マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
また、カードは基本アニメ版の効果を優先します。
サイバー・ドラゴンの攻撃がアビドス3世のセットモンスターに突き刺さる。だが、
「余のモンスターは『ピラミッド・タートル』。その効果はそなたも知っておろうな?」
「戦闘破壊された時、デッキから守備力2000以下のアンデット族を特殊召喚できるカードか」
「その通り。ピラミッド・タートルの効果により、余はデッキから守備力1400のピラミッド・タートルを守備表示で特殊召喚する」
伏せられていたピラミッドを甲羅とする亀が破壊されたことにより、アビドス3世の場に再び同じモンスターが現れる。同じモンスターを呼べるのがリクルーターの強みだよな。
「さあどうする? そなたの場にはまだ2回攻撃出来るサイバー・ツイン・ドラゴンが残っておるが?」
「……バトルだ。サイバー・ツインでピラミッド・タートルを攻撃」
それは先ほどと同じ展開。倒してもまた同じモンスターが現れる。だが、
「2度目の攻撃はしない。俺はこれでバトルフェイズを終了する」
「ほぉ。そう来たか」
「あれっ!? なんでお兄さんはもう1回攻撃しなかったんだろう?」
敢えて追撃を緩めたカイザーの行動に翔が疑問を漏らす。まあこれに関してはちょっと悩ましい所だけどな。
「カイザーは、ピラミッド・タートルで最後に出るモンスターを警戒したんだ」
「三沢君」
おっ!? 久々に見たな三沢の解説。
「今の場合、カイザーはあと一度しか攻撃できない。それでピラミッド・タートルを攻撃しても、アビドス3世は好きなモンスターを場に呼び出して自分のターンを迎えることが出来る。だから敢えて攻撃を止めたんだ」
そう。守備力2000以下のアンデット族なんて幅広い対象を持ってこれるからな。返しのターンに何を持ってこられるか分からない以上、除去カードが無ければここで止めた方が良い。慌てずとも優勢なのは変わりないしな。だが、
「俺はカードを2枚伏せてターンエンド」
「その瞬間罠発動! 『第一の棺』!」
「なっ!?」
アビドス3世の場に、古代エジプト風の棺が出現する。これぞアビドス3世のキーカード。
「続けて第一の棺の効果。相手ターンのエンドフェイズ毎に第二、第三の棺を手札、デッキから順に出す。効果により『第二の棺』をデッキから場に」
場にもう一つの棺が出現する。上手い。第一の棺を相手のエンドフェイズに使う事で、すぐさま第二の棺までもっていった。
「さて。ターンエンドをそなたが宣言した以上、何もなければ余のターンとなるが」
「流石は神と呼ばれたデュエリスト。カード1枚でこの布陣を捌いてみせるか」
何か仕掛けてくるかと暗に問うアビドス3世に、カイザーは軽く首を横に振る。しかし猛攻を防がれ、上手く相手のターンに繋げられたというのにその表情に悲壮感はまるでない。
まるでこのくらいの攻めは防がれて当然とでも言うかのように。対して、
「……初手からここまでの攻勢をかけてくるとは、流石はカイザーと呼ばれるだけはある。だがな」
アビドス3世は仮面を着けたまま、一瞬背筋がぞわりとするほどの雰囲気を漂わせながらカードを勢いよくドローする。
「たったワンターンで楽しい時間を終わらせようなどとしてくれるな。無礼者め」
折角のデュエルをすぐに終わらされそうになって、王様は少しだけご機嫌斜めだった。
アビドス3世 LP4000 手札3 モンスター ピラミッド・タートル 伏せ1 第一の棺 第二の棺
カイザー LP4000 手札1 モンスター サイバー・ツイン・ドラゴン サイバー・ドラゴン 伏せ2
「……なあ翔。第一の棺にあの動き方。それとあの偉そうな喋り方」
「うん。僕も同じ事を考えてた。あの人って……」
おっと。十代と翔が勘づき始めたか。万丈目も何かを察したような顔をしているし、やはり同じ釜の飯を食った仲の相手にはバレるか。三沢に関してはデッキ調整に協力してもらったから言わずもがな。明日香やクロノス先生は……微妙だな。
『なんかす~ぐバレちゃいそうだね。アビドス君の正体』
『……まあキーカードを出せばすぐバレるのは想定通りだけどな。それにある意味カイザーと戦っていなかったのは幸運だ。カイザーには手の内が割れていないからな』
どこか面白そうに言うディーにそう返しながら、俺は二人のデュエルを見守る。
今のアビドス3世のデッキのコンセプトは、如何にスピリッツ・オブ・ファラオを際立たせられるか。リクルーターを増やすことで壁要員及びデッキ圧縮をし、手札抹殺やまだ来ていないが『天使の施し』などで墓地を肥やす。
そして肝心のファラオが来ない場合でも、当然サブアタッカーも居る。
「余のターン。余はピラミッド・タートルを生け贄に、スピリットモンスター『砂塵の悪霊』を攻撃表示で召喚! そして効果を発動する」
砂塵の悪霊 ATK2200 スピリット
「マズいわね」
「ああ。砂塵の悪霊は召喚時、自分以外の表側モンスターを全て破壊する効果がある。このままではカイザーの場は丸裸だ」
「お兄さんっ!?」
砂塵の悪霊の名の通り、その周囲を吹き荒れる砂嵐がカイザーの場の機械竜達を薙ぎ払う。だが、
「行くぞ。余はバトルフェイズに」
「メインフェイズ終了時、俺は伏せカードをオープン。永続罠『サイバー・シャドー・ガードナー』。このカードは相手メインフェイズのみ発動可能。発動後、このカードはモンスター扱いで特殊召喚される」
バトルフェイズに入る直前、カイザーが繰り出したのは黒く刺々しい何か。
サイバー・シャドー・ガードナー 機械族 星4 ATK?
