マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! 今回遊児のデュエル描写はほとんどありません。


遊児対カミューラ その五 策士は策にて崩れ行く

 

 それは、以前鮫島校長からセブンスターズとしての活動を巻きで進めるようお達しが来た時に遡る。

 

 穏便にタイタンがセブンスターズを辞めるべく考えを巡らせていた時に突然のこのお達し。タイタンや大徳寺先生とも考えたが上手い手は中々思いつかず、

 

「タイタン。……諦めてまた闇の世界行こうか。ちなみに炭酸は飲める方?」

 

 俺のこの言葉に仮面越しでも分かるほどにタイタンの顔が引き攣っていたのは当然の事だった。だが、

 

「勘違いするなって。あくまでこれは偽装。闇の世界に堕ちるまではその通りだが、その後()()()()手段があるんだよ。まあ絶対じゃないから賭けになるけど……乗るかい?」

 

 

 

 

「しっかし隠れ潜んでいる時間が長かったせいか、もうすっかり漁師だな!」

「ああ。最初は一時的な仕事と思っていたが、案外才能が有ったのかもしれん。今ではシーフードスープを作らせたら船で一番だ」

 

 明日香の人形を手渡された俺の軽口に、タイタンは朗らかに返す。

 

「ど、どうなっているの!? タイタンは確かに契約不履行により闇の世界に堕ちた筈っ!? あの時我が僕たるコウモリ達が寮に入る事が出来なかったから現場こそ視ていないけど、反応は確かに消えていたっ!」

 

 どうにか網を外したカミューラが、タイタンを見て酷く驚いている。まあ死んだと思われていた奴がこんな格好で来たら誰だって驚くよな。

 

「な~に簡単な事だ。私はあの時確かに闇の世界に堕ちた。しかし、そこから戻って来ただけの事よ。これのおかげでな」

 

 タイタンが取り出したのは、潮風に晒されやや汚れている空き缶。そう。ウェルチアースのジュースの缶だ。

 

 仕掛けは単純。闇の世界に引き込まれた後、監視が消えたと判断した所でタイタンが事前に手渡しておいた()()()()()ウェルチアースのジュースを飲んだだけ。

 

「うちのウェルチアースの漁船は特殊でな。ジュースを飲んで意識を失った奴の所に駆けつけて攫えるんだよ。例え異世界だろうが闇の世界だろうがな」

 

 実際俺が墓守の異世界に行った時も、ジュースを飲んで眠ったらそこに駆け付けたくらいだしな。直接は見ていなくて人づてだが。

 

 あれが俺だから特別だったって可能性もあったので、タイタンにも適用されるかどうかは賭けだったが結果は無事成功だ。

 

 こうして理事長の目から逃れたタイタンは、ほとぼりが冷めるまでウェルチアースの漁船で漁師として働いているという訳だ。ちなみにどこからかちゃんとお給金も出ているらしい。ディー辺りからかな?

 

「ではバランサーよ。私は再び海に出てくる。丁度近くに魚群を捉えたのでな。……では、幸運を祈るぞ!」

「おう! そっちも頑張れよ!」

 

 タイタンは満足そうに頷くと、そのままエビ頭達と共に漁船で異界へと姿を消した。ほんの僅かに潮風の香りを残して。

 

 

 

 

「オノレェっ! よくも私の人形をっ!」

 

 一杯食わされたことに歯をむき出しにして激昂するカミューラ。だが、ひとしきり怒り狂ったかと思うと、すぐにまた冷静を取り戻す。

 

「……まあ良いわ。どのみちあの人形は保険。この幻魔の扉さえあれば勝利は私の物に変わりはないわっ! さあ幻魔よ! 私のこの魂を担保に、その強大な力を貸し与えなさいっ!」

 

 そう。あくまで他の魂が担保に出来なくなっただけで、自分の魂を担保に出来る事に変わりはない。

 

「アナタの残りLPは2200。幻魔の扉で場を更地にして、アナタの自慢の魔法少女でトドメを刺してあげるわ。オ~ッホッホッホ!」

 

