マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 今回、独自設定タグがかなり仕事します。

 流石にアビドス3世はこんなことしないだろうと思われる方は、もしかしたらあったかもしれないと寛大な気持ちでお許しいただければ幸いです。


協力者は多い方が良い

「ぬあああっ!?」

 

 アビドス3世 LP0

 

 バランサーWIN!

 

『これで俺の十連勝。一度休憩しますか王様?』

「……はぁ……はぁ……いや。もう一度だ指南役よ。やっと手応えを感じてきた所だ」

『よろしい。……ではもう一度行きますよっ!』

 

 アビドス3世との衝撃の邂逅から一夜明けて、俺は早速アビドス3世とのトレーニングに勤しんでいた。と言っても別段特別なことをするわけでもない。基本的には全力でデュエルをするだけだ。

 

 個人的な所感を言えば、アビドス3世の印象は磨かれなかった原石といった所か。相手との戦略の読み合いや、自分の手が妨害された時の対応が圧倒的に経験不足だった。それをしてくれる相手に恵まれなかったからだ。

 

 だが俺とデュエルしている内、少しずつそれが分かってきたのか対応できるようになってきた。一緒にカードを伏せて破壊を防いだり、わざとブラフのカードを伏せて除去カードを使わせたりとか。と言っても毎回ではないが、最初に比べれば雲泥の差だ。

 

 それに本人がとてもデュエルに対して意欲的だったのも大きい。ここまで連敗すれば意欲が落ちるのが普通だが、今のアビドス3世は純粋にデュエルそのものを楽しんでいた。勝っても負けても全力で向き合う事。それこそが望みだったのだから。

 

 やればやるほど動きが洗練されていくのは間違いなく才能がある。こっちも手応えのある相手は歓迎だから喜ばしいことだ。とはいえ、

 

「……ふぅ。さて。そろそろ俺も行かなくては」

「なに? ……はぁ。指南役よ。もう終わりか?」

 

 バランサーとしての服を脱いで制服に着替えていると、アビドス3世が息を切らしながらもまだまだやれると言わんばかりに構えている。

 

「やる気があるのは実に結構。ただ俺はこの学園の生徒ですから。それにバランサーとして戦いの日取りなんかの調整もしなくてはならないのです」

「そうか……折角全力で戦ってくれる相手が見つかったというのに」

 

 少ししょんぼりしているアビドス3世。そうは言っても俺も授業をさぼって訓練に付き合う訳にもいかない。かと言って俺が居ない間ただ休んでいるというのも何かもったいない気がする。

 

 あの神官達じゃまたなんだかんだ手加減してしまいかねないし、丁度良いトレーニングの相手が居れば良いんだが……待てよ?

 

「……王様。つかぬ事をお伺いしますが、()()()()()()()()()()()()()()()?」

「庶民の生活?」

 

 首を傾げるアビドス3世に対し、俺は仮面越しではない素顔でにっこりと悪い笑みを浮かべてみせた。

 

 

 

 

 その日の昼。

 

 俺はちょっとした用件があってある人物の部屋に向かっていた。それは、

 

 コンコンコン。

 

「……はい」

「こんにちは。俺だ。久城だ。少し話があるので中に入って良いか?」

「ああ。どうぞ。鍵は開いてる」

「お邪魔します! 元気か三沢?」

 

 俺は中に入ってこの部屋の主、三沢に軽く頭を下げた。三沢はデスクに座ってパソコンと睨めっこしていたが、軽く手を上げて返してくれる。

 

 以前十代達と一緒にビックバン(壁の塗り替え)をした部屋だが、また数式がそこかしこに書かれている。前に来た時より増えていることから悪癖は健在らしい。

 

「相変わらず研究熱心だな。進捗はどうだ?」

「ああ。もう少しという所なんだがな。やはり()()()()()というのは構築が難しい」

 

 三沢は軽く背伸びしながら椅子にもたれかかる。パソコンの画面に映るのは、以前タニヤと決着をつけた時に使った水と炎の混成デッキ……()()()()()()()()()()

 

 単一属性、或いは種族に特化したデッキは特定の条件において無類の力を発揮する。実際三沢も様々な状況に対応できるように六属性それぞれのデッキを試作用に組んだ。

 

 しかし三沢はタニヤにその六属性で一度完膚なきまでに敗れた後、水デッキに炎の要素を混ぜてデッキを組んだことを皮切りに、違う属性同士の新たなデッキ開発に着手していたのだ。

 

 今のままで満足することなく、かつてタニヤと別れ際に交わした“これからも強くあれ!”という言葉を守るために。

 

「前の光と闇属性の混成デッキはどうだ? デミスを主軸とした儀式主体でカオス・ソーサラーを混ぜる奴。光属性はマンジュゴッドなんかで補えば行けるのでは?」

「あれはとにかくライフコストがかかるのがなぁ。序盤で押し切れるならともかく中盤以降、終盤になると効果の発動自体が難しい。そこがネックだ」

「非常食とゴブリンのやりくり上手を入れるのはどうだ? これならフリーチェーンでデミスの全体破壊効果の中でも使えるし、上手く行けばLP回復と手札補充が見込める」

「なるほど……一理あるな」

 

 そんな感じでデッキ構築論をしばし戦わせた後、

 

