マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
誰とは申しませんが、久々の登場です。
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『罪善さんっ! 頼むっ!』
カタカタっ!
何故か城内に湧いていた良くないモノを、罪善さんが光で浄化吸収する。さっきカミューラが闇に呑みこまれそうになった時、どさくさで湧いてきたのだろうか? だが、
『邪魔だ邪魔だっ! お前らに構っている暇はないんだよっ!』
この忙しい時にこっちに寄ってこられてはたまらない。飛びついてくる奴をペンダントを翳して追い払いながら、俺達は先へと進む。
手分けして部屋を目指す以上、一組辺りの戦力の低下は避けられない。他のメンバー全員に護衛として幻想体を割り振ったので、俺の所には現在罪善さんのみ。
手持ちのカードを使えば自室に居るオールドレディとウェルチアースをこっちに呼び寄せられるが、どう考えても戦闘向きとは思えない二体なので出すにしてもいざって時のみ。
『あったぞ! あそこだ!』
やっと俺の担当する部屋が見えてきた。あそこにカミューラが居るかどうかは分からないが、居たらここで一発ぶん殴ってやるのみ。
ズガーンっ!
『何だ?』
扉の前に立つと、中から何かデカい音が聞こえてきた。もしやここが当たりか? なら話は簡単だ。
『来たぞカミューラっ! 決着の時だっ!』
勢いよく扉を開け、俺は中に飛び込みながら叫ぶ。だが、そこに居たのは、
「ごふっ!? ……化け物め」
服のあちこちが焼け焦げ、口から軽く血を流して疲労困憊のカミューラと、
『化け物だなんて失礼ね。正義の味方の魔法少女よ。それと……どちら様?』
そのカミューラにステッキを突き付けながらこちらを横目で見る、ココロこと憎しみの女王の姿だった。
一体どうなってんだこの状況っ!?
俺は即座に動けなかった。何せこれから戦うぞと意気込んでいた相手が既にズタボロで、それをやったと思われるのが自分のカードの精霊(独断)なのだから。
罪善さんも困惑しているのかオロオロしている。ちょっと可愛い。
『見るからに怪しい人ね。それに怖そうな骸骨さんも。新たな悪党? だったら正義の味方としてアナタもお仕置きしなきゃいけないけど』
ココロは困ったように軽く首を傾げる。だが相変わらずステッキの標準はカミューラに向かったままで隙が無い。それと地味に罪善さんがショックを受けている。中身は無茶苦茶善人でも見かけだけは怖いからな。
これはマズい。下手な答えをしたらこっちもぶっ飛ばされかねない。だけどおかしいな。
『先に一つ確認させてくれ。
『ぜ~んぜん。アナタみたいな目立つ格好の人なら忘れる筈ないけど……あっ!? ゴメン。少し不安かも。
ああそうか。ココロは俺と直接の面識はない。おまけに今はこのバランサーとしての姿。そりゃあカードの持ち主だなんて知る筈もない。
しかし物忘れが酷いとはどういう……いや。それは後だ。今はまずこっちの説明をして場を収めないと。
『じゃあひとまず自己紹介させてくれ。まず、俺の名前は』
「バランサーっ!? 来てくれたのねっ!
そこでカミューラはとんでもない事を口にする。
『助けに? 何を言って』
「こっちは問題ないわ。この儀式が成功すれば、あとは貴方が三幻魔の力を従えるだけ。いよいよ
『……なるほど。話を聞く限り、つまりアナタが悪党の親玉って訳ね』
カミューラの言葉にココロはこちらにステッキを向ける。その瞬間、カミューラがニヤリとこちらに向けて嗤ってみせた。
あの野郎っ!? まんまと嵌められたっ!? これじゃあ完全にココロのヘイトが俺に向くっ!?
『ちょっ!? ちょっと待てっ!? まず落ち着いて俺の話を』
『アナタみたいな悪党は、お仕置きしてから話を聞いてあげるっ!』
『うおっ!?』
咄嗟にヤバいと踏んで横っ飛びする。その一瞬後、俺の立っていた所を星形のエネルギー弾が通り過ぎ、そのまま壁に当たって爆発する。
オイ嘘だろっ!? あんなの直撃したらただじゃ済まんぞ!?
『このっ! 避けないでよ!』
『誰だって避けるわこんなのっ!? うわっ!?』
次々と飛んでくる星形弾。弾速は早く、見てからでは回避が間に合わないのでほとんど勘だけで回避していく。
勿論俺だけの力でではない。時折当たりそうになるそれを、罪善さんが障壁を張って僅かに逸らしているのだ。
『だから話を聞けってのっ!』
『問答無用っ!』
カタカタっ!?
