マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
注意! 今回独自設定タグがかなり仕事します。
罰鳥は幾らなんでもここまでやらないだろと思われる方は、ここの罰鳥はこうなのだと温かい目で見てもらえれば幸いです。
「ぐっ!? ぐぬぬ~っ」
クロノス先生は苦悶の表情を浮かべる。それも当然か。傷つきながらも発動させたダメージ・コンデンサーで呼び出した機械兵士が、身体に纏わりついた闇と共にそのまま奪われてしまったのだから。
『堕落』は装備した相手モンスターのコントロールを得るカード。ただしデーモンと名のついたカードが場になければ自壊してしまい、相手のスタンバイフェイズごとに自身は800ダメージを受けるデメリットが有る。
本来なら奪ってすぐ生け贄にするなり墓地に送るなりするのが常道だが、
「フハハ。どうだねクロノス教諭? 自身のモンスターが闇に堕ちるのを見る気分は? これでお前の場はがら空き。もう打つ手もあるまいよ。私はこれでタァーンエンドだ」
今回は純粋にクロノス先生の場を削る事が目的だったらしい。カードを奪っただけでそのまま巻き舌気味に終了を宣言する。
「わ、私のターン」
クロノス先生がカードをドロー……しようとして手が止まり、そのまま膝を突いてしまう。見ればその手も微かに震えていた。
「……怖いだろう? 負けるのが。恐ろしいのだろう? 傷つくのが。……お前はそういう男だものなぁ。クロノス教諭?」
「な、何を言って」
「分かるとも。この闇を通じて、お前の心は手に取るように分かる」
動揺するクロノス先生に対し、タイタンは闇に姿を隠しながらゆっくりと語りかける。
「お前の本質は自己保身と傲慢の塊だ。己の意に沿わぬ者を排除し、教育という名の自身の思想を生徒に押し付ける。……まったく。実に良い教師様だ」
「わ、ワタ~シは、そんな事」
「そんな事しないと? なら何故私のような者と繋がりがあるっ!? この闇のデュエリストタイタンとっ!」
そこにタイタンの一喝が響き渡る。……確かにそうだ。さっき金のやり取りをしていたという事は、少なくとも以前クロノス先生はタイタンに依頼をした事があるという事だ。
それとタイタンのこれまでの言動を照らし合わせれば大体の察しはついてくる。おそらく以前タイタンが十代を襲撃した事件の依頼人は……。
「だが、それは決して責められるものではない。人なら大なり小なり自身が可愛いのは当然の事だ」
そこでタイタンの口調がやや変わる。どこか優しく、それでいて妖しく響く低音の声。
「
タイタンは闇を纏って自身の場に移動した機械兵士を顎でしゃくりながら誘惑する。
実際今の盤面はかなり厳しい。クロノス先生の場にモンスターは無く、おまけにこのターンで何とかしなければ次のターンピカドールの一撃で敗北必至。
かと言ってこちらからの攻撃は、全てマタドールとダーク・アリーナのコンボで迎撃される。この厄介な鉾と盾を切り崩さない限り勝機は無い。だが、
「……そうかもしれないノ~ネ」
今のクロノス先生はもう心身共に傷ついていた。タイタンの誘惑に負けそうになる程に。クロノス先生はその手をデッキトップに伸ばし、
『……では何故ここに立ったのですか? クロノス先生』
「バランサーっ!?」
つい口が出てしまった。中立の審判役としては明らかに越権行為。タイタンが咎めるように言うが、これだけは言わせてほしい。この言葉にクロノス先生の手が止まる。
『戦いが苛烈なのは知っていた筈。だけど貴方は自身が傷つくのを覚悟の上でここに立った。それは生徒の身に危険が及ぶのを防ぐ為。そして……貴方が
クロノス先生は確かに自己保身と傲慢の塊だ。自分の嫌いな十代を排除するため、タイタンや茂木をけしかけるなんて事もした。ランク差別主義者で低ランクには明らかに冷たいしな。
だけど本当に自己保身だけなら、そもそもこんな危険な戦いに自ら身を投じたりはしない。
クロノス先生は黙って手を止めたまま動かない。全身を蝕んでいるであろう闇のデュエルのダメージ。圧倒的不利な盤面。ここで降参しても良いと思える条件が揃う中、ここに立ったという責任や倫理観の狭間で揺れている。
そこへ、
パタパタ!
