マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! 今回は思いっきり独自設定タグが仕事します。

 いくら何でもこれはないだろうと感じた読者様は、この作品内においてはこういう手もあり得たかもしれないと温かい目で見守っていただければ幸いです。


扉の対価を払う時

 

『ふ~はっはっは! 変な扉に逃がしはせんぞ吸血鬼め。私だけ計画が失敗するなど冗談じゃない。おとなしくお前も捕まるが良いっ!』

 

 ヘルパーから伸びるワイヤー。そしてそのワイヤー越しにネクが伝わらせる白い光によって、カミューラの幽体を繋ぎとめていた。だが、

 

 ギシリ。ギシリ。

 

〈ピっ!? ピピっ!?〉

『ぐおっ!? おのれっ!? 逃がすかっ!』

 

 ワイヤーが悲鳴を上げる程の強い力で、幻魔の扉から伸びる手はカミューラの幽体を引っ張り続ける。自信満々にやって来たネク達だったが、ズリズリと僅かずつ引きずられてあまり余裕はなさそうだ。

 

「良いぞネク! もう少しこらえてくれ!」

 

 俺もカミューラの身体を置いて急いで綱引きに加勢し、綱の端を罪善さんも咥えて一斉に引く。だが、

 

「くそっ! なんて力だ。引きずり込まれないようにするだけで手いっぱいだぞっ!?」

『あ、そ~れ。そ~れ。頑張れ頑張れ久城君!』

「応援してる暇があったらお前も引っ張れっ!」

 

 音頭取りのつもりかディーが拍子をとるのが何とも言えない。しかしこのままじゃジリ貧だ。こうなったら他の鍵の守り手なり幻想体達が来てくれるまで持ちこたえるくらいしか。

 

 ズ~ンっ!

 

 んっ!? 何だ今の音は?

 

 ズ~ンっ! ガラガラガラ。

 

 気のせいかと思ったら、外から鈍い音と何かが崩れるような音が聞こえてくる。一体何が……そう思った時、

 

 

『ギャオオオオンッ!!』

 

 

 外からとんでもない咆哮が響き渡るのと同時に、魔法少女達が落っこちた壁の穴とはまた別の場所をぶち抜いて、()()()()()()()が部屋に突入してきた。それは、

 

「……デカい……ヘビ?」

 

 それは青白い姿の巨大なヘビのような何かだった。

 

 黒く落ち窪んだ眼窩。ピンク色の下顎と同色の蛇腹。そこまでなら軽く大の大人を丸呑みに出来るサイズ以外は普通のヘビと大差ないが違うのはその後。

 

 ウロコと羽が混ざったような紫の翼を持ち、頭部の横には一見耳にも見える筋張った手。どこかハートのようにも見える背ビレを生やし、その胸元にはどこかアンバランスな可愛らしい()()()()()()()を付けている。

 

『な、何だこの化け物はっ!?』

 

 そうネクが驚きの声を上げる中、異形が突如こちらに向けて口を開き、

 

『危ないっ!?』

「おわっ!?」

 

 その口からビームが飛んでくるのと、俺の目の前にどこかトランプのスペードのような紋章が盾のように拡がるのはほぼ同時。

 

 極太の光線が紋章に受け止められ、どこかガラスが割れるような音を立てて消失した。

 

 

 

 

『無事……とも言い切れない状況ねコレは』

「セイさんっ!」

 

 ヘビの開けた穴から、セイさんが飛び込んできて俺を庇うように立つ。しかしその姿はあちこち傷つき、綺麗だったドレスも少し焼け焦げている。

 

 ヘビはビームを吐き終わると、様子を窺うように暗い瞳で周囲を見回している。

 

『今のでさっき私が与えた祝福が消し飛ばされた。次はもう防げないわよ』

「セイさんっ! 大丈夫かその格好っ!? それにこのデカいヘビは一体」

『私の心配より自分の心配をしなさいっ! あれは……()()()()よ』

「センパイって……えっ!? あれ()()()かよっ!?」

 

 俺の知ってるココロと大分違うんですけどあのヘビ。……いや待てよ? よく見るとあの青とピンクの配色はココロの服に近いし、胸の辺りに付いているリボンも見覚えがある。

 

 もしかしてあれ貪欲の王の化け魚バージョンと同じくクリフォトカウンター0の暴走状態かっ!?

 

『何とか一対一で抑え込んだのは良いのだけれど、それまでに色々溜まっていた物が爆発して暴走したの。ああなったらエネルギーを使い果たすか力尽くでおとなしくさせるかしか戻る方法はないわ。さっきまで外で駆けつけてきた大鳥と審判鳥と一緒に戦っていたのだけど、急に何かに反応してこっちに』

「それは多分……あれだ」

 

 俺は真後ろの方にある実体化した幻魔の扉を指し示す。ココロが乱入しても尚ワイヤーを離していないのは、我ながらトラブル続きで正常な判断が出来なくなっているせいか。

 

『……成程。強い闇の力を感じる。だからセンパイが引き寄せられたのね。審判鳥達も反応していたし。今ビームを撃ったのも、貴方ではなく貴方の後ろの()()狙ってのこと。なら貴方がその射線から離れれば』

「無理だ。今力を抜いたらカミューラが引っ張り込まれる。それにもし避けても扉ごとカミューラが吹っ飛ぶ」

『そんな事言ってる場合っ!? 見なさいっ!』

 

 セイさんに促されてヘビと化したココロを見ると、大きく息を吸って第二射の準備を始めている。

 

