マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

120 / 280
 注意! 基本原作沿いですが、今回は大分原作から変化します。

 こんなことあるわけないだろうと思われる方は、もしかしたらあったかもしれないと温かい目で見守っていただければ幸いです。


想いと悩みとリターンマッチ

 次の日。

 

 前回と同じ闘技場にて、鍵の守り手達が勢揃いしつつあった。対峙するのはタニヤ。そして愛虎のバースだ。流石に二度目なので、案内役はバースのみで十分ということで俺は別行動。

 

 ちなみに何をしているかと言うと、

 

『さてと。いよいよと言った所か。先に行っているぞ。準備が出来たら来るが良い』

「ああ。最終調整に付き合ってもらって済まないな。バランサー」

 

 闘技場内部の一室。外の様子を窺いながら、俺は三沢に声をかけた。三沢は最後にもう一度デッキを確認し、いつものようにベストの内ポケットに装着する。

 

 そうして俺は扉に手をかけると、最後にもう一度確認することにした。

 

『本当に良いのか? 一度始めたらもう後には引けないし、可能性も低い。今ならまだやめても良いが』

「……いや。もう決めたことだ」

『そうか。……なら、俺はもう何も言うまい』

 

 ほんの一瞬だけ沈黙し、三沢は勢いよく立ち上がる。その一瞬が、三沢の悩みぬいた答えを表しているようだった。

 

 それを確認すると、俺は一足先に戦いの場へ赴く。これでも審判役だからな。俺が居なきゃ始まらない。

 

『いやぁ。まさかこんな展開になるなんてね』

 

 歩いている途中、またディーがふらりと現れてそう切り出す。何だよいきなり。

 

『本来の流れと少しだけズレてきてるってことさ。まだあったかもしれないって範囲だけどね。まあ君が居ることで変わってきているのは実に面白いけど』

『俺が居ようが居まいが関係ないと思うがな。……だけど、三沢がどっちを選んだとしても、俺はそれを尊重するつもりだ』

『久城君ってそういうとこあるよね。実に退屈しない。……僕はのんびりこの展開を楽しませてもらうとするよ』

 

 それだけ言ってまたディーは姿を消す。……何しに出てきたんだアイツは? まあ良いけど。

 

 

 

 

「よくぞ来た。この私の胸を焦がし、熱き血潮を滾らせる強き男であることを期待するぞ」

「おうっ! 俺が相手になるぜ!」

 

 俺が辿り着いた時、タニヤは開口一番前と同じ条件を鍵の守り手達に告げた所だった。

 

 三沢という婿が出来たのでもう男という縛りは実質意味は無いのだが、それはそれとして好みの問題だろう。ちなみに自然に外された明日香はご立腹だ。

 

 そしてタニヤの言葉に十代がスッと進み出て立候補するが、

 

『……十代よ。アピールするのは良いが、今回選ぶのはタニヤの方だ』

「そっか! そうだよな。……なあ! 俺を選んでくれよ!」

「バランサーか。遅かったではないか」

『少し野暮用でな』

 

 親し気に声をかけてくるタニヤにそう返しながら、俺は仮面越しに十代を見据えてルールを確認させた。十代はうっかりしてたと言わんばかりに髪を搔く。

 

「お前……名前は?」

「俺は遊城十代。遊城っちって呼んでくれ!」

「ふ~む。面構えは良し。ちょっとおバカそうだけど熱い奴のようだ。……良いだろう。お前にしよう」

 

 本来タニヤが選手を指定する側なのだが、十代の強引なアピールと持ち前の観察眼からお気に召したようだ。そのまま十代を対戦相手と認める。

 

 そして両者位置に着こうとした時、十代が突如声を上げた。

 

「だけどその前に、三沢は無事なんだろうな?」

「無事? 私が三沢っちに危害を加えるとでも? バランサーの話では三沢っちからの手紙を受け取った筈だが」

「ああ。手紙によると三沢は元気でやっているらしい。でもやっぱ自分の目で確かめたいじゃんか!」

 

 十代の言葉に皆がうんうんと頷く。それはそうだ。ならば、

 

