マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
さて。十代の主導で異色のチームが結成された訳だが一つ問題が浮上する。それは、
「じゃあまとまった所で早くカミューラを追いかけようぜ! 部屋の仕掛けでかなり出遅れたからな」
「待て。その前にカミューラがどこに逃げたのか分かるのか?」
「そう言えば……確かにそうだな」
いつもの悪癖で早速突っ走って行こうとした十代を、アムナエルが静かに呼び止める。
今からカミューラを追おうにも、さっきのドサクサで大分距離が離されている。しらみつぶしに探そうにもこの城はかなり広大だ。最低限何かの目星がいる。
「こういう時こそ名探偵万丈目サンダーの出番だ。何か思いつかないか?」
「……そうだな。鍵になりそうなのは奴がさっき言っていた言葉だな。七つの部屋に七つの封印を見立てた。そして奴は三幻魔復活の儀式を再開する為、黒蠍盗掘団の壊した柱分の誤差を修正するべくその七部屋のどれかに向かっている。それがこの城のどこにあるかさえ分かれば」
流石は(自称)名探偵。十代の急な無茶振りに対し、理路整然と問題点を並べていく。しかし七つの部屋か……んっ!?
『それに関しては、俺に少し心当たりがある』
「何か知っているのか? バランサー」
『実は以前、調整役として一度この城を視察した事がある。その際カミューラ直々に城を案内してくれたのだが、その時少し違和感があった』
城の中に用途が良く分からなかったり調度品が何もない部屋が幾つも見られたのだ。あの時カミューラは何の用途もない部屋を造る事が城主の最大の贅沢と言っていたが、あの計算高い奴がそんな事をするだろうか?
仮にだが、あの時
「なるほど。可能性としてはある。最初から裏切る気だったのなら、カミューラにとってバランサーは目障りな監視役。先に監視役の疑いを消す為自分から城を案内した訳か」
『むぅ。カミューラめ。俺達の手を真似するとはなんて奴』
「それは偶然だと思うぞ」
俺がその事を説明すると、どこか納得したようにアムナエルは頷く。あとザルーグ達が自分達のやった手をパクられたと憤慨しているが、三沢に冷静に突っ込まれていた。
『あの時の部屋の場所は大体憶えている。確か……』
『大まかな地図ならここに有るぞ。念の為ここに来るまでに城の間取りを軽く調べてきた』
ザルーグが懐から城の見取り図を取り出し、他のメンバーが素早く用意した簡易机に広げる。さっすが盗賊。手際が良い。
「ほほぉ。この仕事の早さ。やりまス~ノ!」
『『『『『それがっ! 黒蠍盗掘団っ!』』』』』
クロノス先生が感心すると、ここぞとばかりにいつものポーズを決める黒蠍盗掘団。いやそれはいいから。
『大まかってかなり正確だぞこれ。助かる。あの時俺が違和感を持った部屋は……こことここ。あとここに……』
俺が指し示す部屋をザルーグが一つずつマーキングする。その数はピッタリ七つ。
「じゃあこの七つのどれかにカミューラが居るんだな?」
『その可能性は高い。しかしこのどれに居るかまでは分からない。それにおそらくだがカミューラの事だ。さっきみたいな仕掛けが他の部屋にもある可能性も』
『その点は我々に任せてもらおう。先ほどは不覚を取ったが、仕掛けを掻い潜って突破するのは我々の得意分野だ』
『本職がこれ以上やられっぱなしじゃいられないしね』
そこに進み出るはまたもや黒蠍盗掘団。数々の罠を潜り抜けて宝を奪取してきたこいつらはいわばプロだ。普段はアレだがこういう時は頼りになる。
『方針は決まったな。あとは乗り込むだけだが、一つ一つ皆で向かっていては時間がない。これだけ人手があるんだ。手分けしよう』
「OK。班決めはどうする? それに……
三沢が言葉にしたそれに、残るメンバーが一斉に反応する。誰もが自分がと……さらに言えば三沢自身も戦う気満々だ。
カミューラがセブンスターズじゃない以上、もう鍵の守り手ではないカイザーや三沢、元セブンスターズである吹雪でも戦う事は出来る。だが相手がどこに居るか分からない以上確実に狙う事は出来ない。なので、
『決まってる。
「「「おうっ!!」」」
誰が当たるか運しだい。実に分かりやすいだろ?
