マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
と言っても最初はそんなに長くないのですが。
それとまたあとがきに幾つかの幻想体の簡単な説明と個人的な印象を乗せておきますので、気が向いたらどうぞ!
◇◆◇◆◇◆◇◆
それはどこまでも偶然だった。
別れて柱の制御用の部屋に向かった鍵の守り手及び精霊及びセブンスターズの連合軍だったが、一足先に辿り着いたバランサー以外がほぼ同時に到着したのだ。
そして、当然だがカミューラが居る部屋以外には防衛システムが備わっていた。カミューラの戦法とデッキをコピーした分身体である。
各自の反応は様々だった。
十代はどこかこんな状況でも楽しそうに、万丈目はただ冷静に己の敵を見据え、三沢は少女達を庇いながらも奮起し、吹雪は怒りを静かに心の内に秘め、カイザーは友の為に決意を固め、クロノス教諭は自らの中の僅かな恐れをグッと飲み込む。
精霊達は各自の決闘を邪魔立てされぬよう周囲に気を配り、自分と共にいる者に声援を送る。
アムナエルは最後のセブンスターズとして、そして一人の教師として事態がどう転んでもフォローに回れるよう静かに単独行動に移る。
そんな中、
「デュエル……ね。ええ良いわ。良いでしょう」
カミューラは静かにバランサーからのデュエルの申し出を承諾する。実際今のこの状況は、カミューラにとっては痛し痒しだ。
このまま時間を稼げば儀式の準備は整う。しかしこれ以上時間を掛ければまた邪魔者が来る可能性も高く、なによりあくまで起動の鍵は幻魔の扉。バランサーの推察通り、それをデュエル中に発動しなくては完全な起動には至らない。
バランサーはそれなりの使い手と(実に癪だが)カミューラは見込んでいたし、思わぬ魔法少女の乱入によって肉体のダメージも大きい。
しかしダメージ自体はバランサーも同じ。ならばあとは互いのデュエルの腕と運、そしてデュエルに懸ける思いこそが勝敗を分ける。
(吸血鬼一族の復興。それが私の……
こうしてカミューラはデュエルを承諾し、互いにデュエルディスクを展開する。
『分かりやすい話で大いに結構。互いにこれで負けられない戦いになったな』
「ええ。だけど、勝つのは私よ」
『いいや。……俺だ』
遊児対カミューラ
連合軍対カミューラ(分身体)×6
「「「「「デュエルっ!」」」」」
今、戦いの幕が切って落とされた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
遊児 LP4000
カミューラ LP4000
「……ふぅ」
「あら? 仮面を外すの? 仮面の方がハンサムなのに」
「今回は
さて。手札は……よ~しまずはこの手で行くか。
「俺は手札から『幻想体 母なるクモ』を攻撃表示で召喚! そしてカードを2枚伏せてターンエンドだ」
母なるクモ ATK1900
俺の場に黒い繭のような何かがどこからか垂れ下がり、表面に浮かぶ多数の赤い目が周囲をギョロギョロと見渡す。
「まあ気色の悪いモンスターだこと。でもそんなモンスター、さっさと仕留めてあげるわ。私のターン」
カミューラもカードを勢いよく引く。
「では早速攻めさせてもらうわよ。私はフィールド魔法『不死の王国-ヘルヴァニア』を発動!」
いきなりかよっ!? 俺が警戒していた2枚のカードの1つ。毎ターン手札のアンデットを捨てる事で場のモンスターを一掃する中世の城が展開される。……といっても現実でも城の中なので、中から外に出たというぐらいしか周囲に変化がないが。
「私は手札の『ヴァンパイア・ロード』を捨てて効果発動! 場のモンスターを全て破壊するっ!」
「むっ!?」
哀れ母なるクモは、何もしないまま城から吹き荒れる風で破壊される。スマン。
「だが、そいつを使ったターンは通常召喚が出来ない。今のお前の場はがら空きだぜ?」
「心配ご無用。前にも言った筈よ? アンデットは墓地からの復活を得意とする種族だって。私は魔法カード『生者の書-禁断の呪術-』を発動!」
そう来たか! 生者の書は自分の墓地のアンデットを場に特殊召喚できるカード。今コストで捨てたカードを復活させる気か。そしてもう一つの効果は、
「私はヴァンパイア・ロードを攻撃表示で特殊召喚! 更に効果により、相手の墓地のモンスターを1枚除外するわ。当然対象は今破壊した母なるクモ」
ヴァンパイア・ロード ATK2000
カミューラの場に貴公子然とした吸血鬼が出現すると同時に、墓地の母なるクモが除外される。踏んだり蹴ったりの母なるクモ。……精霊化してたらブチギレてそう。
「バトルフェイズ。ヴァンパイア・ロードでアナタにダイレクトアタック!」
吸血鬼が自らの纏うマントを広げると、そこから大量のコウモリが飛び出してこちらに向かってくる。なので、
「おっと流石にそれは止めさせてもらう。罠カード発動! 『幻想体 肉の灯篭』。このカードは発動時、モンスター扱いで場に攻撃表示で特殊召喚され、クリフォトカウンターを1つ乗せる!」
肉の灯篭 星3 ATK2000 CC1
俺の場に現れたのは、地面から生えた一輪の花だった。……いや、地面からというのは少しだけ語弊がある。地面の一部が盛り上がり、そこからつぶらな瞳の白い巨大な何かが外を覗いている。花はそこから生えているのだ。
地面に潜って頭からは綺麗な花。……ああ成程。チョウチンアンコウがモデルか!