「攻撃力が決まっていないだと?」
「このカードは攻撃対象になった時、相手モンスターと同じ攻撃力となる。さらにこのカードは相手のエンドフェイズに罠として再びセットされる。先ほどは俺が悩まされたが、今度は貴方に悩んでいただく」
「なるほど。影法師か」
これには王様も少し困る。何故なら砂塵の悪霊とサイバー・シャドー・ガードナーは能力的に相性が悪い。
砂塵の悪霊はスピリットモンスター。これには召喚したターンの終わりに手札に戻る共通効果がある。手札に戻る効果は生け贄があれば何度でも場を一掃できるという利点でもあるが、その効果を使った後にサイバー・シャドー・ガードナーが出てくれば直接攻撃まで届かない。
かと言って攻撃すれば相打ち。貴重な全体除去カードを失うのは痛い。おまけに気になるのはもう1枚の伏せカード。仮にリミッター解除などの攻撃力アップ系だったらそのまま返り討ちだ。
悩ましい状況にアビドス3世は少し黙考し、
「……良かろう。此度は退くとしよう。余はバトルせずにメインフェイズ2に移行。カードを1枚伏せてターンを終了する。そして砂塵の悪霊は余の手札に戻る」
「俺のサイバー・シャドー・ガードナーも再セットだ」
こうして互いのモンスターが無くなった状態でターンはカイザーに移る。この選択は果たして吉と出るか凶と出るか。
「俺のターン。ドロー! 俺は魔法カード『貪欲な壺』を発動! 自分の墓地のモンスターを5枚デッキに戻し、2枚ドローする」
むむっ!? ここで強欲ではなく貪欲な壺か。墓地が肥やされていないと使えない分強欲な壺より使いづらいが、デッキに戻す事がメリットになる場合もあるのでどっちが良いかは場合による。
カイザーは墓地のサイバー・ドラゴン、サイバー・ツイン、融合呪印生物-光に加え、最初のターンに手札抹殺で捨てられていた『サイバー・フェニックス』と『サイバー・ジラフ』をデッキに戻し2枚ドロー。そして、
「行くぞアビドス3世。俺は手札から装備魔法『未来融合-フューチャー・フュージョン』を発動!」
未来融合か。貪欲でデッキにカードが戻ったからこれまた厄介な……ってちょっと待った!?
「デッキから融合素材モンスターを墓地に送り、融合デッキから融合モンスター1体を融合召喚扱いで特殊召喚しこのカードを装備する。俺が墓地に送るのはサイバー・ドラゴン3枚。出でよ『サイバー・エンド・ドラゴン』!」
サイバー・エンド・ドラゴン 星10 ATK4000
ギャオオオオン!
「オウ! シニョール亮のエースモンスターなノ~ネ!」
「相変わらず、すげえ迫力だよな」
カイザーの場に咆哮と共に現れたのは、まさに名前の通りデュエルに終わりをもたらしかねない三つ首の機械竜。
攻撃力だけなら初期LPと同じな上に、守備モンスターを攻撃した場合貫通能力まであるカイザーのエースモンスターだ。しかし俺が驚いているのは、
『ちょっと待て。俺が知ってる未来融合の効果と大分違うんだけど!? それにいきなりほぼノーコストでサイバー・エンドを出せるなんてそんなのアリか!?』
『まあまあ落ち着いて久城君。アニメ版効果って奴だよ』
慌ててディーに詰め寄ると、ディーはあくまで騒がずどこかからかうように話す。
俺が知っている未来融合は永続魔法で、デッキから素材を墓地に送るまでは同じだが召喚されるまで2ターンかかるデメリットがあった。
アニメ版ってだけでこれはやり過ぎだろう。絶対何かしらデメリットが有る筈だが。
「むっ!? 攻撃力4000だと!?」
「しかしこの効果で出したモンスターはこのターン攻撃できず、生け贄にもできない。また装備されたカードが破壊された時一緒に破壊される」
あったよデメリット! だけどそれにしたっていきなり場に出てくるアニメ版の方が厄介だぞ。
しかしこのターン攻撃できない以上、次のターンで棺が揃ってスピリッツ・オブ・ファラオが出張ってくる。または勿体ないが砂塵の悪霊を出して味方ごと場を一掃するという手もある。カイザーは一体何を狙って、
「バトルフェイズ。俺はこの瞬間速攻魔法『融合解除』を発動! サイバー・エンドの融合を解除!」
しまったそっちが狙いか! 三つ首の機械竜は3体の機械竜に分裂する。
サイバー・ドラゴン×3 ATK2100
当然これもまた、防御できなければこのターンでLPが消し飛ばされるだけの圧力だ。これを、
「ふぅ。先ほどと言い今と言い、毎ターンが必殺の構えとは……もう少しデュエルをじっくり楽しめないのか?」
アビドス3世は軽くため息を吐きながら、それでも臆することなくサイバー・ドラゴン達に向けて構えを取った。
この程度では屈する筈もないと言わんばかりに。
相変わらずデュエルシーン(特に原作にない対決)は難しいっ! 全然ターンが進まないっ!
ですが流れを考えるのが楽しいというのも事実だから困りものです。