マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
今回も、独自設定タグが少し仕事します。
大徳寺先生の話によると、森の奥には使われていない枯れ井戸があり、そこに昔生徒の一部が余った弱小カードを捨てていたという。
今ではそのカードが悪霊と化して、近づく者を無差別に呪ったり襲い掛かるとかなんとか。
だがそこは天下の万丈目。
「構わん! たとえ呪われても、カードを手に入れねばならん。俺はこの学園を守らねばならんからなっ!」
只の噂だとそう啖呵を切り、授業が終わると即出発という流れとなった。しかし問題なのは、
「どういうことですか大徳寺先生!? 大徳寺先生も知っているんでしょ? あそこは
皆が授業に向かった後、俺は僅かな時間を使って大徳寺先生を問い詰める。
噂自体は俺も以前高寺オカルトブラザーズに調べてもらったから知っている。そしてネクがはっきり精霊が絡んでいると断言しているのだ。
「精霊の強さや数は不明ですが、本物が居る以上危険です。それなのにわざわざ焚きつけるなんて」
「危険は承知にゃ。でもこれからもどんどんセブンスターズとの戦いは激化していく。闇のデュエルに対抗するためにも、精霊と対面させて少しでも慣らさせる必要があるにゃ」
先生の言いたいことは分かる。だけどはいそうですかとこのまま放っておくわけにもいかない。
俺が行くことで話がこじれる可能性もあるが、行かないで何かあったらそれこそ寝覚めが悪すぎる。なので、
「え~い。何故お前達がのこのこ着いてくるっ!?」
「いやあ。何せお前にデュエルアカデミアの運命が懸かってるんだ。悪霊が襲ってきたらお前を守らなきゃ!」
「俺もだ。……どこまで力になれるかは分からないけどな」
万丈目を先頭に、俺と十代も加えた一行は森の奥に向けて突き進んでいた。
言っておくが安全第一だ。仮に悪霊が出てきたとして、手に負えないと判断したら即逃げる。逃げる時間ぐらいなら皆で協力すれば何とかなるだろう。なので、
カタカタ!
『まさか悪霊とはな。だが、魂がそこに囚われているのであれば私の得意分野だ』
『今回は私も協力するぞ我が生け贄よ。相手が幽体なら上手くいけば使える手駒が増え……いや。以前私が言った手前もあるからな。見届けるとしよう』
『ネクちゃん。一緒に頑張ろうね!』
グルル!
今回ばかりは久々に幻想体が最初から精霊状態で同伴だ。
毎度おなじみの罪善さんに、対悪霊ということで葬儀さん。何故か自分から志願してきたネクと、付き添いでレティシア。そして森に関係するということで大鳥も近くに潜んでいる。
ちょっとオーバーかもしれないが、分かっている危険に備えるのは当然のことだ。
「ばかばかしい……と一笑に付したいところだが、精霊の存在は知っているからな。万が一ということもある。俺一人でも十分だが、まあ勝手に着いてくるなら好きに……うわっ!?」
そう言いながら進む万丈目の目の前に、突如白っぽい何かが浮かび上がる。あれは!?
『きゃっ!? お化けっ!?』
『首が絞まる首がっ!? 我が運び手よっ!? 何とかしてやるからその手を放……ぐえぇっ!?』
ふよふよと幾つもの何かが飛び回っていた。よく見れば一つ一つにカードの絵柄のような顔が付いている。どうやらあれが件の悪霊らしい。
「ホントに出やがった。……来るぞっ!」
万丈目の言葉通り、悪霊達は呻き声をあげながらこちらに向かってくる。だが悪いな。こっちにはそういうのに強いのが揃ってんだ!
「罪善さん! 葬儀さん! 頼む」
カタカタ!
『ふっ』
罪善さんの放つ光に遮られて悪霊達はこちらに近づくことが出来ず、そこを葬儀さんが一体ずつ白い蝶を飛ばして撃ち落していく。……だが、
「あれ? 消えていない」
前にダーク・ネクロフィアと戦った時のように消滅するかと思ったが、撃ち落した後もその場でもがいている。一体これは?
『一応加減はしておいた。……大丈夫。あれを見てみると良い』
「あれって……げっ!?」
葬儀さんの指し示す先で見たのは、
「ぐわっ!?」
「うっ!?」
悪霊達が十代と万丈目の身体をすり抜ける瞬間だった。俺は慌てて二人に走り寄る。
「大丈夫か二人共っ!?」
「……ん!? 何だ? 痛くも痒くも」
「そうか! こいつらの攻撃力は0。悪霊は悪霊でも、雑魚中の雑魚ってことか」
万丈目の指摘によく悪霊達を見ると、確かに悪霊の大半は攻撃力0のモンスターばかり。他のも精々レベル1や2の低レベルモンスターで攻撃力も低い。これならいくらぶつかられても大したことにはならない。
……なるほど。大徳寺先生はこのことを知ってたな! だから危険もないと判断して万丈目を焚きつけたと。そうと分かればこっちのものだ。俺達は悪霊達を振り払いながら先へ進んでいった。
「お~! 井戸だ井戸!」
「やかましい。見れば分かる。降りるぞ」
「気を付けろよ二人共。さっきはアレだったけど、奥にもまだ居るかもしれない」
ようやく目的地に辿り着き、持参した縄梯子を伝って慎重に井戸の底に降りていく。さっきの奴らが追ってくる可能性もあるので、葬儀さんと大鳥は井戸の前で待機だ。実力的にも十分だろう。
そして降りた先は、
「ここは……カードの墓場か」
『広いね~。カードもいっぱい』
井戸の底はちょっとした空間になっていて、そこにはかなりの数のカードが散らばっていた。十や二十ではきかず、下手すると百枚はあるのではないだろうか?
