マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! 今回独自設定タグが少し仕事します。


タニヤ対三沢 強かなれど一途な女

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 ……ふぅ~。やっと辿り着いたか。

 

 俺、バランサーこと久城遊児は、鍵の守り手達を連れてタニヤの待つコロシアムに来ていた。

 

 コロシアムが完成したのがつい昨日の事。明日はゆっくり休むようにと生徒達に給料を払って解放し、鮫島校長に事の次第を書いた手紙を送るといった根回しも済ませ、あとは先にコロシアムで待って居れば良いと思っていたのだが、

 

「……そう言えば、あの森大鳥達の巡回範囲だよな? そこに十代達が団体で乗り込んでいったらどうなる? 通り過ぎるだけとは言え」

『そりゃあまあ……あまり良い気はしないだろうね。特にクロノス先生とか普通に乗り込んでいったら』

 

 俺の脳裏に、クロノス先生が罰鳥に頭を突かれまくってはげる様子が浮かび上がる。いやそれだけじゃない。もし何かの拍子に大鳥達も参加したりした日には、それこそセブンスターズとの戦いどころではない。

 

 という訳で急遽俺がバースと共に案内人を買って出て、十代達が来る前に大鳥達に説明。俺が一緒に居ることで安心させるという流れとなった。

 

 そうしてバランサーとして案内をすることになったのだが、その間周囲の奴らからの圧が凄いのなんの。やはり俺の事を警戒している者がほとんど。

 

 十代が居なかったら針の筵だったかもしれない。……いやまあ普通に助けてくれてありがとうなんて言われるとは思っていなかったから少し照れたけどな。十代はもう少し人を疑うことを覚えよう。

 

 むしろ森の中で明日香やカイザーに向けられた敵意の方が普通だ。こっちに関しては少し突き放すような物言いになってしまったが、実際俺はマンガ版はともかくアニメ版の吹雪はまるで知らない。

 

 ただ作中で十代に勝ち、プロデュエリストであるエド・フェニックスと互角に渡り合い、カイザーと並び称されたほどの傑物がこんな所で終わるとはどうしても思えなかった。

 

 

 

 

 そんなこんなでコロシアムに辿り着き、バースを先頭にぞろぞろと中に入っていく。長い通路を抜けてそこに待っていたのは、

 

「よくぞ来た。七精門の鍵を守るデュエリスト達よ」

 

 決闘用の舞台に、それを取り囲むように建てられた客席。そしてその中央に仁王立ちしているタニヤの姿だった。

 

 バースはその姿を見るや否や、案内役は終わったとばかりにタニヤの下に走り寄る。……うん。俺もそろそろ案内役はお役御免だな。こっちも十代達から少し距離を取る。

 

「何者だっ! お前?」

「私はタニヤ。偉大なるアマゾネス一族の末裔にして長。……そしてセブンスターズの一人」

 

 タニヤは堂々と名乗りを上げる。この辺りは嫌いじゃないんだよな。

 

「このコロシアムで七精門の鍵を賭けた戦いを行う。……でもね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。我こそは男と言う者……出てこいっ!」

 

 何よそれっ!? っと明日香が憤慨しているが、それ以外の男たちは全員名乗りを上げ……いや、大徳寺先生だけはこっそり皆の後ろに隠れてるな。そんなことしなくても、先生はタニヤの好みから大分離れてますって!

 

「う~ん。面構えは皆悪くないけど……いえ。そこの男は気色悪いからやんない」

「そんなっ!? 不公平なノ~ネっ!?」

 

 哀れクロノス先生。速攻で面接に落とされた。残るは十代、万丈目、三沢、カイザーの四人。全員心技体を兼ね備えた猛者ばかり。その中で少し考えてタニヤが戦いの相手に選んだのは、

 

「……お前。名前は?」

「俺は、三沢大地」

 

 どうやらタニヤは三沢をお気に召したようだ。すごすごと観客席まで下がる残りの面々。そこで俺はふとあることが気になって、タニヤにこっそり聞いてみることにした。

 

『タニヤ。デュエル前にちょっと良いか』

「おおバランサー。案内役ご苦労だった。何が聞きたい?」

『選考基準って奴だ。他の面子も中々に悪くなかったと思うけど?』

 

 そう聞くと、タニヤは小さな声で話し始めた。声を抑えているのは他の者に聞かれないための配慮だろう。

 

