マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
「……あんのクソ理事長っ!?」
通信が切れるなり、仮面を取った俺の口から些か汚い言葉が出たのは許してほしい。
何せ内容が内容な上、幻想体達には罪善さん以外留守番を頼んだので、この場には事情を知っているアムナエルこと大徳寺先生と罪善さんしか居ないのだから。まあ布で隠している下で、アムナエルが苦笑しているのは仕方ないが。
カタカタ。
「落ち着けっていうのは分かるけどさ罪善さん。な~にが『カミューラはセブンスターズを解任した
「だが、多少こじつけではあるが筋は通っている。元々バランサーとしての君はこの戦いに最初からずっと関わってきた。あの方からすれば今更参加者としての立ち位置になっても変わらないという事だろう」
大徳寺先生はそう言うが、中々簡単には割り切れない。
それならカミューラに負けた明日香はノーカンではと反発したが、こちらはまだ除名する前だったからと普通に負け扱いだったし。
そして、最大の問題は、
「何で
この強制はおそらく、正直勝敗よりデュエルで得られるエナジーが狙いの理事長としては、闇のデュエルの方が得られる分が大きいからという事なのだろう。
普通のデュエルならまだ譲歩しても良い。手を抜くと勘づかれそうだから全力でいくが、残っている鍵の守り手は十代と万丈目、そしてクロノス先生だ。全力で行ったってまあ多分こっちが負けるだろう。アニメ的な大筋に影響があるとは思えない。
しかしだ。これが闇のデュエルとなると話が変わってくる。なにせ勝敗に関わらず、互いの肉体と精神にダイレクトアタックをかます戦いだ。おまけに敗者はもれなくとんでもない目に遭う。
タニヤやアビドス3世のように互いへのダメージを抑える事は可能だが、それにしたって普通のデュエルよりダメージはデカい。
俺が酷い目に遭うのは当然嫌だが、それを相手にするのも御免だ。幻想体達に頼めば多少は軽減も出来るだろうけど、闇のデュエル中に相手もとなると消耗が激しすぎる。どうしたもんか。そこに大徳寺先生からの提案が入る。
「ではこういうのはどうだろうか? 指名されたのは君だが、特例として他のメンバーに協力を求めた場合そのメンバーも動くことが出来る。私が全員と戦おう」
「ですが……大徳寺先生。体調の方は?」
「心配することは無いさ。これまでの戦い。ずっと君に任せて身体の養生に努めてきたんだ。先のカミューラの件で多少消耗したとはいえ、今なら全力の闇のデュエルでも数度は耐えられる」
逆に言えば数度しか全力だと身体が保たないのか。これはマズいな。
「……それはいったん保留で。いくら何でも全員を相手取ったら大徳寺先生でもキツイでしょうからね。任せるにしても一人か二人。どうしても俺が一人は戦わないとマズいよなぁ」
そうしてこれからの事を悩むこと暫く。どうにも妙案は浮かばず時間だけが過ぎていく。罪善さんが微妙に表情を変えて悩む様は少し愛嬌があって良いが、今はそれどころではない。
「……っと。もうこんな時間か。そろそろ俺も部屋に戻らないと。大徳寺先生も明日の授業の準備とかあるんじゃないんですか?」
ひとまず話を切り上げ、部屋に戻ろうとしてふとそんな事を尋ねる。だが、帰ってきた言葉はとんでもないものだった。
「ああ。それなら大丈夫。私は
「……はい?」
何故そんな事を? その疑問は、その後少しして明らかになった。
「えっ!? 大徳寺先生が!?」
集会を終えて部屋に戻る途中、本棟の医務室に明日香や吹雪さん、そしてカミューラのお見舞いに足を運んだ時、部屋の中から十代の声が聞こえてきて咄嗟に中を窺う。
「ああ。僕が闇の世界に堕ちる事になったきっかけ。特待生寮の地下で行われたテストデュエル。あの時テストデュエルを企画したのは大徳寺先生だった。セブンスターズと何か繋がりがあるのかもしれない」
どうやら吹雪が正気に戻った事で、自分がセブンスターズになった経緯を思い出したらしい。というか大徳寺先生の正体バレかけてんだけど。……なるほど。だからさっきあんな事を。
「だけど……あの大徳寺先生だよ? 何かの間違いとか、偶々企画したのが利用されたとかじゃない?」
「そうなんだなぁ。どう見ても闇のデュエルに関係あるって感じじゃないんだなぁ」
翔と隼人はそれぞれ疑問視している。これは普段の行いの結果だな。……まあ普段は割と情けない所が多い人だから、悪者だって言われてもピンと来ないかもしれない。精々人に自分の嫌いなおかずを押し付けるくらいだな。
万丈目は何も言わず、静かに腕を組んで何か考え事をしている。そして十代はというと、
「吹雪さん。それはいくら何でも考え過ぎだって。……よっしゃ! じゃあ大徳寺先生に直接聞いてみようぜ」
おっと。そういう流れになったか。ならここは、
コンコンコン。
「すいません。久城です。お見舞いにきました」
