マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 鍵は一応手に入れましたが、それで一連にケリが着くまでが作戦ということでタイトルはそのままです。


黒蠍盗掘団と七精門の鍵奪取作戦 その三

 

『お前らなぁ……一体何考えてんだこの野郎っ!』

「まあ落ち着けバランサー。良い仕事のコツはな、失敗したとしても常に次の手を考えておくことだ」

 

 ついついほぼ素で詰ってしまうが、当のザルーグは落ち着いたものだ。

 

 先ほどの爆発音は、ザルーグが島を離れて準備してきた爆薬のものだった。どこから手に入れてきたか知らないが、爆薬盗難でニュースにならないことを祈ろう。

 

 ザルーグに理事長から元々依頼されたのは、鍵を手に入れて門を開き、三幻魔のカードを手に入れること。

 

 しかし鍵を手に入れたものの門は開かない。ならば直接門をこじ開けてカードを手に入れれば問題ない。という発想の飛躍の下、ザルーグ達黒蠍盗掘団は今回の犯行に及んだという。

 

 流石にこれは理事長も想定していなかっただろう。その証拠に、

 

『見ろこれを! ()()()()()()()()()()()()()()じゃないかっ!』

「くっ!? あれだけの爆薬をもってしてもヒビを入れるのがやっととは。全て壊そうと思ったらどれだけ必要になるか分からんな。流石お宝を守る仕掛け。頑丈だ」

『そういう問題じゃないってのっ!? 最悪お宝そのものが吹っ飛んだらどうするつもりだ?』

 

 まあザルーグもそれは見越して周囲の石柱一本だけを狙ったようだが、火力を集中しても少しヒビが入った程度で健在なこの封印も流石だ。

 

「まあ良いではないか。つまり物理的にこの封印をどうにかするのは難しいと分かっただけでも収穫だ。ここは頭を切り替え、正攻法でどのように行くかを考えようではないか。なあ! お前達」

 

 うんうんと頷く団員達。……はぁ。やっとデュエルする方向に向かったのは良いけれど、今回の一件をどう報告したら良いんだ?

 

『ったくもう。さっさと逃げるぞ。今の爆発音を聞いて誰かが駆けつけてくるかもしれない』

「なあに心配するな。こんなこともあろうかと、入口には防音処理をさっきしておいた。余程近くに居なくては気づきもしない」

『その用意周到さをもっと前から発揮してほしかったよ』

 

 もうこいつらの調整役降りても良いだろうか。俺頑張ったよな。今回ばかりは大徳寺先生に任せたって許されるんじゃないかなホント。

 

 

 

 

 次の作戦を練るのは明日にして、ひとまず今日は解散すべくぞろぞろと七精門から離れていく俺達。

 

 奪取した鍵はまとめてザルーグが預かることに。まあ鍵だけでは開かないとは言え、鍵がこちらにある以上鍵の守り手達は動かざるを得ない。上手く誘導するための小道具としては使えるだろうということだ。

 

 そういえばふと疑問に思ったことがあったので、帰り際に少し聞いてみることにした。

 

『ザルーグ。さっきテディが実体化するまで姿が見えてなかったよな? お前もカードの精霊なのに何故だ?』

「うん!? それはな。これが原因だ」

 

 ザルーグはトントンと自身の右目……正確に言うと右目を覆う眼帯を指で叩いた。よく見るとカードの絵柄のものとは違って、ウジャド眼がモチーフになっている。……ウジャド眼ってことは、

 

「精霊が自身の力だけで長く実体化するのは難しい。なのでこれを仕事に必要ということで依頼主から貸与されている。これがあることで俺や子分達もまとめて実体化……というより、人としての肉体を持てている訳だ」

 

 前タニヤが持っていた手袋と同じ闇のアイテムか。

 

「だがこれにも欠点があってな。一度人になると精霊としての力が多少封じられる。特に俺達の場合五人に分散しているから一人ずつの力は余計に少ない。余程気合を入れない限り精霊を見ることは出来ないわけだ」

 

 五人で一人の精霊。諜報や潜入活動には向いていても、数が増える代わりに力が落ちるという事か。ある意味理に適っている。だからあの時テディが見えなかったのか。

 

 しかし理事長はそんな闇のアイテムをポンポン仕事だからと言って貸し出すとは、タニヤの闘技場の件もあるし、案外仕事をする方としては良い環境なのかもしれない。だからと言って闇のデュエルはしたくはないが。そこへ、

 

『おっ! テディじゃないか!』

 

 前方からテディが精霊状態でふわふわ飛んできた。どうやら無事クロノス先生から離れたらしいな。

 

「バランサーよ。さっきのぬいぐるみが追いついてきたのか? なら礼を言っておいてくれ。お前のおかげで仕事がスムーズに進んだと」

『ああ。ちょっと待ってくれ。今実体化してもらうから』

 

