マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
今の状況はまさにギリギリだ。
俺のシャイニング・フレア・ウィングマンの攻撃力は4600。これを超える攻撃力はそうはない。そして戦闘でモンスターを破壊した時、その元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
対して紅葉さんのモンスターはそれぞれ攻撃力は2800と1600。こちらには及ばないし、守備表示に変えたとしてもそのまま押し切れる。
だけど、それでも何かをやってくると予感させる凄みが紅葉さんにはある。たった1枚のドローで場をひっくり返すような凄みが。今のドロー。紅葉さんは何を引いたんだ? そこに、
「お~い十代っ! 無事かっ!?」
『十代おにいちゃんっ! ただいま!』
カタカタ!
「遊児っ! もう戻ってきたのか!? それに皆も」
宣伝に行っていた筈の遊児が、ハアハアと息を切らしながら走ってきた。背中にテディを背負い、そのすぐ後にはレティシアと罪善さんも一緒だ。
「丁度良い所に戻ってきたな遊児! 今スッゲ~良い所なんだ! 俺が今戦っている相手は誰だと思う?」
「知ってるよっ! 元世界チャンプの響紅葉さんだろ? その事もあって慌てて帰ってきたんだ! ……だけど今はそれよりもだ。ウチの」
「なら大丈夫だ。さっきからコスプレデュエル大会に参加してスゲ~盛り上がってるぜ!」
多分遊児もココロが実体化したのを知って帰ってきたんだろう。だけど特に暴れようって感じもなかったし、あっちには万丈目も居るから大丈夫だろ! それに遊児も戻ってきたならもう安心だ。
「じゃあ俺はそっちの方に向かうから、あとでデュエルの事を聞かせてくれよ! じゃあな! ……あっ! 響紅葉さんに国崎さん。俺久城って言います。今は所用があって行かねばなりませんが、また後でゆっくりお話を聞かせてください。それではっ!」
『じゃあね~!』
遊児達はそれだけ言って慌ただしく向こうのコスプレデュエル大会の会場に走っていった。しかし今の感じだと遊児もどうやら紅葉さんのファンみたいだな。
「十代。今の子は君の友人かい?」
「はい。久城遊児って言って頼れる俺の友達です!」
「あと、齢の割にやたらしっかりしている奴だな。前に来た時も俺の事も勘づいていたみたいだし」
「そうか。十代と同じく精霊と共にある少年……か」
俺と国崎さんの言葉に、紅葉さんは何か考えているようだった。さっきも遊児と
「……っと。今は考えるべきことはそっちじゃないな。デュエルを続けようじゃないか」
「おう! そう来なくちゃ! さあ紅葉さん。この勝負俺が貰うぜ!」
「いや。勝つのは……俺だ!」
紅葉 LP1100 手札1 モンスター トルネード ザ・ヒート 魔法・罠0
十代 LP1600 手札1 モンスター シャイニング・フレア・ウィングマン 魔法・罠0
「俺は魔法カード『
「平行世界融合?」
「ああ。さっきのターン。お前はミラクル・フュージョンで墓地のモンスターを除外する事で融合を行ったな。これはその逆。
げっ!? そういえばさっき残留思念でモンスターを2枚除外してたな! まさかこれを狙って!?
「ゲームから除外されているフォレストマンとオーシャンをデッキに戻し……行くぞ! 最強のヒーローとして、平行世界から現れろっ! 『E・HERO
バリンと空間が裂け、その中から始めて見るヒーローが紅葉さんの場に着地する。
ジ・アース ATK2500
「スゲェ。まさかドロー1枚でこんなスゲェヒーローがやってくるなんて。……だけど、まだ俺のシャイニング・フレア・ウィングマンには届かない」
「ジ・アースの効果発動! 自分の場のE・HEROを生け贄に捧げ、その元々の攻撃力を吸収する。……十代。お前がさっき言った通りだ。仲間との絆でヒーローは強くなる! 『
その瞬間、トルネードがジ・アースに向けて軽く頷いたかと思うと、その身体が光の粒子となってジ・アースに吸収された。そして純白だったジ・アースの身体が真っ赤に変化する。まるで地球の奥底に流れるマグマみたいに。
ジ・アース ATK2500→5300
「攻撃力5300!?」
「バトルだ! ジ・アースでシャイニング・フレア・ウィングマンに攻撃。『地球灼熱斬』!」
「ぐうっ!?」
十代 LP1600→900
ジ・アースが取り出した光の双剣により、シャイニング・フレア・ウィングマンが両断される。そして、
「これで最後だ! ザ・ヒートでダイレクトアタック!」
「ぐっ!? うわあああっ!?」
最後は炎のヒーローの鉄拳で、俺のLPは全て削り切られた。
十代 LP900→0
紅葉WIN!
