マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
細々とオリジナル物を書いていた私ですが、先日ロボトミーの新作が出たと聞きつけついこうして筆を取って見た次第です。
まだまだ稚拙な文ではありますが、読者の皆様の暇つぶしにでもなれば幸いです。
胡散臭い“元”神様に会った日
「バトルだ! 『E・HEROフレイム・ウィングマン』で、翔にダイレクトアタック!」
「うわあああっ!?」
栗色の髪の少年が召喚したモンスターの攻撃が、丸眼鏡の少年に直撃する。これにて丸眼鏡の少年のLPは0となり、そのまま立っていられずに尻もちをついてしまう。
「ガッチャ、楽しいデュエルだったぜ! 翔」
「あいたたた。やっぱり強いっすよアニキは」
栗色の髪の少年は遊城十代。丸眼鏡の少年は丸藤翔。どちらも世界的に有名なカードゲームの原作、遊戯王シリーズという物語の重要人物だ。
「お~い
「そうっすよ
二人がオシリス・レッド寮の二階から眺めていた俺に声をかけてくる。
ここで疑問に思った人が居るかもしれないな。何故物語のキャラクターである二人に声をかけられるなんてことをされるのかと。
答えは簡単。俺は今その物語の中、正確に言うとそれを元に創られた限りなく本物に近い世界の中に居るのだ。
「そうだな。それじゃあちょっとだけやるとするかっ!」
やはりゲームは見てるだけでなく実際にやってこそだろう。今日は身体の調子も良いし、少しだけならやるのも良いかもしれない。俺はそう二人に返事をして階段を下りていく。
カタカタ。カタカタ。
「……ああ。分かってるよ“罪善さん”。羽目を外しすぎないようにするって」
俺は隣で宙に浮いている、半透明で十字架に貫かれた頭蓋骨にそう声をかけた。彼は恐ろしい見かけに反してとても優しく慈悲深いのだが、少し心配性の気があるのが玉に瑕だ。
もうこの世界に来てしばらく経つが、このような不可思議な存在にも少しは慣れてきたように思う。俺を呼んでいる二人の方に走り出しながら、ふとこの世界に来ることになった日のことを思い出した。
事の始まりは大分前にさかのぼる。
◇◆◇◆◇◆◇◆
突然だが、神様転生という言葉を聞いたことがあるだろうか? それはライトノベルでもはやお約束となっている導入のパターンの一つだ。
主人公が何らかの形でその一生を終えるものの、これまた何らかの形で通称神様と呼ばれる超越者に出会い、新しい人生を別の世界で送ってみないかと誘われる。
そうして転生特典という何かしらの能力なり加護なりを携えて、その数多くは意気揚々と別の世界に赴くわけだ。
さて、何故急にこんな話をしたかというとだ。……俺が今まさにそんな状況に陥っているからだよコンチキショウっ!!
『正確に言うとまだ死んではいないんだけどね。地面に激突するまで現実世界においてあと一秒も無いって所だねこれはアッハッハ』
「笑い事じゃないってのっ! あとずっと落ちっぱなしの体勢で喋るのキツイんで何とかしてほしいんだけど。頭に血が溜まっていく」
俺の今の体勢は、頭を下にして地面から少し浮いたところで静止している。このまま行けば頭がグシャッとなってスプラッターな事態になること請け合いだ。
それをギリギリで阻止しているのが、俺の目の前で他人事みたいに笑う自称“元”神様。出てくるなりいきなり『君は異世界転生という奴を信じるかい?』なんて言い出すので凄まじく胡散臭いのだが、実際にこいつが現れた瞬間俺を含めた視界の全てがピタッと静止しているのだから只者じゃない。
『別に逆さまでも僕は気にしないよ』
「俺が気にするのっ! この状態じゃ話すのにも差し障るから早く頼む」
『はいはい。それじゃあ話しやすくなるように……ホイっと』
目の前の自称“元”神様は、どこか子供っぽい仕草で指をパチリと鳴らす。すると俺の視点がそのままクルリと上下が入れ替わった。というか本当に子供じゃないかこいつは?
背丈はざっと百五十くらいで小柄だし、声も中性的だがどこかエコーがかかったような不思議な感じがする。体型は白いローブのような物を纏っているのでよく分からないが、一番印象に残るのは顔の上半分を覆う仮面だ。どこぞのオペラ座にでも行くのだろうか?
「ふぅ。……あの、ありがとうございました。先ほどは命の恩人に対し、異常事態のため口調が荒くなってしまったことをお許しいただきたい。え~っと神様?」
『別に良いよ。あと“元”神様ね。口調もさっきのままで良い。さっきの方が素でしょう? それにこんな見た目だから敬語というのもなんかアレだしね』
「そ、そうか? ……じゃあ改めて、助けてくれてありがとうな。どうやったのか全く分からないが」
やや胡散臭い所があるが恩人は恩人だ。頭を下げようとしたところ、
『あ~……実はまだ助かってなくてね。ちょっと後ろを見てみなよ』
「後ろ? 後ろって…………俺じゃんっ!?」
見ればまださっきの体勢のままの俺の身体がっ! じゃあ今の俺はどうなってんの?
