マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! 今回独自設定タグがやや仕事します。

 黒蠍団はこんなことしないと思われる方は、遊児の影響で少し変わったと思っていただければ幸いです。


黒蠍盗掘団と七精門の鍵奪取作戦 その二

 

「厄介な場所にあるな」

 

 俺が鍵の場所を見つけてからおよそ十五分後。ザルーグは無事カイザーの鍵を奪取してここ、クロノス先生の部屋の屋根裏までやってきた。なんとも早業だ。

 

 ザルーグに鍵の場所を教えるなり、そう言ってムムッと唸り始める。だが、幸い鍵は枕から僅かにはみ出している。上手くすれば引き上げることが出来るかもしれない。という訳で、

 

 カタリ。

 

 小さな音を立てて、クロノス先生の真上の板が外れる。そして、そこから静かに垂れ下がるのは、小さなフックの付いた一筋の細い糸。

 

 そう。これが今回のザルーグの作戦である。

 

『……どうだ? 上手く行きそうか?』

「静かに。焦らせるな。位置取りは完璧。あとは上手く引っかかるかどうかだ」

 

 そろりそろりとザルーグが糸を垂らしていく様は、どこかザリガニ釣りを彷彿とさせる。だが相手はザリガニなどではなく、起きてしまったら即アウトの高難易度だ。

 

 しかしそこは流石盗掘団のお頭。静かかつ素早く糸は鍵に到達し、巧みに糸を揺らしてフックを鍵に引っ掛ける。よし。後はクロノス先生に気づかれないように引き抜くだけ。ザルーグは勝利を確信した笑みを浮かべ、

 

 

 キイキイっ! キイキイっ!

 

 

「ナ~二っ!? 何なノ~ネっ!?」

 

 突如窓の外から響き渡る甲高い叫び声。慌ててクロノス先生が飛び起きる。マズイっ!?

 

「ちっ!」

 

 ザルーグは小さく舌打ちしながらも素早く糸を回収。クロノス先生は窓に駆け寄っていたので見られてはいなさそうだ。しかし急いでいたためフックから鍵が外れ、枕の傍にポトリと落ちてしまう。

 

「シッシッ! ……まったく。安眠妨害なコウモリ達でス~ノ。……おや? 慌てて起きたから鍵がはみ出てしまいまシ~タ。危ない危ない」

 

 幸いなことに鍵の移動を怪しまれてはいないようだ。だがクロノス先生は鍵をしっかり枕の下に仕舞い込み、すぐさますやすやとまた寝息を立て始める。

 

 チクショウっ! さっきより状況が厳しくなったぞ。

 

 

 

 

『どうする? 完全に鍵は枕の下に隠れてしまってもう釣り上げる作戦は使えないぞ。寝返りを打つのを待つか?』

「いや。そんないつになるか分からない事を待っている暇はない。……くっ!? そろそろ子分達が集合場所に辿り着いている頃合いか」

 

 ザルーグは時間を確認して渋い顔をする。急いで合流しないとな。しかし今の騒ぎ。あれはいったい何だったのだろうか? クロノス先生はコウモリ達と言っていたけど……まさかな。

 

「……仕方ない。ここは危険だが直接私が降りて枕の下から鍵を」

『いや待てって! いくらプロでも直接行くのは無茶だ! それに、ザルーグはここから脱出した後の事もある。捕まらせるわけにはいかない』

「バランサー。お前……」

 

 世間一般的には泥棒など捕まった方が良いのだが、今回は事情が事情だ。ここで盗みを成功させないと、これからのスケジュールに差し支える。そういう意味で言ったのだが、何故かザルーグは涙ぐんでいた。

 

 しかしどうするか……んっ!? 俺が悩んでいると、急に懐に入れているカードが光を放ってテディが精霊化した。テディは屋根裏にちょこんと立って、そのまま胸をポンっと叩く。まるで自分に任せろと言っているかのように。

 

 そう言えばテディもまた脱走とかくれんぼの名手。上手くすれば何とかなるかもしれない。

 

『テディ……よし。任せたぞ。枕の下にあるあの鍵をこっそり取ってきてくれ!』

 

 テディは俺の言葉にこくりと頷き、天井に空いた穴から部屋にそっと降りていく。床についた直後にテディは実体化。ぬいぐるみだから足音を立てることもなく、無音で枕元に忍び寄っていく。……なんか怖いな。俺が寝てる間に同じことやってないよね?