 それがカミューラの描いた勝利へのプラン。だが……。

 

「っく。ククク。ハッハッハ!」

「何が可笑しいの? 敗北を前にしておかしくなったのかしらぁ」

「ハッハ……ああ悪い悪い。おかしいって言うかつい笑えてきてさ」

 

 盤面を完全に()()()()()()()カミューラの様子に、ついつい笑いが漏れてしまった。我ながら少し悪趣味だと思うが、まあこれまで散々やられてきたので軽い仕返しだな。

 

「さっき明日香にも言われただろう? 高笑いしている暇があったらさっさと効果を使えって。まあ……その効果が使えるもんならなぁ」

「何を言って……なっ!?」

 

 カミューラは背後に建つ扉を見て驚いた。何故なら、

 

「……ウソっ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()!? まだ対価すら支払っていないというのにっ!? ……何をしたバランサーっ!?」

「大したことはしてないさ。ただ俺は幻魔の扉の発動にチェーンしてカードを発動しただけ。この永続罠『業務終了』をな!」

 

 俺はニヤッと笑ってネタばらし。

 

 業務終了。場のPEカウンター5つをコストに、魔法・罠・モンスター効果の発動を無効にして破壊するカード。俺は場のロボトミーコーポレーションのPEカウンターを支払って発動していた。

 

 ロボトミーコーポレーション PE8→3

 

「まがりなりにも幻魔の力を宿した幻魔の扉。それを無効に出来るかどうかは少し不安だったが、無事上手く行ったようでホッとしたよ」

 

 幻魔の扉。とにかくこのカードがこのデュエル中一番の脅威だった。何せ一枚だけで相手モンスター全滅及び一枚蘇生のチートカード。アドバンテージの塊みたいなこのカードはなんとしても発動させる訳にはいかない。

 

 なら取れる手段は二つ。出される前にカミューラを倒すか、発動自体を無効にするかだ。

 

「発動を無効にしたんだから当然儀式の仕掛けも発動しない。お前の企みは、今ここに潰えたんだよ」

 

 俺は静かにそう宣言する。これでカミューラの目的である三幻魔の復活はご破算だ。だが、

 

「いいえまだ。まだよ。ここで私が負けたとしても、何度だって体勢を立て直して他の場所から設定をやり直せば」

「いいや。もうそういう問題じゃないな。他の鍵の守り手達が今頃ここ以外の部屋を押さえている筈だ」

「何を言って……あの防衛システムを、アナタや精霊使いならまだしもただの人間が突破できる筈が」

「それはお前の推測だろ? この学園の生徒を、教師を……そして、俺の()()()を舐めるな! どうしても信じられないって言うなら、調べてみるが良い。他の部屋の様子くらいここからでも分かるんだろう?」

 

 カミューラはそれを聞き、よろよろとした動きで部屋の中央に浮かぶ球体に歩み寄り、何かの操作を行う。最悪俺をこの部屋の罠で排除するという展開もあり得たが、今の弱り切ったカミューラはそうしなかった。

 

 そして、球体から映し出されたのは、

 

 

 

 

『シャイニング・フレア・ウィングマンで、ヴァンパイア・ジェネシスに攻撃! 吸血鬼は今光に消える! 『シャイニング・シュート』!』

『ギャアアアアッ!?』

 

 ハネクリボーと共に歩むヒーロー使いの主人公が、

 

 

 

『アームド・ドラゴンLV7の効果発動! 手札の『仮面竜』を捨て、その攻撃力1400以下の相手モンスターを全て破壊する』

『ワーウルフトピラミッド・タートルガッ!?』

『さっすがアニキ!』

『戦闘破壊でなければ後続を出せないのがこいつらの弱点だ。バトル! アームド・ドラゴンでダイレクトアタック! 『ジェノサイド・カッター』っ!』

 

 おジャマ達を率いる俺の推しが、

 

 

 

