マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
「E・HEROフレイム・ブラストで、フェザーマンに攻撃!」
「させるかよ! 罠発動! 攻撃の無力化」
炎のヒーローから放たれる火炎を、どうにか伏せていたカードで防ぐ。
「ふっ。やるな」
目の前で楽しそうに笑うのは、元世界チャンプだという俺と同じ
その表情には常に余裕が見え隠れして、こっちとはまるで違う。
相手の場には強力モンスター。LPもこっちの方が不利。だけど、何でだろうな?
「な~に。まだまだこれからだぜ!」
俺、今すっげ~ワクワクが止まらねえっ!
なんでこんな事になったかって言うと、話は憎しみの女王がやってきた時まで遡る。
◇◆◇◆◇◆◇◆
『皆~! いっくよ~!』
その言葉と共に、憎しみの女王がステージの上で投げキッスをする。すると、
ほわぁん。
そんな効果音でも聞こえてきそうなハートの波動が周囲に広がる。そして、
「ふおおおっ! 漲ってきたぁっ!」
「あ、あれ? さっき擦りむいた所が痛くない……治ったっ!」
「L・O・V・E コ・コ・ロっ! L・O・V・E コ・コ・ロっ!」
さっきから盛り上がっていた観客達が、より一層勢いを増してきやがった。あとドサクサで傷が治ったって喜んでいる奴が居るが、あれもココロこと憎しみの女王の力なんだろうか?
ちなみにココロというのは憎しみの女王の自称だ。本人曰く憎しみの女王なんて怖い名前よりもこっちの方が可愛いからだとか。
「ブラマジガールちゃ~ん! こっち向いて~!」
『は~い! 皆! デュエル楽しんでる~? 私はスッゴク楽しんでるよ~!』
「「「うおおおっ!」」」
このようにブラック・マジシャン・ガール(こっちも本当のカードの精霊っぽい)と一緒に、観客達から声援を受けたりデュエルしたりしている。コスプレデュエル大会というか、どっかのアイドルのコンサートみたいだ。
ちなみにカードは流石に自分の物以外は持っていなくて、デッキを観客の誰かから借りているようだ。是非自分の物を使ってくれと詰めかけてきた時は大変だったけどな。
しかし二人のあまりの人気でどんどん他の寮の奴らが集まってくる。万丈目も翔も隼人も司会やら何やらでてんてこまいだ。その様子を大徳寺先生は笑いながら写真に撮っている。
明日香は吹雪さんと一緒に人ごみに巻き込まれる前に一度寮に帰ったし、カイザーはその付き添い。三沢はどこで調達したのか、アマゾネスペット虎の着ぐるみを着て少し離れた所から皆を眺めている。アイツまだタニヤの事を……。
あとドサクサでクロノス先生が観客の中に紛れて声援を送っていた。改心したとはいえ結構はっちゃけてんな。
そんな中、
「十代っ! 元気そうだな!」
「その声は……国崎のおっさん!」
「おっさん言うな! ったく。お前は変わんねえな」
俺に声をかけてくれたのは、以前この島を家の事情で出て行ってしまった万年落第生こと国崎のおっさんだった。なんでも今はジャーナリストをやっているらしく、この学園祭の取材を兼ねて久々に顔を出したとか。
「そうだ! 十代。お前に会わせたい奴が居るんだ。ほらっ! 前に言った俺の知り合い」
「おお! そういえば言ってた言ってた! 知っている中で最高のHERO使いだって。……ってことは、今ここに来てるのか? 早速会わせてくれよ」
そんなスゲエ人なら是非デュエルしてえ。そう思ったんだが、おっさんは困ったような顔をして苦笑いする。
「すぐに会わせてやりたい所だが、今そいつの姉さんと一緒に学園の本棟に行ってんだ。用事を済ませたらこっちに来ると思うからもう少し待って」
クリクリ? クリクリ~っ!
「あれっ!? どこに行くんだ相棒?」
そこで急にハネクリボーが精霊として出てきたかと思うと、そのまま何かに気づいたように飛んでいく。当然だけど国崎のおっさんには見えていないようだ。
「悪いおっさん! ちょっと行ってくる! すぐ戻るからなっ!」
「あっ!? おい十代!? どうしたんだ?」
何かあったのかとハネクリボーの後を追う。そしてハネクリボーはレッド寮の裏手に向かい、
クリクリ~!
「よぉ。久しぶりだな!
そこに立っていた誰かに嬉しそうに飛びついた。ってあれっ!? あの人ハネクリボーが見えるし触れるのか? その人が優しく撫でると、ハネクリボーはとても嬉しそうな顔をしている。どうやら知り合いらしい。
裾の広がったカッコいい赤いコートを着たその人は、走ってくる俺に気が付いたのかこっちに向き直る。
「やあ。君はここの生徒だね?」
「はい。俺十代って言います。遊城十代。よろしく」
自己紹介すると、その人は少しだけ驚いたようだった。
「十代? すると君が国崎の言っていた子で……ハネクリボーの
「国崎のおっさんの事を知ってるんですか? って事は」
「お~い! そんなとこに居たのか。急に走り出すからどうしたのかと……って紅葉っ! もう来たのか!」
俺の後を追って来た国崎のおっさんがこの人……紅葉さんを見てそんな声を上げる。やっぱりこの人がそうか。
「紅葉。お前みどりさんと一緒に本棟に行ってた筈だろ? もう戻ってきたのか?」
「いやあ話し合いって言っても基本話すのは姉さんだし、ずっと会議なのも退屈なんで一足先にな!」
「あとでみどりさん怒るんじゃねえか? まあそん時はお前が叱られるだけだから良いけどな。……そうだ! 紅葉。こいつがお前に紹介したかった十代だ。きっとお前も気に入るぜ」
国崎さんは俺の背を軽く叩いて押し出す。だけど、
「ああ。分かってる。コイツの様子を見れば一発でな」
クリクリ!
