マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
注意! 今回独自設定タグがかなり仕事します。
原作遊戯王なのになかなかデュエルしない話があるんですって。……どこの話でしょうねぇ?
向かい合い見つめ合うセイさんとココロ。幻想体同士である前に魔法少女同士。何かしら因縁があるのだろう。
先に口を開いたのはセイさんの方だった。
『それにしても……まさか久しぶりに外に出るなり相手が貴女とはね。
『今はセイって名乗っているんだね……うん。私もこんな形でまた逢いたくはなかったかな』
センパイ? 何か関係があるとは思っていたけど、思ったより深い関係のようだった。
『ねぇ。お願いだからちょっとだけ退いていてくれないセイちゃん。ワタシはその人を抵抗できなくして捕まえたいだけなの』
『却下ね。貴女がそう言って何人死なないぐらいにボロボロに……いえ。
セイさんは一度チラリとこちらを見たかと思うと、軽く両手を組んで何かに祈りを捧げるような仕草をする。すると、
キンっ!
一瞬金属音のような高音が響き、何かが俺を覆ったような気がした。それと同時に何やら力が漲るような感じがする。
『祝福っ!? セイちゃんアナタそこまでっ!?』
『そう。この祝福は特別性。
セイさんはそう言い終わると、いつの間にか周囲に出現した細剣を一つ掴み取り、そのまま軽く左右に振るってココロに突き付ける。
ココロは少し俯いてフルフルと震えていたかと思うと、すぐにキッと顔を上げてセイさんを睨みつけた。
『……そう。アナタはそっち側なのね。悪に加担する者もまた悪。なら愛と正義の魔法少女として、セイちゃんっ! ワタシはアナタを倒すっ!』
『センパイは昔から愛と正義の魔法少女である事に拘っていたわね。だから極端なまでに貴女が悪と定義した者を倒し続けた。それこそが最も
『お説教? 先輩に対して生意気ね』
『実体験を語ってるだけよ。自分の理想だけ見ていた貴女とは違ってね』
おいおい。なんかどんどん険悪なムードになってきたんだけど。しかし口喧嘩だけなら理路整然と相手を追い詰めていくセイさんの方が優勢だ。
今にも一触即発というそんな中、セイさんはこちらにそっと語り掛ける。
『バランサー。合図したら下がりなさい。いくら加護があるとはいえ、センパイと私の戦いに巻き込まれたらそう長くは保たないから』
『セイさんっ! だけどアイツは』
セイさんの仲間じゃないのかと言おうとし、ふわりと浮かぶ細剣の一本が仮面に突き付けられて口を閉じる。
『魔法少女は皆頑固でね。それぞれ自分の中に譲れない何かがあって、それを護る為に戦っていた。だから魔法少女同士の戦いも日常茶飯事。……これは
そこでココロを警戒しつつほんの僅かにこちらを振り向くと、セイさんはどこかシニカルでそれでいて綺麗な笑みを浮かべた。
『頭が冷えるまで軽く相手をしてくるわ。だから、
その言葉で俺が大きく後退るのと同時に、無数の細剣と星形弾が互いに打ち放たれた。
『アルカナ・スレイブっ!』
『舐めないでっ!』
弾の数と威力は僅かにココロの方が上。しかしセイさんの方が自在に宙を舞う細剣を操り、連射される星形弾を巧みに軌道を変えて明後日の方向へ飛ばしたり相殺していく。
『少し見ない間に腕が鈍ったかしらセンパイ? 精度はともかく遠距離火力だけなら群を抜いていたのに、今ではこんなにも簡単に相殺されて。……無様なモノね』
『っ!? ……このっ!』
セイさんの煽りを受け、ココロは顔を真っ赤にしてますます星形弾を連射する。
いやこれがヘイトを自分に向ける為だというのは分かるんだけど、セイさんの場合割と本気でそういうセリフも似合うから恐ろしい。
ヒュンヒュンと風を切って舞う細剣。壁や床に着弾する度結構な威力で爆発する星形弾。そんなものが飛び交う中で、俺はふとそんな事を考える。
だって現実逃避をしたくもなるってこんな状況っ!
『良いぞ良いぞ! 流石魔法少女同士のバトル。見応えあるねぇ!』
『いや危ないってディーっ!? もっと下がれっ!』
またドサクサ紛れに観戦しているディーを素早く引っ掴み、俺は下がれる限界まで下がって瓦礫の陰に隠れる。
『お前良く見世物みたいに観戦していられるな。ココロに見つかったら大事だぞ!』
『そりゃあ僕にとっては見世物だからね。それに今はこの通り。互いが互いに集中しているからそう簡単にバレは……うひゃっ!?』
ほら見ろ。あんまり前に出るから流れ弾が飛んできた。
ギリギリを掠めて壁に飛んでいく弾をそろ~っと見、何も言わず瓦礫の陰に戻るディー。
『いやはや。観戦するのも命がけだ。しかし盛り上がっている所悪いけど、
『……ああ。分かってるさ』
『なら結構。……ああ。そろそろクライマックスだ』
ディーの言う通り、戦局がいよいよ動こうとしていた。
互いの攻撃を相殺し合い、膠着状態となっていた魔法少女同士の戦い。だけど、
ジャキンっ!