「あの赤い服の男(十代)は、元気に満ち溢れているがややおバカそうなのが欠点だ。黒い服の男(万丈目)も悪くはないが、何か横に気色悪いのがくっついていたからパス」

 

 ……初見なのに的確に相手の事を見抜くこの観察眼は凄い。あと地味に精霊(おジャマイエロー)も見えていたよタニヤ。

 

「じゃあカイザー、あの青い服の男はどうだ? 実力だけで言えば抜きん出ていると思うが」

「ふん。あれは好みじゃない。()()()()()()()。それでいて、心が強そうに見えてどこか脆そうだ。それならまだ黒い服の男の方が良い。あっちは挫折してもなお立ち上がりそうだ。以上を踏まえて総合的に三沢を選んだ。……頭も悪くなさそうだし、顔はダントツで好みだ」

 

 へぇ。あのカイザーがどこか脆いねぇ。俺にはそうは思えないけど、タニヤ的に何かが気にかかったのだろう。そこで話はいったん終わりとし、俺も少し下がる。

 

 キイキイ!

 

 むっ!? よく見ると、通路の陰になっている所にまたコウモリがとまっていた。またカミューラの僕か。バースも気付いたのかまた低く唸り声を上げている。

 

 どうすると視線でタニヤに問いかけると、放っておけとばかりに軽く首を横に振る。……良いだろう。覗き見はいただけないが、見ているだけならただの観客だ。ちょっかいをかけてこない限りこっちも静観する構えで行こう。

 

 さあ。ここからは二人の対決だ。しっかりと見届けさせてもらおうか。

 

 

 

 

「ここにお前の明暗を分ける二つのデッキがある。知恵のデッキと勇気のデッキ。お前に選択させてやろう」

 

 戦いの前にタニヤが取り出したのは、俺の時と同じ二つのデッキ。知恵と勇気。三沢は迷うことなく知恵のデッキを選択する。頭脳派キャラだもんなアイツ。知恵比べで勝負したいんだろう。

 

 デッキを決めてさあデュエルだという所で、タニヤは軽く前置きをする。

 

「言い忘れていたが、このデュエルは闇のデュエルではない」

「何っ!? どういうことだ?」

「魂なんていらな~い! ()()()()()()()()()()()! つまり、私が勝ったらお前を婿として里に連れて帰るっ!」

 

 おいおいここで言うのかよっ!? 一気にキャピキャピした感じになったタニヤに、一同目を丸くする。……その気持ちはよ~く分かるぞ。

 

「婿っ!? 訳の分からんことを。ならば、もし俺が勝ったら?」

「そしたら、私三沢っちのお嫁さんになってあげる!」

 

 勝っても負けても同じじゃないかという突っ込みはぐっとこらえる。なんか一気に場の雰囲気が和んだ気がするな。

 

「このデュエル。何か羨ましいかも」

「お嫁さんか……」

 

 オイこら!? 翔はともかくとしてなんで万丈目までちょっと顔を赤らめてんだよっ!? いつものクールっぷりはどうした?

 

 そうして少しグダグダになりながらもデュエルが始まった……のだが、

 

 

 

 三沢 LP4000

 タニヤ LP4000

 

「分かっているぜタニヤ。お色気で俺のペースを崩そうというその陳腐な作戦。だが俺の戦術は鉄壁。お前の桃色光線など通用しないっ!」

 

 ……と、この通り微妙に三沢も知ってか知らずかたじたじだったりする。

 

 デュエルの流れを簡単にまとめるならば、三沢は地のデッキ。磁石の戦士シリーズの亜種+と-モンスターで攻め立てるのに対し、タニヤはアマゾネス系下級モンスターを主軸としたテクニカルなデッキで上手く三沢の攻撃を捌いていった。

 

 時にキャピキャピとした態度、時に女戦士然とした態度のタニヤにすっかり三沢はペースを崩され、戦術の二手三手先を読まれていった。すると戦いの中、

 

「恋の駆け引きはね、女の方が上手なのよ」

「ふざけるなっ! 何が婿だ。嫁だっ! 俺とお前は敵同士なんだぞっ! 俺達は、世界の破滅を賭けて戦っているんじゃないのかっ!?」

 

 それは実にもっともな叫びだった。三沢としてはそういう戦いをイメージしていたのだろう。デュエルの早朝特訓を十代達としていた(俺はバランサーとして活動していたので不参加)ぐらいだ。さぞ覚悟も決まっていたに違いない。だが、

