マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 この話は某事情により、パソコンではなくスマホで文章を書いています。

 そのため普段と少し文体が違う箇所が幾つかありますがご了承ください。


特待生寮に潜む闇 その二

「お~い罪善さん。ちょっと速いっ! 速いって!?」

 

 俺は懐中電灯片手に暗い森の中を走っていた。行く手を罪善さんが発光しながら浮遊しているが、意外に速い上に見通しの悪い森の中。追いかけるのも一苦労だ。

 

 時折途中で止まってこちらを待ってくれてなかったら、光ってなくてもとっくに見失っていただろう。

 

『おやおや。苦労しているようだね』

「こっちはディーや罪善さんみたいに空が飛べるわけじゃないんでねっ! というかこんな所に出てきて大丈夫なのか?」

『誰か来たらまた姿を消すから大丈夫さ」

 

 ディーの光球も俺の後を付いてくる。これまでずっと自室でしか姿を見せなかったから、部屋にしか出られないと思っていたが違うようだ。

 

『お急ぎなら幻想体の実体化でもして連れてってもらうかい? 精霊化一歩手前のものなら君がエネルギーを注げば出てくるかもよ? ちなみにこんな暗い暗い森の中なら……そのカードなんかがお勧めかな』

 

 その言葉と共に、デッキケースからカードが一枚ふわりと浮かび上がって目の前に現れる。どれどれ……『幻想体 三鳥 大鳥』か。

 

 今と同じような暗い森の中を、ランタンを持った黒い毛玉のような何かが歩く絵柄だ。確かにシチュエーションとしてはピッタリかもな。ランタンも明かりとしては良さそうだし。……だけど、

 

「遠慮しとくよ。どうせ出すことは出来ても()()()()()()とかそういうオチが付くんだろ?」

『バレた?』

 

 お俺が歩きながらそう聞くと、ディーはそう悪びれもない様子で答えた。だと思ったよ。

 

『まあ一応の担い手である君が死んだらマズいから、君に直接手を出すようなことはあんまりないとは思うけどね。言う事を聞く聞かないは別問題だよ』

「罪善さん一人でもこんな状況だぞ! それなのにポンポン増やしても面倒見切れるかいっ!」

 

 幻想体はどう見たって人外が中心のカード群だ。たまには人間らしいカードも居るが(魔法少女とか)、圧倒的に見た目からしてヤバい奴らが多い。そんなのが何体も実体化してきたらとても抑えきれる自信はないぞ。

 

「ということで実体化は無し。せめて人畜無害な奴か、こっちの言う事を素直に聞くカードじゃないとダメだ」

『罪善さん並みに安全なカードとなると難しいよ。どれも使い方によっては人に危害を加えるなんて朝飯前のものばっかりだし、言う事を素直に聞くかどうかも相手次第だからね。まあそこはこれから君が手綱を握れるようになるしかないね。……そして、そろそろ目的地に着いたみたいだよ!』

 

 言われてみれば、どうやら森を抜けたらしく目の前に古びた建物が見えてきた。……古びちゃいるけど、きちんと整備すればオシリスレッド寮よりしっかりしてそうだぞ。

 

 入口にはしっかり立ち入り禁止の看板と鎖が付いている。こんなとこ堂々と入っていったのか十代達は。原作主人公無茶苦茶だな。

 

 罪善さんは当然気にも留めず、俺をチラリと一瞥するとそのまま中に入っていく。……え~い仕方ない! 俺は周囲に誰も居ないことを確認すると、素早く鎖の隙間を縫って突入した。

 

 

 

『おやおや。何ともボロボロだね』

 

 内部は大分荒れ果てていた。家具は倒れ、ガラスは割れ、天井からぶら下がっているシャンデリアはどことなく物悲しげだ。

 

「人が使わない建物なんてそんなもんだ。手入れしないとすぐに家具は傷むし埃も溜まる。……ただ、少し前に誰かがここを通ったみたいだ」

 

 懐中電灯で照らすと、床に複数人の足跡が見つかった。それもまだ新しい。十中八九十代達だろう。

 

『ねえねえ。これを見てみなよ! 面白いものがある』

「何だよディー……ってこれは!? 千年アイテムっ!?」

 

 ディーの言葉にその方向を照らし出すと、壁に千年アイテムのような絵があった。わざわざ無印で出た古代の言葉らしきものが横に描かれていることから、現地の石板か何かを模写したものかも知れない。

 

 確か無印では、最終回で千年アイテムは全て地割れに呑まれて地の底で眠っているはず。そう簡単には掘り出せないと思うが、一つ二つ何かのはずみで見つかってもおかしくはないか。トラゴエディアの石板の例もあるしな。

 

「ここが千年アイテム、ひいては闇のゲームのことを調べてたってのは間違いなさそうだな」

『そのようだね。……ところで良いの? 罪善さんを追いかけなくて』

 

 忘れてたっ!? 気がつくと、さっきから罪善さんが何も言わずこっちを見てる。……普段みたく歯をカタカタ鳴らすこともなく、ただ静かにこっちをその瞳の無い眼窩でじ~っと。

 

 いやゴメン! ホント悪かったって! 俺が平謝りすると、罪善さんは機嫌を直したのかそのままスッと部屋の奥に向かっていく。……考えてみたら、ここに来る羽目になったのは罪善さんのせいだよな。それなのにこれじゃあちょっと釈然としない。

 

 俺とディーは罪善さんを追って洋館の奥へ奥へと進んでいった。

 

 

 

 

