マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
俺が提案したのは、王様を留学生扱いで一時的に学園に編入させることだった。
極論すれば、王様は要するに全力でデュエルする相手が欲しい。なら学園というのはうってつけだ。それが普通の場所だからな。
ただ自分でもセブンスターズを学園に入れるというのは暴挙だとも思うので、本人や関係者などに確認を取って了承されなければ素直に諦めるつもりだった。だが、
「この学び舎の生徒として……か。良かろう。異国の暮らしというのにも多少興味があるしな」
と王様自身がまず了承。
「ふ~む。素晴らしい向上意欲です。……良いでしょう。短期留学という名目であれば許可しましょう。例えセブンスターズの一人であれ、学びたいという若人にその場を提供することが学園の本分なのですから。……いや、若人というのは王に失礼でしたかな? ハッハッハ!」
とやや理想主義の強い鮫島校長も了承し、大徳寺先生も渋々しながらOKを出してくれた。俺が基本的にアビドス3世の傍について問題を起こさないようにするという条件付きだが。
そして肝心の影丸理事長の方だが、何とこちらもこの件を了承した。仮とはいえ戸籍の作成やら学生としての準備諸々、そういったものも全部理事長持ちだ。こっちが驚くような好待遇だが、どうやら理事長もそれだけアビドス3世の伸びしろに期待しているらしい。
確かにこれまでのセブンスターズの戦績から見るに、タニヤ以外全敗という体たらく。この辺りでメンバーの強化をしておきたいと思っても不思議ではない。というかこれ以上負けが込んだら直接本人が出張ってくる可能性もある。出来ればそれはギリギリまで避けたい。
という訳で、
「さあどうぞどうぞ。王様の住んでいた所とは比べようもない狭い部屋ですが、これもまた庶民の生活の醍醐味ということで」
「うむ。……これはっ!?」
夕食の後早速アビドス3世を部屋に案内したのだが、当の本人は部屋の内装よりも、
カタカタっ!
『お客様なのっ! 初めまして。黒っぽいお兄ちゃんっ!』
『そうそう。目上の相手にちゃんとお辞儀出来て偉いぞ我が運び手よ。……あとは一礼する時に私の足を床に擦らなければもっと偉いぞ』
『あっ!? ごめんなさい』
「精霊が……こんなに!? しかもどれも実体化出来るだけの格のある精霊ばかり」
部屋でくつろいでいた幻想体達に普通に驚いていた。初見で精霊だと分かるのは、流石魔物や精霊が身近だった古代エジプト出身者だ。
「何体かはデュエルで実際に使ったから知っているかもしれませんが、見ての通り俺の使うデッキに宿る精霊達です。皆。こちらは今日からここでしばらく寝泊まりするセブンスターズの一人。アビドス3世様だ。王様なので出来る限り礼儀正しく接するように」
姿だけなら知っていても、直接会うのは初めてだ。幻想体達もこれからしばらく付き合っていくわけだし、互いに自己紹介をしてもらうことに。その結果、
「これだけの精霊を従えるとは、流石は余の指南役だ!」
何故かアビドス3世からの好感度が上がった気がする。幸い幻想体達ともそれなりにすぐ打ち解けたようでホッとした。まあ森に居る
さて。明日からも忙しいぞ。三沢の協力も取り付けたことだし、今日は早めに寝て明日に備えなければなっ!
と、思っていたのに。
「おう! 転入生! 俺とデュエルしようぜ!」
夜だってのに普通に
「おい十代っ!? こちらの王様……アビドスさんは編入初日で疲れているんだ。明日にしろ明日に」
「そうだよアニキ。いくらなんでも迷惑だよ」
「アビドス君にも悪いだろうし、早く帰るんだな」
「そんなぁ。良いじゃん! 一回だけ。なっ! エジプトのデュエリストと一度思いっきりデュエルをやってみたいんだよ」
まだ一緒に来ていた翔と隼人は幸い常識的だ。十代を宥めながら引っ張っていこうとするのだが、十代は往生際悪く両手を合わせて拝むように頼み込んでくる。
普段なら構わないが今回は時と場合が悪い。俺も今回はさっさと十代を追い払うべく扉を閉めようとしたのだが、
「そなたも、余と本気でデュエルしてくれるというのか?」
……マズイ。王様の方がノリノリになった。
「当然じゃん! デュエルってのは本気でやるから楽しいんだ!」
「……良かろう。そなた。十代とか申したな。デュエルだ」
「王様」
一応俺は止めるべく声をかける。バランサーとしても指南役としても段取りというものがあるからな。だが、
「案ずるな指南役よ。余とてセブンスターズの一人。鍵の守り手以外の民草にそうそう負けはしない。十代とやら。ここでは些か狭い。外で行うとしよう」
「よっしゃ! そうじゃなきゃ!」
前半を俺の耳元でこそっと喋り、そのまま王様は十代と共に外の広場に飛び出して行ってしまった。翔と隼人も慌てて後を追う。いや、だからその十代が鍵の守り手なんだってっ! ……いや待てよ? これはこれでありか?
