マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
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『よく臆せずにやって来たな。鍵の守り手達よ』
「ああ! 来たぜバランサーっ!」
夜の7時。事前に通達された時間ピッタリに、俺達は特待生寮前に集結した。だが、
『……結局最後まで部外者なのについてきたな。翔に隼人よ』
「ナハハ。アニキやお兄さんの事が心配で」
「俺も同じなんだな。いよいよ決着とあったら尚更気になるんだな」
二人共困った顔をしながら誤魔化すように笑う。まあそう言うなってバランサー。こいつらだって最後の戦いを見届けたいんだよ。
『明日香はまだ寝ていた方が良いのではないか?』
「たとえ戦うことは出来なくとも、ここまで来たら最後まで見届けたいわ」
明日香は気丈にそう宣言するけど、俺も実を言えば休んでた方が良いんじゃねえかなって思う。まだ身体も治ったばっかだしな。だけど明日香がどうしても行くって聞かなくて、吹雪さんもそれなら僕もってなし崩し的にこうなった。
『良いだろう。……では諸君。ここに最後のセブンスターズと鍵の守り手達が揃った。早速戦いを進めさせてもらおう。セブンスターズ側からはこの通り、アムナエルが出る』
その言葉に合わせ、バランサーの後ろに立っていたアムナエルが何も言わずにゆっくりと前に出る。
やべぇ。ただ立っているだけなのに肌がビリビリする。これが最後のセブンスターズ……でも負けねぇぞ!
「おっしゃあっ! 勝負だアムナエル」
「ちょっと待て。ここはこの俺様の出番だろう」
「ノンノン! これが最後の戦い。つまりこのワタ~クシの出番でス~ノ!」
気合を入れて名乗り出たら、万丈目とクロノス先生も自分がやるって言いだした。いや待てって二人共。ここは俺にやらせてくれよ!
『こほん。悪いが三人共。今回はアムナエルの方から対戦相手を指名したいとの要望があった』
「「「なんだってっ!?」」」
『ああ。私は今回、
何だか分からないがラッキーっ! 向こうからご指名なら堂々と戦える。俺は意気揚々と前に出た。
「おおっ! それってさ? この中で俺が一番強そうだからって事か!?」
「そんな訳ないノ~ネ。多分一番やりやすそうな相手を先に倒しておこうって腹なノ~ネ」
「つまり本命の俺様の前の準備運動という事だな。そういう事なら納得だ」
そう軽くおどけて他の面子から突っ込みを入れられている中、アムナエルはふるふると首を横に振る。
『いいや。私が十代を指名したのは別の理由だ。単純に互いに万全の状態。連戦の疲れもない状態で君と戦ってみたい。いや、戦わなければならないのだ。来るべき災いに打ち勝つだけの力があるか見極めるために』
「それって……どういう」
『おっと。話はそこまでだ』
来るべき災い? だってこれが最後のセブンスターズ戦だろ? 俺が聞き返そうとするのをバランサーが横から遮る。なんだよ一体?
『さて。早速戦いを始めたい所ではあるが、ここでは些か戦いの場所にふさわしくない。よってふさわしい場所へ移動してもらいたいのだが、宜しいだろうか?』
バランサーは大仰に両手を広げ、ここに集まった全員の視線を集める。まるで舞台役者みたいだな。それにしても、
「まあ……確かにここでやるよりも、まだボロボロだけど建物の中の方が良いかもな」
「以前タイタンとクロノス先生が戦った場所だな。……あまり良い思い出はないが仕方ないか」
「……正直、もうあそこには行きたくなかったノ~ネ」
クロノス先生はそう言ってぼやく。……タイタンか。まさかあんな風に闇に飲み込まれちまうなんてな。アイツも悪い奴だったけど、せめて無事だと良いんだが。
そうして皆で寮の中に入ろうとすると、
『ああ。少し待ってほしい。ギリギリで言うのはあれだが、ここで諸君らに謝らなければならない事がある』
急にバランサーがそんな事を言って俺達を引き留めた。謝らなきゃいけない事?
「謝らなくてはならない事とは……何っ!?」
「うわっ!? いつの間に足元がっ!?」
な、何だよこれっ!? いつの間にか皆の足元に、黒いもやもやした闇が纏わりついていた。もしかしてこれ……タイタンの時みたいなっ!?
『これもまたアムナエルの要望だが、十代との戦いはなるべく他者の居ない状態が望ましいとのこと。よって、
闇は足元から一気に立ち上り、次々にここに居るメンバーを飲み込んでいく。
「なっ!? ハネクリボーっ! 頼むっ!」
クリクリ~!
