マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
『フハハハハっ! これまで人畜無害な審判役として振る舞っていたが、何を隠そうこれまでの戦い全てが俺の計画の内よ。鍵の守り手とセブンスターズを潰し合わせ、双方消耗した所で最終的に俺が三幻魔の力を我が物にするというなぁっ!』
暗闇の中で、万丈目へと語る俺の声が響き渡る。
『苦労したぜぇ。好き勝手に暴れようとするセブンスターズの面々をどうにか宥めすかし、俺にとって都合の良い日取りをセッティング。実力差や相性を考慮して一進一退の状況を仕向けようとしたのに、全体で見れば鍵の守り手側が酷く優勢ときた』
万丈目は何も言わず沈黙で返し、俺は構わず前置きを続ける。
『カミューラが明日香を倒した時は、これで多少は釣り合いが取れると内心喜んだもんだ。だがその後が良くなかった。まさか俺とはまた別のやり方で三幻魔の力を奪おうとはなぁ。流石にあの時は焦ったぜ。……だが、こうしてカミューラが除名処分になったのは好都合。その空いた席にまんまと座り、こうして俺が正式なセブンスターズになったという訳だ。カミューラを追い詰めてくれてありがとうよぉ』
「……へぇ」
むぅ。ここまでペラペラと喋っているのに、万丈目からの反応がどうにも薄い。
『自分達が良いように使われていたと知って声も出ないか? 安心しろよ。お前を始末した後はすぐに十代とクロノス教諭。そして三幻魔を従えた暁には、俺を邪魔する者全てにお前の後を追わせてやる。この闇のデュエルでなぁっ! フフフ。フハハ』
「……で? 俺はいつまでこの下らん茶番に付き合えば良いんだバランサー……いや。
俺の高笑いをぶった切るように、静かだが非常に不機嫌な声色で万丈目がそう言い放った。
『……何の事かな? 俺はただのバランサーでありその久城某という者などまるで』
「知らないと? ……良いだろう。しらばっくれるというのなら、一つずつ真相を明らかにするとしよう。そう」
ビシッと力強く俺に指を突き付けて万丈目が叫ぶ。
「この俺。名探偵万丈目サンダーの名にかけてっ!」
「俺がこれまでの戦いでお前の正体に疑問を覚えたのは、大きく分けて二度ある。一度目は俺と黒蠍盗掘団が戦った時だ」
コツコツと敢えて足音を大きく響かせながら、万丈目はゆっくりこちらに歩み寄りつつ推理を語る。
「思い出せ。ザルーグが俺とデュエルをするべく審判役を呼び出した時、ものの数分でお前はやってきた。実に不思議な話だ。あの時デュエルすることになったのは半ば偶然だというのにな」
『何が言いたいんだ?』
「
グサッ!
探偵に追いつめられるというのはこういう感じなのか。言葉に物理的威力が伴うように、俺の身体に突き刺さる感じがする。
「あんな夜中に、イエローでもブルーでも本棟でもなく、俺が言うのもなんだが特に目ぼしい物もないレッド寮の近くに。一番しっくりくるのは、バランサーがレッド寮の関係者だという考えだ」
『そんな訳……そう! 先ほどのように闇による空間移動で来たから時間もかからず』
「いいや。俺が見た時お前は寮の裏手の方から
苦し紛れに言い放った言葉も、簡単に切り返される。ぐっ!? 小説の犯人の気持ちが良く分かるぜ。
「次にカミューラとの城での一件。あの時幻想体達が途中から手助けに来たが、よくよく考えればおかしな点があった。……
『それが何か問題でも? その久城某と幻想体達に関わりがある事は何となく理解したが、あれだけの激戦地だ。危険を避けて幻想体だけに行かせても何も不思議はないだろう?』
「それはないな。俺の知る久城は、口では自分の安全を優先すると言いながらも、自分の知り合いや何かに危害が及ぶ事を極端に嫌うし防ごうとする。いざとなったら自分の身に危険が及ぼうともな。そういうタイプのバカだよ。……そんな奴が自分だけ安全地帯で高みの見物なんてしない」
う~む。一体俺は周りからどう思われてるんだか。
本当に一番大事なのは自分の身なんだがなぁ。あくまで友人に何かあると俺の精神衛生上良くないから助けようとしているだけで。
まあそれはそれとして……着々と追い詰められているんだけど。
「間違いなく幻想体達を抑えられるようある程度近くに居た筈なのに、十代が聞いた話によると自分がどこに居たかは一切語らず、あくまで幻想体を送ったとだけ言っていたらしい。わざわざ隠すような事でもないのにだ。……だが、
『それで俺がその久城某だと? いくら何でも状況証拠だけでそう断定するには無理があるな』
「ああ。確かにな。まだ幾つか小さな状況証拠を並べ立てることは出来るが、物的証拠までは流石の名探偵万丈目サンダー様でも揃えることは出来なかった」
おっと。これはもしやギリギリセーフか? まだ正体確定までは行っていない? と思った瞬間、
「だが、そんな事はどうでも良いんだよ」
ズンッと音が響くかと思うほど強い踏み込みで、万丈目は俺の前に一気に近づき、そのまま胸倉を掴んでくる。
「声は微妙にエコーがかかり、姿形も僅かにぼやけて分かりづらい。だがなっ! 一度久城だと仮定した時点で、
『なっ!?』
「お前の事だ。ずっと黙っているのは何か理由があるのだろうと、俺様が珍しく気を遣って話すのを待っていればこの似非悪役ムーブの茶番かっ!? ああんっ!?」
マズイっ!? これ万丈目カンカンなんだがっ!? いやまあ怒らせる事は予定通りなんだが、こういう物理的なお怒りモードとはちょっと予想が外れて……というか息がぐるぢぃっ!?
