マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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白々しい偶然は良くあること

「やった~! 勝った!」

「凄いぞ万丈目!」

()()だ」

 

 勝敗が決し、十代達鍵の守り手は歓声を上げる。こんな状況であっても呼び方を嗜める万丈目も流石と言うか何と言うか。

 

 おジャマ・キングのボディプレスをまともに受け、ザルーグはギャグマンガ調に人型に地面にめり込んで目を回していた。

 

「む、無念。すまん皆」

「お頭っ!?」

 

 黒蠍盗掘団の面々がザルーグに駆け寄る。だが、ザルーグを始め全員の身体は光の粒子と共にうっすらと消えかけていた。これは……タニヤの時と同じか。

 

 対峙していた万丈目が駆け寄ろうとするが、それを制して俺が先に歩み寄る。悪いが見届けるのは俺の役目なんでね。譲れない。

 

『ザルーグ。皆も』

「ああ。バランサーか。どうやら敗北したことで契約不履行と見なされたらしい。この眼帯の力が急激に弱まっているようだ」

 

 俺が手を差し伸べると、ザルーグはふらつきながらも手を取って立ち上がった。だが明らかに普段より弱々しい。眼帯の力が無くなり、実体化が難しくなってきたらしい。

 

「お宝を手に入れられなかったのは悔しいが、まあ偶にはこういう事もあるものだ。お前には世話になったな」

『ああ。たっぷり世話をしてやった。まさか直で鍵を盗りに行くとは思ってなかったがな。色々と大変だったんだぞ』

「違いない! ナッハッハ」

 

 ここで下手な謙遜はしない。さぞ苦労したぞというように話すと、黒蠍盗掘団は皆で笑い飛ばす。ここまで来ても明るい奴らだ。

 

 そこでいよいよ黒蠍団の身体がぼんやりとしてきた。いよいよ限界らしい。

 

「さあてそろそろか。悪いがバランサー。俺が消えたらこの眼帯はお前から返しておいてくれ」

「この数日……いや、この学園での暮らしは割と楽しかったぜ!」

「……うむ。悪く、なかった」

「盗賊なのに警備員ってのも新鮮だったな」

「生徒に慕われるっていうのも中々良かったわよねぇ」

 

 口々に言う黒蠍盗掘団の誰一人として、悲壮感を漂わせてはいなかった。消えるのではなく精霊として元の世界に戻るだけだと。もう少し切ない系の別れになると想像していたのだが、

 

『本当に……最後まで騒がしくも明るい奴らだなお前らは』

 

 そうポツリと洩らした俺の言葉にこいつらはニヤリと笑い、

 

 

「「「「「それがっ! 黒蠍盗掘団っ!」」」」」

 

 

 最後にいつもの決めポーズをして消滅していった。余韻を吹き飛ばすような、最後まで奴ららしい別れだった。

 

 

 

 

 地面に残されていたのは、黒蠍盗掘団の個別のカードと七精門の鍵。そしてザルーグが身に着けていた眼帯だけだった。俺は静かにそれらを拾い上げる。

 

「ただの盗賊かと思っていたが、カードの精霊だったのか」

『気づいていなかったのか? ……ああ。そうだ』

 

 そっと歩み寄ってくる万丈目。俺は七精門の鍵を万丈目に投げ渡す。

 

『今回の戦い。審判役として確かに見届けさせてもらった。おめでとう。見事な戦いだったな』

「当然だ。俺は負けん! 相手がカードの精霊だろうが何だろうがな」

 

 自身たっぷりに言う万丈目に、流石は俺の推しだと感心すると共にふとある考えが浮かんだ。それは、

 

『それと、これも渡しておく』

「これは……さっきの奴らのカードか。何故俺に?」

『いや何。良い勝負を見せてもらった礼だ。精霊使いならば色々と聞き取りも出来るのではと思ってな』

 

