マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 原作ではなかった戦いは二次創作の醍醐味ですが、それにしたって難しいから困りものです。


明日香対カミューラ その三 扉は既にその手の中に

「……くも。よくも言ってくれたわねこの小娘がぁっ!」

 

 明日香の貴女弱いんじゃない宣言が余程効いたのだろう。カミューラが激昂して吠える。その口元は大きく裂け、鋭利な牙がむき出しになる。

 

「それが貴女の素? 今までの貴婦人然とした姿はフェイクだったと言う訳?」

「……っ!?」

 

 明日香の鋭い指摘に、カミューラはハッとして腕で口を覆う。だが、

 

「……ふぅ。私はヴァンパイア・バッツと不死のワーウルフを守備表示に変更してターン終了。私としたことが、つい挑発に乗せられる所だったわ」

 

 ヴァンパイア・バッツ DEF1200

 不死のワーウルフ DEF1200

 

 一度大きく息を吐いたかと思うと、すぐに落ち着きを取り戻してモンスターを守備表示に変更。カードを伏せて守りを固める。

 

 恐ろしく裂けていた口元も元に戻り、また悠然とした態度で明日香を見据える。

 

『おぅっ!? 言うねぇ明日香も。いやはや。女の戦いというのも実に苛烈というものさ』

『今更だな。片や戦意漲るオベリスク・ブルーの女王。片や妖艶なる吸血鬼にしてセブンスターズの貴婦人。苛烈にならない訳ないだろう?』

『なるほど。言えてる』

 

 いつの間に回復したのかしれっと出ているディーにそう返しながら、俺は審判役として戦いを見守る。

 

 さあ。全体破壊を回避し、攻撃力2300と4200のモンスターを出した明日香に流れは来ている。

 

 だが即座に落ち着きを取り戻し、ガードを固めてきたカミューラの方がLPも手札も多い。

 

 まだまだ勝負は分からない。

 

 

 

 

「私のターン。ドロー。バトルよ。サイバー・ブレイダーとサイバー・プリマでヴァンパイア・バッツを攻撃」

「くっ!? ヴァンパイア・バッツは破壊される時、デッキから同名カードを墓地に送る事で破壊を免れる。私は2枚のヴァンパイア・バッツを墓地に送って破壊を無効! いくら攻撃しようと無駄な事よ」

「いいえ。これでもうデッキにヴァンパイア・バッツは居ない。次で終わりよ。私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 カミューラの場のモンスターは未だ健在。だが明日香の言う様に、もうヴァンパイア・バッツはただの攻撃力底上げモンスターだ。

 

 もう片方のワーウルフを狙わなかったのは、おそらくそちらは戦闘で破壊された時に攻撃力を上げて同名カードを場に呼び出すカードだから。何か効果で破壊できるカードが来れば、わざわざ戦闘で破壊しなくとも良いと考えたのだろう。

 

 モンスターの数が変わっていないからサイバー・ブレイダーの攻撃力も変わらず4200のまま。依然として流れがあるのは明日香の方だ。だけど、カミューラがこのままで終わるとは思えないんだよな。

 

 

 

 

 カミューラ LP7200 手札3 モンスター 不死のワーウルフ ヴァンパイア・バッツ 魔法・罠 伏せ1

 明日香 LP4000 手札0 モンスター サイバー・ブレイダー サイバー・プリマ 魔法・罠 伏せ1

 

 

 

「私のターン。……ふふ。良いカードを引いたわぁ。現れるが良い我が同胞っ! 私はヴァンパイア・バッツを生け贄に捧げ、ヴァンパイア・ロードを攻撃表示で召喚」

 

 ヴァンパイア・ロード ATK2000

 

 もう壁としてはあまり役に立たないバッツを生け贄として呼び出されたのは、貴族然とした見目麗しい吸血鬼。……だが、それだけじゃない。

 

「そして、ヴァンパイア・ロードをゲームから除外する事で、私は手札から『ヴァンパイア・ジェネシス』を攻撃表示で特殊召喚! 現れよ吸血鬼の始祖よっ!」

 

 ヴァンパイア・ジェネシス ATK3000

 

