マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 大分間が空いて申し訳ありません。ちょっとFGO二部六章前編を終わらせてきたら遅くなりました。

 という訳で連載再開です。


バランサーと負けさせてもらえなかった王

 

 ザルーグの件から数日後。

 

 何事もないのんびりとした休日は、アムナエルこと大徳寺先生からの連絡で不意に終わりを迎えた。

 

「新しいセブンスターズ……ですか」

『そうなのにゃ。今回は中々癖が強い人だから気を付けてほしいのにゃ』

 

 セブンスターズは全員癖が強いと思ったが、まあそこは置いておく。連絡があった以上バランサーとしては会ってみなくてはならない。

 

「早速向かいます。集合場所はいつもの洞窟で?」

『ああいや。今回はちょっと違うのにゃ』

 

 大徳寺先生によると、向こうが指定してきた場所がいつもの洞窟ではなく、少し離れた所にある海岸らしい。何故かと尋ねた所、どうやら船で来るから広い場所が良いだとか。まさかこの前の貿易商がリターンマッチに来るってことは無いだろうな?

 

 まあ幾つかの予想を立てて、俺は早速バランサーとして指定された海岸に向かった。当然だがこっそり会う必要があるのでもう真夜中だ。そこに待っていたのは、

 

 

『……って()()()かよっ!?』

 

 

 巨大な黄金の船。それもプロペラや気球などで飛んでいるのではなく、黄金の女神を模した帆船のようなものがそのまま浮かんでいるのだからよく分からない。動力は何だアレは? 魔法的な何かか?

 

 いきなり常識をぶっ壊してきたそれに唖然としていると、急にその船から光が伸びてスポットライトのように俺を照らす。眩しさで咄嗟に腕を翳すと、突然の浮遊感が俺を襲った。……って俺も浮いてるっ!?

 

 そのまま船に引き寄せられ、甲板に投げ出されるも何とかギリギリ着地。ずっこけるなんて無様を晒さず一安心するも、周囲を見てまた唖然とする。

 

 俺を取り囲むのは()()()()()()だった。

 

 乾ききってもう動くはずのない肉体。それらが古いエジプト風の服装を身に纏い、ある者は槍を、ある者は松明を、それぞれ構えて直立不動の姿勢で立っていた。

 

 そしてその最奥の玉座に座っていたのは、

 

『…………王様?』

 

 特に誰にも言われたわけではないのだが、自然とそう理解できた。目の前の男は王であると。

 

 古代エジプト風の装束に黄金のマスク。額にはウジャド眼を模した黄金のサークレット。チラリと見える素肌は褐色に染まり、他のミイラたちとは一線を画す瑞々しい肉体を誇っていた。

 

「いかにも。余の名はアビドス3世。セブンスターズの一人だ。そなたがバランサーとやらか?」

 

 何っ!? アビドス3世っ!?

 

 その名前はこちらの世界の教科書に載っていたほどの偉人の一人。古代エジプトにおいて生涯無敗の伝説を誇り、神のデュエリストと称えられた伝説の(ファラオ)だとか。

 

 古代エジプトといったら原作無印とも大いに絡んでくる地だ。そこの王の一人と言ったらどうしたってもう一人の遊戯を思い出す。あの関係者だったりするのだろうか? お~っ! 原作を読んだ身としてはワクワクが止まらない。

 

「……どうした? そなたがバランサーとやらなのか?」

『…………はっ!? いや失礼。その通り。俺がバランサーです。偉大なる王アビドス3世に会えて嬉しく思います』

 

 いかん。一瞬また意識がトリップしていた。軽く顔を振って意識を集中し、片膝を突いて一礼する。そこまで作法に詳しい訳ではないが、相手が王というなら礼はちゃんとしなくては。勿論原作にあったように左足をやや前に出すことも忘れない。

 

 幸いなことにアビドス3世はある程度作法に寛容だった。だが早速鍵の守り手の所に出向いて鍵を奪いに行こうとするのだからさあ大変。

 

