マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! 今回独自設定タグがかなり仕事します。

 この時点でまだ実装されていないカードが登場しますが、この世界では少し早かったかもしれないと温かい目で見守っていただければ幸いです。


再戦 タニヤ対三沢 想いを繋げる双竜

 三沢 LP2900 手札2 モンスター オキシゲドン 魔法・罠 伏せ1

 タニヤ LP2200 手札2 モンスター アマゾネスの聖戦士 アマゾネスペット虎 魔法・罠 伏せ1

 

 戦っている内にすっかり陽も落ち、周りが暗くなる代わりに闘技場のあちこちに火が灯る。

 

 ユラユラと炎に照らし出される中央の二人の姿は、どこか幻想的とさえ言えた。

 

「俺のターンっ! 俺は手札から魔法カード『強欲な壺』を発動! カードを2枚ドローする」

 

 おおっ! ここで手札増強カードか! 三沢は更に手札を追加し、何か覚悟を決めたかのようにタニヤを見据える。

 

「俺は手札から魔法カード『簡易(インスタント)融合(フュージョン)』を発動!」

「簡易融合だと?」

 

 対戦しているタニヤが驚く。ちなみにこのカードは、三沢がタニヤと真剣勝負をすると覚悟を決めた時、最終調整用に俺が三沢の寮から取ってきた中にあった物の一つだ。ここに来るギリギリまで調整していたから知らなくても無理はない。

 

「簡易融合の効果。LPを1000払い、レベル5以下の融合モンスターを融合召喚扱いで融合デッキから特殊召喚する。俺が選ぶのはレベル5『朱雀』」

 

 三沢 LP2900→1900

 

 朱雀 ATK1900 炎属性 炎族

 

 三沢の場に、中国の四神の名を冠した魔術師が現れる。

 

「攻撃力1900か。私の場のモンスターと同じ。だが、簡易融合で召喚したモンスターは攻撃宣言が行えず、エンドフェイズに破壊されるデメリットが有る筈」

「ああ。だがタニヤ。最初に俺のウォータードラゴンを封じてくるとは流石だが、俺のデッキはそれだけじゃないってことを教えてやるぜ! 俺は続けて儀式魔法『リトマスの死儀式』を発動! 場のオキシゲドンと朱雀を生け贄に、『リトマスの死の剣士』を儀式召喚するっ!」

 

 オキシゲドンと朱雀のレベルの合計は9。よって召喚条件を満たし、三沢の手札からリトマスの死の剣士が特殊召喚される。

 

 リトマスの死の剣士 ATK0

 

「さらに俺はリバースカードオープン! 永続罠『アストラルバリア』」

 

 モンスターへの攻撃を、自分への直接攻撃に変更する障壁。だが、三沢の狙いはそこじゃない。場に罠が存在することにより、リトマスの死の剣士の攻撃力は3000まで上昇する。

 

 リトマスの死の剣士 ATK0→3000

 

「リトマスの死の剣士は罠カードの効果を受け付けない。よってアマゾネスの弩弓隊の効果は通用しないぞ。バトルだ! リトマスの死の剣士で、アマゾネスペット虎に攻撃!」

「ぐおおおっ!?」

 

 アマゾネスペット虎 ATK1900

 タニヤ LP2200→1100

 

 大虎が双剣によって切り裂かれ、タニヤもその衝撃の余波でよろめく。だが倒れる直前力強く足で踏ん張り、ギリギリで耐え忍んだ。

 

「モンスターが減ったことで、聖戦士の攻撃力もダウン。俺はこれでターンエンドだ」

 

 聖戦士 ATK1900→1800

 

「良いぞ三沢っ! その調子だ」

「三沢君っ! 頑張って!」

 

 状況が一気に三沢に傾いたことで、活気を取り戻す応援団。だが、

 

「……フフフ。良いぞ。良い感じだ。デュエルはやはりこうでないとねぇ」

 