 

「何だ? 急に部屋にぬいぐるみが現れたぞ?」

『ああ。あれは俺のカードの精霊の幸せなテディ……ってちょっと待った!? お前さっきまでテディの姿が見えてなかったのか? お前もカードの精霊だろ?』

「むっ。ああ。それはだな……話は後だ。いよいよブツの場所に辿り着いたぞ」

 

 話している間に、テディはクロノス先生の枕元に辿り着く。テディはそのままゆっくりと枕に手をかけ……そのまま一気に()()()()()()()

 

『なっ!?』

 

 重力に従い、自由落下を始めるクロノス先生の頭、しかし地面に当たる直前、テディがそのふわふわの腕を間に差し込んで受け止める。……ふぅ。心臓に悪い。

 

 クロノス先生が起きてこないことを確認すると、テディはそのままもう一方の手で落ちている鍵を手に取り、自慢げにこちらに向けて伸ばしてくる。

 

「ほう。やるじゃないかあのぬいぐるみ」

『あんまり直球でビビったけどなまったく。……よし。テディ。クロノス先生を起こさないように枕を直してこっちに戻ってくれ』

 

 もたもたしているとまた外からコウモリの鳴き声か何かで起こされかねないからな。鍵を取ったらさっさと逃げるに限る。テディもこくりと頷いてそっと枕を元に戻そうとし、

 

「……むにゃ」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 

 相変わらず寝息を立てているので起きた訳ではない。単に寝返りを打って偶然掴んだだけのようだ。そこまで力を入れている様子もなく、テディの力なら外すことなど造作もないだろう。だが、

 

「おい。どうしたんだ? なんであいつは振りほどかない」

『……振りほどかないんじゃない。()()()()()()()()()

 

 不思議そうに言うザルーグに俺はそう答える。

 

 テディは元々寂しさのあまりに相手を抱きしめて殺してしまう幻想体。だけど逆に言えば、相手が抱きしめてきた場合その手を振りほどくなんてことはしない。相手の意思はどうあれ、それは自分自身の否定に繋がるから。

 

 何とかテディは枕をクロノス先生の頭に持っていくのだが、それでも尚掴まれたまま。これではどうにも動けない。このまま待っていたら時間がかかりすぎるしな。どうしたものか。

 

『うわっと!?』

 

 そう考えていると、急にテディが片方の手で鍵をこっちに放り投げてきた。俺が驚きながらも何とかキャッチすると、テディはそのままクロノス先生の枕元に座り込んだ。……まさかあいつ。自分だけここでクロノス先生が離すまで粘る気か?

 

 何とか来いと小さな声で呼びかけるのだが、テディは頑としてその場を動こうとしない。

 

「バランサーよ。どうする?」

『……仕方がない。俺達だけで先に行こう』

「何? 奴を見捨てていく気か?」

 

 ザルーグははっきりと分かるほどに顔をしかめる。あの黒蠍団の様子を見る限り、コイツは仲間を見捨てるなんてことはしないタイプだ。その部分は個人的に好感が持てる。

 

『一時的に置いていくだけだ。テディはさっきも見ただろうけど隠密は得意だし、見かけよりすばしっこい。クロノス先生が手を放し次第後から追ってこさせる。……それにテディのカードはここに有る』

 

 俺はデッキからテディのカードを取り出して見せる。カードがあれば繋がりが出来、テディからも場所が分かる。そして本当にいざとなったらカードを通じて呼び出すことも出来る。