『古代の機械巨人の攻撃! 『アルティメット・パウンド』!』

『罠発動! 妖かしの紅月……何故発動シナイッ!?』

『お勉強が足りませン~ノ。古代の機械巨人が攻撃する時、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠を発動できない。でもワタ~シは使えるノ~ネ! 手札から速攻魔法リミッター解除を発動! 機械巨人の攻撃力が2倍になるノ~ネ!』

 

 誇りある学園の実技担当最高責任者が、

 

 

 

『俺は儀式魔法エンド・オブ・ザ・ワールドを発動! 手札の破滅の女神ルインを生け贄に、終焉の王デミスを儀式召喚する。降臨せよデミス!』

『ナッ!? ソンナカードオマエノデータニハッ!?』

『生憎だったな。俺は常にデッキを試作し続けている。これはその一つだ! デミスの効果。LP2000を支払い、このカード以外の場のカードを全て破壊する。全体除去が自分の専売特許だと思うなっ!』

『がんばれ~! 三沢お兄ちゃんっ!』

 

 レティシアに応援されるラーイエローのトップが、

 

 

 

 ここ以外の部屋の防衛システムを次々と打ち破っている様子だった。

 

 

 

「そんな馬鹿な!? ありえないっ!?」

「カミューラ。確かにお前は策士としては有能だった。たった一人で情報を集め、儀式の場を整え、三幻魔の復活まであと一歩の所まで行ってみせた。……だけど、一つだけミスったな」

「私が、ミスですって!?」

「ああ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。一度デュエルして手の内を晒した以上、それに対応されるのは当たり前だろ?」

 

 明日香があれだけ苦戦したのは、カミューラが()()の相手だったからというのが大きい。情報の有る無しは戦いを大きく左右するからだ。

 

 だが一度見せた以上、如何に強力な幻魔の扉やヘルヴァニアがあったとしてもやりようはある。

 

「こんな単純な事も忘れて人間を過小評価した。結果として全防衛システムはこうして破られた。……それがお前の敗因だよ」

 

 と言っても映像では何故か吹雪とカイザーの場面が出ていなかったが、まああの二人がガチの勝負で負ける筈もなし。おそらく()()()()()()()()()()()()()()()んだろう。

 

「そして、こっちもいよいよ大詰めだ。幻魔の扉は破られた。他に何かやる事はあるか?」

「……私はこれでターンエンド」

 

 カミューラは力なくターンエンド宣言をする。サレンダーしないのは彼女なりの最後の意地か。

 

「なら、このターンで終わらせる。俺のターン……ドロー」

 

 

 

 遊児 LP2200 手札3 モンスター 憎しみの女王 魔法・罠 ロボトミーコーポレーション 調整の鏡 業務終了

 カミューラ LP500 手札1 モンスター 不死のワーウルフ 魔法・罠 なし

 

 

「ロボトミーコーポレーションの効果。デッキから3枚めくり……対象は無かったのでそのままシャッフル。手札から『幻想体 宇宙の欠片』を攻撃表示で召喚」

 

 宇宙の欠片 ATK1000

 

 俺の場に子供の落書きをそのまま実体化させたような不定形のモンスターが出現する。

 

「バトルだ。宇宙の欠片でワーウルフに攻撃! そしてそこで宇宙の欠片の効果発動!」

 

 攻撃宣言と同時に、宇宙の欠片の不定形の姿の中で唯一形のしっかりとした場所。ぴょこんと上部に突き出ているハート形の付属物が微かに震えだす。

 

「このカードが攻撃する時、相手に500の効果ダメージを与える。わざわざワーウルフを戦闘破壊する事もない。これで終わりだ」

 

 宇宙の欠片から放たれたどこか不気味な音波が、ワーウルフをすり抜けてカミューラのLPを削り切った。

 

 

 カミューラ LP500→0

 

 

 

 デュエル終了。遊児WIN!

 




 という訳で、最後はあっさりですがカミューラ戦終了です。切り札たる幻魔の扉を破られた以上これ以上は引き延ばすだけですからね。

 しかしまだ問題は残っているので、学園祭編はもうしばらく続きます。暴れている誰かさんを止めなくてはならないので。
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