マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! 今回独自設定タグが少し仕事します。


悩んだ後は立ち上がるのみ

 

 さて。色々あって部屋に戻った俺なのだが、まだ妙案は浮かんでいない。それに、

 

 キイキイ。キイキイ。

 

「……はぁ。こいつらもいい加減どうにかしないとな」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。こいつらをどうするかも問題だった。

 

 こいつらはカミューラの従えていた奴らで、城の崩壊を受けて行き場を失いこちらに流れ着いてきたのだ。その数は少なく見積もってもニ十を超え、部屋の天井に逆さにぶら下がって大いに圧迫している。

 

『しかもこれで全部じゃなくて、残りはカミューラの目覚めを交代制で待っているんだから泣かせるよね。忠犬ならぬ忠コウモリって奴?』

「その辺りは主人の教育の賜物って奴なんだろうな。カミューラもアレはアレで残酷だけど有能なタイプだったし」

 

 しれっと出てきたディーに俺はそう返す。実際先ほど保健室に皆の見舞いに行った時、こっそりと窓の外からコウモリが見張っていた。見えないだけで他にも沢山居た筈だ。

 

 しかしこの部屋のコウモリ達はよく躾けられていて、フンなんかはほぼ全て外でするし、飛ぶ時以外はあまり鳴かないから隣の部屋の迷惑にならない。

 

 吸血コウモリだったらマズいなと不安だったが、意外な事にこいつらは果物なんかを好んで食べた。虫なんかも食べるし意外と雑食性らしい。まあ一斉に買って来たリンゴに群がってシナシナにしてしまったのはちょっとビビったが。

 

『しかし君もお人好しだねぇ。コウモリ達なんか追い出してしまっても良いのに、わざわざ住まわせるなんてさ』

『ピカピカさん! 追い出すなんて可哀そうだよ。遊児お兄ちゃんは優しい人だもん。追い出したりなんかしないんだよ!』

 

 どこかからかうように言うディーに対し、精霊状態のレティシアが目をウルウルさせて止めに入る。

 

 地味にレティシアこいつらを気に入っているんだよな。二、三羽優しく撫でたり、手ずから果物を食べさせたりと微笑ましく世話をしているぐらいだ。……抱えられているネクがコウモリから威嚇されるのはさておいて。

 

 ただレティシアはそう言うけど、俺はそんな良い人間じゃないんだよな。

 

「悪いけどレティシア。いくら躾けられているからって、ず~っとこの部屋に置くわけにはいかないよ。それにこいつらもカミューラが目覚め次第そっちに戻るだろうしね」

 

 正確に言えば、今ここに押しかけている事自体、主人の敵である俺を見張っているというのがメインだと思うんだけどな。

 

 下手に追い出すとこいつら外で何するか分からないし、全体の半分以下とは言えこっちに釘付けに出来るのならそれはそれでアリだ。まあレティシアに言ったように、あまり長い間は置いておく気もないけど。

 

 何故なら食費も馬鹿にならないからなっ! あと部屋がこれ以上手狭になったらキツイし。

 

 俺の言葉を聞いてレティシアもちょっぴり顔を俯かせる。……まいったな。こんな小さい子を悲しませるのはマズい。なので、

 

「な~に。心配は要らないさ。今日明日くらいはここに置いても良いし、明日は大鳥達に話してどうにか森に住まわせてもらえないか頼んでみよう。侵入者でなく住人扱いになれば、森で自分達で暮らしていくのも楽勝だろうからねこのコウモリ達は」

『そう言って、なんだかんだコウモリ達の世話を焼くのが遊児君なんだよねぇ』

「うっさい」

 

 軽くしっしと手を振ると、ディーは笑い声を上げながら姿を消した。まったくもう。

 

 

 

 

 ……しかし本当にどうしたもんか。俺はどっかりと椅子に腰掛けて頬杖を突く。

 

 今回の件。一番平和的な展開は()()()()()()()()()()()()()()()()。闇のデュエル断固反対。

 

