マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
今回で一応明日香対カミューラ戦は終了です。
カミューラ LP3900 手札1 モンスター 不死のワーウルフ 魔法・罠 幻魔の扉 伏せ1
明日香 LP1000 手札0 モンスター サイバー・ブレイダー サイバー・プリマ 魔法・罠 伏せ1
カミューラが発動したのは、見るからに禍々しい装飾を施された扉のカード。発動と同時にカミューラの背後に絵柄そのままの扉が出現する。
ヤバい。
一目見て分かる。アレは明らかに闇のアイテムだ。それも以前タイタンが使ったダーク・アリーナよりも闇が濃い。下手をするとカミューラ本人よりも。
チクショウ。あれがカミューラの余裕の正体か。
「幻魔の扉。一体どんな効果が」
「焦らずとも教えてあげるわよお嬢さん。その効果は、
「何ですってっ!?」
ギギィと音を立てて扉が開き、強烈な吸引力で明日香の場のサイバー・プリマとサイバー・ブレイダーを飲み込んだ。しまった全体除去か!?
「まだ終わりじゃないわ。続いて
カミューラの言葉に一同騒然となる。なんだそのぶっ壊れカードはっ!?
「バカなっ! 全体除去に加えてモンスター蘇生だとっ!? いくらなんでもノーコストでそんな事が!?」
「勿論代償はあるわ。このカードはいわば幻魔の力を借り受けるもの。
観客席からのカイザーの疑問にカミューラはこともなげにそう返す。自分の魂を質に入れて発動する命がけのカードって訳か。
だが厄介なのは、あくまで試合終了後に取り立てるタイプだから発動自体は完全ノーコストってことだ。しかも勝てば普通に踏み倒せる。道理でディーがとんでもないカードとまで言うわけだ。
しかしよく自分の魂まで担保に出来るものだ。そんな事を思っていると、急にカミューラの顔が愉悦に歪む。
「でもねぇ、流石の私も自分の魂を賭けるのは少々気が引けるのよね。だからこう考えたの。誰か別の……そう。
その言葉と同時に、カミューラの首に巻かれたウジャド眼モチーフのチョーカーが光を放ち、その隣にカミューラを半透明にしたような幻影が出現する。……何か嫌な予感。
「……っ!? 皆逃げろっ!」
「遅いわっ!」
慌てて呼びかけたが一手遅く、幻影が一目散に鍵の守り手達に向かって襲い掛かる。させるかよっ! 俺は横から幻影に向かって飛びつくが、あと僅かの所で届かない。
幻影はそのまま鍵の守り手達の所に到達。そして誰かの身体に纏わりついたかと思うと、その身体ごとふわりと浮き上がってカミューラの元に戻った。攫われたのは、
「に、兄さんっ!?」
そう。吹雪だ。意識が不安定だった為、咄嗟に逃げることが出来ずに捕まったらしい。カミューラの幻影は素早く吹雪の首に噛みつき、倒れる吹雪の横で消滅する。
「オ~ッホッホッホ! これで天上院吹雪と私の魂は繋がった。仮に私が負けたとしても、代償を支払うのは吹雪も一緒……いえ。或いは吹雪のみの魂で足りるかもしれないわねぇ」
「カミューラ……貴女って人は」
明日香は凄まじい気迫でカミューラを睨みつける。これはつまり人質だ。
「カミューラァっ! てめぇ汚いぞっ!」
「ハッ! 戦いに綺麗も汚いもないわ。さあ行くわよ! 私は私自身と天上院吹雪の魂を担保に、アナタの墓地のサイバー・ブレイダーを特殊召喚! アナタの大事なエースでトドメを刺してあげるわ」
十代が怒鳴るがカミューラはどこ吹く風。そしてカミューラの場に、たった今扉に吸い込まれた筈のサイバー・ブレイダーが黒い靄を纏って舞い戻る。だが、これは流石に見過ごせない。
『カミューラ。自分の魂だけを賭けるならまだしも、これは盤外戦術としてもやり過ぎだ。それ以上続けるなら審判役として止めさせてもらうが』
「あらバランサー。審判役というのなら分かっている筈よ。仮に鍵の守り手を直接狙ったのならまだしも、それ以外に関しては契約外。天上院吹雪はダークネスとしての力を失い、そして鍵の守り手でもない以上もう一般人扱い。私に大した罰則は無いわ。寧ろ
『このっ……詭弁を言いやがる』
だが実際こうして被害が出ないようにするのもバランサーとしての仕事。俺としたことが油断した。
「さあデュエルを続けましょうか。アナタの場にモンスターは居ない。残るはその伏せカード1枚だけ。なんなら使っても良いのよ? 吹雪がどうなっても良いのならねぇ」
「くぅ……」
自身の伏せカードを僅かに見ただけで明日香は動かない。いや。動けない。あれだけ兄思いの明日香だ。仮に何か逆転のカードがあったとしても、この状況で動ける筈もない。
こうなったら無理やりにでも割り込んで。そう思った瞬間、
「うぅ……明日……香」
「兄さんっ!」
「こいつ。まだ意識が!?」
震える手で必死に身体を起こそうとする吹雪。その眼はさっきまでの不明瞭な物ではなく、はっきりとした意志を持っていた。