そしてそのまま周囲を覆う闇の外へ出ようとし、バチっと闇から放出された黒雷に阻まれる。だが、それは罰鳥の効果を誘発した。黒雷を攻撃と見なした罰鳥は真っ赤に染まり、
ガブッっ!
え~っ!? アイツあんな事まで出来んのっ!? 物理的ではなく概念的な結界を食い破るとかそんなのアリかっ!? 悠然とポッカリ空いた闇の穴から外へ飛んでいく罰鳥を見ながら、俺は内心冷や汗を流す。
幸いクロノス先生からは見えていなかったようだが、対峙するタイタンからはバッチリ見えていたようで驚愕している。
しかし穴が空いたとはいえそれは人が通るにはやや狭い。出来る事と言ったら……そう。
「立ってくれよクロノス先生っ!」
その声にクロノス先生が振り向くと、穴からは十代の顔が覗いていた。
「ド、ドロップアウトボーイ!?」
「急に穴が空いたと思ったら中から罰鳥が飛び出してきてよ。何かと思って覗いてみたら……何か大ピンチみたいじゃねえか」
「……情けない姿を見せてしまったノ~ネ。これは悪い見本として覚えておくように」
クロノス先生は力なく笑う。そこへ、
「遊城十代か。久しぶりだな」
「タイタンか」
タイタンが闇の中から薄らと姿を見せて声をかけ、十代は僅かに警戒しながら構える。
「まあそう警戒するな。お前は後だ。ここで惨めったらしく降参したクロノスを闇の世界に叩き落としてからじっくり料理してやろう」
「取り消せよ。今の言葉」
タイタンの煽るような言葉に十代は鋭く言い放つ。
「惨めったらしく降参なんかしない。クロノス先生は強いぜ。戦った俺が言うんだから間違いない! ……クロノス先生。見せてくれよ。アンタのターンをっ!」
「……ぐっ! グヌアァっ!」
ダンっと闇の中に音が響き渡る。それは膝を突いていたクロノス先生が強く地を踏みしめる音。身体を襲っているだろう激痛に耐え、クロノス先生は再び立ち上がる。
「生徒に言われて気づかされるなン~テ、私もまだまだなノ~ネ! ……ワタ~シはクロノス・デ・メディチっ! 誇り高きメディチ家の一員にして、デュエルアカデミア実技担当最高責任者っ! 生徒の前で、無様な格好は見せられないノ~ネっ!」
「ほぉ! あの状態から起き上がるとはな。そこは素直に認めようクロノス教諭。だが、起き上がった所で何が出来る? お前はどのみちこの闇のデュエルで敗北するのだ。そのまま素直に負けを認めれば良かったものを」
少し驚いた様子のタイタンだったが、すぐに気を取り直してそう問いかける。心を折ろうとする一言一言を、クロノス先生は必死に振り払う。
「このクロノス・デ・メディチ。断じて闇のデュエルなどに負ける訳にはいきませン~ノ。何故ならっ! デュエルとは本来青少年に希望の光を与えるものであり、恐怖と闇をもたらすものではないノ~ネっ!」
……そうか。だからクロノス先生は頑なに闇のデュエルを認めようとしなかったのか。デュエルとは光であると、誰かの光であってほしいと願って。
「ならば証明してみるが良い! このデュエルでっ!」
「証明してやるノ~ネっ! 私のターン。……ドローっ!」
クロノス LP800 手札3 モンスター0 魔法・罠 古代の機械城 伏せ1
タイタン LP3200 手札0 モンスター デーモンズ・マタドール デーモン・ピカドール 古代の機械兵士 魔法・罠 ダーク・アリーナ 堕落 伏せ1
タイタン LP3200→2400
堕落の効果でタイタンにダメージが入る。そしてそれが反撃の合図となった。
「私は『
古代の機械巨人 星8 ATK3000
クロノス先生の場に、ゴゴゴと轟音を立てながら鋼鉄の巨人が出現する。クロノス先生の代名詞。攻撃力3000に貫通能力を持つエースモンスターだ。
「ナニィ!? バカな!? 機械巨人は星8。生け贄が無いと召喚出来ない筈っ!?」
「機械城の効果。古代の機械を生け贄召喚する場合、必要な生け贄分のカウンターが乗った機械城を代わりに出来るノ~ネ。そしてさらにリバースカードオープン! 『リミッター解除』!」