「攻撃力2000っ!? ヴァンパイア・ロードと同じ」
「さあどうする? 相打ち覚悟で向かってくるかい? ちなみにコイツはデメリットとして、自分から攻撃は出来ない。完全に待ち構える用だな」
さっきの母なるクモと言いコイツと言い、レベルの割に高ステータスの奴は大抵デメリットが有る。まあそれを踏まえても結構有能なカードではあるけどな。
カミューラはしばし思案し、
「攻撃は中止よ。私はこのまま1枚カードを伏せてターンエンド。……どうせいざとなったら」
「ヘルヴァニアで薙ぎ払えば関係は無いってか? 大味だねぇ」
実に妙な話だ。さっきのヴァンパイア・ロードに繋げるまでの流れは実にスムーズだったのに、それ以降の動きは割と大雑把。
明日香との戦いでもそうだったけど、なんというか……予め想定していた動きには強いけど、その場その場のプレイングには粗が多いって感じだ。
「なら俺のターン。ドロー」
遊児 LP4000 手札4 モンスター 肉の灯篭 魔法・罠 伏せ1
カミューラ LP4000 手札2 モンスター ヴァンパイア・ロード 魔法・罠 ヘルヴァニア 伏せ1
「まずはそのヘルヴァニア頼みの性根に活を入れてやるっ! 俺はフィールド魔法『ロボトミーコーポレーション』を発動!」
「ちぃっ!? ヘルヴァニアがっ!?」
場に新たに展開されるのはこのデッキの代名詞ともいえる逆さまの生命の樹を模した形の巨大な施設。場に新たにフィールド魔法が展開された事により、ヘルヴァニアはガラガラと音を立てて崩壊する。
「おのれっ! だがそのモンスターは攻撃が出来ない。それに攻撃力2000のヴァンパイア・ロードを越えるモンスターをそう簡単に」
「出せないと思ってるのか? 確かにこの肉の灯篭は自分からの攻撃は出来ない。だが生け贄にはできるんだぜ」
その言葉と同時に、肉の灯篭は身体を光の粒子と化していく。
「そして場にロボトミーコーポレーションがある事で、幻想体の召喚に必要な生け贄は1体少なくなる。よって俺は肉の灯篭を生け贄に、手札から『幻想体 魔法少女 絶望の騎士』を攻撃表示で召喚!」
絶望の騎士 ATK1900
現れたのは先ほど俺を助けてくれたセイさんこと絶望の騎士。だが精霊としてのセイさんはまだ外で戦っているので、こっちに居るのはあくまで映像だ。
「……ふ、フフフフっ! な~にそれ。何が出てくるかと思えば、攻撃力1900? 寧ろさっきのモンスターの方が大きいくらいじゃない。それに知っているわよ。そのカードは自分以外のモンスターしか強化出来ない。そのカードだけで何が出来るというの?」
確かにカミューラの言う通りだ。絶望の騎士はあくまで誰かを守る騎士。他のモンスターが居なくては最大限の実力を発揮できない。だが、
「更に俺は永続魔法『幻想体 調整の鏡』を発動。このカードは1ターンに1度、場のモンスターを1体選択し、その攻撃力と守備力を入れ替える。対象は絶望の騎士」
俺の場に出現したのは、フレームに赤い染みの付いた大きな姿見。そこに絶望の騎士の姿が映ったかと思うと、その姿が白い靄に包まれる。
俺は知っている。セイさんは決して守る事だけしか出来ない訳じゃないと。能力の大半を守りに割り振っているだけで、スペックだけで言えばココロ……憎しみの女王にも引けを取らないと。
絶望の騎士 ATK1900→2600 DEF2600→1900
祈りを捨て、普段周囲に展開する細剣を両手に持った絶望の騎士は、普段よりも威圧的に敵……ヴァンパイア・ロードを見据える。
「なっ!? 攻撃力がヴァンパイア・ロードを上回ったですって!?」