 テディに頼んで実体化してもらうと黒蠍盗掘団はかわるがわる礼を言い始める。なんだかんだ協力者とか仲間に対してはすぐに仲良くなるタイプだなこいつら。……だが、テディの様子が何かおかしい。どこか慌てているようだ。

 

『どうしたテディ? 何があった?』

 

 テディは必死に身振り手振りで何かを知らせようとするのだが、かなり複雑で何を言っているのか分からない。困ったな。

 

「なあバランサー。お前こいつの他にも精霊は居ないのか? 居るんだったらそいつに通訳してもらえば良いんだ」

 

 チックの提案にその手があったと手を叩く。しかし丁度今俺の手持ちのデッキに居る精霊で普通に会話できると言ったら……。

 

『仕方ないか。ちょっと出てきてくれ。雪の女王』

『何用だ? 妾を急に呼び出すとは』

 

 精霊化して現れたのは長剣を携えた女王様。出来ればレティシアとか葬儀さんとかもっと穏やかな幻想体を呼び出したかったのだが、今デッキに居るのが雪の女王だったんだものしょうがない。

 

『そのぉ……お願いがあるのだけど、このテディが何を伝えたいのか雪の女王に教えて欲しいなぁと』

『……ほぉ。つまりはこの妾にそこのぬいぐるみの通訳をせよと? ……そんな些事にこの妾を使おうと?』

 

 雪の女王は長剣を持つ手に力を込める。げっ!? 機嫌を悪くしたらしい。気のせいか周りの気温が急激に冷え込んできた気がする。……気のせいじゃなさそうだ。他の黒蠍盗掘団の面々もなんか寒そうだもの。

 

 あわや氷漬けにされるかと思ったが、そこにテディが走り込んできて雪の女王に何かを訴えるような仕草をする。

 

『何? ……良かろう』

 

 テディの仕草に少し考え込むと、雪の女王から放たれる冷気が僅かに緩む。そしてちょいちょいと軽く手招きされたので、そっと彼女に近づく。

 

『管理人よ。妾に頼みごとをするという意味合いは分かっているな?』

『ああ。……後日ハーゲン〇ッツ二つでどうか』

『三つだ。それと別口の甘味も貢物として差し出すが良い。……また幼子辺りに物欲しそうな顔で見られたらそれを下賜してやろう』

『なるほど。レティシアの分も。……分かった』

 

 交渉成立らしい。少々財布が軽くなるが、これくらいならまだ許容範囲だろう。ちなみに今の会話は雪の女王の名誉のためにもひそひそ声で会話している。周囲に漏らすと凍らせかねないしな。

 

「おい。話はついたのかバランサー。俺達の目にははっきりとは見えんのだ。ぼんやり見えるというだけでかなり強力な精霊だとは分かるが」

『ああ。ザルーグ。一応通訳をしてくれることになった』

 

 そうと決まれば急がねば。下手に刺激して周り中氷漬けにされたら大変なことになる。

 

 雪の女王はその方が聞き取りやすいのか実体化し、周りの連中が驚く中テディへの聞き取りを開始した。すると、

 

『ふむ……ほぅ……分かった。確かに伝えるとしよう。管理人よ。おおよそだが分かったぞ』

 

 テディからの情報を雪の女王が大まかにまとめるとこうなる。

 

 まずテディはクロノス先生が手を離したのを見計らい、素早く精霊化してこちらを追って来た。そこまでは予想通りだ。だが、それだけではなかったらしい。

 

『こんな夜中に連絡があった?』

『そのようだ。それでそのクロノスとかいう者は、すぐに枕の下を確認して鍵がないことに気が付いたらしい。それこそテディを気にも留めないほどの慌てぶりだったそうな』

 

 あっちゃ~。ってことは今頃鍵の守り手全員に連絡が行ってんな。できれば発覚は朝までかかってくれれば良かったんだけど。

 

『どうやら電話口で、一番酷く荒らされていたオシリスレッドに集まって話し合うということを言っていたようだ。今戻れば鍵の守り手達と鉢合わせする。このテディめはそのことを伝えようと慌てていたのであろう』

 

 雪の女王の言葉にテディはこくこくと頷く。そうだったのか。ありがとうなテディ。伝え終えて気が緩んだのか、俺の肩に掴まってきたテディに礼を言いながら軽く撫でる。

 

 ちなみに一番オシリスレッドが荒らされていたというのは、

 

「すまん。多分、俺のせい」

「俺もちょっと心当たりがあるかな」

 

 ゴーグとチックがバツが悪そうに頭を搔いて名乗り出る。どうやら元々鍵を盗ってそのままトンズラする計画だったため、証拠隠滅が疎かになったらしい。

 

 チックは道具で壁に穴を開けてそこから鍵を奪い、ゴーグに至っては扉を破壊して直接部屋に侵入するという力技だったらしいからな。単純な被害で言えばそこそこ大きかったようだ。もうちょっとスマートに行けなかったのか。

 

 雪の女王も『これで用は済んだな。貢物を忘れるでないぞ』と言い残して精霊化を解く。さて。これからどうするか。

 

「……ふむ。予想よりバレるのが早かったが、こうなってはある意味好都合だな」

『んっ!? 何か考えがあるのか?』

 

 既に手が回っているかもしれないというのに、ザルーグを始め黒蠍盗掘団の顔には余裕がある。まさかこの状況を読んで何か手を残していたのか?