留学生としてここに居る限り、セブンスターズとしての闇のデュエルにはならないと事前に理事長に確認している。だからここで勝とうが負けようが鍵の行方に影響はない。
実力的に最初に十代と当たるのはかなりきついが、十代なら間違いなく全力で戦ってくれるという意味ではうってつけの相手だ。王様にも良い刺激になるだろう。
まずはこの学園での最初の一戦。お手並み拝見といこうか。
「「デュエル!!」」
互いに掛け声とともにデュエルディスクを展開する。ちなみに王様のディスクはセブンスターズとして使う黄金の物ではなく、あくまで生徒に支給される一般の物だ。
デュエルの内容だが、王様は初手から『第一の棺』を展開。堅実に守備モンスターで固めていくも、十代の速攻で着実にLPが削られていく。
おまけに魔法『R-ライトジャスティス』の効果により、棺を破壊されそうになる始末。だがそこはちゃんと練習した甲斐があったというべきか、防衛策として伏せていた『マジック・ジャマー』で棺を守る。
そして、
「場の第一、第二、第三の棺全てを墓地に送ることで、『スピリッツ・オブ・ファラオ』を攻撃表示で特殊召喚する!」
何とか棺を守り切り、場に現れたのはファラオの魂ことスピリッツ・オブ・ファラオ。王様のデッキのエースモンスターだ。
「えっ!? 攻撃力2500? 何だよ。手間暇かけた割には普通じゃないか」
「そなた。ファラオの魂を愚弄する気か。このスピリッツ・オブ・ファラオが特殊召喚に成功した時、レベル2以下のアンデット族通常モンスターを4体まで、墓地から特殊召喚できるんだぞっ!」
その通り。王様がわざと低レベルの通常モンスターばかり場に出していたのはこれが狙い。場に残るならそれで良し。仮に破壊されても、この効果で一気に再び場に展開できるのを見越しての事。
王様の場にそれまで墓地に送られたモンスターが4体まとめて展開される。
さらに王様は魔法カード『サウザンドエナジー』を発動。ターン終了時に破壊される代わりに、全てのレベル2通常モンスターの攻撃力を1000引き上げるカードで一気に勝利を目指す。
これによる総攻撃で十代のLPを大きく削ることに成功したものの、そこは流石に主人公。
「王様は3枚揃えたよな。じゃあ俺はその上を行って4枚だ」
墓地にある特定のカード4枚を除外することで発動するカード『ヒーローフラッシュ!!』により、十代はデッキからE・HEROを1体特殊召喚し、そのターン全てのHEROは直接攻撃の権利を得る。
これで十代の場にはフェザーマン、スパークマン、クレイマン、バーストレディの4体そろい踏みに。
「ふっ。雑魚が何体掛かって来ても同じだ」
「ば~か。デュエルってのは最後の最後まで分かんないもんなんだぜ!」
「バカだと? 無礼者っ! 余を誰だと」
「王様だろうが何だろうが、バカなものはバカなの!」
「バカっていう方がバカなんだぞ!」
「おうっ! 俺はバカだ」
オイ王様。威厳はどこへ消えた? これではまるで子供の喧嘩だとギャラリーも皆して呆れている。ただ、二人は今思いっきりデュエルを楽しんでいた。
「ガッチャ! 本気で楽しかったぜ王様! 行けぇヒーロー達! プレイヤーに直接攻撃!」
「ぬわああああっ!?」
アビドス3世 LP0
十代WIN!
という訳で、予想通りと言うか十代の勝利となった。
「どうだ王様? 楽しかったか?」
「ああ。ついうっかり成仏してしまいそうなほどにな」
「えっ? そこまでか! やっぱデュエルって最高だよな!」
十代は比喩だと思っているようだが、俺は見逃さない。地味に王様の足の先が一瞬消えかけてた。これ普通に闇のデュエルだったら今ので成仏してた可能性があるぞ。
「王様。ご歓談中申し訳ないが、そろそろ明日の準備があります。部屋にお戻りください」
「ああ。そうだったな。では十代よ。明日からもよろしく頼むぞ! また戦おうではないか!」
これ以上は流石にマズいので呼び掛けると、王様も素直に十代に別れを言って俺と共に部屋に戻っていく。ただ、
「なあ! ところで何で王様って呼ばれてんだ? 遊児がそう呼んでたから俺もそう呼んだけどよ!」
「そういえばそうだよね?」
「……? 余が王であるのは当然だが?」
「お前ら。……この方正真正銘のエジプトの王族だぞ」
その時の十代達の顔は、何とも言い表せないものだった。
「なあ王様。デュエルしようぜ!」
「良かろう。今回は負けぬぞ!」
まあそれでも普通に翌日デュエルに誘う十代は、間違いなくデュエル馬鹿だったけどな。
原作ならセブンスターズとして十代と戦い成仏する王様ですが、今回は留学生として戦ったので留まりました。
セブンスターズとして戦う相手は原作とは少し変えていく予定です。