◇◆◇◆◇◆◇◆
「おのれ……おのれえぇっ!?」
カミューラは部屋の中央に浮かぶ球体に手を当てながら、呪詛混じりの言葉をまき散らしていた。
黒蠍盗掘団による柱の破壊。それにより儀式が中断した時、カミューラははらわたが煮えくり返るような怒りを覚えていた。
しかし今は一刻も早く設定を調節して儀式を再開すべしと怒りを必死に飲み込み、急ぎ誤差のある場所を特定して復旧作業に勤しんでいた。
「だけど……あくまでも誤差はごく僅か。これならそう再設定に時間もかからない。そう。そうよ。精々が少し儀式を先延ばしにされただけ。最終的な私の勝利は揺るがないのよっ!」
どこか狂気を孕んだ笑みを浮かべながら、カミューラの手はせわしなく球体の上を滑る。
実際このまま行けば、あと数十分もすれば再設定は完了し儀式は再開されるだろう。その短い時間ではこの広い城のカミューラの場所を正確に特定するのは難しい。
それにバランサーの危惧したようにこの城全体には防衛システムが仕込まれていた。ただネットが放たれ動きを封じるだけの物もあれば、正しい順路で通らなければ鉄杭が突き出す殺傷力の高い物まで様々。
特に要たる封印の七部屋に仕掛けられているのは
何故か
「……ふっ。フフフ。オ~ッホッホッホ!」
これらの罠を短い時間で突破し、この部屋にピンポイントで辿り着くのはほぼ不可能。仮にバランサーが以前の事から部屋の場所に勘づいたとしても、どの部屋か特定できない以上確率は七分の一。手分けするなら分断して罠で始末すれば良い。
勝利を確信して高笑いをするカミューラ。だがそこへ、
ビーっ! ビーっ!
「噂をすれば、どこかの罠が作動したようね。設定完了までの間、人間共の苦痛に喘ぐ様でも見物するとしましょうか」
細かな箇所はおおよそ修正し、あとは時間を待つばかり。鳴り響く警報音に、カミューラはふとした気まぐれから罠の作動した辺りの様子を壁に映し出す。そこに映るのは、
「お~っと危ねぇ!? 助かったぜ相棒! 葬儀さん」
クリクリ~!
『壁の仕掛けに集中するあまり、足元が疎かになったようだな』
『ダメじゃないか十代。そこはスイッチがあるから踏むなって』
「わりぃチック。次からは気を付けるからさ」
飛来する毒矢を葬儀が撃ち落し、その破片を光の障壁で防ぐハネクリボー。そして不注意を叱る黒蠍のチックと頭を下げる十代の姿があった。
「ふ~ん。そう言えば十代はバランサーと同じくカードの精霊使いだったわね。ならこの程度の罠は効かないか」
十代の居るのはカミューラの居る部屋から大分離れていた。どうやら別の部屋に向かっているらしい。ならば問題はないと胸を撫でおろすカミューラ。だが、
ビーっ! ビーっ!
