マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
さて、タイタンが消えてからの事を少し語ろうか。
まずクロノス先生の事だが、あの後すぐ医務室に運ばれたものの数日は安静にするようにと診断が下った。タイタンとの戦いは思った以上にハードだったらしい。
まあそれは無理もない。あれは間違いなくガチの闇のデュエル。しかもタイタンは敢えて厳しめに向かって行ったからな。その分自分の受ける侵食の痛みも上がるってのに、それを戦いの中悟られなかったのだから大した役者だよ。
しかしその後予想だにしない事が起きた。なんとクロノス先生が、十代に自分が以前タイタンに依頼して襲撃させたと告白したのだ。
「ワタ~シは教師として、生徒に決してしてはいけない事をしてしまいましタ~ノ。謹んで謝罪するノ~ネ」
「クロノス先生……」
あのプライドの高いクロノス先生が、自身の非を認めて十代に頭を下げる。偶然本棟裏を通りがかってそんなシーンを見てしまった俺にどうしろと? まあ隠れて見てたけど。
クロノス先生はその後、処罰は覚悟の上だがもし許されるならセブンスターズとの戦いには引き続き参戦させてほしい。生徒だけに今回のような戦いをさせられない。まあ要約するとそう十代に語った。
なんともクロノス先生の株が上がるシーンだが、どうやらタイタンとの戦いでクロノス先生も思う所があったらしい。まさにタイタンの言った通り、クロノス先生も自身の行いを自身で見直した訳だ。
まあ結果だけ言うならあのお人好しの十代だ。笑ってクロノス先生を許したさ。
その後、二人で校長先生に事情を説明。クロノス先生のやらかした事は十分クビに値するレベルの悪行だったが、十代のとりなしとクロノス先生が自分から告白したという事から情状酌量の余地ありと判断。
なんとか給料カットとこれからも鍵の守り手として働くという事で解決となった。まあ戦力を削りたくないという校長の思惑もあったかもしれないが。
そうそう。タイタンがやられた事で、いよいよこれまで動かなかった奴が遂に重い腰を上げた。カミューラだ。
早速理事長を通して大徳寺先生から辞令が下り、いつもの洞窟にて待ち合わせをしたわけだが、
「短い間だけど、これからどうぞよろしくお願いするわバランサー」
これまで俺に対して敵意をむき出しにしていたカミューラが、着くなり俺にそんな事を言って笑いかけてきたのだ。どう考えてもおかしい。
『……何だよ。やけに機嫌が良いじゃないか』
「あらあら。私はいつもこんな感じよ。まあやっと準備がおおよそ整ったから機嫌が良いというのは間違いないのだけど』
『準備? ……ああ!』
カミューラはこれまでずっとなんだかんだ理由をつけて参戦を先延ばしにしていた。多分コウモリを通して鍵の守り手達の手の内を探ったり、何かしら策を練っているのだろうと踏んでいたがいよいよか。
『何が用意できたのかは知らないが、一応調整役として教えてもらっても構わないか?』
「良いわよ! 着いていらして」
そうしてカミューラに連れられたのは、この島にある大きな湖。独自の生態系が出来上がりつつあり釣りにも水遊びにも使えるというスポットだ。
しかしここ数日霧が酷くてあまり立ち寄る者が居ないという話だったが、
『……こういう事か』
いやバカなのっ!? タニヤも闘技場を造ったけどこれは流石にないだろうっ!?
見た目は明らかに中世のそれ。時間が丁度夜だったことから、霧の中の城を月が照らすというなんとも幻想的な風景になっている。
といっても城の周りに無数のコウモリが飛び交い不気味な雰囲気ではあるが。
「どう? これはなかなかの自信作なのよ」
『いやまあ……うん。凄いと言えば凄いな』
「そうでしょう! あの筋肉女の闘技場なんか目じゃないわ。この誇りある吸血鬼一族の末裔である私が、そこらのみすぼらしい舞台で戦う等許されないもの」
意外にカミューラはタニヤに対抗意識を燃やしていたらしい。なんだかんだセブンスターズ二人だけの(黒蠍盗掘団のミーネも加えれば三人だが)女性メンバーだったからな。タニヤの消滅にも立ち会っていたし。
深く聞いてみると、当初は吸血鬼の権能を用いた幻覚を使い、見かけだけそれっぽいものにするつもりだったという。自分の意思一つで瞬く間に消え去る程度の物に。
しかし順番を後回しにし、タニヤの闘技場を見て少し気が変わる。理事長の権力と財力も使い、情報収集しながら本当に城を建てたのだ。
勿論城なんてものが建っていたら目立ってしょうがない。なのでこれまた吸血鬼の権能である霧を操る力で城を覆い隠した。
『……はぁ。タニヤの時もそうだったが、こういうのは事前に言っといてくれないか?』
「あら。私が人間風情の顔色を窺うと思って?」
さりげなく手の甲で口元を隠しながら、カミューラはそうクスクスと笑う。
その後は相変わらず上機嫌のカミューラに城主として城を案内してもらった。見れば見る程あちこち金をかけていて貴族趣味全開。風呂なんかバラが浮いてたもんな。理事長もよく許可したなと少し不安になる。ただ、
『戦いの舞台だけにしては部屋が多いな。客間って訳でもなさそうだが』
「……ねぇ。城主の最大の贅沢を知ってる? それは
途中がらんとして何もない部屋が幾つもあるのが少し気になった。調度品すらないから客間でもないし……まあすぐにカミューラに急かされて次の部屋に行ったが。
そうして散々城を見て回り、
「如何だったかしら? 我が城は?」
