マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
「終わった……のか?」
『……のようね』
扉が消えるのを見届けると、俺は大きく息を吐いて座り込んだ。
カタカタ!
「ああ。罪善さんもお疲れ様。セブンスターズと幻想体の同時対応なんてもう二度とゴメンだぞ」
『一つずつでももうしたくないわね。特に暴走したセンパイの相手は』
「あっ!? そうだ!? ココロはもう大丈夫なのか?」
今は元の可愛らしい少女の姿で眠っているが、起きたらまたあの大蛇になって暴れまわるんじゃないだろうな? そう心配して尋ねると、セイさんは心配ないわと薄く微笑む。
『あれだけ派手に暴れたから、多少はストレスも落ち着いたでしょう。酔っ払いと同じで暴走の後は直近の記憶が飛んでいるでしょうけど、しばらくは落ち着くんじゃないかしら』
セイさんがそういうなら信じるけど、記憶が無くなるっていうのは厄介だな。また俺悪党扱いされない? 何かこれからもストレス発散の方法を考えないとヤバいぞ。
『お~い。こっちの吸血鬼めはどうする? 個人的にはこうキッツ~イ仕置きをしてもらえると多少は憂さも晴れるのだが』
〈ピピっ! 生体反応やや微弱。休養を推奨します〉
ネクが悪~い笑顔を見せながら、カミューラを指差す。ヘルパーも目を点滅させながら軽いメディカルチェックを行っていた。
しかし本当にどうしたもんか。とりあえず一発かましてはやったし、闇のゲームで幻魔の扉が罰ゲームの代わりになったけど、その代価はエネルギーで支払われたから魂も無事だ。
しかしここまで大事を引き起こした以上何のお咎めも無しって訳にはいかない。アムナエルに引き渡すか学園側に引き渡すかは悩みどころだが、どっちにしても何らかの罰は降るだろう。
「まあその辺りはおいおい考えるとして、少し休んだら他のメンバーと合流してさっさと撤収を……何だ!?」
ミシッ! ミシッ!
その時周囲から何かイヤな音が聞こえてきた。まるで何かが崩れようとしているような。それと共に壁からも微かな振動が……まさかっ!?
『いけないっ!?
セイさんの言葉の瞬間、待ってましたと言わんばかりに天井からパラパラと細かい瓦礫が落ち始める。
チクショウっ! 複雑な仕掛けが作動する中あれだけ城中で暴れまわったからな。おまけに幻想体達も各所で実体化して戦っていたし、トドメとばかりに暴走ココロの乱入。城の耐久値に限界が来たんだ。
『マズいぞ
「いやちょっと待ってくれ。他の部屋の皆に逃げるように言わないとっ!?」
『それならご心配なく』
そこにふわりと現れたのは急にさっきから姿を消していたディー。今までどこに居たんだよ。
『こんな事もあろうかと、一足早く他の幻想体達を通じて避難を呼び掛けておいたよ。もうこの城に残っているのは君達だけさ』
「ナイスだディー。なら後はそこで寝てる明日香とカミューラ、ココロを叩き起こして……ぐっ!?」
もうひと踏ん張りと気合を入れようとしたら、急に足がふらついてバランスを崩す。だが、
「……なっ!? セイさんっ!?」
『礼も文句も後で。あれだけ体内のエネルギーを流し込んだらこうなるのも当然よ。私が運ぶからジッとしてなさい』
倒れかけた所をセイさんに支えられ、何とそのままお姫様抱っこの体勢になる。だからこういうの普通逆だってのっ!? それにセイさんだってまだ疲れがっ!?
『センパイっ! いつまで寝てるのっ!? さっさと起きなさいっ!』
カタカタ!
『すぅすぅ…………あらっ!?』
セイさんが飛ばした細剣に頬をペチペチ叩かれ、おまけとばかりに罪善さんの光を受けて、大きな欠伸と背伸びを一つしてココロは目を覚ます。
『ふわ~良く寝た! ……状況は?』
『もうすぐここは崩れる。悪党はそこで伸びてて向こうに要救助者一名。こっちの現
『OK! やっぱり人命救助は正義の味方の出番だよね!』
ココロが寝起きでぼ~っとしていたのも一瞬の事。直近の記憶が無いという話だが、セイさんの簡潔な説明にすぐにシャキッとして理解を示す。ここら辺はやはり付き合いの長さ故だろう。
『そこの穴から外へ飛び出すのはどう?』
『高さを考えると、私達だけならともかく要救助者も一緒となると難しいわね』
『じゃあ僕と罪善さんで城内を先導しよう。なるべく崩落の少ない場所を行くけど、多少の瓦礫は自分達で何とかしてほしいな』
『あっ!? アナタあの時の悪党っ!?』
『センパイ。今は目の前の悪党より救助の方が先決よ』
ディーを見てココロは反応を見せるが、セイさんが咄嗟に止めて事なきを得る。記憶は一体どこからどこまで残っているんだろうか?