 そう。俺が考えたのは黒蠍団のカードを万丈目に預けることだった。このまま野ざらしにするには忍びないし、かと言って俺が回収してもデッキには入れられず、精霊として扱おうにも()()が持っていたら不自然だ。

 

 鍵の守り手としては上手く行けば情報が得られるため回収はするだろうし、あれだけ我の強い奴らなのでカードさえあればまたその内戻ってくることも可能だろう。

 

 あとは十代に渡すか万丈目に渡すかだが……普通に考えれば万丈目だろう。こっちの方がしっかりしているし、十代とアイツらを組ませたら何をしでかすか分からない。混ぜるな危険という奴だ。

 

 まあ本当の目的は、いざという時のための協力者を作りたいということもあるが。やり方はどうあれアイツら潜入能力自体は高いからな。この場合持ち主は万丈目と言うことになるが、伝手は多いに越したことは無い。

 

 万丈目は少し考えて、

 

「……良いだろう。何を考えているか知らんが、カードは俺が預かっておく」

『よろしい。では諸君。今宵はここまでだ。また次の戦いの時まで……さらばっ!』

「あっ! 逃げたノ~ネっ!? 待つノ~ネ!」

 

 その通り。用は済んだので後はトンズラ! チック直伝の逃げ足を発揮し、マントを翻して猛烈な勢いで走り出す。……あのままだとまた質問攻めにされかねないからな。

 

 慌てて追いかけてこようとする面々だが、

 

「うわっと!?」

「うな~っ!?」

 

 ()()()()すっ転んでしまった大徳寺先生が()()クロノス先生のコートの裾を掴み、そのまま他を巻き込んで転倒する。大徳寺先生も味な真似をする。これなら追いかけるどころの話じゃないな。

 

 俺はその隙に素早くその場を後にした。

 

 

 

 

『はあっ! はあっ!』

 

 近くの森の中に駆け込み、どうにか誰も追いかけてこないことを確認してやっと一息つく。

 

 グルルルゥ?

 

『……はあっ。ごめんな大鳥。騒がせて。少し休んだらすぐ森から出るから、もう少し待っていてくれ』

 

 何事かとやってきた大鳥を宥めながら、近くの木に寄りかかって呼吸を整える。……毎回こう逃げるのは疲れるから、次からは何か煙幕的な何かを用意するべきかもな。そんな風に考えながら、

 

『……はぁ。……それで? 今度は何の用だ? さっきから俺を覗いていることは分かってるんだが。カミューラ』

「フフッ。バレていたの」

 

 キイキイというコウモリの鳴き声と共に、前と同じく黒い霧が目の前に巻き起こり、その中からカミューラが姿を現す。この移動法は羨ましいよな。割と格好良いし。

 

「別に大したことじゃないわ。ただアナタが有力な情報を洩らさないかとひやひやしてただけ。アナタの大事な大事なお友達なんでしょう? あの人達」

『心配するな。俺の立ち位置はあくまでバランサー。審判役だ。基本的にはセブンスターズの側に立つし、上手く互いの戦いの場を調整するのが仕事だ。必要以上に学園側に味方するつもりはない。……だがな』

 

 俺はそこで軽くカミューラを睨みつける。それに合わせてか偶然か、大鳥も瞳を真っ赤に染めて臨戦態勢をとる。

 

『もしも反則行為。例えば()()()()()()()()()()()()()ようなことがあれば……俺がお前をぶっ潰す。覚えておけ』

「あら。怖い怖い」

 

 カミューラは軽く口元を隠しながら妖艶に微笑む。ったくもう。タニヤやザルーグ達と違って、こいつはどう見ても搦め手で来るタイプだ。コウモリで事前に相手の手を探ったりとか。

 

 今まで順番を後回しにしているのも、多分何か策を練る時間が必要だからといった所か。

 

