マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
それと既に少し登場しましたが、アンケートの結果遊児の着るコスプレは葬儀さんモデルの物に決定いたしました。
皆様からの多くの投票感謝です!
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学園祭当日。
空は生憎晴天とまではいかず、むしろやや曇りの度合いの方が多いといった具合。予報では今日は一日中曇り空だとか。
しかし、その程度では学園祭の活気になんら影響はしない。
「らっしゃいらっしゃいっ! ラーイエロー特製たこ焼きだよっ!」
「なんのっ! こっちはお好み焼きだよっ!」
「焼きそばはいかがっ!?」
ここはイエロー寮前の広場。学園祭の為に準備された屋台が列を成し、それぞれ食べ物屋や射的、ヨーヨー釣りなど様々な出し物をしている。
カフェで優雅さや落ち着きを重視したブルー寮。コスプレデュエル大会でデュエリストとしての楽しさを追求したレッド寮。イエロー寮はそのどちらでもなく、純粋に良くイメージされる祭りを楽しんでいた。そして、
『遊児お兄ちゃんっ! こっちこっちっ! 早くっ!』
「はいはい。あんまりはしゃぎすぎて転ばないようになレティシア」
そこには普通に実体化したレティシアが、目をキラキラさせてお祭りを満喫していた。それを追うのはコスプレデュエル大会の立札を肩に掛け、これまた実体化したテディを背負う遊児。
そう。どうしてこうなったかは、少し前に遡る。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『へぇ~! コスプレデュエル大会か。面白そうだね! それでそんな格好を』
通信機越しに茂木が俺の服を見て驚きの声を上げる。
そう。今の俺は普段のオシリスレッド制服ではなく、昨日の内に準備しておいた葬儀さんコスを身に纏っている。腰に提げた二丁拳銃をくるくると回しながら、俺は全身像が良く見えるように少し画面から距離をとった。
残念ながら茂木の体質は未だ治っていない。これまでもちょくちょく俺や十代、万丈目で茂木の寮に行った結果、ほぼ俺達への悪影響が無い事は学園側にも伝わったようだが、それでも一般の生徒に対してはまだ危険だという事で学園祭にも不参加だ。
『まあ出れないのは残念だけど、今年は去年や一昨年よりは楽しいよ。だって……友達がたっぷりとお土産を持ち帰ってくれるって信じてるからね』
「茂木……分かってる。祭りが終わったら嫌って程土産を持ってきてやるよ。じゃあまたな」
友達という言葉を出されてはそれに応えない訳にはいかない。俺はしっかり約束をして通信を切る。
さて、いよいよ学園祭の始まりだ。衣装もバッチリ整い、あとは各寮の最終調整を残すのみなのだが。
「……おかしい。
いつもなら絶対『さあさあやってきました学園祭! これは面白そうで実に見逃せないねぇ。あっ!? 久城君も飲むかい? 気持ちよ~く眠気がやってくるけど』とかなんとか囃し立てそうなものを、朝から一度も姿を見せない。
さらに言えば幻想体達も今日はやけに静かだ。自分から呼び出すってのもなんか変だしそのままにしているが、部屋で久しぶりに一人になった気がする。
カタカタ!
「おっと。忘れてないよ罪善さん。なんか最初の頃に戻ったみたいだなって思ってさ。……さて、行くか」
一人俺の横に浮かぶ、最初の頃から変わらず付き添ってくれている優しき頭蓋骨。罪善さんに一声かけて自室の扉を開ける。そして、
『ばあっ!』
「うわっ!?」
『ふっ! ざまあないな我が生け贄よ』
『あっ!? 大丈夫!? ごめんなさい。ちょっと脅かしすぎちゃって』
「あいてて……大丈夫大丈夫。少し驚いただけ……ってちょっと待った。よく見たら皆して実体化してるじゃんっ!? それと……貴女どちら様?」
レティシアの手を借りて立ち上がるが、よく見てみれば各自普通に実体化して地に足が着いている。そして一人見知らぬミント色の長髪の女性が。
『見て分からぬのか? 妾だ』
「妾って……まさか雪の女王っ!? いつもの格好と違うじゃないか!? 仮面も着けてないし」
『お忍び用である。聞けば此度の祭りは学生の出し物だとか。普段の装いでは気後れする者も出よう』
確かにこれならまだちょっと派手などっかのご婦人で押し通せない事も……じゃなくてっ!?
