マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! タニヤは原作では使っていないカードを使用しますが、デッキテーマ的におそらくあると判断しました。


再戦 タニヤ対三沢 知恵比べ

 三沢 LP4000

 タニヤ LP4000

 

 俺も含め十代達は全員観客席に移動し、中央には三沢とタニヤの二人きり。そんな中、戦いの出だしはとても静かなものだった。

 

「俺のターン。俺は手札から『オキシゲドン』を攻撃表示で召喚。カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

 オキシゲドン ATK1800

 

 それだけ? とでも聞きたくなるような静かな一手。だがその一手を見ても、タニヤの目には僅かたりとも油断の影は見えない。

 

「私のターン。ドロー。私は魔法カード『増援』を手札から発動! デッキから戦士族『アマゾネスの聖戦士』を手札に加える。そしてモンスターを()()()()()でセットし、カードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

 対するタニヤはなんとモンスターを裏守備で出す。現実世界では定石であるが、GX世界では大抵表側で出して伏せカードで迎撃するのが一般的だ。

 

 しかも今増援の効果で手札に加えた聖戦士は、そのまま出しても自身の攻撃力をオキシゲドンと同じまで上げる効果がある。それをわざわざ守備で出すとは思えないので、あのモンスターは別物か、それとも伏せカードに自信があるか。

 

「三沢っち……いや、三沢よ。お前は前と同じく知恵のデッキを選んだ。よって、ここは一つ知恵比べと行こうではないか」

「望むところだ!」

 

 嫁ではなく戦士として接するタニヤに対し、三沢もまた知恵者として受けて立つ。

 

 さあ。問題は次のターンだ。

 

 

 

 

 三沢 LP4000 手札4 モンスター オキシゲドン 魔法・罠 伏せ1

 タニヤ LP4000 手札3 モンスター 裏守備1 魔法・罠 伏せ2

 

「行くぞ。俺のターン。俺は手札から『ハイドロゲドン』を攻撃表示で召喚」

 

 ハイドロゲドン ATK1600

 

『どうやら三沢君は攻め込む気みたいだねぇ。ハイドロゲドンの効果を狙っているみたいだけど、果たしてどう転ぶか』

『……もう突っ込まないからなディー』

 

 どうせ他の皆は試合に集中してるから僕が出てきても大丈夫だよとかなんとか言う気だろ! 俺はディーを放っておいてこれからの流れを見守る。

 

「バトルだ! 俺はハイドロゲドンで裏モンスターに攻撃。『ハイドロブレス』!」

 

 三沢の号令により、ハイドロゲドンが口から水流を噴き出して攻撃を仕掛ける。だがタニヤは伏せカードで迎撃するでもなく、そのまま攻撃を受けてカードが表側に変化する。そのカードは、

 

 アマゾネスの鎖使い DEF1300

 

「『アマゾネスの鎖使い』。このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、1500LPを払う事で効果発動! 『死に際の鎖舞い』」

 

 タニヤ LP4000→2500

 

 破壊されたアマゾネスの持つ鎖がヒュンっと風を切り、三沢の手札に絡みつく。……げっ!? これはマズい!

 

「相手の手札を確認し、その中からモンスター1体を選んで私の手札に加える。私が選ぶのは……『ウォータードラゴン』」

「なっ!?」

 

 鎖はそのまま手札の1枚を抜き取ってタニヤの下に運ぶ。鎖使いとはまた厄介なカードを伏せていたものだ。1500という割と大きいコストを払う代わりに、相手の手札の確認・相手のモンスター奪取・自分の手札増強がこなせるからな。

 

 手札もLPも少ない終盤では使いづらいが、序盤で使われると手の内も読まれてかなり面倒だ。そのことに三沢も気付いたのか険しい表情をしている。

 

 おまけにウォータードラゴンは三沢のデッキのエース。本来魔法『ボンディング-H2O』で手札・墓地・デッキのどこからでも出せるのが利点だが、流石に()()()手札からは呼び出せない。

 

 たった1枚でここまでやるとは流石だなタニヤ。

 

「惜しかったな。その手札なら、次のターンにはこのカードを呼び出せただろうに」

「くっ! ……だがこちらもハイドロゲドンの効果発動! 相手モンスターを破壊したことで、デッキから同名カードを特殊召喚できる」

 

