マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 バランサーが到着するまでの間、一体城の中でどんな会話があったのか?

 今回は少し短めです。


閑話 女吸血鬼のギスギスしたお茶会

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「さあ。どこにでもお好きなようにお座りなさって。遠慮は要らないわ。礼儀作法はあまり期待していないから」

 

 そこは城の一室。来賓をもてなす為の部屋。

 

 そこに通された明日香、カイザー、吹雪の三人は、この城の城主たるカミューラの歓待を受けていた。

 

「さてと、ワインは……止しましょうか。何せお客人は皆様()()()でいらっしゃるから。紅茶で良いかしら?」

「さっきから聞いていれば、随分と言葉の端々に棘がある言い方ね」

「そうかしら? 余裕がないからそう聞こえるだけじゃない? お嬢さん」

 

 そうどこか嘲るように口角を上げるカミューラに対し、明日香はほんの僅かにムッとした顔をする。だが、

 

「まあ待て明日香。ここでムキになっても何にもならない。一度落ち着け」

「……そうね。分かったわ」

 

 明日香は大きく息を吐くと、立ち上がりかけた席にそのまま座り直す。

 

「貴女もだ。まず何の意図があって俺達をこの茶会に招いたのか、それを説明するのが筋ではないか?」

「フフフ。流石はカイザーと呼ばれた男。冷静ね。……本当に、私の“お人形”に出来ないのがやや惜しいわね」

 

 そう三人からすれば意味の分からない事を呟くと、カミューラは軽く手を叩く。すると、

 

 キイキイ。キイキイ。

 

 大量のコウモリ達が部屋に入り込んできた。その後肢でガラガラとカップとティーポットの乗ったワゴンを引きながら。

 

「よく躾けられているでしょう? 私の可愛い僕達よ。この通り給仕役も担えるわ。……さあ。お茶にしましょうか。説明はお茶を飲みながらでも良いでしょう?」

 

 カミューラの言う通り、コウモリ達は器用に鉤爪や後肢を操ってそれぞれの前にカップを並べ、そこにティーポットから温かい紅茶を注いでみせた。

 

「さあ。温かい内にどうぞ。そう警戒しなくても毒など入っていないわ」

 

 そう言ってカミューラは真っ先にカップを手に取って口をつけ、ごくりと一口飲んでみせた。そして試すように三人を見つめる。

 

「……頂くとしよう。どのみち簡単にはここから出ることは出来そうにない。なら相手の意向を確かめてから次の手を考えても遅くはないだろう」

 

 静かにカップを手に取るカイザーに明日香が視線で咎めるが、カイザーは落ち着いた様子で不敵に笑う。

 

「それに、吹雪ならこんな時、決して拒む事なく茶会に臨んだだろうしな。『レディのお誘いを拒むことほど無粋なことは無い』などと奴なら言いそうだ」

「……ふふっ! そうね。確かに兄さんなら言いそうだわ」

 

 明日香はクスリと笑って自身の横に居る当人を見る。相変わらず自身の意識が薄弱で、ぼ~っとすることの多い今の吹雪ではあるが、それでもカップを手に取った一瞬優雅さを取り戻したかのように明日香の目に映った。

 

 

 

 

「……ほぅ。これは」

「美味しい! この紅茶とても美味しいわっ! 香りもとても上品ね」

「そうでしょうとも。それくらいはお子様の舌でも分かるようね。血のように紅い極上のワインには及ばないまでも、私自ら選んだ紅茶ですもの」

 

 それぞれの言葉にカミューラは満足げに頷く。吹雪は何も言わないが、どことなく表情が和らいでいるようだ。

 

「さて、何故アナタ達を茶会に招いたか……だったかしら?」

 

 それぞれが一口飲んだのを見計らい、カミューラは先ほどのカイザーの質問を繰り返す。

 

「それに関しては先ほど答えを言ったわね。それは()()()()()()()()()()()。城主としては如何に敵であれ、客人はもてなすのが筋でしょう?」

「その言葉を鵜吞みにしろと?」

「勿論それだけじゃないわ。正しく鍵の守り手とセブンスターズとして戦うのなら、出来れば審判役(バランサー)が居る状態が望ましいもの。それまでの間の時間潰しよ」

 

