マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
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「『E・HEROエリクシーラー』の攻撃っ! 『フュージョニスト・マジスタリー』っ!」
「ぐおおおおっ!?」
アムナエル LP0
十代WIN!
「大徳寺先生っ!」
俺は膝を突くアムナエル……大徳寺先生に駆け寄った。
特待生寮の奥深く。タイタンと戦った所のさらに奥。そこにあったアムナエルの実験室で、翔と隼人を立会人に俺達は戦った。
デュエルの中で、大徳寺先生は色々な事を話してくれた。自分の肉体はもうとっくに滅んでいて、今の身体は自分が造ったホムンクルスにすぎない事。そしてその身体ももう長くはない事を。
最初はそんな事信じられなかったけど、実際に実験室に安置されていた大徳寺先生の元の身体のミイラを見せられたら信じざるを得なかった。
あと俺には最高の錬金術師、類まれなる融合使いの才能があるとも言われたけれど、そっちは良く分からなかった。
「十代……最終試験は見事合格だ。錬金術が全てを金に変えるというのは表面の現象にすぎない。その真意は、人の心をより純粋で高貴なモノに変える事なのだ。……君は今その真実を知った」
「大徳寺先生っ!? 身体がっ!?」
そう言いながら、大徳寺先生の身体の表面がカラカラに干からび、一部に至っては砂みたいにさらさらと散っていく。一体どうなってんだっ!?
異常を察した翔と隼人も慌てて駆け寄ってくる。
「まだ……大丈夫だ。ぐぅっ!?」
大徳寺先生は苦し気な笑みを浮かべながら、デュエルの時も手放さなかったウジャト眼を象った一冊の本を翳す。
するとウジャト眼から光が放たれ、身体の崩壊が治まっていく。でも完全には治りきらなくて、腕にヒビのような痣が残ってしまった。
「ふふっ。これが、もう長くないと言った理由さ。どうしても今の身体と私の魂で拒絶反応が起こってしまう。このエメラルド・タブレットで抑え込んでいるが、次かその次ぐらいにはこの身体は限界を迎えて崩れ去るだろうね」
「そんな……そんなのって」
翔が涙を流していた。隼人や俺だってそうだけどやるせなくて仕方ない。だって、大徳寺先生はこのままじゃ死んじまうって事だろ?
だってのに大徳寺先生は……穏やかに笑っていた。
「私の目的は達した。私の研究を支えてくれた人物は強大な力を手に入れんとし、その心をいつの間にか曇らせてしまった。十代……いずれこの島には更なる災いが起きる。私には、その災いに対抗する力を育てる必要があった」
「だから……先生はセブンスターズとして戦いに参加したんだな? 俺達を鍛えるために」
俺の言葉に大徳寺先生は静かに頷く。
「強大な闇の力に対抗できるのは、強い精霊の力とデュエルの腕を兼ね備えた者が適格だからね。荒療治になるが、時間がない私にはこの手しかなかった。……今頃はバランサーが万丈目君の最終試験として立ち塞がっている事だろう」
「……って事は、バランサーも大徳寺先生の事を?」
「ああ。知っている。……彼にはすまない事をした。彼は最初にこの事を知って、自分からセブンスターズ側に
そうだったのか。やっぱりバランサーは悪い奴じゃなかったんだな! なら万丈目との勝負は、たとえ闇のデュエルだとしてもどっちが勝とうと酷い事にはならない筈だ。
何はともあれこれでセブンスターズとの戦いは終わる。先生の言う大きな災いってのはまだ分からねえけど、何が来たって俺が……いや。万丈目や遊児、カイザーに三沢、明日香、学園の皆が居る。それに、
「さあ。戦いは終わった。一緒にレッド寮に帰ろうぜ大徳寺先生。その大きな災いって奴が来ても、当然手を貸してくれるんだろ?」
俺はそう言って膝を突いたままの大徳寺先生に手を伸ばす。
「……ああ。勿論だ」
大徳寺先生がその手を掴もうと手を伸ばし、
クリクリ~っ!?
ズオオオオオンっ!
ハネクリボーの警告とほぼ同時に、突如強烈な音と振動が周囲を襲った。
衝撃で実験室にあった機材がガタガタと揺れ、倒れて割れた瓶があちこちに散乱する。
「わあああっ!?」
「な、何なんだな!?」
こんな時に地震か!? しかし地震にしちゃあこの音は?
クリクリっ!? クリクリ~っ!?
