マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
タイタンの時と同じ。黒い闇がカミューラを飲み込んでいく。普通ならタイタンと同じく闇の世界に引きずり込まれるだろう。だが、
「ああっ……舐め……るなっ!」
「何だとっ!?」
その身体を一瞬黒い霧のように変化させ、闇に完全に飲み込まれる前に脱出。未だ首元で闇を放出し続けるチョーカーを力づくでむしり取り、そのままアムナエルに向けて投げつける。
「驚いたな。まさか自力でそれを脱するとは」
「……はぁ……はぁ。残念だったわね。そのチョーカーに反逆防止の仕込みがしてあるのはお見通しよ。時間を掛ければ対処法ぐらい用意できるわ」
やや息が上がっているが、カミューラは霧の状態でアムナエルを越えて階段の上に辿り着いていた。
「ここで貴方と戦っても、こっちには何のメリットも無いのよね。という訳で失礼するわ!」
「逃がすと思うか?」
『ああ。もうセブンスターズじゃない以上、俺も大手を振ってお前を止められる。覚悟は良いか?』
アムナエルに追随するように俺も一歩前に進み出る。このまま逃げ出すつもりでも、そんなに距離も離れていないからすぐに追いつける。さあどうするカミューラ?
「あら怖い。だけど……この城にはこういう仕掛けもあるのよねぇっ!」
カミューラはそこで軽く指を鳴らす。すると、
グラグラグラ。
「うわあっ!? また地震かっ!?」
「違うっ!? この部屋の仕掛けだっ!」
ザルーグの言う通り、さっきより激しい振動が部屋を襲い、遂には天井が崩れて瓦礫まで降ってくる。階段の方にまではまだ瓦礫は比較的落ち着いているが、広間の方に居る十代達は降ってくる瓦礫から身を隠す物がない。
『カミューラっ!? お前っ!?』
「もうセブンスターズじゃないんだから、鍵の守り手がどうなろうと知ったこっちゃないわねぇ。さあどうするのバランサー? アムナエル。私を追ってきても良いけど、残る鍵の守り手達はどうなるかしらっ! オ~ッホッホッホ」
高笑いしながら走り出すカミューラ。チクショウっ!
『アムナエルっ! カミューラを頼むっ! 俺は十代達を』
「まあ待てバランサー。私も行こう。……一教師として生徒を見捨てる訳にはいかないのにゃ」
それを聞いたら俺にはもう何も言えない。俺達は二人で瓦礫から何とか身を躱している鍵の守り手達を助けに向かった。
「ふぃ~。助かったぜバランサー! あとアムナエルもな」
『俺がやった事と言えば二、三小さな石を振り払ったくらいだ。どちらかと言うと俺よりアムナエルの方が活躍していたと思うがな。それと……
あれから数分。降ってくる瓦礫がようやく収まり、十代が軽い感じで礼を言ってくるが俺はそれどころではなかった。何故なら、
ガシッ! ポンポン。
「ああ。慰めてくれているのか? すまない……いや、ありがとう」
またふらついている吹雪に肩を貸して支え、そのまま慰めるように背を軽く叩くテディが居たり、
「俺が吹雪をもっとちゃんと見てさえいれば……こんな事には」
『そんな険しい顔しないで。大丈夫。明日香お姉ちゃんはきっと助けられるよ。だから笑って!』
「……そうだな。こんな所で俯いている場合ではなかったな。ありがとう。お嬢さん」
『えへへ! レティシアだよ!』
自分の不手際を責めるカイザーを、持ち前の明るさで励ますレティシアが居たり、
『あ、アニキ~』
「取り乱すんじゃない雑魚共。……助けられた礼は言うが、お前もその不機嫌さを抑えたらどうだ」
『そなたの指図など受けぬ。あぁ腹立たしい。もう少し早く来ていれば、元凶を氷漬けにしてゆるりとまた祭りに興じていたというのに』
すっかり気圧されて万丈目の後ろに隠れるおジャマ達と、不機嫌さを隠そうともしない雪の女王が居たり、
〈ピピっ! 周囲の危険物反応僅かに減少。引き続きガードプロセスを警戒度を引き下げて続行します〉