ハネクリボーはさっきから俺と紅葉さんの間を行ったり来たりしている。余程懐いているみたいだ。まあ一人見えない国崎さんは不思議そうな顔をしているが。
「さて十代。そう言えばきちんと自己紹介をしていなかったな」
紅葉さんは軽く服を調え、ハネクリボーを肩に乗せると俺に対して笑いながらこう言った。
「俺は響紅葉。こう見えてもデュエルの世界チャンプなんだぜ! まあ
◆◇◆◇◆◇◆◇
そして、
「紅葉さんっ! 俺とデュエルしてくれよ!」
「ああ良いとも! 俺も一度勝負してみたいと思ってたんだ!」
という事になった。だって下手に言葉で語るよりも、いっぺんデュエルした方がはっきり人となりが分かるだろ?
丁度コスプレデュエル大会(俺達はコスプレしてないけど)をやってるし、観客の多くはココロやブラマジガールの方に集中してるからこっちは互いに集中できる。
ちなみに紅葉さんもココロ達を見て精霊だと勘づいていた。友達の持ってるカードの精霊なんだと言うと、安心したように胸を撫でおろす。
「あれは響プロっ!? どうしてこんな所に!?」
「これは……見物だな」
あと観客がまったく居ないって訳でもない。遠くの方で万丈目がココロ達のデュエルの解説をしながら紅葉さんをチラチラ見てるし、三沢なんか堂々と立ち見だ。国崎のおっさんも観客用シートに座って見学中。他にもちらほらと。
俺は知らなかったけど、やはり紅葉さんはプロデュエリストとして有名人らしい。しかし今はまあそんな事はどうでも良いんだ。
「さあ十代! 楽しいデュエルをしようぜっ!」
「望む所だ! 行くぜ紅葉さんっ!」
さあ。デュエルの時間だ!
「「デュエルっ!!」」
紅葉 LP4000
十代 LP4000
「先攻は貰うよ。俺のターン。ドロー! 俺は『E・HEROボルテック』を攻撃表示で召喚。そして、装備魔法『ボルテック・スピア』をボルテックに装備する」
E・HEROボルテック ATK1000→2000
紅葉さんが繰り出してきたのは、全身に雷を纏ったHERO。確か戦闘ダメージを相手に与えると、除外されているカードを墓地に戻す効果がある。おっさんの言っていた通り、紅葉さんもHERO使いか。
そして装備したカードの効果により、いきなり攻撃力が2000まで上がった。
「俺はカードを1枚伏せターンエンド。さあ十代。見せてみろよ。お前のデッキを」
「おう! 行くぜ紅葉さん。俺のターン!」
ドローしたカードを確認。……よし。まずはこれだ!
「俺は『E・HEROバブルマン』を攻撃表示で召喚! そしてバブルマンが場に出た時に他のカードが無い場合、カードを2枚ドローする!」
「やるね。いきなり手札補充か」
「まだまだこんなもんじゃないぜ紅葉さん。俺は速攻魔法『バブル・シャッフル』を発動! このカードの効果により、バブルマンとボルテックは守備表示に変更だ」
バブルマン DEF1200
ボルテック DEF1500
「そう来たか。だけど、それだけじゃないんだろう?」
「勿論! 更にバブル・シャッフルの効果。バブルマンを生け贄に捧げる事で、手札のE・HEROを1体特殊召喚できる。俺は『E・HEROエッジマン』を攻撃表示で特殊召喚!」
エッジマン ATK2600
「上手い! さっきのバブル・シャッフルでボルテックを守備にしたのはこれが狙いか!」
「そう。エッジマンには貫通能力がある。バトルだ! エッジマンでボルテックに攻撃!」
三沢が解説する中、エッジマンがボルテックに突撃する。これでまずは、
「上級HEROを呼んだか。だが……甘い! 罠発動! 『ヒーローバリア』」
エッジマンの攻撃を、俺もよく使うカードで無効化する紅葉さん。やっぱり有ったか。
「あちゃ~。出来れば今ので先制パンチを決めたかったんだけどなぁ」
「仮にも元世界チャンプがそう簡単に一発貰う訳にはいかないからな。防がせてもらったよ」
まるで余裕を崩さない紅葉さん。まあ当然だよな。だけどまだ勝負は序盤も序盤。全力で挑ませてもらうぜ!
という訳で十代対紅葉戦開幕です。
基本の流れはマンガ版と同じですが、もうこの時点で少しズレています。これがどうデュエルに影響するか。またカードの一部はアニメ版に仕様変更する予定です。
ちなみにココロこと憎しみの女王の性格や名前は絶望の騎士と同じく完全に独自設定です。
それと今作の紅葉は精霊が普通に見えます。元々ハネクリボーが見えていたし、それ以外であっても何となく分かる程度には力があります。茂木相手でも数ターンくらいは耐えられるレベルです。それ以降は脱力しますが。