マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 今回から、しばらく十代視点となります。

 遊児が宣伝で居ない間に一体何が起こったのか?


閑話 魔法少女がやってきた

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「翔。そうしょげんなよ」

「う~。僕のブラマジガール。ブラマジガールが」

 

 遊児が幻想体達と一緒に宣伝に行ってしばらく。俺は階段に腰掛けてしょげかえる翔を慰めていた。

 

 きっかけはどうしたらレッド寮の出し物にもっと人が来るかって話から。遊児があまり知られていないからだって宣伝に行ったのに対し、翔はレッド寮の出し物には華が無いからって言いだした。

 

 それで吹雪さんと一緒に来ていた明日香に、ブラマジガールのコスプレをしてほしいと頭を下げたんだ。だけど、

 

『ギャ~っ!? どうして()()()()()ブラマジガールなんすか~っ!?』

『何よ失礼ね。ブラック・マジシャン・ガールは私の十八番だよ。ほらっ! こんなにピッタリ……あらっ!?』

 

 どうやら毎年ブラマジガールをやるのはトメさんに決まっているらしく、目の前でブラマジガールの格好で現れた時は翔が涙目になってた。あと、ポーズを決めたら衣装の一部がビリって破れたのは見なかった事にしたい。

 

 ってな事があって翔は絶賛落ち込み中だ。どうしたもんかな。

 

「うわぁ! 明日香さん。ハーピィレディなんだな!」

「ちょっと派手だったかな? 女性向けがあんまりなくて」

 

 その声に現在コスプレ用簡易支度部屋となっている寮の食堂を覗き込むと、そこにはハーピィレディのコスプレをした明日香とそれを褒める隼人の姿があった。

 

「あっ!? 十代」

「お~やるな。見ろよ翔。ブラマジガールじゃないけど明日香のコスプレ凄いぞ!」

「う、う~。心が洗われるようっす!」

 

 よし。翔も少しは立ち直ったみたいだな。それにしても、

 

「しかし明日香も良くOKしたな。こういうのやらないかと思ってたけど」

「私だってお祭りくらいはめを外すわ。それに……兄さんだったらこんな時「明日香のコスプレ姿だったら僕も見たいな」……とか、言いそうだと思って」

 

 明日香は笑いながら、それでいてどこか思いに耽るような顔をする。

 

 吹雪さんは今外でカイザーと一緒に居る。肉体的には治ってきたみたいだけど、相変わらずまだ精神的に不安定でいつもぼ~っとしている。

 

 こうやって外に連れ出す事で、少しは良い状態になるんじゃないかと明日香も考えているんだろうな。

 

「それで、十代は何のコスプレにするの?」

「俺か? 俺は……」

 

 そういや自分の仮装を考えていなかった。何かないかとまだ使われていない衣装を幾つか引っ張り出してみたんだが、

 

「アニキ。その格好は?」

「あれこれ扮してたら何に扮してるか分かんなくなっちまって」

 

 帽子は『闇・道化師のサギー』。肩パットは『エルフの剣士』。鎧は『魔導戦士ブレイカー』。盾は『鉄の騎士 ギア・フリード』……適当に着けていたらホントに訳が分かんねえ。

 

「それはコスプレって言わないわ」

 

 だよなぁ。まあ一応この格好で行ってみるか。本当にいざとなったら遊児がこの前言ってた()()()()()でも借りよう。そこに、

 

『よっ! 万丈目サンダー! 日本一!』

「世界一と言え」

「おぉ~! XYZドラゴン・キャノンかよっ!?」

 

 すっげ~っ! 万丈目がXYZの格好でガチャガチャ音を立てながらやってきた! 周りにはおジャマ達が褒め称えながら浮いている。

 

「それ素人の仕事じゃないんだな!」

「ふっ。俺はやる時はやる男だ」

「ふふっ! 似合ってるわよ」

 

 自慢げに言う万丈目。確かに質感といい動きといい本物みたいだ。明日香からも褒められて万丈目は顔を赤くしている。

 

 パシャ! パシャ!