 だがそれは問屋が卸さない。理事長がわざわざ俺を指名した以上、おそらく俺がやらなければ何らかのペナルティが入る。これはアムナエルこと大徳寺先生に代わってもらったとしてもおそらく同じだ。

 

 タイタンの様に闇の世界に堕ちるだけなら脱出の手段はあるが、俺の知らないそれ以外の何かだったら大変な事になる。なので戦い自体は避けられない。

 

 次に良いのはデュエルを開始してすぐ俺が降参(サレンダー)する事。少なくともデュエルはした訳だし、やらないよりはペナルティも少ないだろう。

 

 実際これまでのタニヤやアビドス3世、黒蠍盗掘団の例を見るに、負けただけならそこまで罰も酷くはなさそうだ。

 

 皆消える時も落ち着いたものだったし、苦しいという感じでもなかった。カードの精霊と死者なので生きている俺とは勝手が違うかもしれないが、そこはまあ良い方向に行くと考えよう。

 

 だが、この二つの案には大きな問題がある。それは、

 

「……()()()()()()()()()()()()。そこが問題なんだよなぁ」

 

 何せセブンスターズはぶっちゃけた話前座。全て終わった時点でおそらく理事長本人が出張ってくるのはほぼ確実だ。

 

 これまでちょこちょこ聞き出してきたディーの反応。及び大徳寺先生の話やアニメ的流れをメタ視点で推測すると、ほぼ間違いなく理事長が一年目のラスボスと言える。

 

 その実力は未知数だが、セブンスターズを従える者がまさかセブンスターズより弱いという事もないだろう。最低でもガチの大徳寺先生と同等以上と考えた方が良い。

 

 その上これまでの事を考えるに、強い闇の力を有している事も間違いない。それこそ耐性の無い人間では戦いにすらならないというのが大徳寺先生の言だ。

 

 そんなのが来るとなると、こちらも対抗できる人材をぶつける必要がある。そう。精霊使いである十代と万丈目だ。おそらくラストはどっちかのタイマンか、もしくはマンガ版のようにタッグを組んで戦うとかそんな流れだと勝手に予想する。

 

 だが本来の流れが俺が居る事でどう変わっているか分からない。ずっと審判役に徹してきたから大丈夫だとは思うが、大筋がどこかズレて最悪原作より弱くなっている可能性もある。

 

 つまり下手をするとラスボスにまさかの敗北……というオチもあり得る訳だ。そうなると非常にマズイ。三幻魔なんてものが復活して、俺が生き残れる未来があまり想像できない。

 

 ならどうするかというと、一番手っ取り早いのはそれぞれに実戦を積ませる事。少しでも闇のデュエルに慣れさせる事だ。それも自力でギリギリ乗り越えられるのが一番良い。

 

 俺がデュエルを放棄する事でその機会を奪うとなると、流石に少し考えてしまう。

 

 そしてもう一つの大問題。()()()()()()()()()()()

 

「全力のデュエルは数回まで。あの人の事だから、もう戦えないって意味じゃなくて本気で命を擦り減らして数回って意味そうなんだよな」

 

 そもそも俺がバランサーとして入った理由。それは少しでも、いや……せめて今の一年生が進級するまで大徳寺先生に生きていてほしいからだ。

 

 全力を出す度に擦り減らすホムンクルスとしての寿命。それも考えると下手に頼れない。かと言って大徳寺先生自身が最終的に、十代達が自分に勝って理事長に挑めるかどうか身体を張って確かめる気だってのは分かる。となると大徳寺先生の負担を減らすには、

 

「やっぱ俺がその分やらなきゃダメか」

 

 ちょびっとだけ、遊戯王世界らしからぬが警察などの国家権力に頼るという手も考えた。しかしこういう場合、権力者(理事長)が裏から手を回しているというのはお約束。何か確たる証拠があってももみ消される可能性がある。

 