『……ふっ!』
その膠着の中先に動いたのはセイさんだった。両手に細剣を携え、周囲に他の細剣を浮かべたまま吶喊したのだ。
『えっ!? ……ならっ!』
当然ココロは弾幕を張って押し止めようとする。
弾が放たれる度に一本、また一本と展開する細剣が減っていく。だが着実にセイさんは距離を詰めていき、展開した細剣が全て無くなると同時にココロの懐に飛び込んだ。
右の細剣を繰り出すセイさん。それをステッキで弾き飛ばすココロだが、続いて左から第二撃が入る。
『貰ったわっ!』
『まだ……よっ!』
細剣が腕に突き刺さる直前、ステッキから強引に星形弾を発射し細剣を叩き落とすココロ。これでセイさんは両手とも細剣をなくして丸腰に。
この瞬間ココロは勝利を確信しただろう。他の細剣は皆地面に転がっていて、こちらへ操って飛ばすにしても時間がかかる。それだけあればフィニッシュブローが決まる。だが、
『甘いわね。……
ガシッ!
『なっ!? セイちゃんっ!?』
丸腰のまま自分に抱きついてくるとは、ココロも予想していなかったのだろう。傍から見ると一見百合百合しく見えるがそういう問題じゃない。
動きの止まった一瞬の隙を突き、セイさんは抱きしめたまま俺とは反対側の壁に向かって駆ける。
『壁に叩きつける気っ? だけどそれくらいなら』
『いいえ。……分からない? そこの壁がさっきからどうなっているか?』
『……あっ!?』
ココロは何かを勘付いて慌てて拘束から逃れようとするが、こう密着されてはステッキで攻撃しようにも自分も巻き添えを食う。
そうこうしている内に、
『せやあああっ!』
セイさんは壁にココロごとぶつかっていく。先ほどまで散々流れ弾が当たり、
ドンっ! ガラガラガラっ!
壁は崩れ、魔法少女二人はそのままの勢いでぐらりと外に飛び出した。ちなみにここは城の三階。つまりこのままだと地面にまっさかさまだ。
『危ないっ! セイさんっ!』
俺は慌てて走り寄って手を伸ばすが、代わりに手の中に飛び込んできたのは二枚のカード。一枚は先ほど実体化の際に使った絶望の騎士。そして、
『あ~っ!? それワタシのカードっ!?』
『こっちはこっちで何とかするから、貴方は貴方のやるべき事をなさいっ!』
わざわざ懐に飛び込み、抱きついて動きを封じたのは全てこの為。幻想体の核であるカードを奪い取り、俺に託してココロと一緒に距離を取る為。
ここまで託されたら受け取らなきゃマズいだろ。
『任されたっ!』
『……良い返事ね』
その言葉を最後に、二人の魔法少女は外に落ちていった。
俺は駆け寄って安否を確かめたいという気持ちをぐっとこらえ、大きく息を吸って気持ちを切り替える。何故なら、
『……さて。隠れてないで出てこいよ。もたもたしてたらまた誰かが来るかもだぜ? カミューラ』
「あら残念。もしその穴に近づいたら突き落としてあげても良かったのに」
あまりに派手な魔法少女たちの戦い。
いつの間にかその陰に隠れ、自らの気配を消してじっと機会を窺っていた女吸血鬼は、邪魔者が居なくなったとばかりにゆらりとその姿を現す。
「あわよくばあの化け物達が共倒れしてくれればと思っていたけれど、流石にそこまで上手くはいかなかったわぁ。まあ
カミューラがパチンと指を鳴らすと、中央の床から大きな球体がせり出して浮かび上がる。
『それがこの部屋の制御装置か』
「ええそうよぉ。さっきは咄嗟に床に格納していたから巻き添えを食わずに済んだようね。そしてぇ……カウントダウンは既に始まっているっ!」
カミューラはギラギラした瞳で叫ぶ。
「格納されて中断していた分を差し引いてもあと僅か。それが済んだ時、今度こそ封印は解け三幻魔の力は我が物になるっ!」
『それはどうかな? お前はさっき明日香を倒した時にこう言った。『幻魔の扉』が起動の鍵だって。実際明日香と戦っている時も中々幻魔の扉を使わなかった。つまり、
俺はカミューラに向けて立ち、デュエルディスクを腕に装着、展開する。
『デュエルしようぜカミューラ。俺が勝って明日香の魂を取り戻すか、お前が勝って三幻魔の力を我が物にするか。分かりやすくケリをつけようじゃないか』
という訳で次回やっとデュエル突入です。長かった。
ちなみにセイさんは原作では自分では剣を振るわずに飛ばして攻撃しますが、今作ではガンガン白兵戦もこなします。仮にも騎士がそういう心得が無い訳ないじゃないですか!
この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。
お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!