 今は真夜中でもう皆寝ているだとか、民草を安定させてこその王自身がそれを破っては如何なものかとか色々言い包めてどうにか延期してもらう。

 

 途中周りのミイラやら神官っぽい方々が口々に王に逆らうのかと言っていたが、その辺りはこちらも調整役として譲れないと何とか説得(後ろに幻想体達が精霊化して睨みを利かせながら)することで事なきを得た。

 

 相手が正しく王なら勝つのは厳しいが、それ以外の下っ端に負けてはいられない。こちとら最悪の場合神のカードと対を成す三幻魔と戦う可能性があるんだぞ。それに比べりゃ大分マシだいっ!

 

 

 

 

 さて、何とか鍵の守り手とのデュエルは延期してもらったわけなのだが、一原作ファンとしても場合によっては戦うことになる相手としても、個人的には一度戦ってみたい相手ではある。なので、

 

「デュエル? そなたとか?」

『はい。是非一度王のデュエルを味わう栄誉を頂きたく』

「……よかろう。余も久方ぶりのデュエル故、腕が鈍っていまいか確かめる必要もあろう」

 

 ということでとんとん拍子で事が運び、俺とアビドス3世のデュエルが船の上で急遽行われることとなった。勿論闇のデュエルではなくあくまで普通のデュエルだ。

 

 相手は生涯無敗の王。相手にとって不足なし。以前神楽坂が使った遊戯デッキも手強かったが、今回もギリギリの戦いになりそうだ。だが負けても魂を取られるわけでもない。ならば楽しまなくちゃ損だろう!

 

 

 

『「デュエルっ!!」』

 

 バランサー LP4000

 アビドス3世 LP4000

 

 

 

 

「ぐわあああっ!?」

 

 アビドス3世 LP0

 

 バランサーWIN!

 

『…………えっ!?』

 

 つい仮面の下で呆けてしまうほど、デュエルはあっさりと決着がついた。

 

「むぅ……そなた。何者だ? 余をここまで完膚なきまでに打ち負かすとは」

『……いや王様。これって俺が強いというより…………()()()()()()()()()()()()?』

「……そうなのか?」

 

 いや俺も自分が凄腕とは思っていないが、それを差し引いても王様のプレイングはよろしくなかった。

 

 3ターン経過で特定のモンスターをデッキか手札から呼び出す『第一の棺』をドヤ顔で出してきたことはまあ良い。扱いが難しいカードだが、上手く決まればモンスターを一度に最大五体まで展開できるからな。

 

 だけどその後の流れが実にお粗末だった。出したモンスターが棺の効果に対応したカードだったのは良いとしても、基本攻撃力が低い上に伏せカードが何もないんじゃ破壊してくださいと言っているようなものだ。

 

 早速罪善さんとテレジアのコンボで棺を破壊したらやけに驚くし、無理やり攻めてきたので大鳥を出して攻撃対象を変更したら普通に返り討ちに出来たし。

 

 実質こっちはコストを除いてノーダメージ。手札事故でもあったかと思えるぐらいの酷い内容だった。これでは不完全燃焼も良い所である。

 

『……王様。失礼ながら、本当に生涯無敗のデュエリストだったのですか?』

「無論だ。しかしそなたのあの鋭い一撃は見事なものだったぞ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったからな」

 

 何? 俺が初めて? デュエルにおいて相手のキーカードを発動前に潰すのは定石。それなのに一度もないなんてあるわけが……いや待てよ?