「……それで? 結局俺に何の用だ? デッキ構築に手を貸してくれたのは嬉しいがな」

「ああ。実は……今回久城遊児としてではなく、()()()()()()()()頼みがある。聞いてくれるか?」

 

 その言葉に、三沢は何も言わず手で座るよう促した。

 

 

 

 

 俺がバランサーであると三沢が気づいたのは少し前。バランサーとして黒蠍盗掘団と作戦を練る傍ら、俺は久城遊児として三沢と何度か会っていた。タニヤとの別れで少し落ち込んでいた三沢の事が気になっていたからだ。

 

「……お前、バランサーだな?」

 

 その際半ば確信をもって三沢にそう尋ねられた時、何故そう思ったかと聞くと、動きの癖で何となく察したと返された。

 

 これには少し理由がある。俺はタニヤと三沢が一緒に過ごしている間、バランサーとして時折二人の様子を見に行っていた。つまりバランサーとしての姿を他の奴よりも多く三沢には見せていた訳だ。おまけに対タニヤ戦に向けてデッキ構築を手伝ったこともあった。

 

 という訳で十代よりも万丈目よりも先に、三沢にはバレていたわけだ。俺は観念して三沢に事情を打ち明けた。その結果、

 

「今もなお鍵の守り手なら鍵を守るべく警戒もするが、俺はもう負けた身だ。それにお前の事情も分かった。大徳寺先生や鮫島校長が噛んでいるというのなら、俺から特に皆にばらそうとは思わないよ。それにバランサーには世話になったしな」

 

 そう言って三沢は俺の事を秘密にしてくれると約束してくれた。正直助かる。それからは時折会いに来てはデッキ構築に協力しているわけだが、今回はあくまでバランサーとして手を借りる必要が出てきた。それは、

 

「スパーリング相手? この俺がか?」

「頼むよ。無論俺も時間がある時はデュエルするが、どうしてもずっと一緒って訳にはいかない。その間一人にしたら時間がもったいないし、何よりなんかの弾みで飛行船で学園に乗り込んででも来たら大事だ。オシリスレッドとラーイエローでの合同授業以外の空いた時間にでも付き合ってくれれば良い」

 

 ちなみに三沢を選んだ理由は俺の正体を知っているというのもあるが、それ以外にデッキの多様性ということもある。スパーリングはなるべく多くの相手、多くのデッキと戦った方が経験になるからな。

 

 その点三沢は幾つものデッキを使いこなすことが出来るから最適だ。

 

「セブンスターズの一人に協力か。……タニヤのようにただ全力でデュエルに向き合おうとしている奴ならまあ良いだろう。だが協力するにしても、平然と学内に関係者以外の者が居るのはマズいぞ。その点はどうする?」

 

 三沢の意見はもっともだ。だが、

 

「それに関しては心配するな。手は打ってある。多分学内でも堂々と動けるはずだ。説明すると……」

 

 俺の計画を伝えると三沢は「お前落ち着いているように見えて、実はある意味十代よりめちゃくちゃだな」と苦笑いしながら言った。……まあ今回は少し強引な手だが、いつもはもっとおとなしめなんだよホント。相手が(ファラオ)だからちょっとこだわっているだけで。

 

 そうして三沢にも何とか協力を取り付けることに成功する。「スパーリングなら神楽坂も呼んでみよう。アイツも新しくデッキを組むのに悩んでいたからな。良い刺激になるかもしれない」とも言っていたが、神楽坂また前みたいに俺のものマネとかしないよな?

 

 しかし協力者がいるというのは実に良い。一人で出来ないことは二人で。二人で出来ないことは三人。それでもダメなら沢山でってな!

 

 

 

 

 そして、その日の夕方。

 

「え~。注目ですにゃ~! 皆さん。この度この寮に、()()()()()を一人迎えることになったのにゃ!」

 

 オシリスレッド寮の食堂にて、大徳寺先生が食事中の生徒達に呼び掛ける。

 

「おっ!? 何だ何だ?」

「この前のレイちゃんみたいな人っすかね?」

 

 十代と翔が疑問に思う中、隼人ももしゃもしゃとご飯を口に含みながら頷く。

 

「じゃあ紹介するのにゃ。エジプトからの留学生……アビドス君だにゃ!」

「アビドスだ。七日間という短い時間ではあるが、皆の者。よろしく頼むぞ」

 

 紹介に応じて現れたのは、オシリスレッドの制服を着たどこか幼さの残る褐色の青年……つまりは王様であった。

 

「こんな時期に留学生……ね。久城。お前は知っていたか?」

「少しは。話をしているのを聞いた程度だけどな」

 

 実際は少しどころか思いっきり知っているのだが、どうして知っているんだという話になるので誤魔化す。……だから万丈目。名探偵万丈目サンダーの雰囲気を醸し出してこちらを見るのは止めてくれっ!?

 

 

 

 

「ちなみにアビドス君の部屋は久城君と相部屋だからよろしくにゃ!」

 

 げっ! 聞いてないんですけどっ!? あの幻想体達が毎日大騒ぎしている部屋に王族を泊めるのかっ!? ……あのミイラたちに知られたら本気で攻め込んできそうなので内緒にしておこう。

 




 という訳でアビドス3世強化作戦その一。丁度良いから学園の生徒になれ。でした。

 セブンスターズなのに学園側になってどうすんだという話ですが、学園側なのにセブンスターズになってる人も居るのでお許しください。
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