策させるようなものだ。勝つためだけならする必要は欠片もない。それでもするってことはそうされても勝つ自信があるか、あるいは
敢えて勝ち方を狭めることで、それにより特化した戦い方。
つまりこれがタニヤなりのこだわり。勝利のためのデッキではなく、
「お喋りだなバランサーよ。だがまあ当たらずとも遠からずという所だ。……さあ。デュエル再開だ。私は特殊召喚したアマゾネスの剣士で、再びラ・ルナトークンに攻撃!」
タニヤは少しだけ複雑そうな顔をしながら、再びアマゾネスの剣士に攻撃命令を出す。
レティシアの効果は当然だがもう切れており、剣士はそのままラ・ルナトークンを切り裂いて消滅させた。
遊児 LP1100→700
「私は再びアマゾネスの死闘場の効果発動! さあどうするバランサー?」
『良いだろう。その勝負受けた!』
遊児 LP700→600→500
タニヤ LP3200→3100→3000
もう何度目の殴り合いになっただろうか?
本当に殴り合っている訳ではないが、もう全身がかなりズキズキする。明日は筋肉痛確定だな。
『おいおい。今のは一手間違えたんじゃないか? こちらにレティシアが居る以上、死闘場の効果より回復量の方が上回るぜ』
「だが肉体の痛みまでは回復しまい。効果で互いに回復するならデュエルはどう転んでも長期戦だ。長期戦は望むところ。私はこれでターンエンド」
軽口を叩いて相手の意図を探ってみるが、タニヤはニヤリと笑みを浮かべて軽く拳を握る。なるほど。要するに最後まで立っていられた方の勝ちって訳か。……どこが決戦前の肩慣らしだよ。消耗も何も考えていないガチの喧嘩じゃないか。
ちなみにレティシアに攻撃されていた場合、ダメージを受けなかった代わりにラ・ルナ本体も破壊されていた。100ポイントのライフが貴重な今の状況では、どっちが苦しいかは悩ましい所だったな。
『おっと。バトルフェイズ終了時、ラ・ルナトークンが戦闘を行ったことにより効果発動! ラ・ルナにPEカウンターを4つ乗せる。……トークンが破壊されても本体はまだ無事なんでね』
ラ・ルナ PE4
『なあタニヤ。ここらへんで一つ引き分けってことにしないか? いかに闇のデュエルじゃないとは言えもうすぐ決戦だろ? 体力は消耗し過ぎない方が良いと思うんだが?』
「何を今さら。ここまで滾った私の心が分からないでもあるまいに。……それに、お前も
……バレていたか。俺は軽く息を吐いて仮面越しに頬を掻く。まあここで止めるという事であれば、俺もそのまま止めるつもりはあったんだけどな。
実際このデュエルは痛み云々を抜きにすれば割と楽しい。効果でカードを破壊しないデッキ。純粋なモンスター同士の力比べというのもそれはそれで燃えるものがある。
死闘場の効果も、プレイヤーは自身がモンスターと共に戦っているという実感がより強く感じられるしな。……まあモンスター達にはいい迷惑かもしれないけど。
『遊児お兄ちゃん。ちょっと楽しそう』
『どうでも良いから早く終わらせてほしいものだがな』
いけねっ!? レティシアにもバッチリ見抜かれてるし、ネクに至ってはどこか呆れ顔だ。
『……参ったな。頭ではそろそろ止めるべきだって分かってるのに、心ではキッチリ白黒つけたいって思ってしまう。……そっちも止めないって思うなら仕方ないよなぁっ!』
さあ。とことんやろうじゃないか!