 ちなみにカミューラの言葉は嘘ではないが真実でもない。

 

 確かにカミューラは誇りある吸血鬼一族として、この城の城主として恥じない行動をとろうと心がけているし、セブンスターズとして戦うのならバランサーが居る方が望ましいというのも本当だ。

 

 しかし、カミューラはいざとなったらそれらを目的の為にかなぐり捨てる事が出来るというだけ。

 

 カミューラの狙いは試合云々よりもその先にある三幻魔の力。そしてそれを手に入れる為に今最も必要なのは時間である。

 

(今一番マズいのは、この三人が一人でも外に出て()()()()()()()()()()事。でも、じきに試合が始まるから待てという事であればしばらくは誤魔化せるわ)

 

 実際バランサーには確かに三人の目の前で先ほど招集のメールを送る事により、もうすぐ来るという事は誰も疑っていない。

 

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とは仕組んだカミューラ以外誰も気づいていない。

 

 これで後は、来る筈のない他のメンバーを待ってさらに時間を稼ぐのも良し。気づかれて戦いになったとしても、一人ずつであれば自分が負ける筈もない。

 

「ちなみに逃げようとしたって無駄よ。正直言って、ここでアナタ達を仕留める事自体は簡単なのよね」

 

 カミューラが指をパチンと鳴らすと、部屋のコウモリ達が一斉に羽ばたいて明日香達を取り囲む。

 

「甘いのよねぇ。鍵の守り手も、他のセブンスターズも。()()()()()()()()()()()()。確かにデュエルをしなければ七精門は正式には開かないのでしょう。だけど、対戦相手が盤外戦術を仕掛けるなんてよくある事じゃないかしら?」

「くっ!?」

 

 座ったまま明日香達は動けない。実際カミューラの言葉通り、少しでも動けばコウモリ達は一斉に襲い掛かるだろう。この数を強行突破するのは出来なくはないが、確実に無傷では済まない。

 

 カミューラはそんな三人を嗜虐の笑みで見つめ、

 

「……だけど残念。それは契約で禁止されているのよねぇ。まったく忌々しい」

 

 再びパチンと指を鳴らし、コウモリ達を下がらせる。

 

「悪趣味ね。いつでも潰せるぞって脅しのつもり?」

「いえいえ。ただの警告よ」

 

 明日香の鋭い視線にもカミューラは動じず、優雅に紅茶をまた一口啜る。だが、

 

「……良いわ。バランサーが到着するまで待てと言うのなら待ちましょう。だけど兄さんは鍵の守り手じゃない。解放してくれない?」

「そうね。では、私の僕達を付けて外へ」

「流石にそこまでは信用できないわ。私か亮を一緒に出してちょうだい。一度寮に戻してからまたここに来るから。それが出来ないというのなら、力づくででもここから兄さんを連れ出すわ」

 

 覚悟の籠った声を上げる明日香。そしてカイザーもそれに同意して静かに頷く。その言葉に困ったのはカミューラだ。この流れは非常にマズイ。

 

 実は先ほどのコウモリ達を使った脅しはいわばパフォーマンス。確かにあの数を無傷で突破するのは難しいが、逆に言えば怪我覚悟であれば普通に突破できるのだ。

 

 このままではどちらかが外に出てしまう。そうすれば他のメンバーと連絡を取ってしまうだろう。カミューラが内心頭を抱えた時、

 

 キイキイ。

 

 そこに部屋の外から一匹のコウモリが飛び込んできた。そのコウモリがもたらした知らせこそ、

 

 

 

 

「待っていたわよバランサー」

『これは……一体どういう状況だ?』

「どういうって……バカな人。見れば分かるでしょう? ()()()()()()()()よ」

 

 審判役がここに到着したという知らせだった。

 




 アンケート企画に沢山の投票感謝です!

 遊児に票が集まるのは予想通りでしたが、カイザーや吹雪とあまり差が無かったのは面白い誤算でした。やはりそういう話が読みたい人もちゃんと一定数居るんですねぇ。

 という訳でこれからの話の参考にさせていただきます。
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