『十代。三沢は間違いなく手紙にあったように無事だ。何なら証拠を見せても良い』

「証拠?」

『ああ。俺の後ろを見てみろ』

 

 十代や他の皆に聞こえるように声を上げ、そのまま後ろを腕で指し示す。そこから歩いてくる男こそ、

 

「三沢っ! 無事だったんだな!」

「ああ。心配かけたみたいだな」

「三沢君……って、何か雰囲気変わった?」

「そうかな?」

 

 ザッザと音を立てて歩いてくる三沢に対し、翔が少しだけ困惑するような声を出す。それはそうだろう。

 

 近づくだけで分かるどことなく漂う迫力。前のように知性に溢れながらも、どこか野性味をも帯びた鋭い顔立ち。

 

 “男子三日会わざれば刮目して見よ”という言葉があるが、今の三沢はまさにそれだった。

 

 

 

 

 タニヤに半ば無理やり拉致られてからの三日間、三沢を待っていたのは戦いの日々だった。

 

 起きてデュエルをし、朝食を食べて腹ごなしにデュエルをし、トレーニングをしてからデュエルをし、と言った具合に。

 

 もし途中で肉体か精神のどちらかが折れるようなことがあれば、三沢っちと言えど容赦なく放り出していたというのがタニヤの談だが、三沢もまたその戦士としての闘争本能によく応えた。

 

 それは元々身体を鍛えていた三沢であっても精魂尽き果てかねないハードさだったが、初日にしっかり休んでいたこともあって、必死に食らいつく姿勢はタニヤをも感心させるほどだった。

 

 結果、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、戦う度にどんどん腕を上げていく三沢は放り出されることもなく今日まであり続けた。

 

 そしてタニヤもまた、戦いの合間合間では嫁として甲斐甲斐しく三沢に尽くした。看病も、服の繕いも、食事や洗濯も。まるで新婚夫婦のように。

 

 厳しいながらも張りのある生活。それを数日続けたことで、今の三沢は心身ともに充実しつつあった。

 

「三沢っ!」

「三沢君!」

 

 他の皆も次々に駆け寄っていき、三沢の無事を確認する。……まあデュエルがエキサイトして軽い擦り傷くらいは出来たかもしれないが、それ以上の傷は無いはずだ。流石にそこまで行くと俺も止めに入るからな。

 

「皆。心配かけたな」

「無事でよかったノ~ネ。シニョール三沢」

「まったくだにゃ!」

「先生方も、御心配をおかけしました」

 

 教師二人がホッと胸を撫でおろす。生徒が怪我でもしたら大問題だ。

 

『これで心配はなくなったかね十代?』

「おうよ! さっ! 待たせたなタニヤ」

「待ちかねたぞ。三沢っちはちょ~っと待っててね! ここでまた一つ鍵を手に入れて、三沢っちに良い所見せちゃうから! ……あっ!? もし仲間が負ける所が見たくないってことなら先に部屋に戻ってくれても良いから」

 

 そうして二人はデュエルディスクを展開し、

 

 

「待ってくれ!」

 

 

 その戦いを止めるべく、力強い声が場を切り裂いた。その声を発した男、三沢に対して一同の視線が集まる。

 

 三沢は覚悟を決めた様子で十代の下に歩み寄り、とんでもない発言を口にする。

 

「十代。()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

「どういうことだよ三沢?」

「言った通りの意味だ。俺にもう一度タニヤと戦わせてくれ」

 

 驚く十代に対し、三沢は静かな口調だが強い意志を込めてそう告げる。

 

「もうっ! 三沢っちったら! デュエルなら後でいつでも付き合ってあげるのに!」

「そうじゃない。もう一度()()()()()真剣勝負がしたいと言ってるんだ」

 

 その言葉に、甘えるような声を出していたタニヤも真剣な顔つきに戻る。

 

「あの時のデュエル、後悔してるの? 私に負けたから?」

「ああ。後悔してる。……だけど、それは負けたからでも、タニヤの想いに応えたことでもない。想いに応えること()()に囚われて、肝心のデュエルで冷静さを欠いたことだっ! お前が全力で来てくれたのに、俺の全力を出し切れなかったことだっ!」

