マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! 今回独自設定タグがかなり仕事します。

 アビドス3世は流石にここまでじゃないだろうと思われる方は、こんなこともあったかもしれないと温かい目で見守っていただければ幸いです。


アビドス3世対カイザー 生涯無敗と学園最強 その四

 カイザーのオープンするカードの様子を、俺を含めた周囲の者達は固唾をのんで見守っていた。

 

 サイバー系を主軸としたデッキで攻撃反応系で代表的なのは、機械族の攻撃力を倍にする『リミッター解除』。或いはサイバー・ドラゴンやそれを素材としたカードを墓地に送ることで相手を破壊する『サイバネテック・ヒドゥン・テクノロジー』といった所か。

 

 勿論サイバー系に限定しなければ他にも汎用性の高いカードは多く、範囲を絞り切ることは出来ない。しかしここでサイバー・エンドを仕留められれば、後は残った臣下達の攻撃でシャドー・ガードナーごと押し切れる。

 

 この局面が勝負時だとアビドス3世は踏んだのだろう。そしてその判断の結果は、

 

「罠発動! 『決戦融合-ファイナル・フュージョン』っ!」

 

 予想外の結末を迎えることになった。……ちょっ!? ちょっと待ったっ!? あれの発動条件は、確か戦闘するのが()()()融合モンスターじゃないといけない筈だ! スピリッツ・オブ・ファラオは融合モンスターじゃない。

 

「このカードは、自分フィールドの融合モンスターが相手モンスターと戦闘を行うバトルステップにその2体を対象にして発動! お互いのプレイヤーは、そのモンスター2体の攻撃力の合計分のダメージを受ける」

 

 げっ!? 微妙に効果の細部が変わってる。またアニメ版効果かよ!?

 

「そなた……何故ここまでサイバー・エンドに拘るかと思えば、ずっとこれを狙って」

「言った筈だ。貴方の懐の勝利を奪い取ってでも俺は絶対に負けんと。本来引き分けなど狙うものではないが、貴方ほどの男をここで墜とせるのなら本望! ここで俺と共に消えてもらうっ!」

 

 スピリッツ・オブ・ファラオとサイバー・エンドの攻撃がぶつかり合い、激しい爆発と共に強い光が周囲を覆う。それが収まった時、

 

 カイザー LP4000→0

 アビドス3世 LP4000→0

 

 互いのモンスターの攻撃力の合計、つまり10000を超える効果ダメージが互いのLPを削り切っていた。

 

 

 

 

「カイザーっ!」

「お兄さんっ!」

「亮っ!」

『王様っ!』

 

 慌てて二人に駆け寄る面々。アビドス3世の意思で弱めてあるとはいえこれは闇のデュエル。それがこんな極大の効果ダメージを受けたとあってはどんな影響があるか分からない。……だが、

 

「……くっ!?」

「むぅ」

 

 二人共ふらついてはいるものの、しっかりと両足で立っていた。カイザーは駆け寄る仲間達に、少し苦し気ながらも笑顔を見せてみせる。

 

「凄いぞカイザー! 神様相手に引き分けるなんてよ!」

「流石シニョール亮なノ~ネ!」

「ありがとう。……だが、俺では引き分けで精いっぱいだったよ。まだまだ精進が足りぬようだ」

 

 カイザーはそんなことを言っているが、実際ギリギリの戦いだったと思うぞ。

 

『王様。ご無事ですか?』

「当然だ! ……正直な所、少々足にきてはいるが」

 

 アビドス3世も元気そうだ。威力を弱めていなかったらどうなる事かと思ったぞ。

 

「しかしバランサーよ。この場合勝敗はどうなるのだ?」

「そうそれっ! 俺も気になるぜそれは」

 

 ひょっこり話に紛れてくるんじゃないよ十代。まあ勝負に関わる事なので鍵の守り手達全員が耳をそばだてているのは仕方がないが。しかし……この場合は、

 

『ルール上引き分けの場合、両者とも失格となり以降のデュエルへの参加は認められない。ただ失格扱いなので敗者への罰の魂の封印等も行われない。例外は互いの陣営に他の選手が居ない場合のみ再試合となる。……カイザーの思惑通りになってしまったようですな。王様』

「ふむ。残念だ。余としてはもう少しデュエルを楽しみたかったのだがな」

 