 ロードが一瞬闇に覆われたかと思うと、次の瞬間闇を突き破って出てきたのは禍々しい姿の巨体。こいつがカミューラのエースか。

 

「攻撃力3000っ!?」

「それだけじゃないわ。ジェネシスの効果発動っ! 手札のアンデットを1枚墓地に捨てる事で、そのカードよりレベルの低いアンデットを墓地から特殊召喚することが出来るのよっ!」

 

 そう。ロードの時点で有った効果で破壊された時に復活する効果を捨てる代わりに、ジェネシスはこの展開力を手に入れた。どちらが良いかはケースバイケースだ。

 

「私は手札のもう1体のヴァンパイア・ロードを捨て、先ほど墓地に行った星3のヴァンパイア・バッツを守備表示で特殊召喚。バッツの効果により、当然他のモンスターの攻撃力もアップ」

 

 ヴァンパイア・バッツ DEF1200

 ヴァンパイア・ジェネシス ATK3000→3200

 

 もう1枚ロード有ったんかいっ!? しかしこれでモンスターの数が変わり、サイバー・ブレイダーの攻撃力も元に戻る。

 

 サイバー・ブレイダー ATK4200→2100

 ヴァンパイア・ジェネシス ATK3200→3000

 

「知ってるわよぉ。サイバー・ブレイダーは相手モンスターが3枚の時、相手の魔法・罠・モンスター効果を無効にする。だからまたバッツの攻撃力アップは消えるけど、その分サイバー・ブレイダーの攻撃力もダウンしているからそれで十分」

「マズいノ~ネっ! ジェネシスの攻撃力が、サイバー・ブレイダーを上回ったノ~ネっ!?」

「攻めの要であるサイバー・ブレイダーがやられれば、一気に流れはカミューラの方に転がり込むぞっ!?」

 

 鍵の守り手達の慌てる声の中、明日香自身も分の悪さに冷や汗を一筋流す。それを見てカミューラはご満悦だ。

 

「バトルフェイズ。ヴァンパイア・ジェネシスで、サイバー・ブレイダーを攻撃っ! 『ヘルビシャス・ブラッド』」

 

 号令と共に、ジェネシスの身体から放たれたコウモリ状のエネルギー弾がサイバー・ブレイダーに襲い掛かり……()()()()()()()()()

 

「……はっ?」

「残念だったわね。私は罠カード『ドゥーブルパッセ』を発動していたのよ。このカードは相手がモンスターに攻撃してきた時、それを直接攻撃として私が受けるカード。さあ来なさいっ!」

 

 すり抜けたエネルギー弾は明日香に直撃し、明日香は苦悶の声を上げて膝を突く。これは闇のデュエル。当然ダメージもそのまま身体を蝕む。

 

 明日香 LP4000→1000

 

「天上院君っ!」

 

 慌てて声をかける万丈目だったが、明日香は手でそれを制する。

 

「勝利の為なら、私はこの身が傷つくことを厭わない。そしてカミューラ。貴女も攻撃対象になったモンスター。つまりサイバー・ブレイダーの攻撃力分のダメージを受けてもらうわっ!」

「何ですってっ!? ギャっ!?」

 

 音もなく滑り込んだサイバー・ブレイダーが蹴撃一閃。カミューラに鋭い蹴りを浴びせていく。

 

 カミューラ LP7200→5100

 

「ぐぅっ。私はこれでターンエンド」

 

 カミューラも当然LPへのダメージに比例して痛みは走る。一瞬ぐらりと身体をよろめかせながらターンエンド宣言。そこへ、

 

「今のターン。サイバー・ブレイダーを倒せなかったのは痛手だったわね。ジェネシスを呼び出す為、貴女も多くの手札を消費した。これで戦局は五分五分。それならば……勝つのは私っ! 私のターンっ!」

 

 明日香は気合を入れてカードを引く。そして、

 

「バトルよっ! サイバー・プリマでヴァンパイア・バッツを攻撃」

 

 プリマの仮面から放たれる光が、飛び回るコウモリを撃墜する。そして、

 