「すまない。さっきは助かったよヘルパー君」
〈ピピっ!〉
『それは良いんだがなヘルパー。次はもう少しゆっくりやれ。運ばれているこっちが目が回るだろうが」
四本のアームを展開し、三沢を守るように立ちながらネクを頭に乗せるヘルパーが居たり、
パタパタ。
「シッシッ! なんでまた寄ってくるノ~ネこの鳥はっ!? 今それどころじゃないでス~ノっ!?」
クロノス先生が何故か頭に留まろうとしてくる罰鳥を追い払おうと手を振り回していたりするからだ。あと黒蠍盗掘団はそれを見て囃し立てていた。
俺とアムナエルが鍵の守り手達を助けに戻った時、それと同時に幻想体達がまとめて乗り込んできた時は非常に驚いた。良いタイミングで助かったんだけどな。
元々俺個人に凄い能力はないし、アムナエルも炎の錬金術で降りかかる瓦礫を焼き尽くそうとしていたが全員はカバーしきれなかった。
そこへやって来た幻想体達が、各自で瓦礫を殴り飛ばしたり凍らせたり切り払ったりして手を貸してくれたのだ。……さりげなくその流れで俺と一緒に居たレティシア達も実体化してたからひとまとめにされたようだけど。
ただ明らかにカミューラが居た時より状況が混沌としてきたのは否めない。そこへ、
『少し良いだろうか? お集まりの皆様方。そちらのセブンスターズの方々も』
「葬儀さん!」
「……精霊か」
良く通る声で周囲に語りかけたのは葬儀さん。十代からすれば時々顔を合わせているので知った顔だ。そして事前に打ち合わせた通り、あくまで俺の事はバランサーとして扱ってくれている。
アムナエルこと大徳寺先生は俺経由で幻想体の事を既に知っているが、それは不自然なので初見のフリだ。
『いかにも。お初にお目にかかる方々にまずは自己紹介を。我々は
「カードの……精霊なノ~ネ? 眉唾なノ~ネ」
「オカルトだな。いや、闇のデュエルなどというものがあるのだ。あったとしても不思議ではないか」
葬儀さんの言葉にここに居る人達の反応は様々。クロノス先生は半信半疑だし、カイザーはあってもおかしくはないレベル。三沢はタニヤという前例があるから何も言わず、吹雪に至っては自分が墓守の異世界に行った事があるからそのまま納得。
十代や万丈目は普通に見えてる人なので語るまでもなく。
『仮にではあるがこの私、死んだ蝶の葬儀が代表を務めさせていただく。普段我らは実体化などしない身であるが、此度は先ほどのカミューラによる企ての余波によって実体化している』
これに関しては割と誤魔化している。普段から実体化出来るが、そんな事を言ったら話がややこしくなる。だからあくまでカミューラのせいで一時的にという体にしたいのだ。
あと葬儀さんが代表というのは何となく分かる。雪の女王はやや態度がアレだし、レティシアは話すだけならともかく交渉事は向かない。他の面子は話せないから論外。となれば常識人の葬儀さんが妥当だろう。
『我らがここに来た理由は言うなればそこの黒蠍盗掘団と同じだ。せっかくの実体化。その上レッド寮において、コスプレデュエル大会という好都合な催しが行われていることもあり祭りに興じていた所にこの事件。
そこで一拍置いて、葬儀さんは十代と万丈目の方に僅かに顔を向ける。つまり自分達は久城遊児からの援軍であると暗に示している訳だ。名前を出したらバレるから直接は言えないが。
『それでねそれでねっ! 皆で悪い事をしている人を捕まえて止めさせようって来たら、突然お城が揺れ出してビックリしたの!』
『勢い込んで乗り込んでみれば、部屋の崩落にそなた達が巻き込まれておるではないか。妾は別に見捨てても構わぬが、祭りで民草に死者を出すのも無粋。故に少々手を貸したまでよ』
「そうだったのか。ありがとよ皆! 後で遊児にも礼を……ムグッ!?」
うっかり口を滑らせそうになった十代を、万丈目が後ろから慌てて口を塞ぐ。万丈目ナイスっ!