そのまま身体をガクガク揺さぶられ、遂に俺が根負けするのはそれから十秒もしない内の事だった。
「……ふぅ。俺としたことが少々熱くなった」
『少々どころではなかったような気もするけどな。まあ良いが。……では、改めて名乗るとしようか』
流石にこれはいけないと互いに息を整えると、俺は仮面に手を掛ける。そしてゆっくりと仮面を横にずらしていき、
「この通り。バランサーの正体はこの俺。久城遊児で間違いない。流石は名探偵万丈目サンダー。良く見破った! こちらとしてはもう少し引っ張ってからばらす予定だったんだがな」
俺は少しだけ残念そうにそう語る。
そう。これまでの言動は、ギリギリまで万丈目を揺さぶってヘイトを溜めつつデュエルを始めた時点で俺の方から正体暴露。
そして俺達の友情すら偽りだったのさムーブで躊躇なく万丈目に俺をぶっ倒してもらいレベルアップ。全て終わった所でネタばらしして皆で平身低頭謝って終わるという流れの為の物だったのだ。
……まあ普通に俺からばらす前に見透かされたけど。
「ふん。当然だ。俺を誰だと思っている。そしてこの暗闇はどうせ」
「ああ。大鳥に協力してもらい、少し暗闇を調整してもらっている。ここは本棟近くの森の中だ」
大鳥の暗闇は、ただ何も見えない真っ暗闇にするだけじゃなくて少しだけ光量を調節できる。そもそもそうでもしないと他の三鳥もまともに動けないだろうしな。
「それよりもだ。何がどうしてこういう事になったのか話してもらうぞ。下手な三下小悪党口調は無しで普通に話せ」
「それは良いんだがその前に……ほらっ!」
俺は万丈目に、今日の為に準備しておいた吹雪のペンダントを投げ渡す。
「これは……確か十代と吹雪さんが着けていた」
「ああ。それをしっかり首から提げておいてくれ。なにせ
「何っ!?」
よし。やっと唖然とする万丈目が見られて少し嬉しくなる。準備した甲斐があった。
「おい少し待てっ!? お前そんな大事な事をサラッと」
「言っとくけどやらないという選択肢は無しだ。俺個人としてもやりたくはないがこれでもセブンスターズなもんでね。やらないと契約違反になる。……心配するな。そのペンダントを着けていればリアルダメージを軽減できるのは実証済みだ。そして」
俺はそう言いながら速やかにデュエルディスクを展開。デッキをセットし、さっきまで外していたペストマスクを被り直す。
『俺はこの格好自体が防護服の代わり。二、三発良いのを貰っても充分耐えられる。……とまあ色々言ったが』
俺はそこで敢えておどけたように肩を竦めて見せる。
『極論すれば
「……ったく。お前という奴は……良いだろう」
そう言って万丈目もまたデュエルディスクを展開すると、キッとこちらを力強く見据えてくる。
そうだ。その目だ。相手が誰であろうと、どんな状況であろうと、いざ戦いになればそうして覚悟を決めた目を見せてくれる。
「生憎俺は、相手がファンだろうが何だろうが勝負に手加減はしない主義だ。完膚なきまでに叩きのめして話を聞かせてもらうからな」
『結構。それでこそ俺の推しだ。なら俺も一ファンとして……
「『デュエル!!』」
本来のプロット。
デュエル開始直後
万丈目「このモンスター……幻想体だとっ!? ではバランサー。お前の正体はまさかっ!?」
バランサー『その通り。ようやく気が付いたなぁ万丈目。俺の推しよ。そう。俺だよ! これまでのお前達との友人ごっこは実に楽しかったぜぇっ!』
万丈目「……嘘だ。嘘だぁっ!?」
という下種悪役ムーブをぶちかます予定だったのに、万丈目が地味にこれまでの話でアイデアロールをクリティカルして真名看破されました。
だって名探偵万丈目サンダーですものしょうがないね。