「んっ!? どうした相棒? 何か外にあるのか?」
どこか慌てたような動きのハネクリボーに、俺達は急いで特待生寮の外に出る。するとそこには、
「光の……柱?」
「一本だけじゃないんだな!? あちこちから空に向けて柱が伸びてるんだなっ!?」
島の外周を囲うように、光の柱が次々に空高く伸びていく。さらに、
ピカアアンっ!
「何だ? 突然俺の鍵が……うわっ!?」
急に胸に提げていた鍵が光りだしたと思ったら、そのままひとりでに首から外れてどこかへと飛び去って行く。一体何だってんだ!?
「これは……まさかあの方がっ!?」
「あの方? どういうことだよ大徳寺先生?」
「話は後だ。もし私の予測が当たっていたら恐ろしい事になる。早く鍵を追……ぐぅっ!?」
何かに気づいたのか、急いで追いかけようとする大徳寺先生だったが、身体の消耗が激しいのかそのまま倒れこんでしまう。ここは、
「翔っ! 隼人っ! 二人は大徳寺先生に肩を貸して先に本棟へ戻っていてくれ!」
「それは良いけど……アニキはどうすんのっ!?」
「俺は鍵を追いかける。任せとけって!」
ここに大徳寺先生を置いていくわけにもいかない。だから行くのは俺だけだ。そうして早速走り出そうとした時、
「待つんだ十代っ! ……これを」
大徳寺先生が、咄嗟に持っていた本の中から取り出した一枚のカードをこっちに投げ渡す。
「それは究極の錬金術師だけが扱える伝説のカード『賢者の石-サバティエル』。最終試験合格の証だ。今の君ならきっと扱える。持って行ってくれ」
「賢者の石。そんなすげえカードを……ありがとよ大徳寺先生! 行ってくるっ!」
さあ。何が待っているか知らねえが、やっと戦いが終わったんだ。最後の最後で邪魔なんてさせないからな!
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『急げっ! 急いでくれ大鳥っ!』
グルルルルゥ!
ズシンズシンと足音を響かせ、飛び去った鍵を追って森の中を大鳥が激走する。
その背中に乗りながら、俺は万丈目にこれまでの事を簡単に語っていた。
「なるほど。アムナエルが大徳寺先生で、余命いくばくもない先生の代わりにお前が動いていたと。それでセブンスターズの裏で理事長が暗躍していて、そいつがいよいよ本格的に動き出した可能性がある。そういう事か」
『ああ。そもそも理事長は緊急用の開錠手段を持っていると以前大徳寺先生は言っていた。俺はそれを合鍵があると判断していたが、このように
「つまりこれまでの戦い全てが理事長の掌の上だったって訳か。……ふざけやがって」
万丈目は怒気を隠そうともしない。そりゃ必死にこれまで皆で戦ってきたのに、最後の最後でなかったことにされたら頭にも来る。
『俺も同じだ。二重スパイをやっていた俺が言うのもなんだが、このやり方は許せない』
セブンスターズは理事長にスカウトされて集まった言わば傭兵だ。理事長にしてみれば、勝とうが負けようがデュエリストの闘志さえ集まれば良かったのだろう。
しかしその思惑はどうあれ、皆勝利をもぎ取るべく全力で戦ってきた。ダークネス、タニヤ、黒蠍盗掘団、アビドス3世、タイタン。
カミューラもやり口こそあれだったが一族の復興の為に全身全霊で挑んでいたし、アムナエルこと大徳寺先生に至っては自分の残り少ない命を懸けてまでだ。
そいつらの思いも懸かった学園側との戦い。それを全て終わってからならまだしも、終わる前に横から割って入られたとあってはバランサーとしても黙っていられない。
『仮にあの鍵を理事長が操っているのなら、向かうのは七精門。近いぞ』
「さっさと終わらせてやるとしよう。……お前との決着はその後だ」
『ああ。楽しみにしてる……見えてくるぞっ!』
グルァっ!
大鳥の雄叫びと共に、森を抜けて見えてきたもの。それは、
「アナ~タの思い通りにはさせませン~ノ! 影丸理事長っ!」
「くくくっ。良かろう。精霊の力を手に入れ、完全に三幻魔を解き放つ前の肩慣らしだ。……実力を見せてみよクロノス教諭。デュエルアカデミア実技担当最高責任者よ」
地面の上までせり上がった七精門。その中央で向かい合うクロノス先生と、中のカプセルに老人の入った多脚ロボットの姿だった。
いや何これ?
大徳寺先生生存っ! ただしあくまで先延ばしにしただけですが。
それと次回ですが、私用により来週分はお休みさせていただきます。楽しみにしている読者様にはお詫び申し上げます。
この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。
お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!