 

 そう。それが三沢が心の奥底で悩み続けていたこと。

 

 以前三沢は全力でぶつかったと言っていた。しかしそれは想いに対しての全力だけで、デュエリストとしての全力とは言えなかったのではないかと。

 

 ここ数日、三沢とタニヤは戦い続けていたが、それはどちらかと言えば模擬戦に近い。手を抜いている訳ではないが、あの時のような熱意とはまた別物だ。

 

「だから……頼む十代。図々しいこととは承知している。だが、このデュエルだけは譲ってくれ。……頼む」

「急に言われてもな……第一三沢の鍵はもう」

 

 深々と頭を下げる三沢に対し十代も困惑気味だ。さて。俺も助け舟を出すとするか。

 

『その点に関してだが、一つ補足させてもらう。事前に三沢に今回の件を聞かされ、審判役として問い合わせた結果、想定外との返答が返ってきた。基本的に行われるのは闇のデュエルなので、一度負けた者が再戦を要求するなんてことはまずないからな』

 

 例えば、ダークネスが行ったのは負けた方の魂が封印されるもの。他の面子も似たようなものだとすれば、そりゃあ再戦は難しい。

 

『なので今回は特例として、当事者が了承するなら一戦だけ認めるとのお達しが来た。ただし既に負けている以上、誰かの鍵を担保とすることが条件だ。この場合はタニヤと十代が認め、さらに十代が()()()()()()()()()()()()ことが条件となる』

「そんな!? いくら何でもめちゃくちゃだよ! こんな条件呑む必要ないよアニキ」

「同感だな。再戦と言っても三沢は一度負けている。なのにわざわざリスクを負って任せることもないだろう」

 

 翔と万丈目の言葉はもっともだ。実際俺も、素直に受け入れられる可能性が低いことは事前に三沢に告げている。仮に勝とうが負けようが、これが元で友情を損なう可能性だってあると。だけど、それでも三沢は意思を曲げなかった。

 

「……タニヤは、闇のデュエリストでありながらその潔い戦いに姑息さは無く、真っすぐに向かってくる姿には尊敬の念さえ覚えた。何度も戦って、カードを交える度にその思いが強くなっていった」

「デッキとデッキを交えた者同士で感じることが出来る絆のようなものか」

 

 カイザーの言葉に三沢は静かに頷く。

 

「だが、そんな彼女との戦いを俺は汚してしまった。これを逃したら、多分一生後悔する。……だから、この通りだ」

 

 頭を下げ続ける三沢。そして十代の答えは、

 

「……良かったな三沢。そんなデュエリストに出会えて」

「十代」

「そこまで本気で頼まれちゃあ断れねえって! 前に遊児ももっと仲間に頼れって言ってたしな。俺もやりたいけど、今回だけは譲ってやる。……勝てよ」

「ああ。……ああ! ありがとう」

 

 十代はサッパリと……いや、かなり未練たらたらな様子だったが、自分の鍵を三沢に手渡して観客席に移動する。他の皆も続々と移動していく中、

 

『一応タニヤの了承も要るが……断らないよな?』

「当然だ。戦士は決して挑まれた勝負から背を向けない。三沢っちが挑んでくるというのなら、私はそれを迎え撃つのみ」

『なんとも男前なことで。だが、感謝する』

 

 舞台は整った。ここに居るのはセブンスターズと鍵の守り手。……いや、それより前に、互いの想いと熱意をぶつけ合うただ一組の男と女。

 

 

 

 ある意味当事者にとって、世界の破滅よりも大事な一戦が再び幕を開ける。

 




 もう空気だなんて言わせない!

 原作では、拉致られてすぐに丸一昼夜デュエルに付き合わされ、結果全敗してタニヤに失望され外に放り出されるという目に遭う三沢ですが、今回遊児の判断で休みを取り入れながら戦い続けた結果大分強化されています。

 次回は私用により、投稿が少し遅くなります。来週中には出す予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。