 

「ちょっとっ!? 何撮ってるんですか大徳寺先生っ!?」

「にゃ~! 折角のお祭りだからにゃ! 記念ですにゃ記念!」

 

 今度は大徳寺先生か。両手でカメラを構え、明日香や万丈目の様子をパシャパシャと撮っている。

 

 大徳寺先生は今回撮影係を担当している。祭りのあちこちを撮影し、それを現像して後で希望者に売るらしい。

 

「ふっふっふ。明日香さんの写真。ファンクラブの子達によく売れそうにゃ!」

「大徳寺先生……天上院君の写真を予約したいんですが」

「ちょっと!? 大徳寺先生っ!? 万丈目君もっ!?」

「冗談ですのにゃ冗談!」

 

 怒る明日香に大徳寺先生も万丈目もタジタジだ。ただ、

 

「こうして撮る写真の一枚一枚が、これからの君達の良き思い出として残り支えになる。最後にそれが叶うのなら、()は本望なのだよ」

 

 一瞬だけ真剣な顔をした大徳寺先生が、そう優しくもどこか寂し気な声で語ったのが、何となく印象に残った。……まあすぐにいつもの調子に戻って他の所の撮影に戻っていったけどな。

 

 

 

 

『あの~? 大会の会場はここですか? アタシもデュエルしたいです!』

 

 ちょっとしんみりしていた俺だったけど、誰かの呼びかけでハッとする。その声の主は、

 

「ブラック・マジシャン・ガール!?」

「トメさんじゃない!」

 

 そこに居たのは本物と見間違うような完成度の高いコスプレのブラック・マジシャン・ガールだった。トメさんの物じゃないと翔は今度は嬉し泣き。ブラマジガール大好きだもんな翔。

 

『良いですか?』

「当たり前だ。コスプレデュエル実行委員長。この万丈目準が許可する。さあ諸君! 早速オシリスレッド怒涛のコスプレデュエルを始めようではないか」

 

 そろそろ時間か。気を取り直して自称実行委員長こと万丈目の号令の下、ぽつぽつ集まってきた観客達の前で野外デュエルステージに移動する。

 

「でも、一体誰っすかね? オシリスレッドに女子は居ないし」

「さあな? でも、盛り上がってきたから良いじゃん!」

 

 さあ。デュエルの時間だ!

 

 

 

 

「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」

『あ~。やっぱり負けちゃった。……でも最高に楽しかったよ! 皆もそうだよね!』

「「「お~! 楽しかったぞ~っ!」」」

 

 デュエルを終え、さっきからどんどん増えている観客達に軽く手を振る俺とブラマジガール。

 

 ちなみに今の衣装は普段のレッドの制服。さっきの格好で行ったらヤジを飛ばされまくったから脱いだんだ。デュエルもしにくかったしな。

 

 それにしても、今のデュエルはかなり盛り上がった。翔が実況、万丈目が解説、隼人が裏方にまわり、一番手に俺のデュエルから始まったけど、ブラマジガールのターンの度に観客から歓声が上がるんだもんな。俺のターンは攻撃する度にブーイングだったが。

 

 あとブラマジガールのカードって確かデュエルキング武藤遊戯さんのデッキにしか入っていなかった筈だけど、普通に『ファイヤーソーサラー』と『次元融合』のコンボで出てきた時は驚いたぜ。レプリカでも出回ったのか?

 

 そんな事を考えていると、

 

「「「アンコール! アンコール!」」」

 

 おう。観客も今のでより火が付いたみたいだ! 確かにブラマジガールのデュエルは翔曰く華のあるデュエルだったもんな。よっしゃ! もう一戦行くか! と思ったら、

 

「ブラマジガールちゃん! 俺とデュエルしてくれ!」

「いや、こんな奴よりも俺と」

「こら君達! お触りは厳禁だよ! ……あとで僕ともお願いします!」

 

 げっ!? ヒートアップした観客が線を越えてブラマジガールの方へ向かって走り出した!? あと止めようとしてる翔もちらりと本音が漏れている。

 

『あ、あの、デュエルは大歓迎だけど一人ずつ』

「俺が先だぁ~っ!」

「私だ~っ!」

 

 やべっ!? 盛り上がり過ぎて何人か取っ組み合いになりかけてる。このままじゃマズイ! 万丈目も止めに入ろうとしているけど、衣装が重くてすぐには動けない。俺も慌てて止めに入ろうとして、

 

 

『そこまでよっ! 悪党達!』

 

 

 突然そんな声が響き渡ったかと思うと、喧嘩になりかけていた奴らの間に小さな爆発が起きて砂埃が巻き上がった。それを見て慌てて離れる喧嘩してた奴ら。

 

 音と衝撃はあったが、幸い誰も怪我した奴は居ない。強いて言うなら驚いて転んで掌を擦った奴ぐらいだ。しかし今一体何が?