「クハ~っ! 負けたぁ~っ!」
クリクリ~?
俺は衝撃で背中から大の字で地面に倒れ込む。空は残念ながら曇り空。戦いが終わったから立体映像も消滅し、残るは半透明のハネクリボーのみ。
「スッゲ~悔しい。あとちょっとだったんだけどな。だけど……スゴく」
「ああ。
気が付くと、紅葉さんが笑いながら俺に向かって手を差し伸べていた。あっちゃ~。セリフまで取られちゃったか。だから、
「ガッチャ! とんでもなく楽しいデュエルだったぜ! 紅葉さん!」
心までは負けてないとばかりに、ニヤッと笑って俺はその手を取ったのさ。
パチパチパチ!
「「「うおおおおっ!」」」
気が付くと、俺と紅葉さんの周りには人だかりが出来ていた。拍手の音に驚いていると、
「名勝負だったぜ二人共っ!」
「スゲ~よ十代! 響プロにここまで競り合うなんてよ!」
「チクショウ……羨ましい。俺もデュエルしてもらいてぇ」
「響プロ! サインください!」
観客から口々にそんな声が掛けられる。まいったな。コスプレデュエル大会の方から溢れた奴がこんなに居たのか。
「いや、純粋に二人のデュエルの方が良いと思った面子が大半だよ。ここに居る奴らはな」
「三沢!」
俺の考えを読んだみたいに三沢がそう返す。相変わらずアマゾネスペット虎の格好だけどな。
「やあ。見させてもらったぜ。しかし、あの響プロに相手をしてもらえるなんて羨ましいぞ十代。……響プロ。次は良ければ俺とお願いします!」
「あっ!? ずるいぞ三沢!? 次は俺! 俺とお願いします!」
「いや僕と! 一生の記念にしますからっ!」
三沢を皮切りに、次から次へとデュエルを申し込まれる紅葉さん。だが、
「紅葉。流石にこれだけの相手をしていると時間が無くなるぞ」
国崎のおっさんが静かに紅葉さんを諫める。確かに詰め寄ってくる人数は今も増え続けてる。こいつら全員とやってたらどれだけかかるか。
「分かってるよ国崎。いやあすまないね学生諸君。今日は久々の休みに羽を伸ばすべく来たんだ。またしばらくしたら他の場所も見に行く予定だし……あと数回くらいしかやれる時間はなさそうだ。だから」
紅葉さんはそう言ってデュエルディスクを構えると、不敵な笑みを浮かべながら宣言する。
「
「紅葉っ!? ……ああもう分かったよ!? みどりさんには俺から言っといてやる。プロとしてきっちり実力を見せつけてやれっ!」
国崎のおっさんは呆れながらもその顔に不安さはない。おそらく信じているからだ。紅葉さんがたかだかそんな程度のハンデで負ける筈がないって。
当然それを聞いて詰め寄っていた奴らも黙っちゃいない。レッドだのイエローだのの垣根を越えて、元世界チャンプに挑むべく闘志を燃やす。
「あ~もうっ! もう一回やりてえな。今度こそ紅葉さんに勝ってみせるのに」
「ハッハッハ。まだまだ負けるつもりは無いよ十代。……諸々のケリが付いたらじっくり話をしよう。今度はさっきの久城君も交えてな!」
「おいおい。俺は仲間外れかよ? 十代も紅葉と引き合わせた俺にもっと感謝をだな」
「分かってるって国崎のおっさん! ちゃ~んと感謝してるよ」
国崎のおっさんが居なかったら、俺は紅葉さんとデュエル出来なかっただろう。あんなに楽しい一時は味わえなかっただろう。その点は本気で感謝している。
「さあ皆。準備は良いかっ?」
「「「おうっ!」」」
「元気で結構。じゃあ……行くぜっ!」
「「「「デュエルっ!!」」」」
その後遊児が戻ってきたのは、紅葉さんが二十人ばかり倒した辺りだったかな。何やら浮かない顔をしているがどうしたんだろうか?
という訳で原作通り紅葉の勝利でした。いやあきつかった! 完全に原作通りにはデッキが違うからならないし、そもそもただ流れをなぞっただけじゃ自分が面白くない。
一からデュエルを考えるのは毎回苦労しますが今回も難産でした。……難産じゃない回は無かったですが。
次回からはまた遊児視点に戻ります。