マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
「……あぁ~。疲れた。一、二時間くらいの筈なのに、体感で数か月くらい話し続けたみたいに疲れた」
『まあ内容だけなら一年近い期間の話だった訳だからね。あながち間違ってはいないか。お疲れ様』
珍しく労わるようなディーの言葉を聞きながら、俺は吹雪との話し合いを終えて夜道を帰路に就いていた。ちなみに行きはアムナエルに跳ばしてもらったのだが帰りは徒歩だ。
結局吹雪には俺のこれまでの事、おおよそ十代や万丈目に話したものと同程度を説明した。幻想体の事とかな。そして……大徳寺先生の体調の事や、代理としてセブンスターズに参加していたという事も。
吹雪も色々と言いたいことはあっただろうが、そこはぐっとこらえて最後まで話を聞いてくれた。境遇を考えれば怒り狂ってもおかしくはなかったんだけどな。そして、
『だけど本当に良かったのかい? 吹雪君への頼みはあれだけで?』
「ああ。体調如何ではいざという時の戦力に数えても良かったんだが、あの状態じゃ厳しい。ただでさえ完全に復調していない所にこの前のカミューラ戦だったからな」
正直吹雪は見た目以上に疲弊していた。本当ならこうして長い話をするのも避けた方が良いくらいで、途中途中で休憩を挟んだくらいだ。
そんな俺が何を頼んだかと言えば、
チャリっ!
この
『しかし考えたね。闇のデュエルで発生するリアルダメージ。それを闇のアイテムであるそれで中和しようなんて』
「まだ試した訳じゃないから確証はないけどな。ただ、これは半分に分かれた状態でもカミューラ相手にそれなりに効果があった。なら完全な状態なら或いはって思っただけだ」
これで上手く行けば、懸念だった対戦相手へのリアルダメージも軽減できる。自分への分はこのバランサー衣装と自前のペンダントで防げるからな。
話し終えて吹雪に頭を下げまくり、幾つかの条件付きで貸してもらえた。
簡単に言うと、ペンダントは必ず返す事。半分は十代の物なのでそちらにも許可を取る事。そして、近い内に
『大徳寺先生……ボコボコにされなきゃ良いんだけどね!』
「楽しそうに言うなよな。……実際吹雪からしたら完全にアウトだし、大徳寺先生もそこの所は分かっているだろうが、どっちにしてもそれはこの戦いが終わってからだ」
だから、戦いが終わっても長生きしてくれよな。大徳寺先生。そうじゃなきゃわざわざ代理をかって出た意味がないんだから。
「さあ。明日からも忙しいぞ! 決戦までにどれだけ準備を出来るかが勝負だ!」
諸々の根回しにデュエルの練習。いざという時の為の仕込み。やるべきことは沢山あるからな。
翌日。
「……別に僕は怒っていないよ。この寮から出られない僕をおいて学園祭を楽しんできた事も、楽しみにしていたお土産もすっかり忘れていた事も、全然怒っていないからね」
「本当に申し訳ございませんでしたっ!」
俺は茂木の寮にやってきて平謝りしていた。
だって茂木の奴、いつもはふにゃって顔してるのに今はちょっぴりキリッとしてるもの。横に浮いているもけもけもカードの『怒れるもけもけ』みたいにしかめっ面してるし。
「俺とした事が約束を忘れるとはとんでもない失態を。埋め合わせは必ずする。この通りだ」
『お祭りの屋台で買ったたこ焼きとか皆で食べちゃったの。ごめんなさい』
『何故私まで……まあここの奴らに悪印象を与えるのもマズいか。悪かったな』
ペコリ。
伏し拝むようにしばらく平身低頭し(レティシアやネク、テディもしょんぼりしながら謝って)、しばらくしてどうにか茂木も機嫌を直してくれる。
「まったくもう。……それで今日はどうしたの? いつもなら十代や万丈目君と一緒に来るのに。またセブンスターズって人達と戦っているの?」
「ああ。その事なんだけどな」
茂木には、以前から大雑把にセブンスターズの事を話していた。まああくまで大雑把になので、茂木からしたら少々大規模かつ過激な道場破りを十代達が迎え撃っているぐらいにしか思っていないかもしれないが。
しかし、今回俺が単身来たのには当然理由がある。
「実を言うと……
「へぇ。そうなんだ」
結構気合入れてぶっちゃけたら、そんな風にゆるりと返された。気が抜けるなぁ。
「という事があって、数日中に俺はセブンスターズとして戦わなきゃならなくなった」
「なるほど。そんな事があったんだねぇ」
「本当に分かってんのかな」
そうして俺は茂木にこれまでの事情を説明した。昨日の吹雪に続いてこれなので、何となく説明が上手くなっている気がする。……気がするだけかもしれないが。
ただ話してる間、レティシアや他の幻想体達が普通に茂木の所の精霊と遊んでいたので絵面だけ見ればほのぼのだ。
「それで? 僕に何をさせたいんだい?」
「話が早いな。実は……これの性能を試したいんだ」
俺は机の上に吹雪から借りたペンダントを取り出した。
「これは闇のアイテムで、持ち主を守る力がある。だけど実際どこまで防げるのかは確かめていない。自分で持つにせよ誰かに使ってもらうにせよ、ぶっつけ本番って訳にはいかんだろ。だから、
「それで僕のもけもけ達に協力してほしいって事? それは良いけど……君がやるの? 大丈夫?」
何がだと聞くと、茂木はほんの少しだけ普段より真剣な視線を向ける。
「知ってるよね? もけもけ達の力をまともに受けたらどうなるか。ペンダントの力を確かめるなら、受ける君はどうしても普段より自分から耐性を抑える必要がある。一つ間違ったら」
「心配してくれるのか? ……ありがとうな。だけど大丈夫だ。抑えると言っても少しずつ下げて経過を見るってだけだし、本当にいざとなったら」
『私が力ずくで正気に戻すから。安心なさい』
その言葉と共に、セイさんがフッと精霊化した状態で俺の横に立つ。それに、
カタカタっ!
『大丈夫だよ! 私もえいって遊児お兄ちゃんを立ち直らせてあげるのっ!』
『ふっふっふ! これは合法的に正気をなくした
『ふむ。まあ普段から貢物を欠かさぬ臣下を労ってやるのも女王の務めか』
『私はカウンセリングは専門外だが、魂を静めるだけなら多少は役に立てるかもしれないな』
『う~ん。よく分からないけど、そういうのってこのステッキで思いっきり叩いたら直るかな?』
罪善さんを始め、幻想体達が精霊化して最悪の場合に備えて待機してくれる。
「この通り。いくら脱力したってすぐにシャキッとさせてくれる頼りになる皆が付いている」
「そうだね。そうだった。……分かったよ。友達の頼みだ」
茂木もこれなら大丈夫だと判断したのか、自分のデッキからもけもけのカードを取り出す。
『もけもけ~!』
「もけもけも珍しくやる気を出しているみたい。じゃあ、始めようか」
「よろしく頼むぜ!」
30分後。
「本当に大丈夫かい久城君?」
「ああ。この調子ならまだまだ行けそうだもけ。もう少しもけもけの出力を上げてくれもけ」
『……ちょっと影響を受けてるわね』
『引っ叩いたら直るんじゃないセイちゃん?』
この調子で、実験はしばらく続いたもけ。
闇のデュエルはする。だけどその前に根回しをしちゃいけないなんて言ってないよな? という理論で早速遊児が行動を開始しました。やることが多いので大忙しです。
連載中の別作品『悪の組織の雑用係 悪いなクソガキ。忙しくて分からせている暇はねぇ』の方もよろしく!