『……仕方ない。そこの悪党さん。お仕置きは
『結構。じゃあ確認するわ。ディーと罪善が先頭。センパイは降ってくる瓦礫を弾きながらそれに続いて。ヘルパー達は中衛で二人の搬送に専念。私は最後尾で遊児を運びながら全体をサポートするわ』
『むぅ。指図は気に入らんが、割り振りとしては的確か。またカミューラが逃げないように私が見張るのも納得だしな』
〈ピピっ! 要救助者固定完了! レスキュープロセス実行可能だよ!〉
意識の戻らない明日香とカミューラをワイヤーで固定し、その傍についたネクごとヘルパーがアームで持ち上げる。いやホントに家事ロボットの範疇越えてないかヘルパー? 有能すぎじゃね?
『では久城君。号令を』
「いや何で俺っ!? ……じゃあこの格好で失礼して、皆! 逃げるぞ!」
『『『お~!』』』
一難去ってまた一難。城内脱出作戦が始まった。
ダッダッダッ!
ディーの先導の元、あちこちひび割れ崩落を始める城内を駆け抜ける(俺はお姫様抱っこのままだが)俺達。そんな中、
キイキイっ!
『うおっ!? 何だこのコウモリ達はっ!?』
城内にはあちこちにコウモリ達が飛び回っていた。カミューラが倒れた事で指揮系統が破壊され、おまけに城も崩壊寸前とあってはパニックになっているのだろう。
『悪党の手下ね! 任せて! ここはワタシがっ!』
「わぁ~っ!? ちょっと待ったココロ! 今はそんな場合じゃないって!?」
いきなりまたステッキからビームをぶっ放そうとするココロを必死に押し止める。こんな所でビームなんか出したらそれこそ城が完全に崩れるぞ!?
「見た所こいつらにもう敵意はない。なら邪魔さえしなきゃこっちから手を出さなくても問題ないだろう。それに……こいつらはあくまでカミューラが心配なだけのようだし」
実際カミューラの姿を見た途端、少しではあるがコウモリ達がおとなしくなった。光に対する盾代わりにされていたが、思いはどうあれ従っていたのは間違いないのだろう。
そうしてコウモリ達をスルーして走っていたのだが、
『こいつら着いてくるぞっ!? 速度を上げて振り切れヘルパーっ!』
「ああもうほっとけネクっ! こうなったらこいつらも一緒に脱出だ」
どんどんカミューラ目当てに合流してくるコウモリ達。あくまで一緒に来ているだけなので邪魔になっていないし、なんと器用にもカミューラ目掛けて降ってくる瓦礫を魔法少女達と協力して弾くなんて事までしている。
『やるわね。流石カミューラの子飼い。パニックさえ落ち着けばここまで出来るか』
『ワタシとセイちゃんだけでも出来たけどね! さあ行くわよ!』
走る。走る。走る。
通路を駆け抜け、瓦礫を飛び越え、階段を駆け下りる。そして、
カタカタ!
『あった! 出口だっ!』
前方に見えてきたのは城の正門。周囲を覆っていた霧も晴れつつあり、やや陽は傾いているものの夕暮れというにはまだ早い。その光が城の外を明るく照らしていた。
『もう少しだよ! 皆頑張って!』
ココロの檄とゴールが見えた事で全員が奮い立つ。あと残るはこのエントランスのみ。ここさえ抜ければ、
『……っ!? チィッ!? 各自頭上注意っ! 大きいのが来るわっ!』
あともう少しの所で、セイさんの警告に頭上に目を向ける。そこにはこちらに向かって降ってくる一際デカい瓦礫があった。
『今こそワタシの出番ねっ! セイちゃんカバーよろしくっ! 喰らえぇっ!』
ココロがステッキから星形弾を乱発して瓦礫を迎撃する。瓦礫は爆砕し、掌大の無数の破片となって雨の様に降り注ぐ。だが、
『私が主人を……仲間を守れないような騎士だと思って? 言われずとも守り切ってみせるわっ!』
俺を抱えているのはかつて誰かを守り続けた守護騎士。
たかだか飛んでくる瓦礫の破片程度何するものぞとばかりに十を超える細剣が宙を舞い、破片を更に中心を貫いて小さくしていく。俺達の所に届く頃にはすっかり粉々となり、ちょっと口に入ってじゃりじゃりする程度だった。
そして、
『出たぞっ!』
『まだよっ! 城から出来るだけ離れてっ! 崩れるわっ!』
ガラガラガラガラ。ズシャアァンッ!
俺が駆けるセイさんに抱えられながら背後を振り向くと、そこに見えたのは轟音を立ててカミューラの城が崩壊していく様子だった。
という訳で城が崩壊しました。
残しておいて何かに使えないかなあとも考えたのですが、拠点としてはデカすぎるし使い所も3年目の異世界編に一緒に転移するぐらい(それにしても学園に立てこもるのとあまり変わらない)で、どうせなら景気良くぶっ壊そうとこんな感じになりました。