遊児 LP500 手札0 モンスター レティシア プレゼントトークン 魔法・罠 エンサイクロペディア 古い信念と約束 ラ・ルナ
タニヤ LP3000 手札0 モンスター アマゾネスの剣士 アマゾネスペット虎 魔法・罠 アマゾネスの意地
『俺のターン。ドローっ!』
俺は力の限りカードを引く。どう引いたって結果は変わらないが、その辺りは心の赴くままに。
ドローしたカードを見て、俺は頭の中で勝ち筋を見出す。いよいよ決着の時だ。
『俺はまずレティシアの効果をアマゾネスの剣士を対象に発動! 互いのLPを1000回復する。
遊児 LP500→1500
タニヤ LP3000→4000
「やはり回復してきたか。だが私の場には戦闘ダメージを相手に受けさせるアマゾネスの剣士と、自身が居る限り他のアマゾネスへ攻撃できなくなるアマゾネスペット虎が居る」
『エンサイクロペディアの効果。ラ・ルナのPEカウンターを3つ使うことで、墓地から幸せなテディを特殊召喚。そしてラ・ルナの効果発動! 頼むぞレティシア!』
ラ・ルナ PE4→1
『任せて! 行っくよ~!』
テディが場に戻ると同時に、レティシアは今一度ピアノに向き直ると、先ほどとは打って変わって凄まじい勢いで鍵盤を叩き始めた。しかしその指運びはどこまでも繊細で、ピアノから聞こえてくるのはどこか激しくも切ない旋律。
『ラ・ルナの効果。このカードのクリフォトカウンターを1つ取り除き、1000ポイントを支払うことで、自分フィールドのモンスターの攻撃力を次の俺のターンまで800アップする』
遊児 LP1500→500
ラ・ルナ CC2→1
レティシア ATK800→1600
プレゼントトークン ATK1400→2200
幸せなテディ ATK1500→2300
『そしてレティシアを攻撃表示に変更。……行くぞバトルフェイズ! 俺はプレゼントトークンで、アマゾネスペット虎に攻撃!』
虎と蜘蛛。普通なら虎の圧勝だろうが、ここに居るのはレティシアの友達の普通ではない蜘蛛。歯をむき出しにした恐ろしい姿で飛びかかり、瞬く間に虎をその脚で切り裂く。
タニヤ LP4000→3700
「ぐっ!? アマゾネスの死闘場の効果は忘れてないな?」
『当然っ!』
遊児 LP500→400→300
タニヤ LP3700→3600→3500
残りLPはあと僅か。だが、ここはギリギリまで攻める時だ。
「ぐぅっ!? ……良いぞっ! さっきよりもさらに拳が重くなっている。だがこの後はどうする? 攻撃力が上がってしまった幸せなテディでは、アマゾネスの剣士の効果でお前のLPは0だ」
『こうするんだっ! 俺は手札から速攻魔法『幻想体解放』を発動! 場の幻想体を任意の数墓地に送り、その数×3までのレベルの幻想体をデッキから特殊召喚する。俺は場のラ・ルナと古い信念と約束、レティシアを墓地へ送る!』
『遊児お兄ちゃん! あとは頑張ってね!』
『やれやれ。やっと休める』
墓地へ送られる代わりに、半透明になって俺の横に浮かぶレティシアと抱きかかえられるネク。さあ。後は仕上げだ。
『俺が呼び出すのはレベル7。『幻想体 魔法少女 貪欲の王』! そして場のラ・ルナが無くなったことで、テディの攻撃力が元に戻る』
貪欲の王 ATK2800 CC1
幸せなテディ ATK2300→1500
俺の場に現れるのは、その身を琥珀と黄金の卵に封じた武闘派の魔法少女。出来ればまた琥珀から出て拳で戦ってくれればタニヤも喜びそうだが、あれは一緒に魔法少女が居てこそのことだからなぁ。
「幸せなテディの攻撃力が、アマゾネスの剣士と同じに!?」
『バトル! テディでアマゾネスの剣士に攻撃!』
この戦いも何度目か。それぞれの攻撃力は互角。しかしテディは攻撃表示の時1ターンに1度戦闘で破壊されない。
テディは剣士に切り裂かれながらもその腕を取り、そのまま力強く振り回して地面に叩きつけて撃破する。
遊児 LP300→200→100
タニヤ LP3500→3400→3300
そして、もう互いに言葉は要らないとばかりに死闘場の効果が発動。互いの全力の拳と拳がぶつかり合い、その余波が洞窟内を震わせる。……ここまで来るとある意味これも闇のデュエルかね?