「相手モンスターの数が2体になったことで、サイバー・ブレイダーの攻撃力は倍になる。覚悟っ! サイバー・ブレイダーで、ヴァンパイア・ジェネシスに攻撃っ!」

 

 ジェネシスの放つエネルギー弾をするりするりと回避して、サイバー・ブレイダーは踊るように肉薄。そのまま鋭いサマーソルトキックを顎に叩き込み、ジェネシスを沈黙させた。

 

 カミューラ LP5100→3900

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド。さあ。貴女のターンよ」

 

 軽く項垂れるカミューラに対し、明日香はそう凛とした態度で告げた。

 

 

 

 

「よっしゃぁっ! カミューラのエースを撃破したぜ!」

「まだLPこそ相手が有利だが、ジェネシスを倒したことで完全に明日香のペースだ。……見ろ。吹雪。お前の妹は立派に戦っているぞ」

 

 観客達は大盛り上がり。まあ俺も審判役でなければ素直に喜んでいるんだけどな。ただ、

 

『……なんでだろうなぁ。どことなく、カミューラにまだ余裕が見えるのは』

『流石久城君。勘付いたかい』

 

 ぽつりと呟いた言葉に、ディーが耳ざとく反応する。

 

『実際戦局的には明日香に流れが来ているのは確かなんだ。カミューラの場にはリクルーターのワーウルフと伏せカード1枚のみ。さっきの攻撃で使わなかったから攻撃反応系じゃない。さしずめ条件を満たさないと使えない系だろう』

 

 俺は他の奴らに聞こえないようぼそぼそと喋る。

 

『となると残るは手札1枚と次のドローに懸かっている。絶対とは言わないが、ここからの逆転は結構厳しい。だってのに』

 

 俺の居る場所。鍵の守り手達の居る明日香側ではなく、戦う二人のほぼ中間。ここから僅かに見える今も伏せるカミューラの表情。それは……()()だった。

 

『……まあここまで来たら言っても構わないか。実はカミューラはアニメ版セブンスターズ戦においてクロノス教諭、カイザー、そして十代と対戦している。この意味は分かるよね?』

『3人と戦ったって事は……まさか()()()()()()のかっ!? 十代はいくら何でも主人公だからないとして、それでもクロノス先生とカイザーだぞっ!?』

 

 クロノス先生はまだ分かる。あの人実力はあるがどこかポカをやらかす悪癖があるからな。大方そこを突かれたんだろう。だけど残るはあの学園最強と名高いカイザーだぞ!?

 

『そう。そこが問題だったのさ。カミューラは2枚の現環境でも規制がかかるようなとんでもないカードを使用して2人を倒した。1枚はさっき使った不死の王国-ヘルヴァニア。そしてもう1枚は』

 

 そこでディーが一拍置き、続けて言おうとした時、

 

 

 ゴォーンっ! ゴォーンっ!

 

 

 どこかで()()()()()。それは重々しく城内に響き渡る。そして、

 

 

「……フフ。フフフ。オ~ッホッホッホっ!」

 

 突然カミューラが笑い出した。楽しくて仕方ないとばかりに、鐘の音にも負けない程に大きな大きな高笑いを響かせる。

 

「何が可笑しいの? この鐘の音は何?」

「ホッホッホ……いえ失礼。()()()()()()。準備が整ったってねぇ。や~っと時間稼ぎも終われるわ」

「時間稼ぎですって? まさかっ!? やけに壁モンスターばかり出していたのは上級モンスターに繋げる為だけじゃなくっ!?」

「そう。よく分かったわねお嬢さん。ご褒美に……()()()()()()()。私のターンっ!」

 

 カミューラは勢いよくカードを引くと、()()()()()()()()()()()()()()()カードを一度愛おしそうに撫でて手に取り、

 

「さあ御覧なさい。これこそが我が切り札。魔法カード『()()()()』っ! 発動っ!」

 

 

 

 ガチリと、何かが動き出す音がした。

 




 という訳で次回決着予定です。

 かなり大きく話が動くのでどうぞお楽しみに。




 この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。評価を保留されている読者様。

 お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!

 読者様からの推薦など泣いて喜びますよ!
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