『罪善さんっ!?』
だが、そんなやり方が長く続く筈もない。必死の呼びかけも虚しく、遂に罪善さんが障壁が間に合わずに星形弾を受けて壁に叩きつけられる。
助けに行こうとそちらに視線を向けた瞬間、
『よそ見しちゃダ~メ!』
『ぐわっ!?』
直撃ではないものの、近くの床に星形弾が炸裂してその爆風で床に倒される。そして立ち上がろうとした所、
『はい。おしまいっと』
先ほどのカミューラと同じく、至近距離でステッキを突き付けられた。……詰んだか。この距離じゃ躱そうと身を捩った瞬間に吹き飛ばされる。
ふらふらと浮き上がっている罪善さんだが、流石に少し距離が離れた状態では間に合わないだろう。
『……まいったな。降参だ。という訳で命乞いくらい聞いてくれないか?』
『聞いても良いよ! だけどまずは反撃できないようにしておかないとね』
その言葉と共に、ココロのステッキの先端に光が集まっていく。さっきのカミューラのように反撃できない程度に痛めつけるつもりか。
『正義の味方にしてはやり口がエグイな』
『
俺の問いに、ココロはにっこりと笑ってそう返した。う~む。見た目が可愛らしい分凄みがある。
今まで罪善さんやレティシア、葬儀さんなど友好的な相手ばかりだったから気が緩んでいたが、これが大鳥や審判鳥と同じWAWクラス。思考がどこかぶっ飛んでいる。
ああしかし絶体絶命だ。死ぬまではキチンと弁明すればないだろうが、大怪我くらいは充分あり得る。
他の幻想体を呼んで立ち向かおうにも、WAWクラスに対抗できるとなると大鳥か審判鳥だけ。そしてその二体は基本的に森が絡んでいない限り中立。助けてくれるとは限らない。
もうこれはお手上げかと考えた時、
『……ふっ』
『何が可笑しいの?』
つい吹き出してしまった俺に、ココロは不思議そうな目を向ける。そりゃそうだな。今日でおかしくなってもおかしくない。だが、
『いや。前もこんなような事があったなとつい思い出してな』
そう。あれは以前墓守達の異世界に跳ばされた時の事。
今この時のように他の幻想体とは離れ、罪善さんはまともに動けず、俺は槍で殴られまともに動けない大ピンチ。
そして、
かつてあの異世界のように、この周囲には力が満ちている。そして、
『あとは俺が精霊化させるだけの力が溜まっているかどうか。その点はここしばらく誰も新たに実体化させていないからバッチリ。……なら、出てこれない筈が無いよな?』
カッ!
その瞬間、ペンダントから強烈な光が放たれる。
『うっ!?』
眩しさのあまり片方の腕で咄嗟に目を覆いながら数歩後退るココロ。だがその僅かな隙を突き、俺は懐のカードデッキを取り出して一枚のカードを抜きだした。
俺の中から何かがカードに流れ込んでいくのを感じる。何かが繋がりが出来ていくのを感じる。ただそれは決して嫌な物ではなく。
『このっ!?』
素早く俺に向けて星形弾を撃ち放つココロ。破壊力充分のエネルギー弾はまっすぐ俺に向かい、
『……
何処からともなく飛来した細剣に刺し貫かれて軌道を逸らされ、俺の脇を抜けて明後日の方に飛んでいった。
『この剣は……くっ!?』
ココロは何かに気づいた様子で素早くバックステップ。その足元に次々同じ細剣が突き立っていく。
『……大丈夫かしら?』
それはまさにあの時の再現。
ふわりと俺の前に実体化するのは、かつて俺の命を救ってくれた恩人。
黒と青の長髪。髪と同色の星空の装飾の付いたドレスと白く透き通ったマント。スペードを組み合わせた形のティアラを被り、もはや蒼白に近いレベルまで白い肌。
顔の左半分と両腕の一部を覆う刺々しい闇と、残った片目から流れる黒い涙により、神聖さと悲哀の絶妙なバランスを保っている美少女。
『ああ。……ああっ!』
俺は少しふらつく足を何とか踏ん張ってその場に立つ。こればかりはあの時のように倒れたままの姿じゃいられない。
『それは結構。及第点ね。……もし前のように立てないままなんて事だったら、あれから碌に成長もしていない相手を守らなきゃならないのかと落胆していた所よ』
『胆に銘じてきたからな。
暴力的な正義を払うのは優しき絶望。
魔法少女。絶望の騎士ことセイさんが、今静かに俺の前に立ってココロと向かい合った。
という訳で前回の登場から何と一年以上の間を置いて、絶望の騎士セイさんが本格参戦です。
ちなみに余談ですが、復活の展開はいくつか考えていましたが、どこでどう復活したとしても最後にココロとぶつかるという流れでした。
仲が悪いのではなく、互いに譲れない物がある為に。
この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。
お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!