『それと一つ尋ねる。今日俺とザルーグがクロノス先生の所に忍び込んだ時、外からちょっかいを出して先生を起こしたのはお前の所のコウモリだろ?』

「あ~ら。何の事かしら?」

『とぼけるな。もし野生のコウモリが出るんなら、それをあの黒蠍団が下見の時に気が付かなかった筈がないだろうが』

 

 あれでも奴らの腕は本物だった。これまで一度も出なかった場所で急にコウモリが出るとしたら、目の前のコウモリを僕とする吸血鬼の差し金くらいしか考えられない。

 

「……ああ! もしかしてあれかしら? ()()()()あの辺りで私の僕達をお散歩させていたことかしら? もしそうだとしたらごめんなさいねぇ」

『白々しい。……だが何故だ? あの時点でザルーグの事がバレても、戦うのが早まるだけでそこまで全体に影響はなかったはず。俺は一応ザルーグの要望を聞く立場にあったから手を貸したが、お前が動く理由が分からん』

「……あくまで偶然私の可愛い僕が起こしたことだから意図はないのだけど……そうね。例えば」

 

 その瞬間、カミューラは隠していた口元……大きく裂け、牙が剥き出しになったものを露わにし、こちらに壮絶な笑みを浮かべてくる。

 

「邪魔者の()()()の正体を曝け出し、セブンスターズからも学園からも追い出したいから……なんてね。おほほほほ!」

 

 カミューラは高笑いを上げながら来た時と同じように黒い霧となって姿を消す。そして、

 

「言い忘れていたけど、次も私は辞退させてもらうわ。どうせ次のメンバーは()()()()()()()()()()()()でしょうからね」

 

 その言葉を残し、今度こそカミューラは気配を消した。それが分かったのか大鳥も臨戦態勢を解く。

 

 すぐに交代する? どういうことだ? ……まあ良い。実際に会ってみれば分かるか。俺は大鳥の背をそっと撫で、

 

『……はぁ。本当にもう。セブンスターズも一枚岩じゃないから困る。あくまで内部分裂による崩壊ではなく、堂々と戦って学園側に勝ってもらうのが理想なんだよな』

 

 どうして世の中もっとこうシンプルに出来ていないのか。こうして俺はぼやきながら、ここまで来たついでにそのまま大鳥に乗せてもらい、寮の近くまで送ってもらって帰宅したのだった。

 

 

 

 

 翌日。

 

『やっぱり俺達は、こっちの方が気が楽だ!』

『これも人生よね! お頭!』

『お仲間だったのね!』

 

 万丈目の様子を見に行くと、普通に昨日ぶりに精霊化して宴会してやがったよこいつらっ!? 早くとももう数日は掛かると思っていたのにっ!?

 

「万丈目……こいつらは」

「ああ。色々あってここで預かることになったバカ共だ。……おい。潜入中に知っているかもしれんが、俺と同じように精霊が見えるここの生徒の久城遊児だ。自己紹介をしておけ」

 

『分かっているとも。俺達こそ』

 

 一応持ち主扱いしているのか、万丈目の言葉に従い黒蠍メンバーが勢揃いする。この流れは……まさか!?

 

『黒蠍一の力持ち。剛力のゴーグ』

『黒蠍団の紅一点。茨のミーネ』

『どんな罠でも朝飯前。罠外しのクリフ』

『お宝頂きゃあとはトンズラ。逃げ足のチック』

『そしてこの私。首領・ザルーグ』

『『『『『我らっ! 黒蠍盗掘団っ!』』』』』

『これからよろしく頼むぜ。久城遊児』

「……ああ。よろしく。黒蠍盗掘団」

 

 恒例の決めポーズをとりつつ、万丈目に見えないようウィンクするザルーグに対し、俺もまたこっそりとウィンクで返すのだった。

 




 黒蠍編はこれにて完結です。次回は少し賛否両論別れる話になるかもしれません。

 お気に入り、感想、評価など、何か反応を頂けると作者がニヤニヤ笑いを浮かべて喜びますので、何卒よろしくお願いいたします。

 
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