よくもまあこんな辺鄙な所にこれだけカードを捨てに来たものだ。
「……なるほど。弱っちいカードばかりだ」
「でも、結構面白そうなカードがあるな」
万丈目は一目でそう断じるが、十代は何枚か手に取ってしげしげと眺めている。
俺も何枚か手に取ってみるが……これは凄いな! 『デーモン・ビーバー』に『火炎草』、『サンダー・キッズ』に『プチテンシ』。現代じゃとっくに絶版になっているような初期のカードばっかりだ。性能的にはともかくコレクターが喜びそうなカードばかりだぞ。
他にも攻撃力こそ0だけど、効果は割と面白いカードなんかもちらほら見かけた。『キャッスル・ゲート』とか『薄幸の美少女』なんかだ。捨てた人は攻撃力でしかカードを見ない奴だったらしいな。
そうしてカードを物色していると、
『やいやい! テメエら何しに来やがった?』
突然カードの幾つかが光り出し、半透明の姿で現れる。……ってあれは『おジャマ・ブラック』と『おジャマ・グリーン』じゃないか!
イエローと同じくパンツ一丁の独特な姿をしたモンスターが、ポージングをしながら俺達を睨みつける。……って、この流れはまさか!?
『まさか捨てられた俺達の恨みを忘れた訳じゃねえだろうな。やるなら相手になってやるぜ』
「知るかっ! 俺が捨てた訳じゃないし、来るなら来い。碌な攻撃力もないお前達に何が出来る」
万丈目はバッサリ切り捨てる。いや、それはそうだけど言い方っ!?
『万丈目お兄ちゃん。可哀そうだよ。いくら攻撃力がないからって』
『うっ……うわ~んっ!?』
確かにおジャマ達の攻撃力は0。飛びかかっても普通に返り討ちだろう。おまけに可愛い見た目でも自分達より攻撃力のあるレティシアに慰められ、惨めさゆえか二人して泣き出してしまう。
おまけにそこかしこからもすすり泣くような声が聞こえてきて、井戸の中を反響してとんでもないことになってきた。
『俺達はやっぱ落ちこぼれよ。あんな奴すら脅すことも出来ないなんて』
『せめて弟が見つかれば、兄弟三人力を合わせ、もう少し何とかなるかもしれないのによっ!』
『『弟よ。どこ行ったんだよ~!
『オイラのこと呼んだ?』
それは多分アニメ的に必然だったのだろう。この二人の呼びかけに対し、万丈目のデッキからおジャマ・イエローがひょっこり顔を出す。
『『イエローっ! 無事だったのか!』』
『ブラック兄ちゃん! グリーンあんちゃん!』
『『弟よっ!』』
二人にイエローが飛びついてそのまま抱き合う。本来なら感動的なシーンなのだけど、
「そうか。お前らは兄弟だったのか!」
「なんと見苦しい再会シーンだ」
「見苦しいって言うか……見た目がエグイな」
パンツ一丁の異形達が抱き合う様って誰得なのだろうか? 一応兄弟の感動の再会に水を差すというのも野暮なので、何も言わずに見守っていると、
『そうだ! 早く兄さん達お願いして。この人ならここから出してくれるから』
おいイエロー何を言いだすんだ!?
『ホントかっ!? 出してくれよ! お願いだ。俺達をここから出してくれ!』
『『『出してくれ!』』』
見るとおジャマ達だけでなく、落ちていたカードの精霊や、さっきの悪霊達までいつの間にかこちらを見つめていた。おまけに、
『こんな所じゃ皆笑えないよ。お願い! 万丈目お兄ちゃん』
『質は悪いがこれだけ居ればそこそこ使え……ゴホンゴホン。いやまあレティシアの言う通りだ。どうせデッキに必要なのだろうし、全てとは言わんが助けてやっても良いのではないか?』
レティシアは純粋に可哀そうだからと。ネクは何か企んでいるようだが、言っていることは実際まともだ。罪善さんは中立のようで、何も言わずただ静かに浮いている。
そうしていくつもの懇願の瞳が万丈目に集中し、
「……万丈目」
「万丈目さんだ。…………分かった。こいつらは全部俺が預かる」
精霊達は飛び上がって喜んだ。レティシアもニッコリだ。あとネクも何かニタ~って笑っている。だけど、
「良いのか万丈目? これ下手すると精霊が百体くらい居るぞ。いくら万丈目でも抑えきれるかどうか」
「仕方ないだろう。そこの人形の言う通り、まずはカードが無くては始まらん。それにそこの
俺が少し心配して尋ねると、万丈目はいつもの不敵な笑みを浮かべて自信満々に言ってみせた。そう上手くいけば良いけど。
『『『お~! 万丈目様!』』』
「だから万丈目さんだ」
『ありがとう。万丈目サンダー!』
『『『万丈目サンダー!!』』』
「サンダー!」
こうしてちゃっかり十代も混じったサンダーコールが響き渡る中、俺達は大量のカードを回収して寮に戻るのだった。
さあ。カードは手に入れたが、明日はまずタニヤとの決戦だ。頑張ってくれよ皆!
万丈目に子分(精霊)が出来ました。
マンガ版では孤高ですが、アニメ版では取り巻きが居たり意外と面倒見の良い所のある万丈目です。
次回も三日後投稿予定です。