『いやあ見事としか言えないな。他の城を直接見た事が無いから比較しづらいけど』
「そうでしょうとも。下等な人間でもその程度は分かるようね」
言い方はあれだが、カミューラも城を自慢できてご満悦のようだった。
もう良い頃合いだしそろそろセブンスターズとしての動き方を尋ねようと思ったのだが、
「……今日はここまでにするとしましょう。私もまだ最後の詰めが残っているし、アナタももうすぐ学園祭という物があるのでしょう? 精々楽しんでくると良いわ」
肝心のカミューラ自身にそう言われては仕方ない。俺はそのまま部屋に戻る事にした。
そして、
『いやぁ。君を見てると退屈しないね久城君。まあ退屈しなさそうな人を選んでいるのは僕なんだけどね』
「上機嫌のとこ悪いんだけどな。……どうだい? 背中もほつれとかないか?」
『上々! 我ながら良い仕上がりだ。これなら明日もバッチリだね』
『良く似合っているぞ。管理人』
俺が衣装の具合を確認すると、機嫌よくふわふわ浮いていたディーと葬儀さんが太鼓判を押す。
そう。
俺は身に纏った葬儀さんを模した衣装を明日に備えて試着していた。どこか喪服を思わせる、白い蝶の翅をあしらった黒のロングコートとズボン。小道具の二丁拳銃もバッチリだ。
ちなみに当然だが弾は出ない。白と黒のカッコいい見た目だがあくまでファッションだ。ただディーが『そりゃあセーフティーはバッチリかけてあるからね。
「……そう言えば、レティシアやネクはもう寝たのか?」
『うん。明日早いからもう寝るって』
いつもならこの辺りで幻想体の誰かが精霊化なり実体化なりしてくるのだが、今出ているのは衣装のチェックを頼んだ葬儀さんだけ。今日は静かなものだ。
しかし明日か。確かにレティシアからすれば祭りは楽しみだろう。他の幻想体達も、内心楽しみにしている者も居るかもしれない。
「なあ葬儀さん。明日なんだけど……」
俺はふと思いついた事を、葬儀さんに話してみる事にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆
そうして夜が更けていく。明日の楽しい学園祭に向かって。
「……それで? 俺に会わせたいその子……十代だったか? どんな奴なんだ?」
「ああ。俺やお前と同じHERO使いでな。これまたお前みたいに心底からデュエルを楽しむ奴だ。お前もきっと気に入るぜ! 紅葉!」
「そりゃあ楽しみだ!」
「はいはい。そこの二人。学園祭が楽しみなのは分かるけど、飛行機の中であまり騒がない。……特に紅葉。アナタもプロなんだからその辺りはもっと自覚をもって」
「分かってるって姉さん。だけど……やっぱり楽しみじゃないか!」
ある飛行機の中ではジャーナリストとプロデュエリスト。そして長期休暇中の学園教師が行先に想いを馳せ、
『楽しみだなぁ。……楽しみで眠れなくて困っちゃう』
ポンポン。
『幼子よ。明日を楽しみにするのは構わぬが、このまま起きていて祭りの最中に眠くなっても知らぬぞ』
『うん! そうだねテディ。女王様! ちゃんと眠っておかないと。……でも、明日は遊児お兄ちゃんや皆と一緒に……ふふっ!』
ある主人が先に眠った部屋の片隅で、より良い明日を夢見る少女をぬいぐるみと雪の女王が宥めすかし、
『…………ふっ。ふっふっふ。ふ~はっはっは! おっといかん。つい明日の事を考えて高笑いが』
〈ピピっ! 目的地に到着しました。ムービングプロセスを終了します〉
『ああ。ご苦労ヘルパー。……さて。仕掛けは万全。あとは我が策が上手くいくのを待つのみよ。見ているが良い
ある何もない場所。……いや、
『ああ。もうすぐ。もうすぐよ。……これで我が一族は復活する。この
湖にそびえる城。その中の何もない部屋の一つで、城主の女吸血鬼は静かにほくそ笑む。
勿論拠点としても使えるが、本当に肝心なのはこの何もない部屋
『明日は精々楽しむと良いわバランサー。その間に、私は三幻魔の力を手に入れる』
策の成就を胸に、女吸血鬼は思考を巡らす。
そして、時はきっかり真夜中。
空には丁度雲もなく、月がそっと世界を照らす中、
『……やあ。君か』
起きているのはただ二人。そう。話の傍観者たる光球のディーと、
『こんばんわ! お月見には良い夜ね!』
腰まで伸ばした水色の髪。クリっとした黄色の瞳に、ピンクを基調として可愛らしくフリフリの付いたスカートとジャケット。
胸元にあるリボンとハート形の髪飾りをアクセサリーに、極めつけに星とハートを両端にあしらった独特の形の羽の生えたステッキを携える。
そう。
集うはどれもくせ者ぞろい。思惑乱れる学園祭が、いよいよ始まる。
遂にタイタン編も終わり、いよいよ学園祭編です。
編と書いた通り、原作では一話で終わりましたが割と長い話を予定しています。こんな広げやすいネタを一話で終わらせるなんてもったいない!
祭りという事で、ちょっとはっちゃけていこうかと思いますので次回乞うご期待! なのですが、流石に話が複雑になるので少し次話の更新が遅れます。読者の方々には少々お待ちいただければと。
この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。最後じゃないからと評価を保留されている読者様。
お気に入りや評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!
行き詰った時には皆様の温かいお言葉が一番の薬なのです!