 

 俺がそこでふと思いついて周囲の神官達を見回すと、気のせいか僅かに顔を逸らす。……なるほど。そういう事か。アビドス3世もその視線を追って神官たちの挙動を確認すると、ほんの少しだけ肩を落とす。

 

「……そうか。いつもどこか手応えがないと思っていたが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだな」

 

 おそらく、これまでの王のデュエルには多少の忖度なりが働いていたのだろう。王に気持ちよくデュエルしてもらう。……つまりは接待デュエルだ。だから王の戦術を潰すなんてもってのほか。これまで一度たりとも棺の効果を邪魔されるなんてことは無かったのだろう。

 

『カミューラめ。この前言っていたのはこのことか』

 

 どうせ次のメンバーはすぐに交代することになる。その言葉はつまり、接待デュエルに慣れ切った今のアビドス3世の実力ではすぐに鍵の守り手に負けるという意味。

 

 正直これは消化試合だ。学園側にしてみれば楽に一勝がもぎ取れる。スパイとしてはこれほど楽な仕事はない。というか明日にでも適当な相手とデュエルすればおそらくそれで事足りるだろう。……だが、

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

『……王様。少し宜しいでしょうか?』

「なんだ。余は今少し打ちひしがれている所だ」

 

 すっかり気落ちしてしまったのか、アビドス3世は玉座に力なくもたれかかっている。無理もない。しかしだ。少なくともこんな姿は王様には似合わない。なので、

 

『しゃんとしてください』

「ぶほぉっ!?」

 

 とりあえず落ち込んでいる王様にビンタをかます。その弾みで被っていた黄金のマスクが外れ、王様の素顔が明らかになる。……そこにあったのはまだどこか幼さを残す青年の顔。

 

「なっ!? 無礼者めっ!」

「王に平手打ちとは何たる無礼なっ!」

 

 呆然として何も言わない王様の代わりにざわめく神官達。中にはこちらに武器を向けてくる者も居る。だがな、

 

『黙れこの馬鹿野郎共っ!! 元はと言えばお前達の怠慢のせいだろうがっ!』

 

 少々腹に据えかねたので周囲に怒鳴りつける。

 

『王に気持ちよく戦ってもらいたいというのは分かる。だからと言って、手加減が過ぎればそれはもう接待ですらないっ! ただの怠慢だっ! 生涯無敗のデュエリスト? 違うな。ただ単に()()()()()()()()()()()()だけだろうがっ!』

 

 ……何故だろう? 反論の一つでもあるかと思ったのだが、神官達は押し黙ってしまった。正論で切り返してくると思ったのに。……まさか後ろの幻想体達にビビった? そんなことは無いだろう?

 

『あ~。管理人よ。どちらかと言えば私達ではなく君を恐れているのでは?』

『えっ!? ホントか?』

 

 こっそり耳打ちしてくる葬儀さんだが、いくら何でもそれはないって! ……そうだよね? そうだと言ってくれっ!

 

 まあそれは置いといてだ。うん。俺は一度咳払いをしてアビドス3世の前で静かに首を垂れる。

 

『王様。王様に手を上げる不敬。誠に申し訳ありません。ですが、もし宜しければ、俺に王様のデュエル指南役の任をお任せいただきたく存じます』

「……そなたは、余と本気でデュエルしてくれると言うのか?」

『はっ! バランサー(調整役)として……いや。原作一ファンとして。鍵の守り手とも渡り合えるようになるまで鍛え上げてみせます。何度もコテンパンに打ち負かす気で厳しく行きますが、お任せいただけますか?』

 

 アビドス3世は僅かに逡巡した後、一度大きく頷いた。契約成立だな。

 

 本来なら多分今のままで鍵の守り手達と戦うことになっていたんだろうが……悪いな皆。ちょこっとだけ難易度を上げさせてもらう。

 

 

 

 

 仮にも古代エジプトの王(アテムに連なる者)が、弱いままじゃいられないのだから。

 





 という訳で、アビドス3世強化期間の始まりです。原作の流れとは若干異なりますが、遊児が熱血指導して実力の底上げします。

 原作キャラ強化タグは敵にも有効です。

 少しでも面白いと思ったり、続きが気になると思われたのなら、何か反応(ブックマーク、下のボタンから評価、感想など)を頂けると作者が顔をニヤニヤさせて喜びます。

 少しでも皆様の暇潰しにでもなれば幸いです。
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