 本当に残念そうに言うアビドス3世。純粋にデュエルを楽しむのが目的の王様にとって、勝敗はそこまで重要ではない。強いて言うなら失格になったことで次が出来なくなったという点への残念さだ。

 

 ひとしきり残念がると、アビドス3世は今まで戦っていたカイザーの所へ歩みを進める。ほんの僅かに警戒の色を滲ませる十代以外の鍵の守り手達だが、他ならぬカイザー自身もまた一歩前に進み出た。

 

「良きデュエルであった。褒めて遣わす」

「こちらこそ、貴方と手合わせできて光栄でした。偉大なる王アビドス3世。願わくばこの度のような闇のデュエルではなく、純粋に互いの力を出し合うリスペクトデュエルをしたかったのですが」

「ほう? ならば余と共に冥界に来るか? こんな楽しいデュエルが一度だけではつまらぬ。向こうでじっくりと次の勝負と行くのも一興だぞ? 無論そなただけではなく強者なら誰でも歓迎だ。お前もどうだ十代?」

「俺? いやぁお誘いは嬉しいんだけど、俺まだ生きてるしなぁ。……もう百年くらい待ってくれない?」

 

 流石のデュエル馬鹿もここでは即答は避けるか。まあ保留にするだけとんでもないのだが。カイザーや他の鍵の守り手達は拒否。しかし当の王様は一人でも付き合ってくれそうな奴が居たことに大喜び。

 

 三千年の眠りに比べれば百年など短いもの。百年経ったら魂を迎えに行くぞとすっかり乗り気である。良かったな十代。死んだ後もデュエル出来るぞ。デュエル馬鹿冥利に尽きるだろ?

 

 

 

 

 戦いは終わり、あとはこの船に来た時のように鍵の守り手達を送り返すだけとなったのだが、

 

「……なあ王様。アンタアビドスだろ? なんで正体を隠してんだ?」

「そうだよ。少し前まで一緒に勉強してたアビドス君でしょ?」

 

 いや今頃そこ突っ込むか十代に翔!? これでもデュエルが終わるまで待つだけマシというべきか? 実際プレイスタイルなどから分かる人には分かるしな。

 

 アビドス3世は一瞬その声に動きを止め、

 

「無礼者共め。畏れ多くも王の名を呼び捨てにするとは」

「良い。槍を収めよ。……確かに余はアビドス3世であるが、そなたらの言うアビドスなる者は知らぬな。大方余の遠い血筋の誰かであろうよ」

 

 気やすく話しかける十代達にいきり立つ兵士達だが、アビドス3世はスッとその者達を制止して十代にそう返す。

 

 この場合、完全にアビドス3世がアビドスだとバレると、どうやって編入したのかとか色々と突っ込まれる恐れがある。なのでバレバレかもしれないが一応しらを切るようにと事前に話し合っていたのだ。

 

「……だが、仮に余がそのアビドスなる者でこの学園に一時期通っていたとするのなら、さぞ毎日が楽しく新鮮だったことだろうな」

 

 王様っ!? それ以上はボロが出るからストップな!

 

「……まあ良いや。じゃあ王様! 最後に俺とデュエルしようぜ! 百年後の予約前にさ」

「それも悪くない。だが、そう上手くは行かぬらしい」

 

 そんな中、アビドス3世の身体から光の粒子が放たれ始める。タニヤやザルーグ達と同じく、敗北ではないとは言え失格の為契約不履行の扱いがされたのだろう。

 

 こんな状態ではデュエルは出来ないと、十代も仕方なく断念する。心なしか翔も残念そうだ。

 

 

 

 

 こうして、来た時と同じように鍵の守り手達は一人、また一人と元の場所へと転送されていった。全て降ろしたのを確認し、黄金の飛行船は空へと舞い上がっていく。さぞ地面の人達からすれば幻想的な消え方をしただろう。だが、

 

『…………何で俺はまだ残っているのだろうか?』

「それはもちろん、()()()()()()()はそなただからだバランサー。いや、指南役よ」

 

 他のミイラ達からも光の粒子が放たれる中、何故かずっと残されている俺に向かってアビドス3世はそんなことを言い出した。

 

『俺が? いやいや王様! さっき十代がやろうとした時に無理だって』

「無理だとは言っていない。そう上手くは行かぬと言っただけだ。それに……はあっ!」

 

 アビドス3世が気合を入れて一声吠えると、自分の身体からの粒子の放出が僅かに収まる。

 