「今度は誰が……何ですって!?」
もうまともに罠を掻い潜れる者は居ない。そう安心しきったカミューラの前に警告音と共に次々に罠の作動した場所が映し出される。しかし、
『………無礼な』
カキーン。
『さあ。愛する妹を救いに行くのだろう? ならば己を奮い立たせよ。その名の通り頭は吹雪のように冷たく、しかしてその心に温かき心を忘れぬ内に』
「……ああ。ああ! 待ってろ明日香! 今助けに行く」
『そんな身体で無茶をする……だが、嫌いじゃない』
ある所には降り注ぐ毒液を凍らせながらゆるりと歩む雪の女王と、黒蠍のクリフに肩を貸されながらも歩くのを止めない吹雪の姿が。
〈ピピっ! ガードプロセス実行中〉
『ぐぅっ!? 何度聞いても頭に響くっ!? オイまだか錬金術師っ!?』
「もう少し……解錠完了だ! 走れっ!」
「分かったっ!」
ある所には襲い掛かるコウモリ達をアンテナから放つ超音波で追い払うヘルパーと、その余波で苦しんでいるネク。その間に何重にも仕掛けられた鍵を錬金術で外し、カイザーを素早く先へ進ませるアムナエルが。
「ノォ~っ!? う、動けないノ~ネ!?」
『しっかり、しろ』
パタパタ。
ある所にはネットに絡まって動けないクロノス先生と、それを外から外そうと悪戦苦闘している黒蠍のゴーグ。そして攻撃と判断して自分だけ内側からネットを食い破って悠々と空を舞う罰鳥が。
ギュ~! メキメキッ!? バキッ!?
『す、凄いのよ。ねぇ。万丈目のアニキ』
「ふんっ! っと!? お前らっ!? 感心してないで戦え……とまでは期待していないが、せめて動き回って囮くらいしろ。次はどっちだザルーグ?」
『近いぞ。次の十字路を右に曲がってすぐの部屋だ』
ある所には何故か動いて襲い掛かってくる西洋甲冑を抱きしめて粉砕するテディと、それを見て歓声を上げるおジャマ。そんな中他の甲冑から身を躱しながら突き進む万丈目とザルーグが。
『え~いっ! これで大丈夫だよ! 三沢お兄ちゃんっ!』
『これもついでに持ってきな色男。予備の奴だけど貸してやる』
「ありがとう二人共。さあ来いお前達っ! タニヤっちに認められるべく鍛え上げたこの心技体。今ここで試させてもらう」
ある所では、レティシアと黒蠍のミーネを背にしてムチを手に取り、グルルと唸りをあげるオオカミ達に立ち向かう三沢の姿があった。
「一体どうなっているの? 何故鍵の守り手達だけでなくカードの精霊までこんなにも実体化をっ!?」
カミューラは思わぬ事態に混乱していた。バランサーによって精霊が実体化する事自体はまだあり得たが、それは精々二、三体程度の事。それ以上は力が保たないと踏んでいたのだが、そこにカミューラの誤算があった。
今この島一帯は三幻魔の力が多く漏れ出している。一度出てさえしまえば、それこそ普通に
よってバランサーが用立てたのは呼び出す分だけで、それ以降の幻想体達の実体化分は全て自然に賄えているのだ。
「……待って?
混乱していたカミューラだがそこでとんでもない事実に気づく。
これまでの鍵の守り手達は全てこの部屋以外の部屋に向かっていた。仮に手分けして部屋を調べるつもりだとすれば、当然まだ出ていないバランサーの向かう先は、
ギィー。
この部屋の扉が開く音がした。
「……そう。貴方が相手って訳。鍵の守り手達じゃなく、セブンスターズでもない審判役の貴方が。……ええ良いわ。良いでしょう」
カミューラはゆらりと球体の前に立ち塞がり、どこか凄みを帯びた瞳で扉の方を見つめる。
「この城の城主として、誇りある吸血鬼一族の一人として、た~っぷりお相手致しましょう。バラン……サー?」
そこでカミューラはいったん言葉を区切る。そこに居たのは、
『
そこに居たのはバランサーなどではなかった。
魔法のステッキをくるりと回し、彼女はやっと見つけた倒すべき相手に名乗りを上げる。
『魔法少女ココロ。今ここに参上! さあ悪党さん。愛と正義の名の下に、ワタシがお仕置きしてあげるっ!』
正義の味方。悪の敵。魔法少女。自称ココロこと憎しみの女王が、吸血鬼の鎮圧行動を開始した。
バランサーが来るかと思った? 残念。魔法少女でした。
悪を探している内にいつの間にか城に突入していて、妨害を力尽くで突破しつつ一番で辿り着いてしまいました。
次回吸血鬼対魔法少女。……えっ!? バランサー? ……その内来るんじゃないですかね?
この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。
お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!