 余裕たっぷりに言うタニヤに、三沢も負けじとハイドロゲドンをもう1体場に揃える。このまま行けば連続直接攻撃を受けてタニヤの負けだが、

 

「永続罠発動! 『アマゾネスの意地』。墓地のアマゾネスの鎖使いを攻撃表示で特殊召喚する」

 

 再び場に出る鎖使い。効果は確かに脅威だが、残りLPを考えると乱発は出来ないはず。単に壁にしたとしても、またハイドロゲドンに破壊されれば同じことの繰り返しだ。

 

 三沢もそう思ったのか追撃をしようと口を開き、

 

「もう1体のハイドロゲドンでアマゾネスの鎖使いを……」

 

 その瞬間、何かに思い当たったように手を止めてタニヤのもう1枚の伏せカードを見る。

 

「どうした? 攻撃してこないのか?」

「……いや。俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

「ふふっ。慎重だな。だが……良く気づいた」

 

 ニヤリと笑うタニヤの言葉に俺もそこで気づく。あのタイミング。これはあくまでも想像だが、もし()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 鎖使いの効果すらも囮。三沢に敢えて鎖使いを一度破壊させ、ハイドロゲドンで倒せると印象付ける。その状態で鎖使いが復活すれば、また同じように効果の発動を狙ってハイドロゲドンで攻撃するだろう。

 

 そこを弩弓隊で攻撃力を下げた上で攻撃を強制させてまとめて返り討ちにする。あと三沢の場に残るのは既に攻撃を終えた上に攻撃力も下げられたハイドロゲドン1体と、しっかりタニヤに確認された手札のみ。当然対策も容易で三沢には苦しい展開になっていただろう。

 

「単純な攻撃だけでは手痛い反撃を受ける。言っただろう? 知恵比べだと」

「ああ。理解しているよ」

「では私のターン。ドロー。私は手札からアマゾネスの聖戦士を攻撃表示で召喚。効果により攻撃力アップだ」

 

 アマゾネスの聖戦士 ATK1700→1900

 

「さらに手札から魔法カード『アマゾネスの呪詛師』を発動! これにより、アマゾネスの鎖使いとオキシゲドンの攻撃力を入れ替える」

 

 鎖使い ATK1500→1800

 オキシゲドン ATK1800→1500

 

「あぁっ!? 三沢君のモンスターの攻撃力がっ!?」

「全てタニヤのモンスターを下回ったか」

 

 観客席からは焦ったような声が聞こえてくる。それはそうだ。ここで三沢が負ければ、代わりに無くなるのは十代の鍵。気が気ではないだろう。……だが、

 

「心配すんなって! 三沢はまだ全然諦めちゃいない」

 

 そう。肝心の鍵を賭けている十代が、三沢の事を信じている。そのことがどこか周囲にも落ち着きを保たせていた。

 

「分かっているぞ三沢よ。お前が今のターン伏せたのは永続罠『スピリットバリア』。それで自分へのダメージを最小限に抑えつつ、『リトマスの死の剣士』の効果に繋げる腹積もりだということは。だがそうはさせん。私は速攻魔法『サイクロン』を発動! 相手の場の魔法・罠を1枚破壊する」

 

 タニヤのカードから巻き起こる風が、三沢のさっき伏せたカードを破壊する。それはまさにスピリットバリア。……やるな。さっき手札を確認したから、何があるかは把握済みって訳か。

 

「行くぞ。私はアマゾネスの聖戦士でハイドロゲドンに攻撃!」

 

 聖戦士が剣を構え、ハイドロゲドン目掛けて踊るように跳躍する、そしてその攻撃が直撃する寸前、

 

「罠発動! 『アモルファス・バリア』。モンスターが3体以上居る時、相手モンスターの攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる」

 

 地面から薄紫の柱がハイドロゲドンを守るように伸び、剣で切り裂こうとした聖戦士がたたらを踏む。

 

「ほう。二段構えだったか」

「ああ。分かっているからこそ、そのまま出してしまえば対処せざるを得ないはず。情報が洩れているのならそれも踏まえた上で動くだけの事」

「なるほど。それがお前の()()か。……面白い」

 

 そしてタニヤのターンエンド時にアマゾネスの鎖使いとオキシゲドンの攻撃力は元に戻る。

 

 そんな中互いに二ッと笑うその姿は、婿と嫁という事の前にただ二人の戦士だった。

 

