マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
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「あのぉ……お茶です。どうぞ」
『ああ。ありがたい。頂こう。こちらお土産のクッキーだ。宜しければどうぞ』
翔がおっかなびっくり差し出したお茶を受け取ると、お土産を渡しつつペストマスクの口元だけを外してバランサーがズズっと啜る。
突然バランサーが訪ねてきたのには驚いたけど、結局扉の前で立ち話もあれだし中に入ってもらう事になった。
「おい十代。これは一体どういう事なんだな?」
隼人が不思議そうな顔をしているが、俺だって分からない。あとクッキー美味そう。……なら、こういう時は直接聞くに限るぜ。
「なあバランサー。それで今日はどうしたんだ? こんな夜に」
『ああ。その事なんだが』
バランサーはお茶を飲み干すと、サッと背筋を正しマスクを付け直して俺達に向き直る。
『今回はセブンスターズとしての活動とは別に十代。お前に個人的に話があってやってきたのだ』
「俺に? もしかしてデュエルするのか?」
そういう事であれば大歓迎だ。デュエルじゃ誰も嘘は吐けないからな。互いに腹を割って話すにはもってこいだ。
俺が早速デュエルディスクを出そうとすると、バランサーが慌てて止めてくる。
『やらんやらんっ!? 何でもかんでもデュエルに結び付けるんじゃないっ!? 今回お邪魔したのは、これについて頼みがあっての事だ』
なんだ。デュエルしないのか。そう思っていると、バランサーが懐から何かを取り出してテーブルに置く。……これはっ!?
「これっ!? この前までアニキが着けてたペンダントっ!?」
「……でもちょっと形が違うんだな」
「ああ。皆には話してなかったけど、カミューラとの戦いの時に吹雪さんが持っていたペンダントと合わさって形が変わったんだ。でも何でこれがここに?」
確かこのペンダントは、あの時吹雪さんに渡してそのままになっていた筈だが。
「って事は……もしかして吹雪さんからこれを奪ってきたんじゃっ!?」
「落ち着くんだな翔。もし奪ってきたんなら、こんな悠長に出すっていうのも不自然なんだな」
「確かに……そうだよね」
一瞬翔が怯えたようにバランサーを見たが、隼人の言葉に落ち着きを取り戻す。
対するバランサーはと言うと、ペストマスクのせいでまるで表情が読めなかった。
『まあいきなり見せられたらそんな反応をするのも仕方ない。だがこれは誓って奪ったのではなく、天上院吹雪と直接交渉して
「いや。そんな事しなくても信じるぜ。それでこのペンダントがどうかしたのか?」
そこはもっと疑えよとバランサーがぽつりと呟いたが、疑うも何もなぁ。
『こほん。それで今回の要件だが、このペンダントを一時的に貸してもらいたいのだ。吹雪から借り受ける際の条件の一つが、半分の持ち主である十代にも許可を取るという事だったからな。勿論ただで貸せとは』
「ああ。良いぜ」
『言わない。見返りとして……って!? 良いのか!?』
なんかバランサーがペストマスクごしでも分かるくらいに驚いている。あと翔と隼人も驚いている。なんでだ?
「アニキ。即答はないでしょっ!?」
「そうなんだな。バランサーはあくまでもセブンスターズ側の人間。ここはもう少し考えてからでも」
「別に良いじゃん! よこせとか言われたら俺も困るけどさ。あくまで貸してほしいっていうんだろ? 吹雪さんがOK出してるなら俺からこれ以上言う事はないさ。それに」
俺はバランサーににかっと笑いかける。
「
『あれはあくまで互いの利害が一致したからこそであって……はぁ。幾つか交渉の道筋を考えてきたこっちがバカらしくなってくるな。お前は本当にもう少し相手を疑う事を覚えた方が良い』
「そりゃあ俺でも疑う事はあるけどさぁ。お前はどう考えても悪い奴じゃねえだろ?」
「……そうだね。僕や隼人君も助けてもらったしね」
バランサーがどこか呆れたような言葉を返すが、実際どう考えてもこいつは悪い奴じゃない。審判役としてはいつも公平だったし、これまでもこっちの事を気にかけてくれた。
カミューラとの戦いの時も、まだ相手がセブンスターズの一人で戦ったら責任を問われるっていうのに、バランサーは処罰覚悟で戦おうとしたしな。
『……まったく。お前はそういう奴だったな。仲間を信じるだけならまだしも
バランサーは大きく一度ため息をついて仮面の上から額を押さえる。
おっかしいな。俺そんな頭が痛くなるようなこと言ったか?
『では、許可も取った事だしこのペンダントは借りていくぞ』
そう言ってまた懐にペンダントを仕舞い込むと、バランサーはゆっくりと立ち上がる。
「何だよ。もう帰るのか? 折角だしデュエルしようぜ! 闇のデュエルとかじゃなくて普通のをさ」
「なんなら俺達ともやるか? 少しでも手の内を暴いてやるんだな!」
「そういう事なら僕も!」
みんなで引き留めようとするが、バランサーはふるふると首を横に振る。
『悪いが戦うつもりはない。
そのまま部屋を出ようとした時、何かを思い出したようにバランサーはこっちに振り返る。
『本来交渉のネタとして用意した見返り。俺としては隠す事でもないし、明日にでも正式に学園に通達される事だが、一足先に教えよう。
「えっ!? それホントか!?」
俺が詰め寄ると、バランサーは静かに頷く。
『戦いの場所は以前タイタンが待っていた特待生寮。日時は三日後……いや。もう数時間したら二日後になるな。その夜に行われる。戦いに備えて調子を整えておくことだ』
その言葉を最後に、バランサーは今度こそ部屋を出ていった。
「……三日後か」
「いよいよ決戦だね。アニキ」
「ああ! 相手は最後のセブンスターズアムナエル。くぅ~っ! 腕が鳴るぜ!」
カミューラとの戦いで見たあの姿。実際にデュエルを見た訳じゃないが、間違いなく強いって分かる風格があった。
だけどそれはそれとして、やっぱりワクワクもする。そんな強い相手と本気のデュエルで戦えるなんてな。……できれば闇のデュエルじゃなければもっと良い。
「よし! 遊児と万丈目も呼んで知らせてやろうぜ」
「十代。さっきバランサーも言ってたろ? もう夜だから明日にするんだな」
「そっか。それもそうだな」
隼人に止められて確かにと思う。話をしてもうそれなりに遅い時間だ。万丈目とか絶対機嫌を悪くするだろうし、遊児を無理やり引っ張ってくるのも悪いしな。
それにバランサーが言うには明日学園に通達されるらしいし、俺達だけちょっぴり早く知れてラッキーくらいに思えばいいか。
「じゃあ早速三日後に向けてデッキ調整だ! 二人共付き合ってくれ!」
「「了解!!」」
さあ。燃えてきたぜ!
着々と準備を進めているバランサーなのですが、地味にこれまでの行動から鍵の守り手陣営(特に十代)からの好感度が高かったりします。直感で敵じゃないと判断している所もありますが。
この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。
お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!