「今この時だけ、守る者無き絶望の騎士は敵を討つ為だけに剣を振るう。バトルだ! 絶望の騎士で、ヴァンパイア・ロードを攻撃!」
号令と共に疾走する絶望の騎士。迎撃する大量のコウモリ達を的確に刺し貫いて突破し、青いマントをはためかせながらヴァンパイア・ロードに肉薄。
ほんの一瞬キラリと剣閃が光ったかと思うと、吸血鬼の貴公子は頭と胸を刺し貫かれて消滅する。
「ぐ、あああっ!?」
カミューラ LP4000→3400
「絶望の騎士の効果。戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを4個乗せる」
絶望の騎士 PE4
「俺はこれでターンエンド。おい。どうしたカミューラ? こんなのはまだまだ序の口だぜ?」
一応これでも俺……怒っているんだぜ。
明日香をほとんど反則のやり方で倒して人形にし、さっき城の仕掛けで俺達全員を仕留めようとした。そして極めつけは、よりにもよって
「覚悟しな。幻魔の扉だろうが何だろうが、俺がお前をぶっ潰すのに変わりはない」
俺はそうカミューラに向けて啖呵を切った。
という訳で、なんと一年ぶりの遊児のデュエル描写となります。
自分でも正直遊児のデュエルの組み立て方を忘れかけ、何度かこれまでのデュエルを読み返して流れを考える事になりましたとも。
以下、幻想体の説明と印象です。
『幻想体 肉の灯篭』
永続罠
効果
①このカードを(星3 ATK2000 DEF300 魚族 地)モンスター扱いで攻撃表示で特殊召喚し、クリフォトカウンターを1つ乗せる。
②このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードにPEカウンターを2個乗せる。
③このカードは攻撃宣言を行えない。
④自分のターン終了時、カードに乗っているクリフォトカウンターを1つ取り除く。
⑤自分のターン終了時、このカードにクリフォトカウンターが乗っていない場合、フィールド上のこのカードより攻撃力の低いモンスター1体を破壊する。対象が居ない場合コントローラーは1000ダメージを受ける。その後このカードにクリフォトカウンターを1個乗せる。
常に地面に潜っている待ち伏せ特化の幻想体。こう見えて危険度は下から二番目のTETH。ランク詐欺の一種。
普段はおとなしいのだが、一度脱走すると近くに寄ってきた奴をいきなり捕食するという厄介者。おまけに特性上視認が困難な為、知らない内に職員が食べられている事もしばしば。
ただ他の脱走している幻想体にも襲い掛かるので、上級者は対脱走幻想体用罠として使う事もあるとかないとか。
『幻想体 調整の鏡』
永続魔法
効果
①1ターンに1度発動出来る。フィールド上の表側表示モンスター1体を選択し、そのモンスターの攻撃力と守備力を入れ替える。
②1ターンに1度発動出来る。フィールド上の表側表示モンスター1体を選択し、そのモンスターの攻撃力と守備力を500ポイント下げる。
③このカードの①、②の効果は1ターンにどちらか1つしか使用できない。
映した者の能力を変化させる不思議な鏡。
一説によると、平行世界の自分の可能性の一つを無理やり呼び出しているというがそれを確認する手段はない。
ただ異なる自分なので当然今の自分より能力が低い事もあり、使えば使うほどその傾向が多い。今の自分に満足できなければ、待っているのは衰退のみ。
常人では精神性まで変化して全くの別人になるという説もあるが、幻想体が使っても能力の変化だけで留まる様子。その本質が既に本体の影なのだから。