「ちっ! 魂が繋がったショックで、不安定な状態だったのが逆に正気を取り戻すなんてね。誤算だったわ」
何っ!? 俺は驚いてディーの方をチラリと見ると……アイツなんか面白がっている感じだ。これはディーも想定外の事らしい。
「明日香。僕の事に構わず、カミューラを倒すんだ」
「兄さんっ! 何を言って」
「僕は……暗い闇の中に居た。詳しくは覚えていないが、それでも、誰かを傷つけてしまったという事だけははっきりと憶えているんだ」
それは吹雪の告解。ダークネスとして十代や翔、隼人、明日香を襲撃したという罪の意識。
「それは違うぞ吹雪っ! あれはあくまでダークネスのやった事。お前の責任だなんて誰も」
「
「……吹雪」
カイザーが必死に止める中、吹雪は軽く首を振って明日香を優しく見つめる。
「だ、黙りなさいっ!」
「ぐぅっ!? ……頼む。明日香。僕は明日香に、消えてほしくないんだっ!」
「え~い。仕方ない。バトルフェイズ!」
カミューラが吹雪を止めるべくその背中を踏みつけるが、吹雪は尚も必死に言葉を絞り出していく。
これはマズいと判断したのだろう。カミューラは急ぎバトルフェイズへと移行する。あとはサイバー・ブレイダーに攻撃指令を出すだけ。その時、
ピカッ!
「グアアっ!? 何? この光はっ!?」
突如吹雪の身体から……いや、正確に言うと
強い光に照らされ、カミューラは悶え苦しむ。
ユラッ。
……んっ!? 今一瞬
「あっ!? あのペンダントっ!? 俺が前墓守のおっさんから貰った奴によく似てるぞ!」
何かに気づいたように十代が叫ぶ。そういえば十代が言っていたな。墓守の試練を突破した証として、持ち主の身を護るペンダントの片割れを貰ったって。
もう半分はもう一人の突破した者が持っているっているとか。つまりあれがもう半分。試練を突破したのは吹雪だったのか。
「アアアッ……こんな物っ! 我が僕達よっ!」
しかしカミューラも咄嗟にコウモリ達をけしかけ、物理的に日除けとして光から自分を守らせる。コウモリ達も光で苦しんではいるが、それでもカミューラは一息吐く形になった。
「はぁ。はぁ。……残念だったわね。今ので少し繋がりは弱くなったけど、それでもまだ残っているわ。今負ければ私もタダじゃすまないけれど、吹雪も道連れになるわよ。……バトルっ!」
カミューラの号令と共に、サイバー・ブレイダーが自身の主に向けて突進する。その動きは明らかに普段より緩慢で、まるでモンスター自身も抵抗しているようだった。
それにより生まれた僅かな猶予。明日香は伏せカードに手を伸ばし、
「バランサーっ! この闇のデュエルで負けて人形になった場合、
……そういう事か。実際漫画版において、デュエルで負けて魂を封印された等の事例はある。ペガサスに負けた時の海馬等だ。だが、その後も同じくデュエルで他者が勝利する事で魂が解放されている。なので、
『保証は出来ないが、あくまで闇のデュエルによるものであれば同じく闇のデュエルで
「そう。ありがとう。……なら問題ないわね」
明日香は軽く頷き、そのままゆっくりと手を下ろした。
「明日香っ!? 何をっ!?」
「今ここで勝っても、最悪兄さんに何かあったら大変だもの。大体兄さんっ! 兄さんは私に消えてほしくないって言うけど、私だって兄さんに消えてほしくないんですからねっ!」
明日香はそうまくし立てると、次に戦いを見守る鍵の守り手達に向かって、
「後は頼むわね。信じてるから」
「明日香……」
「天上院君」
願いは次に託された。最後に、
「勝ちは
不敵な笑みを浮かべ、自分は実力では負けていないと。オベリスク・ブルーの女王は胸を張ってカミューラに宣言する。
それが気に入らなかったのだろう。カミューラはまた口元が裂けた恐ろしい形相になる。そして
「負け惜しみを。喰らえっ!」
ザンっ!
サイバー・ブレイダーの蹴撃が、無情にも明日香のLPを削り切った。
明日香 LP1000→0
カミューラWIN!
という訳でカミューラの勝利となりました。
この結末については正直相当悩みました。当初のプロットでは、吹雪覚醒及びペンダントによる生け贄身代わり回避からの明日香勝利ルートも考えたくらいには悩みました。ただ、
「幻魔の扉まで使って一回こっきりの退場はもったいない」
「ここで負けたらアンケートでもあった面子とのデュエルは難しい」
「というか私がカミューラさんも好きじゃぁっ!」
等々色々な事情からギリギリカミューラ勝利エンドとなりました。
汚い? 卑怯? ……これが私の全力よ。と言わんばかりのカミューラですが、次回一気に話が動くのでお楽しみに。
この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。
お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!