 

 勿論急にテディが消えたらクロノス先生が起きる可能性があるのでそれは最後の手段だが。

 

 そう説明すると、ザルーグも一応納得したのか逃走準備に入る。……よし。覚悟が決まったら即行動だ。ぐずぐずしていたら誰も得しない。

 

『後は任せるよ。手が離れ次第後から追ってきてくれ』

 

 最後にテディが大きく腕を振って見送ってくれるのを背に、俺はザルーグの先導の下クロノス先生の部屋から脱出した。

 

 

 

 

『これが……七精門か』

 

 学園の地下に広がる空間、黒蠍団との合流場所として決められたその場所を見て、俺はちょっと感嘆する。

 

 中央の台座を守るように周囲に配置された七つの巨大な石柱。しかし一つだけ柱が他に比べて沈み込んでいる。台座には最初から鍵が一つ差し込まれていて、その部分だけ光り輝いていた。どうやら三沢が最初に戦って負けた分の鍵らしい。

 

 台座の手前には、既に仕事を終えた他のメンバーが揃っていた。

 

「お頭っ! こっちこっち!」

「待たせたな野郎共。バランサーの協力もあって無事手に入れてきたぜ。首尾はどうだ?」

「バッチリだ! 他の皆もキッチリ盗ってきたぜ!」

 

 クリフを筆頭に、それぞれが手に入れた鍵を取り出して見せる。ザルーグと俺も鍵を出し、ここに全ての鍵が揃った。

 

「さっ! お頭。早速この台座にはめ込もうぜ」

「そうだな。バランサー。鍵を貸してくれ」

『ああ。……だけどザルーグ。最初に言ったが鍵だけあっても』

「分かってる。あくまで物は試しという奴だ」

 

 ここまで来たら試さないことには納得しないだろう。俺は一応注意だけしてザルーグに鍵を手渡す。ザルーグはそれぞれの鍵を受け取ると、台座に一つずつはめ込み始めた。

 

 一つ。二つ。確かに鍵をはめ込んでいくのだが、三沢の分のように光り輝くことは無い。そして、

 

「これで……最後だ」

 

 全ての鍵をはめ込んだザルーグだが、周囲を見渡してみても何も起きない。

 

「ふむ。もしかしたらとは思ったが、やはりバランサーの言う通りか」

「門が開かないのでは、お宝が手に入らない」

 

 ゴーグの言葉にザルーグも顎に手を当てて考える。しかしこれでようやく納得してくれたみたいだな。あとは普通に鍵の守り手とデュエルするという流れに持っていけば、

 

「……仕方ねえ。最後にアレを試したら今日はいったん引き上げだ。野郎共。()()()B()だ」

「「「「おうっ!」」」」

 

 ザルーグの号令と共に、黒蠍団はそれぞれが散らばっていく。……プランB?

 

『ザルーグ。まだ何かあったのか? プランBとは聞いていないが』

「ああ。普通に鍵を使うだけでは開かないとバランサーに聞いてな、本当に開かなかった時のために急遽準備をしてきたのだ。……私がただ()()()()()()()()()()のために数日島を離れたと思ったか?」

 

 何だろう? このザルーグの自信満々な顔を見てどうにも嫌な予感がプンプンする。

 

「お頭。セット完了したよ」

「ご苦労ミーネ。タイミングはクリフに任せる。さあバランサーよ。少し離れるとしよう。……危ないぞ」

『危ない? 危ないって何が?』

 

 ザルーグ達は俺を連れてこの空間の入り口まで下がる。するとクリフが片手に何やらボタンのようなものを取り出した。

 

 

 

 

「な~に。……()()()()()()()()()()()()()

 

 次の瞬間、石柱から爆発音が響き渡った。

 





 この話で現在のアンケートは終了となります。予想以上にクロノス先生の人気が高くて驚きです。

 次回は三日後投稿予定です。
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