 

()()()()()()()()。恋は不滅よっ! 七精門の鍵でも開かないアナタのハートを、ワタシの鍵で開けてみせるわっ!」

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 最初から三幻魔の力などに見向きもせず、ただ自分の婿を探すためだけにセブンスターズに所属している女だぞ。

 

 自分のどこに惚れたのかと三沢が聞けば、その凛々しい顔にだと返すタニヤ。しかしこんな傍から見るとラブコメみたいな問答をしている中もデュエルは進行していく。

 

 やや劣勢に立たされ始めた三沢は、意を決して一つの問いかけをした。

 

「見せろよ。お前の本性を」

 

 今まで言っていたのは全て俺を惑わす戯言か何かなのだろうと、三沢はタニヤを見定めようとした。むしろその方が良かったのだろう。惚れただの恋だのというモノでなければ、三沢はそこらの悪意ぐらいなら軽くねじ伏せる覚悟も実力もあった。だけど、

 

「見せてるじゃない。ず~っと。どうやったら三沢っちを振り向かせることが出来るか。一生懸命考えて、()()()()()()()()()()()()()()じゃない」

 

 タニヤの言葉は間違いなく本物だった。

 

 俺も数日程度ながらも一緒に過ごしたから少しは分かる。タニヤは強かで計算高い女ではあるが、ある意味でどこまでも真っすぐな奴だ。

 

 先ほどの顔に惚れたという点も嘘じゃない。だけどそれだけではないし、本気で三沢を落とすために全身全霊でぶつかっている。

 

「+と-。磁力の法則とは違うけど、違う者同士が引き合うにはたくさん頑張らないといけないの。……ふふっ! だから三沢っちも頑張ってっ! 三沢っちの心のリバースカード。オープンしてっ!」

 

 全力の熱い想いだからこそ、それが三沢にも伝わったのだろう。この自分に向けられた気持ちも、自分の中からタニヤに向けて湧き出るこの気持ちも、間違いなく本物だと。だからこそ、三沢も覚悟を決めたようだった。

 

「タニヤ。見せてやるぜっ! 俺の想いっ!」

 

 三沢は大量にモンスターを展開し、一気にLPを削り切るべく猛攻に出る。確かにそれが全て決まればこの勝負は三沢の勝ちだっただろう。だが、

 

「これが三沢っちの想い。私も全身全霊で受け止めるっ!」

 

 タニヤの場には他のアマゾネスへ攻撃できなくなるアマゾネスペット虎。そして俺も食らったアマゾネスの弩弓隊のコンボが発動した!

 

 三沢のモンスターは攻撃力を下げられた上で、アマゾネスペット虎に攻撃を強制されていく。そして、

 

「アマゾネスペット虎。私の想いを三沢っちに伝えてっ! お受けします。恋の成就っ! 『密林の王牙』っ!」

 

 モンスターが返り討ちに遭い、三沢のLPは衝撃と共に消し飛ばされる。だが、

 

「ぐぅ…………タニヤっち」

 

 負けたはずの三沢の顔は、どこか少しだけ満足そうだった。

 

 

 三沢 LP0

 タニヤ WIN!

 

 

 

 

「三沢っ!?」

「バースっ!」

 

 倒れ伏す三沢に駆け寄ろうとする十代達を、タニヤの号令と共にバースが躍り出て押しとどめる。

 

 ただ一応審判役なので体調なんかの確認をしなきゃマズい。俺は許可を取ってそっと三沢に近づいた。

 

『……大丈夫そうだ。特に頭をぶつけたとかはなさそうだし、呼吸も脈もしっかりしている』

「それは良かった。まああのくらいの衝撃で怪我をしてもらっては困るのだが」

『なんとも基準が厳しいな』

 

 そんな掛け合いをしながらも、タニヤは持ち前のパワーで三沢を何とお姫様抱っこする。いやそこ逆だからねっ!? 三沢が起きていたら落ち込んでいたかもしれん。気を失っていて良かった。

 

 そのままバースに追い立てられてコロシアムの外に追い出される十代達を尻目に、三沢を休ませるべく俺達はベッドのある部屋に向かうのだった。

 




 という訳でこの世界において最初の学園側の敗北でした。

 タニヤの観察眼と各面々への感想については、あくまでこの世界のタニヤが感じたことであって独自設定となります。

 次回も三日後投稿予定です。
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