 タニヤは劣勢に焦るどころか寧ろ喜んでいた。今の衝撃で僅かに切れた口の端をグイっと拭い、闘志をメラメラと滾らせる。

 

 この強敵との戦いをどこまでも純粋に楽しむ気質。ある意味で十代と同じだが、敵に回すとここまで厄介とは。

 

 

 

 

「私のターン。私は手札から『アマゾネスの剣士』を攻撃表示で召喚」

 

 アマゾネスの剣士 ATK1500

 

 前に戦った時に散々苦しめられたカードが、タニヤの場で油断なく剣を構える。

 

「聖戦士を守備表示に変更し、私はアマゾネスの剣士でリトマスの死の剣士に攻撃を仕掛けるっ!」

「何っ!?」

 

 攻撃力の劣るアマゾネスの剣士の方から、三沢の双剣士に突っ込んでいく。結果は当然リトマスの死の剣士が女剣士を返り討ちにすることで終わる。のだが、

 

「アマゾネスの剣士の効果発動! このカードの戦闘によって受けるダメージは、全て相手プレイヤーが受ける」

 

 女剣士の手を離れた剣が、そのまま勢いよく三沢に突き刺さる。勿論映像とは言え、それでも衝撃は本物で三沢もたまらず傷口を押さえる。

 

 三沢 LP1900→400

 

 そう。相手が強ければ強い程、剣士の効果はより凶悪になる。おかげで一気に三沢のLPは風前の灯火だ。

 

「メインフェイズ2。私は手札から魔法カード『死者蘇生』を発動! 墓地から1体モンスターを特殊召喚する。私が選ぶのは当然アマゾネスの剣士」

 

 好きなカードを復活させられる単純だが強力な死者蘇生の効果により、今倒されたはずの剣士が再び場に現れる。これはマズいぞ!?

 

「ヤバいな。このままじゃ三沢は次のターン負ける」

「えっ!? どうしてさ万丈目君?」

「三沢のライフは残り400。今下手にリトマスの死の剣士で攻撃したらそれだけでアウトだ。かと言って攻撃力を抑えたモンスターで攻撃しても」

「おそらく伏せているだろう弩弓隊で、攻撃力を下げられてカウンターが来る。攻撃しなくても次のターンでタニヤの方から来るだろうしな」

「そんなっ!? じゃあ三沢君はもう」

 

 冷静に状況を読み取る万丈目とカイザーの言葉に、翔が絶望的な顔をする。確かに酷い状況だ。だが、

 

「『いや、まだ勝負は分からないぞ』」

 

 ふとそんな言葉が口からこぼれ出ると同時に、自分と同じ言葉を発した十代と顔を見合わせてつい苦笑する。

 

 そう。まだ勝負は分からない。さっきのターン。わざわざ()()()()()()()()()ことで既に布石は打たれている。あとはあのカードを引き込めるかどうか。

 

「私はこれでターンエンドだ。……三沢よ。サレンダー(降参)しても良いのだぞ? 三沢っちはタニヤのお婿さんだもの。今はまだ勝てなくても、今の調子で鍛えればいずれは私より強くなるかもしれない。だから」

 

 構えを解いてそう投げかけるタニヤの言葉はどこか優しげだった。少しだけ嫁としての面が出てくるほどに。……だが、

 

「……それは出来ないよ。タニヤっち」

 

 三沢はゆっくりと首を横に振った。

 

「前に君は言ったよな? 『デュエルに諦めは許されない。そして情けも許されない』と。最後の最後の最後まで、デュエルに全身全霊を込めて向き合う事。それが真の戦士の生き様だ。それなのに、このデュエルを中途半端に終わらせることは出来ない。君との戦いをまた汚したくはない」

 

 それは三沢なりの戦士としての敬意。数日間戦い続けてきたからこその絆。故に大切な人からの優しい降伏勧告でも、大切な人だからこそ受け入れられない。

 

 それを聞いてタニヤも、ゆっくりと頷いてデュエルディスクを構え直す。

 