 

 

 

 三沢 LP4000 手札2 モンスター ハイドロゲドン2体 オキシゲドン 魔法・罠 なし

 タニヤ LP2500 手札2 モンスター アマゾネスの聖戦士 アマゾネスの鎖使い 魔法・罠 アマゾネスの意地 伏せ1

 

「俺のターン。ドロー! ……俺はカードを伏せてこのままターンエンド」

「三沢の奴。良いカードが引けなかったみたいだな」

「ああ。かと言って、もし迂闊に攻撃してタニヤの伏せカードが本当にアマゾネスの弩弓隊だったらそのまま全員返り討ちだ。今は耐えるしかない」

 

 十代と万丈目がそう流れを評しながら見守っている。

 

 アマゾネスの弩弓隊は、アマゾネスモンスターが場に居る時に相手が攻撃宣言をしたら発動する罠。だからこちらから仕掛けない限りは使えない。

 

 しかし今の状態では、発動したら三沢の全モンスターが返り討ちに遭い、しかもがら空きの状態でタニヤにターンが回るという最悪の展開になる。つまり三沢が今考えているのは、

 

「攻撃力を下げられても強引に突破できるだけのモンスターか、伏せカード自体を破壊できるカードを待つ……といった所か?」

 

 タニヤの推測に、三沢は何も答えない。だがおそらくそれは当たっている。

 

「確かにそれが今の時点の最良だろう。だが……それまで場が保てばの話だ。私のターン」

 

 タニヤは勢いよくカードをドローしてニヤリと笑う。何か仕掛けてくる気だぞ三沢。

 

「私は『アマゾネスペット虎』を攻撃表示で召喚。場のアマゾネスの数だけ攻撃力が上がり、当然アマゾネスの聖戦士もアップだ」

 

 アマゾネスの聖戦士 ATK1900→2000

 アマゾネスペット虎 ATK1100→2300

 

 タニヤの場に大虎が出現して吠え上げる。

 

「今度は防ぎきれるかな? まずはアマゾネスペット虎で、ハイドロゲドンを攻撃!」

「ぐぅっ!?」

 

 三沢 LP4000→3300

 

「まだまだ! 続いてアマゾネスの聖戦士で、もう一体のハイドロゲドンに攻撃だ」

「うおっ!?」

 

 三沢 LP3300→2900

 

 大虎の牙と聖戦士の剣に、2体のハイドロゲドンは倒れ伏す。そして、

 

「最後に、()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()

「迎え撃てオキシゲドン!」

 

 鎖使いが鎖を振り回して投げつけるが、オキシゲドンはひらりとそれを回避、そのまま滑空して鎖使いに反撃、破壊する。

 

 タニヤ LP2500→2200

 

 そして対象が破壊されたことで、アマゾネスの意地も連鎖的に破壊され、他のカードも攻撃力がダウンする。

 

 アマゾネスの聖戦士 ATK2000→1900

 アマゾネスペット虎 ATK2000→1900

 

「あれっ!? なんでタニヤは敢えて攻撃力の低い鎖使いで攻撃したんだろう?」

「お勉強が足りませン~ネ。アマゾネスの意地で蘇生したカードは、攻撃可能であれば必ず攻撃しなければならないデメリットがありまス~ノ」

 

 翔の疑問にクロノス教諭が気取った態度で答える。さっきのターンは呪詛師で攻撃力を変えていたから良かったが、効果が切れた以上残るは玉砕のみだ。その点はリビングデッドの呼び声の方が優れているが、アマゾネスだからこそのサーチなんかも出来るからまあ一長一短だな。

 

 あとは鎖使いが戦闘で破壊されたことで、一応また効果を発動することも出来るんだが……。

 

「鎖使いの効果は使わない。私はこれでターンエンドだ」

 

 まあ使わないわな。ここで使ったらLPは残り700。おまけに使っても三沢の手札はあと2枚。確認してもあまり旨味は無いし、獲れるモンスターがある確率も低い。鎖使いは序盤に使ってこそ意味がある。

 

 しかし状況はやや三沢が不利。さあ。どう切り抜ける三沢。

 




 アニメらしくは無い展開かもしれませんが、今回知恵のデッキということで読み合いを中心に進んでいきます。伏せカードに当たりを付けて動いたりとか。

 次回は二日後投稿予定です。

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