『もう時間は無いわ。その女は敵だったのでしょう? 何ならこのまま扉に引き込まれても良し。扉ごと吹き飛ばされようが知ったことですか。まさか私の仕える主は自分の命よりも他人の命を優先するようなバカではないでしょう?』

「いいや。そうじゃない。……そうじゃないんだセイさん」

 

 セイさんはあくまで()()()()()()を第一に考えてくれている。実際本当にどうしようもなくなったら俺も自分の命を優先するくらいには薄情者のつもりだ。だけど、

 

「それじゃあ()()()()()()()。俺も、ネクも、ヘルパーも、鍵の守り手達も、負け逃げなんて許さない。きちんと自分のやった事を謝罪させないと気が済まない。それに……」

 

 俺はそこで言葉を切り、どこまでも単純な答えを返す。

 

「見捨てたりしたら後味が悪いだろ? 折角の祭りをそんな気分で過ごしたくないから俺はカミューラを見捨てない。それに、そんな()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だしな。だからだよ」

『……貴方って人は』

 

 セイさんが呆れたような、それでいてどこか笑っているような顔でそう呟く中、

 

『ぬおおっ!? そっちの化け物ヘビもそうだがこっちももう限界だっ!? 口惜しいがもう離す。離すぞ我が生け贄(遊児)よっ!』

〈ピ、ピピッ! ワイヤーの耐久値減少中。推定一分後に破損する可能性87%。レスキュープロセスを中断しますか?〉

 

 げっ!? あっちももう限界だ! 前門の幻魔の扉に後門の暴走ココロ。一体どうしろってんだこの状況っ!?

 

『……手はあるわ。そこの女を助けつつ扉を何とかする手は』

「本当か!?」

『ただしそれにはかなりの量の力が要る。周囲に満ちた力の流れから集めていたんじゃ間に合わないから、今の貴方から直接貰い受ける事になる。それこそ倒れるギリギリまでね。それでも良い?』

 

 その言葉と共に、暴走ココロの口から淡い光が漏れ始める。向こうもいよいよぶっ放す気か。ならこんな状況で返せる言葉は一つ。

 

「頼む! 皆を護ってくれ! セイさん」

『……この身に懸けても。我が主様』

 

 

 

 

 遂に溜まったエネルギーが目に見える程になり、あとはその口から放出するだけ。そんな暴走ココロの前に立ち、セイさんは静かに両手を組んで祈りを捧げる。

 

 祈りと共に、細剣がどこからともなく現れる事十数本。ズラリと列を成して周囲に滞空するのはどこか壮観でもある。

 

『良い? チャンスは一度。タイミングを間違えないでよ』

「ああ。分かってる」

『良いからさっさとやれっ! もうホントに限界だっ!』

 

 ネクの願いを聞き届けたのかどうか知らないが、

 

『ギャオオオオン』

 

 暴走ココロはこれまでで最大級の光線を撃ち放った。

 

 多分これまでのセイさんとの戦いでは、口では倒すだのなんだの言いながらもどこか仲間としての手加減があったのだろう。しかし暴走中のココロにそんなものはなく、自らの狙う扉ごと俺達を飲み込むべくビームが伸び、

 

『……クッ!? うううぅっ!』

 

 セイさんの細剣が持ち主を護るように集まりビームを押し止めた。しかし、少しずつその勢いに負けて細剣からピシピシと嫌な音が響く。

 

 このままじゃすぐに突破されるだろう。だけど、

 

『遊児っ! 今よっ!』

「ああっ! たっぷり持ってけっ!」

 

 その瞬間。俺の身体から何かが抜け出ていく感覚があった。それは俺の持っているデッキ。その中の絶望の騎士のカードに流れ込み、それを通してセイさんに力を与える。

 

『ハアアアアアッ!』

 

 気合一閃。祈りを解いたセイさんは、空中で押し止められていたビームを真横から細剣を一本飛ばして刺し貫く。

 

 当然それだけではビームを消し去ることは出来ない。しかし()()()()()()ことは出来る。

 

 その一本だけに制御を集中し、細剣に沿う様にビームの軌道を調整。結果、ビームは俺達の頭上に僅かに角度を変える。そして、

 

『もう……一回っ!』

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それを、更に上から飛来させることでさらに角度修正。

 

 カミューラの幽体すれすれになるようビームは再度軌道を変え、そのまま扉へと向かう。そう。

 

 

「人一人の魂とまではいかないが、魔法少女達の全力の一撃だ。()()()()()()()()()()としては充分だろっ! だからさっさと扉よ閉まれぇっ!」

 

 

 吹雪や明日香の魂でカミューラが代用しようとした以上、扉は本人の魂以外でも支払いは利く。ならばそれと同価値程度のエネルギーを打ち込めば良い。そして、

 

 

 ギギィ……バタン。

 

 

 扉は、静かに閉じられた。

 

 消えゆく後に残されたのは、力を使い果たし元の少女の姿に戻って眠るココロと、幽体が戻ったものの意識を失ったままのカミューラの姿だった。

 




 という訳で、カミューラ生存(原作でも幻魔封印後に復活はしている筈だけど)ルートに入りました。

 扉の対価を別の物で支払うというのは完全に独自設定です。少なくとも別の魂では代用できる訳なので、精霊の魔法少女の全力の一撃(ココロの方の大半は元々七精門から漏れ出た分ではあるけど)ならそれなりに支払いが効くというゴリ押し理論です。

 三幻魔には原作で他の精霊の力を吸収する描写も有ったので、別に要らない訳ではないという予想もあります。まあ支払い方がビームで直接扉の中にぶち込むという強引な手段だったのでアレですが。



 この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。

 お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!
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