ハネクリボーが精霊としての力で光を放ち闇を祓おうとする。だけど、
「あわわわっ!? 痛っ!?」
「アイタタタ。何だったんだな?」
間に合って転がり出たのは近くに居た
『まったく。まさか翔と隼人が残るとは、少し予定が狂ったな』
「万丈目っ!? 三沢っ!? ……くっ。カイザーに明日香に吹雪さん。クロノス先生も。 ……おいっ! 皆をどうするつもりだっ!?」
『落ち着け十代。この闇は危害を加えるものじゃない。単に対象を別の場所に跳ばすだけのものだ。ちなみに跳ばした先はアカデミア本棟』
俺が食って掛かると、バランサーは静かに一つずつ説明していく。
まず闇のデュエルの周囲への被害を考慮して、最初からこうするつもりだった事。ギリギリまでこの事を黙っていたのは、下手に他の面子に来るなと通達しても普通にやってくる可能性の方が高かったからという事なんかをだ。
実際翔や隼人、おまけに体調の悪さを押して明日香まで来ていたしな。間違ってはいないんだろう。それに跳ばす先も本棟なら安全だ。だけど、
「だけど、これまでだって闇のデュエルだったけど皆居たじゃないか。何故今回だけ」
『ああ。これまでは俺がいざという時に備えてずっと一緒に居たからな。だが、
「一緒に居られないって……えっ!?」
「アニキっ!? バランサーの足元にも今の奴がっ!?」
そう。いつの間にか
『アムナエル。では予定通り、俺は俺の戦いに行く。審判役としてそちらを見届けられない事を許してほしい』
『いや。こちらこそ戦う相手を選ばせてもらってすまない。それに、オシリスレッドの二人がこの場に残ったのもある意味丁度良いのだろう。君の代わりに見届け役を務めてもらう』
『……そうか』
何か気になる事を言いながら、バランサーは少しずつ闇の中に沈んでいく。そして、
『では、さらばだアムナエル。ご武運を!』
『ああ。これまでの君の尽力に感謝する。さらばだ!』
もう胸まで闇に沈んでいく中バランサーとアムナエルはそうやり取りし、
『それと十代。セブンスターズ側としては言うべきではないんだが……頑張れよ!』
最後に俺にそう言い残してバランサーは闇に飲み込まれ、そのまま完全に姿を消した。
あとに残ったのは俺とアムナエル。そして翔と隼人の四人だけ。
「皆……皆、消えちゃった。どうしようアニキっ!? 隼人君っ!?」
「どうするも何も、もうこうなったらやるしかないんだな!」
隼人の言う通りだ。俺はアムナエルに向けてキッと向き直る。
「もう一度確認させてくれ。皆に危害は加えてないんだよな?」
『ああ。
「ちょっと待ったっ!? 全員じゃないのか!?」
『ああ。これはバランサー自身の要望でな。私が君を指名したのと同じく、彼にも戦うべき相手が居るという事だ。……さあ。あとは言葉ではなく、デュエルで語るとしよう。ついてきたまえ』
アムナエルはそう言い残すと、しっかりとした足取りで特待生寮に入っていく。
「……アニキ」
「十代……」
二人が心配そうな目でこっちを見ている。そりゃあこいつらからしたらいきなり闇に引きずり込まれかけて、なんだか分からない内に皆が居なくなってたんだから心配にもなるよな。でも、
「な~に心配すんなって! あいつらが言ってただろ? 皆に危害は加えてないって。なら後はこれまでとおんなじだろ?」
こういう時こそ明るく言う。まだ分かんねえ事は多い。アムナエルもバランサーも意味深なことばっか言うしな。だからこそ、
「全力でデュエルするだけだ! デュエルじゃ誰も嘘は吐けない。互いに本気でぶつかれば、それだけで分かる事もあるってもんさ。行こうぜ!」
「あっ!? 待ってよアニキ!?」
俺が先陣を切り、二人は少し遅れて寮の中へ。待ってろよアムナエル!
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「さて。そろそろ俺様だけをここに連れてきた理由を聞かせてもらおうか? バランサー」
『理由……か。クククっ。そうだな。なに。ひどく簡単な理由だよ。万丈目サンダー』
そこはどことも知れぬ闇の中。
周囲も見渡せない暗闇なのに、互いの姿だけははっきりと見える不思議な場所。
一人だけそこに連れてこられた万丈目の問いに、バランサーはどこか悪役じみた笑いで返した。
『
「……ほぉ」
高笑いをするバランサーを、万丈目はどこか呆れたように見つめていた。
という訳で、原作通りの十代対アムナエル戦の裏で、バランサー対万丈目戦が始まります。ここは対クロノス先生戦にするべきかぎりぎりまで悩みました。
この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。
お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!