『これで俺はもう死闘場を発動するライフが無くなった。そういう意味では最後まで使い続けたタニヤの勝ちかもな。……だけど、この勝負は俺が勝たせてもらう。コストとして場のエンサイクロペディアを墓地に送り、貪欲の王でタニヤに直接攻撃! そして攻撃する時、貪欲の王は攻撃力が500アップするっ!』
「なんだとっ!?」
貪欲の王 ATK2800→3300
『これで終わりだっ!』
貪欲の王から放たれる光が、展開された魔法陣を通してタニヤに照射される。その光に包まれる瞬間、どこかタニヤの顔が満足げに笑っていたように見えた。
タニヤ LP3300→0
遊児WIN!
「ハッハッハ! 実に心が滾る良いデュエルだった。感謝するぞバランサー!」
『いや何で終わった直後でそんなに元気なんだよ!? 俺なんかもうへとへとだってのに』
戦いが終わるなり満足げな笑顔でそう言われたら、俺はもう感心するやら呆れるやらよく分からないな。こいつ十代並のスタミナだぞ。
ガルルルルっ!
キイキイ。
『……んっ!?』
今バースが何かに威嚇したと思ったら、洞窟の入り口に向かってコウモリみたいなのが飛んでったぞ! まさかまたカミューラか? ……となると今のデュエルも見られてたっぽいな。
バースはひとしきり唸ってコウモリがもう近くに居ないことを確認すると、そのままゆっくりとタニヤの所に行って頭を撫でてもらっている。
「おそらくカミューラの僕だろうな。なに。気にすることは無い。今回のデュエルは私から誘ったのだ。特に怪しまれるようなことでもない。堂々としているが良い」
『だと良いんだが』
一方的にこっちの情報だけ持ってかれるってのはちょっと嫌だな。その内そっちの情報も貰ってやるからな。
そしてまた明日様子を見に来ることを告げて、俺はタニヤと別れてオシリスレッド寮へ戻ることにした。
「ふぅ。それにしても疲れたなぁ」
『まさかあんなに肉体言語で話し合うことになるとはねぇ。暑苦しいったらないよ。まあ傍から見ると中々に楽しめたけどさ』
ここ最近潜入中は出てこれなかったディーがそうぼやく。……お前も次から参加させてやろうかまったく。新種の精霊だとかなんとか言って。
しかし今回は割と収穫があったように思う。タニヤがセブンスターズとして戦う時間も場所もおおよそだが分かったし、実際に戦ってそれなりにデッキも把握した。
タニヤは確かに強敵だが、それでも十代達なら十分に勝ち目があると信じている。
「気合入れろよ……皆」
『大丈夫さ。きっとね』
俺とディーの言葉は風にのって、どこへともなく消えて行った。
という訳でタニヤ戦完結です。死闘場の処理がややこしくて大分苦戦することになった話でした。
次回は私用により少し間が空きます。来月初めくらいに投稿予定です。
以下、幻想体の能力と所感を載せておきます。
『幻想体 古い信念と約束』
永続魔法
効果
①1ターンに2度、フィールド上のPEカウンターを3個取り除くことで発動可能。カードを1枚ドローする。
②①の効果を使ったターン終了時、コイントスを行う。表はそのまま。裏が出た場合このカードを破壊し、手札1枚をランダムに捨てる。
不思議な球体。元々の能力は装備品の強化。ただし失敗すると装備品が失われるというギャンブル仕様。
適当に使っても職員が死なないという意味では安全な幻想体だが、職員の命と装備の価値でどっちが良いかと悩む管理人も多いとか。
余談だが成功、失敗時の職員の動きが可愛い。