 

「見ろっ! 屋根の上だ!」

 

 観客の一人の声に、皆の視線が亮の屋根の上に集まる。そこには、

 

『寄って集って女の子を困らせるなんて、()()()()()としては見過ごせないわ! やあっ!』

 

 ()()()()が立っていた。魔法少女は掛け声と共に屋根からジャンプし、そのままブラマジガールの前にスタっと着地する。すげ~! あの高さから降りて平然としてやがる。

 

『愛と正義の名の下に、魔法少女ここに参上! さあ悪党達。ワタシがお仕置きしてあげるっ!』

 

 そう言ってステッキを構えながらピースサインを決める姿は、紛れもなく遊児の持っていた『幻想体 魔法少女 憎しみの女王』だった。

 

 クリクリっ!? クリクリ~!

 

「ああ。分かってるぜ。相棒」

 

 ハネクリボーが反応しているし、どうやら間違いない。……あれ()()じゃねぇか? 以前遊児の所であったみたいに、幻想体のカードが留守の間に実体化したらしい。

 

 確か憎しみの女王のレベルは7。前出てきた大鳥よりもレベルが上だ。だけど今ここに遊児は居ない。

 

『ま、万丈目のアニキ~』

「騒ぐな。……だが、いざとなったら動けるように準備しておけ」

 

 ボソッと聞こえてきたのは万丈目とおジャマ達の会話。万丈目達も目の前の奴が精霊だと勘づいているようで、さっきから目を離さない。

 

 一つ間違えば大変な事になるこの状況。周囲は突然の事にシンと静まり返り、

 

「「「うおおお~っ!」」」

 

 少しして一気に大歓声へと変わった。

 

「すげえ! なんて完成度の高いコスプレだ!」

「わざわざ軽く火薬まで使って演出してくるとは凝ってんな。ヒーローショーみたいだ!」

「コスプレだけじゃなく、あんな高い所から普通に降りてくるのは相当だぜ。どこの運動部だ?」

「美少女を背にして守るヒロイン……アリだな!」

 

 ……そうだった。精霊の事とか知らなきゃあくまでコスプレだと思うよな。歓声を上げる奴らを見て憎しみの女王も目をパチクリさせる。

 

「は~いちゅうも~く! 皆~! こんな可愛いブラマジガールや魔法少女さんを困らせちゃファン失格っすよ~! デュエルはルールを守って楽しく一人ずつっす~! さあ並んで並んで!」

「あっ……さっきはゴメンな。ちょっとやり過ぎたよ」

 

 そこへ実況の際のマイクを持ち出した翔が会場全体に呼び掛ける。喧嘩になりかけた観客達も流石に行き過ぎた行為だったと思い当たったのか、口々に憎しみの女王に詫びを入れる。

 

『うん。よく分からないけど、ワタシがお仕置きする前に改心したみたいね! 感心感心!』

 

 憎しみの女王もステッキを下ろして詫びを受け入れていた。ふぅ。何とかなったようでホッとしたぜ。万丈目もどこか緊張が解けたような顔をしている。これならひとまずは大丈夫だろ。

 

 

 

 

『それにしても、()()()()()()()()()()()()()。……まあ良いか』

 

 視界の端で、憎しみの女王はそんな事を言いながらにっこりと笑っていた。

 




 という訳で、本編主人公より先に原作主人公に接触する憎しみの女王でした。

 ちなみにロボトミ原作においても、一応収容される以前悪党を改心させたという一文があるので、憎しみの女王の悪への対応は軽度の物であれば注意だけで済む場合があると解釈しています。



 余談ですが、以前書いた短編『悪の組織の雑用係 忙しくてクソガキを分からせている暇はねぇ』を少し改題し、連載版を投稿開始いたしました。

 暇つぶしに読んで頂ければ幸いです。
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