「何でもない。気にするな。それでこれからどうする?」
「……プハッ! どうするって決まってらぁ。カミューラを追いかけて明日香の魂を取り戻す。そして三幻魔の復活を阻止。単純じゃん」
「一つ我らからも言わせてもらおう。事はそう単純ではないのだ。何せ今ここには
アムナエルの言う事ももっともだ。カミューラは今やどちらの陣営においても止めなきゃならない相手。しかし両陣営が敵同士である事は未だ変わっていない。
さらに精霊達も加えると場合によっては四つ巴だ。勿論むやみに戦うつもりは幻想体達にはないだろうが、このままでは互いに牽制し合って身動きが取れない。だが、
「な~に言ってんだよ! こんな分かりやすい状況はないぜ!」
ここに居るのは天下無敵のデュエル馬鹿。そんなしがらみなど関係がない。
「まず俺達は明日香の魂を取り戻したい。それでセブンスターズ……というよりバランサーか? バランサーは俺達の戦いを正しく進める為にカミューラを止めたい。そしてそこの精霊達は祭りを台無しにされるのを防ぎたい。……ならやる事は一つだろ」
十代は拳をアムナエルと葬儀さんの前に突き出す。
「カミューラを倒すまで……いや、
この発言で周囲を沈黙が包む。
それは一つ間違えば一発で乱戦になる危険性を孕んでいる。だがそれを真っ向から言えるのはこの場で十代くらいのものだろう。だから、
「……ふ、フハハハハハ。まったく。やはり君を選んでよかった。……良いだろう」
アムナエルは笑って自分の手を十代に重ねる。
『アムナエル。良いのか?』
「元々お前もそのつもりなのだろう? どのみちカミューラによる三幻魔復活の阻止は最優先事項だ。一時的な協力程度ならあの御方もお認めになるだろう。……幻想体達はどうかな?」
『我々は元々この事態さえ落ち着けばそれで良い。共闘の提案を受諾させてもらおう』
葬儀さんも腕を一本伸ばして手を重ねる。そこへ、
『私も私も! ほらっ! ネクちゃんも女王様もテディも皆一緒に!』
「おっ! ノリが良いなレティシア! じゃあ皆でやろうぜ!」
レティシアと十代の扇動で渋々雪の女王や万丈目、そして黒蠍盗掘団や残りの面子も次々に手を重ねていく。当然俺もだ。
「よ~し。それじゃバランサー。いっちょそれっぽい合図を頼む」
『何? こういうのは発起人のお前がやるんじゃないのか?』
「だってバランサーは調整役なんだろ? こういう時にこそ出番じゃん」
おのれ無茶振りしやがって十代の奴。仕方ない。
『ではここに居る皆様。思惑はそれぞれだろうが目的は一つだ。カミューラをぶっ飛ばし、今日の祭りを最高の形で終わらせる。結末はどうあれ、それまでの間俺達は仲間だ。……行くぞおぉっ!』
「「「お~っ!」」」
こうして今日一日限定、鍵の守り手達とセブンスターズ、そして幻想体達の異色のチームが結成されたのだった。待ってろよカミューラ。
という訳で、原作の流れを思いっきりぶっ壊していますが、鍵の守り手とセブンスターズ(及び精霊達)の混成チームが出来上がりました。
この流れは割と初期から考えていましたが、こういう敵の敵は味方理論からの共闘って好きなんですよね。
この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。
お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!