 原作キャラでいう海馬社長クラスなら真っ向勝負でも何とかなりそうだが、今の今まで動きを見せないという事は何かしら動けない理由でもあるか、或いは対処する気が無いかだ。

 

 要するに外からの救済措置は無し。実力で何とかする正規ルートしか使えないという訳だ。

 

 

 ()()()()()() ()()()()()()()()

 

 

 ずっとそこで悶々している。やるべき事とそれに向けて出来る事はもう頭の中にあるのだが、他にもっと良い方法があるんじゃないかと理由をつけて肝心のその一歩を踏み出す決心が出来ない。

 

 

『ま~た悩んでるね。考え過ぎは君の悪い癖じゃないかい?』

 

 

 そんな時、またもやディーの光球が現れてどこか呆れたような口調で話しかけてきた。

 

「悩んじゃ悪いか?」

『君の場合答えが出ないんじゃなくて、答えは出てるけどどうにかギリギリまで理由をつけて逃げたい派だからね。そろそろグチグチ言ってないで腹括ったら?』

「……やりたくないなぁ」

 

 普通に見抜かれてるから嫌なんだよこの自称“元”神様。

 

『しょうがないな。じゃあま~た前みたいに、幻想体達に後押ししてもらうかい?』

 

 その言葉に、カードから次々幻想体達が精霊化して現れる。……そうだな。大徳寺先生からセブンスターズの事について尋ねるかどうか悩んだ時も、こんな風に皆に後押ししてもらったっけ。

 

『遊児お兄ちゃん! 笑顔! 笑顔だよ!』

『ふん。まあ辛気臭い顔をしているとレティシアが悲しんでこっちまでとばっちりを食うのでな。出来れば笑っていろ。まあ私が完全復活した暁には笑えない状況にしてやるがなっ!』

『大丈夫だって管理人さん! 管理人さんがもし動けなかったら、ワタシ達魔法少女が何とかしてみせるから! だってそれが正義の味方の役目だもの! そうだよねセイちゃん?』

 

 レティシアが、ネクが、ココロがそう口にする中、セイさんがゆっくりとこちらに実体化して歩いてくる。

 

『まあ最悪の場合だけどね。だけどどうしてもその場合力技になるから、アナタが望むような良い結末になるかは微妙な所。……それが嫌なら自分で立つ事ね。アナタの騎士が優しく言っている内に』

「優しい……のかなこれ?」

『優しいわよ。優しくなかったらこうして待っていたりしないもの』

 

 セイさんはそう言って静かに笑い、他の幻想体達も何も言わずに待っていてくれる。

 

 まいったな。ウチの幻想体達が頼りになり過ぎる。悩んでいたら後押ししてくれるし、最悪止まっても解決してくれそうな勢いだ。だからこそ、

 

 

「……よし。腹括ってやるとするか」

 

 

 俺はしっかりと椅子から立ち上がる。あんまり頼り過ぎるとそれはそれで良くないからな。ここは幻想体達には後押しだけにしてもらって、やはり自分で動かないと。とは言え、

 

『やっとやる気になったね。それで? まずはどう動くんだい? 早速また大徳寺君と打ち合わせでもするのかい?』

「ああ。それなんだがな。前々から考えていた手があったんだ」

 

 ただ考えてはいたけれど、やはり一人ではどうしても限界がある。なので、

 

 

 

 

「ちょっと()()()()()()手を貸してもらってくるよ」

『……ハイ?』

 

 さあて。これから忙しくなるぞ。

 




 という訳で、久々にうじうじモードの遊児が腹を括るまでの話でした。一回こうなると長いんですよね。

 ちなみに今回のコウモリ達の食性は独自設定です。吸血鬼の眷属と言ったら吸血コウモリですが、それにしては作中誰かの血を飲んだという描写はどこにもない。というかそれで被害者が出ればすぐに噂になる。となるとそれ以外の何かを食べる雑食性だと判断しました。……実にどうでも良い設定ですが。

 次回、腹を括った遊児が遂に動き出します。乞うご期待。
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