「この通り。いかに余が王としてこのアイテムに干渉できるとは言っても、あくまで一時的なもの。()()()()()()()が限界よ」

 

 自身の仮面を取り、額に嵌めていたサークレット型の闇のアイテムをコツコツと指で叩きながら、アビドス3世は静かに笑う。

 

 自分である程度制御できたんかいっ!? 流石古代エジプトの王。

 

「十代とは百年後にたっぷりデュエル出来るのでこの場だけは遠慮してもらった。他にもカイザーとの再戦や、あの場に居た誰と戦っても心躍る一戦になっただろう。だが、やはり現世での最後の一戦はそなたとが良いのだ。指南役よ」

 

 十代でもなく、カイザーでもなく、万丈目でも明日香でも三沢でもなく、俺を選ぶかよ。まったくこの王様ときたら。

 

 この場には鍵の守り手達も居ないので、俺も仮面を外して念のため準備していたデュエルディスクを装着する。

 

「デュエルするのは構わない。だが……その前にさっきの戦いの最後の盤面、その時に伏せていたカードを見せてくれ。まだタブレットに記録が残っている筈だ」

「構わぬよ」

 

 そう言ってアビドス3世はさっきの戦いで()()()()()()()()()()カードを開示する。それは、

 

「『マジック・ジャマー』か。おそらく伏せられたタイミングは砂塵の悪霊を出したターン。……何故これでサイバー・エンドの融合を止めなかったんだ? 未来融合の時はまだ手札が他にもあったから警戒するのは分かるが、最後の融合の時手札の砂塵の悪霊を捨てて発動しておけば、決戦融合まで持ち込まれることなく押し切れただろうに」

 

 そう。使うタイミングにもよるが、アビドス3世の勝ち筋は既に出来ていたのだ。勿論デュエルにおいてたらればは通用しないし、選択は常に自身で行うものだから責める気は毛頭ないが。

 

 最強の帝王を降す一歩手前まで来ていた無敗の王の答えは、酷く単純なものだった。

 

「いや何。何故あそこまでサイバー・エンドの召喚に拘るのか興味が出てしまってな。最初は単に強力なモンスターを置いて自分のターンに攻め込む腹積もりかと思ったのだが、まさか余のモンスターがそれを超えてくるのを見越しての決戦融合とは恐れ入った」

 

 油断……という訳でもないのだろうな。今の王様は相手の強さによって油断するような類ではない。まだ他にも理由があるだろうと目で問いただすと、アビドス3世は気まずそうに頬を掻きながら白状した。

 

「それに……なんだ。互いに全力を出した上でそれを更に超える為の戦い。それがリスペクトデュエルという奴なのだろう? ならばまずは、相手の全力を受け止めるのが礼儀であろうと思ってな」

 

 この王様、相手がリスペクトデュエルをかなぐり捨ててまで勝負に拘ったというのに、敢えて相手の土俵で勝負してたってのか?

 

「……まったく。疑問は晴れたけど、ここまできたらもう呆れるほかないよ王様」

「まあそう言うな。これもそなたの影響だぞ指南役よ! ……さあ。そろそろ本当に時間がない。早速始めるとしようではないか! 指南役のデッキを使った神楽坂には一度勝ったが、まだ指南役には一度も勝っていないからな。最後に勝たせてもらうぞ」

「そうだな。じゃあ始めるとするか!」

 

 消えつつある黄金の船の上、互いに戦いの舞台に足を運ぶ。

 

「最後に一つだけ聞かせてくれ。……現世でのこの数日間。存分に楽しめたか?」

「ああ! 実に良い一時だった!」

「ならば良し。……これが最後の指南デュエル。最後まで俺が勝たせてもらうぜっ!」

 

 その言葉に互いに不敵な笑みを浮かべる。もうこれ以上はカードで語るのみ。

 

 

 

「「デュエルっ!!」」

 

 

 

 さて、デュエルの結末を語るのは野暮というものだろう。

 

 何せ勝つにせよ負けるにせよ、これで別れるのに変わりはなく、

 

 

 

 互いに満足した結末だったことには間違いないのだから。

 




 デュエル決着!

 結末については賛否両論あるかと思いますが、敢えて遊児との戦いはぼやかさせていただきました。

 最後の闇のアイテムに対するアビドス3世の行為は、強化された古代エジプトの王ならこれくらいできると思っていただければ。
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