『逆さまで話しづらいという事だから、ひとまず意識だけスポッと……これなら話しやすいだろう?』
「だからってこんな幽霊みたいなのは嫌じゃあぁぁっ!!」
なんかさっきから叫んでばっかな気がする。俺はツッコミキャラじゃないんだぞっ!
『ひとまず落ち着いたかい?』
「はぁ。はぁ。……一応はな。ひとまずじたばたしてもどうにもならないってことは分かった」
どうにか元の身体に戻れないかと頑張ってみたこと数分。いくら力を込めても意識が身体に戻ることはなかった。だが同じく身体の方もピクリとも動いていなかったので、差し当たってこのまま落下死する心配は今はないと判断。
ならこの事態を引き起こしている目の前の何者かと話した方が賢明だろう。そう腹をくくって意識だけ目の前のこいつに向き直る。
『落ち着いたんなら助かるよ。……じゃあ本題だけど、現在君の意識だけ思いっきり引き延ばしている。だけど実際は時間はしっかり流れているから、このまま放っておくといつか地面に墜落して君は死んじゃうね』
「それは見たら分かる。つまりはこれは走馬灯みたいなもんか」
流石に頭からじゃ助かりそうにない。足からでも助かる確率は低そうだけどな。人間死ぬ直前に一秒が数十秒ぐらいに感じることがあると聞いたことがあるけど、俺のこれはやたら長いな。
『……言葉だけじゃなく予想以上に落ち着いているね。普通は死が目の前にあったらもっと慌てふためくと思うんだけど』
「そうは見えないだけで内心慌てまくってるよ。だけど現在進行形でこんな事態になってたら、もう何が有っても受け入れるしかないだろうが」
『切り替えが早いのは良いことだよ。まあ個人的には慌てふためく姿を見るのも嫌いじゃないんだけどね。割と面白いから』
「……お前性格悪いだろ?」
『何故かは知らないけどよく言われる』
俺が目の前の奴への警戒を強めると、こいつはどこからともなく一冊の本を取り出した。その本をパラパラとめくり、途中のページで指を止める。
『え~っと……氏名は
「わあっ!! 待った待ったっ! 何それ閻魔帳っ!? 個人情報をばらすんじゃないよっ!」
『別に周りの人は聞いちゃいないから大丈夫だよ。肝心なのはここからさ。……君は今日仕事中、足を滑らせてビルの七階から落下した。間違いないかい?』
「…………ああ」
その通りだ。俺は会社で仕事中、うっかり書類を窓から飛ばしかけてしまった。外枠に引っかかった書類を取ろうとして身を乗り出した瞬間、ひときわ強い風が吹いてバランスを崩し、それから今に至るって訳だ。俺は質問に頷いて応える。
『間違いない……と。故意にでも作為的にでもなく、あくまで偶然による死。……結構。じゃあ久城君。単刀直入に聞くけど……
「そりゃあ……死にたくはないな」
『
そう言うと、自称“元”神様は大仰に両手を広げる。
『一つ目は、このまま流れに身を任せること。当然君はそのまま死んじゃうね』
「死んじゃうね……じゃないよっ! さっきの前振りはっ!? なんか助けてくれる流れだったじゃん」
『まあまあ慌てない。そのまま死んじゃうけど、君の魂をちょっと弄って別の世界に送る。今流行りの異世界転生って奴だよ。何なら適当なチートをあげるから無双しても良いし、可愛い女の子を侍らせてハーレムを作ったって良い。こちらからは特に強制もしないし、自由にやってくれて良いよ』
ライトノベルはこれでも時々読むから、異世界転生というのも大まかには知っている。何か話を聞く限りでは結構良い待遇だ。
『二つ目は僕の暇つぶしに付き合ってもらう事。こっちの場合は課題を出すからクリアして欲しい。無事クリア出来たら……そうだね。
「……二つ目の方はそれだけか?」
『それだけだよ。助かったらそのまま君は普通にまた人生を送る。チートやなんかとは無縁の人生だ』
えらくかけ離れた二択だ。どちらか一つを選べと言われたら……まあ考えるまでもないけどな。
今回はあくまで導入という事でデュエル描写はありません。楽しみにしてくれていた皆様には深くお詫び申し上げます。
次話ですが、多分今日中にもう一話ぐらい投稿します。いつ頃になるかは確約できないのですが。
続きが気になるという方は感想、評価、お気に入り、なんでも構いませんので反応を返してもらえると、作者のやる気がグングンと漲ります。
ロボトミキャラの中で精霊として出てほしいキャラは?(すでに確定しているキャラは省きました)
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