「こんな所で精霊の実体化はマズいって。ひとまず部屋に戻って」
『案ずるな。アレを見よ』
「アレ? ……げっ!?」
雪の女王の指差す先、そこには、
〈ピピっ! 木材加工完了。クラフトプロセスを終了します〉
「うおおっ! すっげ~! あっという間に板が均一にっ! 流石万丈目グループの新型家電ロボ!」
刃物の付いた4本のアームを器用に操り、クラスメイトを手伝って瞬く間にステージに使うベニヤ板を線に沿って裁断していくヘルパー。その横では、
『ふむ。デス・コアラとデス・カンガルーか。中々のものだ』
「ありがとうなんだな!」
「もうコスプレだなんて気合入ってるっすね! ところで君誰?」
『ああ。『死んだ蝶の葬儀』だ。よろしく』
隼人の描いた宣伝用の看板を前に、普通に葬儀さんが翔達と談笑していた。
『あのように、精霊だろうがここではコスプレで通っている。ヘルパーに至ってはただの高性能な機械だ。誰も疑わぬ』
「う~む。確かに」
ヘルパーは掃除関係の事を言ったら暴走するからヤバいけど、まあ横に葬儀さんが付いているならギリギリ抑えられるか。しかし万丈目グループの新作って……。
いや予想はしてたんだけどね。学園祭なんていかにもなイベントで幻想体達が黙っている訳ないって。
実際俺も
しかし少しなら実体化して良いと俺から切り出す筈だったのに……これは誰かフライングしてなし崩し的にって奴か? まあ良いけど。
『さて。我が生け贄よ。些か安全面では心配事もあろうが、
そこへネクがレティシアの手から離れ、自身の足でしっかりと地を踏みしめながら言う。
『セブンスターズなどという輩にかまけ、自身に構ってもらえずに我が運び手がどれだけ我慢をしていたか知っているか? 無論テディもそうだ。今まさに堂々と外を出歩ける絶好の機会だというのに、わざわざ
『ネクちゃんっ!? ……だけど、私ももし許されるなら……今日ぐらい遊児お兄ちゃんと一緒にお出かけしたいの! お空は少し残念だけど、それでも一緒にお祭りを回れるならとっても良い日になると思うの! だから……』
ネクが悪い笑顔で俺に問いかける中、レティシアも少し顔を伏せながらおずおずとそう声を出す。
見ればテディも俺の服の裾を引き、見上げるようにこちらにボタンで出来た瞳を向ける。連れて行ってほしいと懇願するように。
まいった。これを断れるほど俺は合理的でもなんでもない。危険性なんかは今はいったん置いておこう。小さい子を泣かす方がよっぽどマズイよな。
「……分かった。だけど実体化している間はなるべく俺の目の届く所に居る事。それと俺が学園祭の仕事で抜ける時は、代わりに葬儀さんか……雪の女王と一緒に居る事。テディも約束できるかい?」
『……!? う、うん! 約束するの! やった~!』
レティシアは一瞬驚いた顔をした後、ぴょんぴょんと軽く飛び跳ねながら万歳する。テディもこくこくと頷き、そのまま俺の背中によじ登ってきた。あっ……そこなのね。あんまり力入れないでくれよ。
見た所葬儀さんは普通に馴染んでいるようだし、雪の女王もお忍び用の服に着替えるくらいには周りに気を遣ってくれるようだ。下手に機嫌さえ損ねなければ、保護者役としても頑張ってくれる……と思う。
「よ~し。こうなりゃ自棄だ! 今日は皆で目一杯楽しむぞっ!」
『『『お~っ!』』』
その時視線の端で、ネクが何やら計画通りって感じの笑みを浮かべてたが……うん。全力で見なかった事にしたい。いざとなったら罪善さんと葬儀さんに止めてもらおう。
ちなみにヘルパーの万丈目グループの新作云々は本人には事後承諾だった。万丈目がものすごく渋い顔をしていたのでしっかり謝っておいた。うちの幻想体達がゴメン。本当に。
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というのが今日の朝方の事。ステージなど諸々の準備も終わり、あとは観客を待つばかりとなったのが、ここで問題が一つ発生する。
ずばり
居るのはごく少数を除いて同じレッドの生徒ばかり。たまたま様子を見に来たカイザーや三沢に尋ねてみれば、
「えっ!? 知らなかった?」
「ああ。イエローの縁日には行った事があるが……これまで学園祭でここまで来た事は無かったな」
「俺は一年だし、レッド寮の出し物についても今日初めて聞いたぞ」
この通り。そもそもレッド寮の出し物について周囲に認知されていないレベルだった。これは酷い。
さらに言えばレッド寮は、他の二つに比べ本棟からやや離れている。用事でもなければわざわざ来る者は少ない。これじゃあ観客が増えないのも当然だ。
なので、
「宣伝?」
「ああ。とにもかくにも知ってもらわないと話にならない。だから手の空いている俺や幻想体達でそれぞれの寮にコスプレデュエルの事を伝えて回ってくる」
「……と言いながら久城。ただ単にお前が……というよりそこのカードの精霊共にハメを外させてやりたいからではないのか?」
「まあそれも否定できないな」
そんなような事を万丈目と話し合い、早速俺と罪善さん・レティシア・テディ・ネク・ヘルパーはイエロー寮へ、葬儀さんと雪の女王はブルー寮へ宣伝に向かう事になった。
どちらの寮に行っても良かったのだが、何故か雪の女王からやけにブルー寮に行きたい熱意みたいなものを感じたのは余談だな。
さて。イエロー寮の出し物は祭り風の出店だったか。一体どんな風になっているのか楽しみだ。
という訳で普通に一部の幻想体達も学園祭に参加します。某自販機やお婆ちゃんは自分から出歩く気があまりないのでお留守番です。
余談ですが新作短編を投稿いたしました。『悪の組織の雑用係 忙しくてクソガキを分からせている暇はねぇ』。ちょろっとでも興味を持たれたのであれば、ご一読頂ければ幸いです。