 

「いや何。簡単な話だバランサーよ。結局の所、お前の提言した通りデュエルするというだけの話よ。ただまだ俺達の正体までバレた訳ではない。それを活かしてこれからどう立ち回るか考えるとしようではないか」

『なんだ。結局の所行き当たりばったりじゃないか』

 

 何かと思ったらただ楽天的だっただけか。まあこんな状況でも心に余裕が持てるのは長所なのかもしれないけどな。そう言うと、

 

「ハッハッハ。例え計画なしのアドリブだろうとも、目標に向けて常に直進する。そう。それがっ」

「「「「「我らっ! 黒蠍盗掘団っ!」」」」」

 

 これである。ホントにブレないねこいつら。

 

 相変わらずのポーズを決めるこいつらを見て、俺はため息を吐きながらもこの嫌いになれない奴らをどうするか頭を働かせていた。

 

 

 

 

 それからしばらくして、俺達は問題のオシリスレッド寮に到着していた。

 

 テディに先行してもらい、俺の部屋の幻想体達には既に事情は伝わっている。そうして十代達鍵の守り手の動向を探ってもらった所、どうやら万丈目の部屋に皆集まっているようだ。

 

「野郎共。作戦は頭に入っているな」

「「「「おうっ!」」」」

「静かに。声が大きい」

 

 そういう俺達は各自変装を解き……というより黒蠍盗掘団は元々盗掘団としての姿の方が素なので変装し直してというべきか? まあこの学園で普段過ごす姿でいる。つまりザルーグは警察として、チックは生徒としてという具合にだ。

 

 作戦としては、鍵を奪う前の下準備とおおよそは同じ。ザルーグが警察として事情聴取をすると持ちかけ、敢えて鍵の守り手の面前で黒蠍盗掘団のメンバーを先に取り調べる。

 

 そうすることで一度疑わせて、その後身の潔白を証明させることで疑いの気持ちを消すというやり方だ。心理の盲点を突くやり方だな。受け答えもここに来るまでの道中でざっと頭に入れてある。大抵の質問には乗り切れるだろう。

 

 ちなみに俺は不参加。自室からチックがリアルタイムでこっそり映している映像を俺のタブレット越しに見て、それと念のために送った幻想体を通じて状況を確認する予定だ。

 

 十代や万丈目、大徳寺先生には見えるだろうが、そもそも幻想体のことは知られているので勝手に覗きに来たと思われるだけだ。そこまで問題はない。

 

 スパイとしてはあまりセブンスターズ側に協力し過ぎるのはマズいが、ここまで来たら無事追及を躱しきってほしいと思わなくもない。デュエル自体は機を見て一人ずつ仕掛けるつもりらしいので意欲はあるみたいだしな。

 

「ではお前達。俺は自分の部屋から見させてもらうよ。……健闘を祈る」

「ああ。今日は色々と助かった。これが済んだらまた共に作戦を練るとしよう」

 

 そうして俺は黒蠍盗掘団と別れて部屋に戻った。部屋には既に幻想体達が精霊化して待機してくれている。ありがたい。

 

「皆。待たせたな」

『待ちくたびれたよ久城君。部屋にはもう葬儀君が行ってる。本当ならレティシアの方が見られても安心なんだけど』

 

 いつもの調子でそう話しながら部屋の片隅に軽く動くディー。その先には、途中まで俺を待っていたのだろう。空のコップを持ったまますやすやと寝息を立てるレティシアの姿があった。最初に会った時を思い出すな。

 

「なんだかんだ夜中だからな。寝かせておこう」

 

 俺は二段目のベッドをざっと片づけてレティシアをそこに運ぶ。布団も掛けて準備完了。……精霊化してくれれば良かったが、実体化したまま眠るとそのままらしい。妙な話だ。

 

 さて。いよいよだな。タブレットの電源を付け、チックから送られてくる映像を確認する。そこに映っていたのは、

 

 

 

 

「この事件。必ず俺が解決してみせる。名探偵万丈目サンダーの名にかけてっ!」

 

 なんかキレッキレのポーズを決めている万丈目の姿だった。……俺は何を見せられているのだろうか?

 




 万丈目の中の人って某名探偵の孫の声もあてているんですよね。原作のこの回はコメディ風味多めで実に笑いました。

 次回も三日後投稿予定です。
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