「で、どういう状況だこれは?」

『何やら面白いことになってるみたいだねぇ』

 

 罪善さんについていくことしばらく、何か明らかに普通の寮には必要ないだろって地下通路を抜け、辿り着いた広間らしき場所。そこでは少し妙なことになっていた。

 

 十代がこんな所で、仮面を被った明らかに怪しい巨漢とデュエルを行っていたのだ。ディーといいコイツといい仮面を被るのが流行っているのだろうか? あと無駄に声が渋いなこの人。

 

 どうやら罪善さんが知らせたかったのはこれのようで、俺は様子を見るために通路の陰に身を隠す。十代達とは途中から別の通路で来たらしく、俺の場所は謎の男側。場所取りが悪かったな。出来れば向こうの翔や隼人と一緒にのんびり観戦したかった。

 

 あと何故か部屋の隅で、明日香が変な棺の中に横たわっていた。流れ的に人質かね? 助けたいところだがちょっと距離がある。駆け寄る途中でバレるな。

 

『ほうほう。あの仮面の男……名前はタイタンって言うらしいんだけどね。割とやるじゃないか!』

「ああ。確かに良い腕してる。だけどそれ以上に十代の方が何か変だな。調子でも悪いのか?」

 

 途中までは仮面の男の操るデーモンデッキの猛攻、そして謎の不調に苦しめられる十代だが、モンスター効果で場のパンデモニウムを破壊したことで一気に状況が動く。

 

「こいつの闇のゲームはインチキだ」

 

 十代が言うには、どうやらこの仮面の男はデュエル中に十代達に幻覚を見せてプレイ妨害をしていたようだ。確かに本当の闇のゲームでもそんな描写があったが、催眠術でそれを再現するとは考えたな。

 

「何をほざく。私は本当に闇のゲームを」

「なら当然知ってるよな? アンタが持つ千年アイテム。それが幾つあるのか?」

 

 千年パズル(のような物)を持ってこれでもかと主張する男に対し、十代は試しにカマをかけた。結果男は口を滑らし、これがインチキであるという事を看破される。……というかあの千年パズルよく見たら違和感あるだろ? 無印の描写ではもっと迫力があったぞ!

 

 仕掛けを見破られた仮面の男は、なんと地面に煙球を投げつける。デュエルを放棄して逃げる気か!? しかもこっち側に来るんじゃないよ!?

 

 だがその時、広間を囲むように施されていた蛇のような装飾の目が光輝き、床に妙な瞳の模様が浮かび上がる。そして

漂う煙幕がまるで意思を持ったかのように形を取り、広間の中央近くに居た十代とタイタンを包み込んだ。……そして、

 

「何で俺もなんだよぉっ!?」

 

 どさくさで俺まで包み込まれた。……勝負をもう少し近くで見ようと近づいたのがマズかったらしい。

 

 

 

 

 煙に呑まれたと思ったら、次の瞬間俺はやけに暗い空間に居た。狭いのかも広いのかもよく分からない。確かに立っているはずなのに、脚の感覚もあやふやだ。妙な所だな。

 

『あ~っはっはっは! 大ピンチだね久城君!』

「笑ってる場合じゃないっ! こんなのどうしろってんだっ!」

 

 それにさっきから、小さな黒いスライムみたいなやつが大挙して寄ってくる。よく見たら細い手のような物を伸ばしているのがまた微妙に不気味だ。

 

「うわっ!? 寄ってくるなっ!」

 

 一匹顔に飛びかかってきたので咄嗟に払いのける。その瞬間、首から提げていたペンダントがぼんやりと光を放ち始めた。

 

「……うんっ!? 急にこいつらの動きが鈍くなったぞ」

『そりゃあ“元”神様である僕のお手製だからね。ちょっとした邪気や低級モンスター程度なら追い払えるさ。……言わなかったっけ?』

「聞いてないっ! そういう事は早く言えよっ!」

 

 その言葉を聞き、俺はペンダントを手に持ってかざす。すると黒スライムの近寄ってくる速度がハッキリと遅くなった。それでも僅かに纏わりついてくる奴が居るのだが、一匹や二匹ぐらいなら何とか払いのけられる。

 

 カタカタ。カタカタ。

 

 そこへ俺の近くに罪善さんが歯を鳴らしながらやって来た。罪善さんも呑み込まれていたのか。こんな場所でも罪善さんが居ると少し明るく感じるから不思議だ。

 

 そして罪善さんが来るなり黒スライム達がパタリと寄ってこなくなった。……どうやら罪善さんが怖いらしい。見た目だけならおっかないもんな罪善さん。

 

「ありがとう罪善さん。助かるよ。ところで、先に呑まれた十代達は?」

 

 カタカタ。

 

『あっちだって! ……どうやら向こうでデュエルをしているみたいだね! 行ってみる?』

「流石にこんな状況じゃ影響云々は言ってられないな。一回合流しよう」

 

 このままでは誰にも知られずにこんな所で遭難だ。そうなるぐらいならまだ原作主人公と一緒に居た方が安全な気がする。……俺達は罪善さんの先導で十代達の方に向かった。

 




 急にパソコンの調子が悪くなりました。おかげでスマホ入力で急遽文を打ったのですが、慣れないやり方なので遅いこと遅いこと。

 本来ならこの話で特待生寮を終わらせる予定でしたが、仕方なく途中で切り上げることとなりました。

 次話ですがパソコンが不調のため、早くて明後日。もしかしたらもう少し遅くなるかも知れません。

 読者の皆様にはご不便をおかけします。




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