古代の機械巨人 ATK3000→6000
そう。機械城にはカウンターが2つ乗っていた。つまり二体分の生け贄の代わりに出来た訳だ。さらにダメ押しとばかりにずっと伏せられていたカードが発動され、ターンの終わりに破壊される代わりに巨人は絶大な力を得る。だが、
「フハハ! それがどうした? 攻撃力3000だろうが6000だろうが、このダーク・アリーナとデーモンズ・マタドールが居る限り私には届かない!」
「その通り。確かにこの闇の中で無策に闘牛士に挑んでも返り討ちに遭うだけ。ならば……この闇を取っ払ってしまえば良いノ~ネ! ワタ~シは魔法カード『大嵐』を発動するノ~ネ!」
「しまっ」
どうやらタイミング的に今のドローで引いたらしいな。タイタンもマズいと気づいた時にはもう遅い。場の全ての魔法・罠を破壊する大嵐が、タイタンの場のダーク・アリーナと堕落、そして伏せてあったカードを吹き飛ばす。……結局使われないまま破壊されたな。
「バカなっ! ダーク・アリーナが!? 闇が消えていくっ!?」
ダーク・アリーナが破壊された事で、現実に周囲を覆っていた闇も晴れていく。おっ!? 十代達も普通に見えるようになってきたな。罰鳥は……あっ!? 居た! 部屋の上の方をパタパタ飛んでいる。
「闇さえなくなればこっちのもの。そして堕落が破壊され、古代の機械兵士も戻ってくるノ~ネ」
その言葉通り、纏わりついていた闇が取り払われ、闇に堕ちた機械兵士はクロノス先生の場に帰還する。
「人間生きていれば闇に堕ちる事だって、悪の道に進む事だってあるノ~ネ。だけど、それでも切っ掛けさえあれば、また光の道に戻れると私は信じるノ~ネ!」
「戯言を抜かすなっ! そんな都合の良い事が」
「ならその切っ掛けを作ってやるノ~ネ! 私は魔法カード『
ダーク・アリーナが無くなった事で攻撃対象は自分で選べるようになった。なのにわざわざクロノス先生はマタドールを攻撃する。
「何を考えているか知らんが、マタドールは戦闘で破壊されずダメージも受けない。そして戦闘を行ったモンスターをダメージステップ終了時に破壊するのだぞ!」
「古代の機械掌の効果。装備モンスターと戦闘を行ったモンスターをダメージステップ終了時に破壊するノ~ネ! 同じ効果を同じタイミングで発動する場合、先に発動するのはターンプレイヤーの効果。つまり私なノ~ネ!」
巨大な拳のアタッチメントを着けた機械兵士の鉄拳。マタドールはひらりと皮膜を使って拳を受け流そうとするが、その瞬間拳が開いて皮膜ごとマタドールを捉える。こうなっては如何にマタドールと言えどどうしようもなく、そのまま巨大な手に握り潰された。
これがクロノス先生なりの禊ぎ。マタドールは勝つ為に必ず倒す必要はないカードだが、それを闇から帰還した機械兵士が倒す事に意味があると信じたのだろう。
「そして、これでトドメなノ~ネ! 古代の機械巨人でデーモン・ピカドールに攻撃! 『アルティメット・パウンド』っ!」
「ぐわあああっ!?」
タイタン LP2400→0
巨人の自壊をも辞さない豪拳が、もう一体の闘牛士ごとタイタンのLPを吹き飛ばした。
クロノスWIN!
クロノス対タイタン戦終了! 今回もまた難産でした。
そして本来古代の機械掌はアニメ版の効果で出すべきなのですが、どうしてもあの闘牛士に一泡吹かせたいノ~ネという変な電波を受信した結果、勝つ為に必須じゃないけどOCG版の効果にして無理やりぶっ壊すという形になりました。
……というかこれ合ってますよね? 自分でも深夜テンションで書いたからどっかに穴が無いか不安です。
次回でタイタン編は終了予定ですが、アンケートも次話までで一区切りとなります。まだの方はお早めに。
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