「……そうか。お前の気持ち確かに受け取った。なら、全力で叩き潰すのみ! さあ三沢よ。知恵を絞れ。お前の力を見せてみろ!」

「おうっ!」

 

 いよいよ決着の時が近いようだ。

 

 

 

 

 三沢 LP400 手札1 モンスター リトマスの死の剣士 魔法・罠 アストラルバリア

 タニヤ LP1100 手札1 モンスター アマゾネスの剣士 アマゾネスの聖戦士 魔法・罠 伏せ1

 

 かなりの劣勢。逆転したと思ったらまた逆転され、並の精神力ならもう心が折れてもおかしくない状況。だが、三沢は落ち着いているように見えた。

 

『この状況。久城君はどう見る?』

『大ピンチだな。正真正銘の。……だが、勝ち筋はある』

 

 ギリギリまで最終調整した三沢のデッキ。それに付き合ったのは俺だ。なので今の三沢のデッキに、この状況を打開できるカードがあることを知っている。

 

『全てはこのドローに懸かっている』

『そっか。……じゃあ見守るとしようじゃないか。いよいよクライマックスだ!』

 

 三沢は静かにデッキに指を掛けた。そして、

 

「ドローっ!」

 

 気合一閃。弧を描くようにカードの軌跡が伸びる。引き当てたカードは、

 

「俺は墓地のハイドロゲドン2枚と朱雀を除外し、手札から『(フロスト)炎の(アンドフレイム)双竜(・ツインドラゴン)』を特殊召喚する!」

 

 氷炎の双竜 ATK2300

 

 三沢の場に現れたのは、氷と炎の竜が絡み合ったようなモンスターだった。

 

 このモンスターをデッキに入れると三沢が言った時には少し驚いたが、この氷と炎という正反対の属性を持ちながらも共に戦うこの姿に、以前タニヤの言った「違う者同士が引き合うにはたくさん頑張らないといけない」という言葉を思い出したという。

 

 いわばこれが彼なりのアイドルカードという訳だ。そして、このカードこそが逆転のキーカード。

 

「氷炎の双竜の効果発動! 1ターンに1度、手札を1枚捨てて場のモンスター1体を破壊することが出来る。俺はアマゾネスの剣士を破壊っ!」

「何だとっ!?」

 

 手札からコストとして捨てられたのは、これまでずっと手札で燻っていた『ボンディング-H2O』。それに呼応してか、まるでウォータードラゴンのような水と氷の混ざったブレスを氷竜が放って剣士を吹き飛ばす。

 

 戦闘を行わないのなら当然ダメージも発生しない。さあ。厄介なモンスターは居なくなったぞ。

 

「行くぞタニヤ。まずリトマスの死の剣士で、アマゾネスの聖戦士を攻撃!」

「くっ!? リバースカードオープン! アマゾネスの弩弓隊! 相手モンスターの攻撃力を600ダウンさせる」

「リトマスの死の剣士は罠を受け付けない!」

 

 氷炎の双竜 ATK2300→1700

 

 苦し紛れに放たれる矢の嵐だが、氷炎の双竜の攻撃力を僅かに下げただけ。矢を掻い潜りながら近づき、双剣士が聖戦士を切り裂いて消滅させる。そして、

 

「これでトドメだ。氷炎の双竜でタニヤに直接攻撃! うおおおおっ!」

「……見事だ。三沢っち」

 

 自らのLPを削り切る氷炎のブレスを浴びながら、タニヤはそう言って仰向けに倒れ伏した。

 

 タニヤ LP1100→0

 

 

 

 三沢WIN!

 




 タニヤ対三沢戦決着です。

 ちなみに最後の氷炎の双竜は、もし三沢が当時のOPのウォータードラゴンともう一体の炎龍を同時にデッキで使っていたなら、これも普通に使えるよなという妄想からフィニッシャーに選びました。

 違う者同士である三沢とタニヤを表しているという意味も込めましたが。

 次回は三日後投稿予定です。

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