「んっ!? おお遊児っ! 入れよ! 今は鮎川先生出かけてて留守番してんだ」
俺が中に入ると、そこにはベッドに横たわる吹雪に、横の椅子に腰掛ける十代、翔、隼人のいつもの面々と万丈目。そして空いたベッドには、まだ目を覚まさない明日香とカミューラが横になっていた。
俺はさも今来ましたよという風に挨拶して空いた椅子に腰掛ける。
「吹雪さん。これお見舞いの品です。明日香の分も。……万丈目。皆の具合はどうだい?」
「ああ。天上院君は鮎川先生が言うにはじきに目を覚ますとよ。吹雪さんは少し疲れが溜まっているだけなので、一日休めば回復する。カミューラは……いつ目を覚ますか分からないらしい」
「そうか。十代に聞いたが激戦だったらしいな。……早く目を覚ますと良いな」
これだから闇のデュエルは嫌なんだ。明日香もそうだが仕掛けた側であるカミューラもこの有り様。失う物が多すぎるんだよな。
そのまましばらく世間話なんかをしていると、
ガララッ。
「ごめんなさいね。予想より会議が長引いちゃって」
そこに鮎川先生が戻ってきた。なんだ会議だったのか。十代達はこれくらいなんでもないよと返し、そのまま席を立つ。
「さて。じゃあそろそろ行くか。吹雪さん。俺達ちょっと大徳寺先生の所まで行って、直接事の次第を聞いてきますよ!」
「ああ。頼む。気を付けて行ってくれよ」
「お邪魔しました」
おっと。出発は良いが、先に手を打っておくぞ。
「ちょっと待った。大徳寺先生なら今居ないぞ」
「何だって?」
「何でも、数日ほど出かけるってよ。ここに来る前に会ってそんな事を言っていた」
嘘は言っていない。大徳寺先生は姿を隠すと言っていたからな。自分の部屋にはしばらく戻らないつもりだろう。まあ明日あの洞窟でまた会うんだけどな。
「げっ!? 数日って……その間にセブンスターズが来たらどうすんだよ?」
「さあ。そこまではなんとも。今回こんな激戦だった訳だし、しばらくは襲ってこないって踏んだんじゃないか?」
まあ正直今日明日で動こうとは思っていないしな。考える事もあるし、数日は少なくとも見積もっている。それがまとまったら鮫島校長経由で正式に挑戦状を送り付ける予定だ。
「マジか~。しかし困ったな。これじゃあ吹雪さんのことで話が聞けない」
「まあそこまで長くって訳でもないだろうし、聞きたい事があるなら帰ってくるまで待ったらどうだ? それとも急用か?」
「急用って言うか確認と言うか……仕方ない。という訳で吹雪さん。さっきの件を確かめるのは少し先になりそうです」
すみませんと頭を下げる十代だったが、吹雪は笑って軽く手を振る。
「構わないさ。それにやはりこういうのは後輩任せではなく、自分で確かめるものだからね。大徳寺先生が戻り次第僕の方から問い質すよ」
その言葉を最後に、お見舞いもお開きとなって皆で保健室を出た。この調子なら明日香も吹雪も問題なさそうだ。カミューラだけやや気にかかるが、こっちは気長に待つしかないな。
「だけど、セブンスターズもなんだかんだあと一人。対してこっちは出かけてる大徳寺先生を除いてもアニキ、万丈目君、それにクロノス先生の三人。もう楽勝じゃないっすか?」
「楽勝……とまではいかないだろうけど、こっちが有利ってのは間違いないんだな!」
レッド寮への帰り道。翔と隼人はそんな事を口にする。
そう思う気持ちは分からないでもない。俺が向こうに加わったとしてもまだこちらの優勢だ。だが、
「いいや。まだ分からないぜ。あのアムナエルって奴。アイツ……間違いなくメチャクチャ強い」
十代はまるで油断していなかった。それは翔や隼人と違い、実際にカミューラの城でアムナエルを見たからだろう。
デュエルを見た訳じゃない。しかし佇まいやら錬金術師としての力諸々を見れば、デュエルの腕も相応のものである事は簡単に想像できる。
「勝つ気でいるし、ワクワクもしてる。でもアイツからは何かそういうのとは違う凄みを感じた。なあ。お前もそう感じただろ万丈目……万丈目?」
そう歩きながら尋ねる十代だったが、万丈目は何か考え込んでいた。十代は少し不思議そうな顔をしたが、すぐに翔達との会話に戻る。そんな中、
「久城。ちょっと良いか?」
「んっ!? どうした万丈目? 何かあったか?」
考え込んでいた万丈目が不意に俺に話しかけてきた。しかし、
「お前は…………いや、何でもない」
一瞬何かを言おうとして、何かを躊躇う様に軽く首を振って先に行ってしまう。何なんだ一体? というか俺を置いていかないでくれよ!?
今回の話を書いている最中、遊戯王原作者である高橋先生の訃報が飛び込んできました。
この作品があるのは間違いなく原作者様のおかげであり、原作設定を使わせてもらっている身としては、正直かなりショックでした。
手向けなどと大げさな事を言うつもりはありませんが、遊戯王を題材とした作品がより多く冥界まで届く事を祈ります。