マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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クロノス対影丸 決着 そして顕現する黒翼

 

「なっ!? バランサーなノ~ネっ!?」

「むぅ。だが、今更審判役の出る幕などないわっ!」

 

 場に飛び込んできた俺に対して二人は驚くが、理事長の言う通り勝負に直接の介入は出来ない。

 

 ラビエルと究極巨人の拳がぶつかり合い、火花を散らしたのは短い時間。ビシリと究極巨人の拳にヒビが入り、どんどんそれは腕から肩にかけて広がっていく。

 

(くっ!? そう長くは保たないか。ならっ!?)

 

『罰鳥っ! 反撃分のエネルギーはクロノス先生の防御に回せっ! 罪人を罰するよりもまず守るべき者を守れっ!』

 

 その言葉に罰鳥が、その小柄な体で精いっぱい翼を広げたのを確認し、俺はクロノス先生の前に出て身に着けた外套を前面に広げる。

 

 ディー曰く多少は闇に耐性があるというこの仮面と外套。そして幻想体達の加護とペンダント×2の防御。今できる限界まで上げたガードだが、これでどこまで耐えられるか。

 

 そんな中、ついに巨人に入ったヒビは肩から身体に向けて進行し、

 

「これで……終わりだぁっ!」

 

 バキッ!? バァ~ンっ!?

 

 身体の動力部に到達。巨人は目の光を点滅させて力なく崩れ落ちる。

 

 

 クロノス LP1500→0

 

 影丸 WIN!

 

 

 クロノス先生のLPが0になり、影丸理事長の勝利が確定する。だが、それだけでは終わらない。

 

 ラビエルの魔拳の余波が物理的破壊力を伴ってクロノス先生に、さらにその前に立つ俺に向けて襲い掛かった。

 

 ズシンっ!

 

 目に見える衝撃波がこちらに到達する直前、身体にとんでもない圧が掛かる。これが本来クロノス先生が受ける筈だった一撃か。

 

 だが、生身のクロノス先生に比べればまだ俺の方が少しは耐えられ、

 

 パリーンっ!

 

 

 何かが、砕ける音がした。

 

 

 それが()()()()()()()()()()()()だと理解した瞬間、

 

『……ぐぎっ!?』

 

 全身を激痛が駆け巡った。しかもそれは一瞬ではなく今も続いている。

 

(攻撃力10000を超えた幻魔による戦闘ダメージ。分かってはいたが直接攻撃でもないのにここまでかよっ!?)

 

「もう良いっ!? もう良いノ~ネバランサーっ!? これ以上喰らってはアナ~タの身がっ!?」

「そうだとも。幻魔の力をその程度の加護で防ぎきれるものか。もう倒れて楽になるが良い」

『いや……まだ……だ』

 

 暴力の嵐はいつ止むかも分からず、俺は膝を屈しかける。さらに、

 

 パリーンっ!

 

『遊児っ!?』

 

 セイさんの焦ったような声。今砕け散ったのはセイさんの加護か。実体化する分まで防御に回してくれたのか、罪善さんとセイさんが半透明のまま悲痛な顔をしている。

 

 残るは仮面と外套とペンダントのみ。しかしもう外套を広げる俺の腕はガクガクで、墓守のペンダントも光が弱まっている。

 

 幸いクロノス先生の方は全体で見ればかなり防げていて、しかも罰鳥が本来真っ赤に染まって反撃モードになる所を、白のままで防御に徹しているため先生は多少苦しい表情なだけで済んでいる。

 

 しかし……このままじゃ、

 

「ぐぅ……古代の機械究極巨人の効果発動っ!」

 

 クロノス先生の号令の下、崩れ落ちた究極巨人の目に再び光が灯る。

 

「このカードが破壊された時、墓地の『古代の機械巨人』を召喚条件を無視して特殊召喚するノ~ネっ! 古の巨人はたとえ破壊されても舞い戻るっ! このワタ~シが、生徒に守られてばかりはいられないノ~ネっ!」

「クロノス……先生」

 

 全身のもう動かない部品をパージし、巨人は再び立ち上がる。たとえもう勝敗は覆らなくても、せめて主人とその生徒を守るために。

 

「『アルティメット・パウンド』ォっ!」

「小賢しいっ!」

 

 拳を振りぬいた状態のラビエルに、横から巨人の鉄拳が直撃する。

 

 倒すことは出来ず、大したダメージにもならない一撃。しかしそれによって僅かに体勢がズレ、こちらへの負担が少し軽くなる。だが、

 

『……ごふっ!?』

 

(ちくしょうっ!? こっちも限界かよっ!?)

 

 仮面の奥で僅かに吐血し、少しぼんやりとしてきた視界の中でそんな事を考える。あと現実的には数秒耐えれば攻撃エフェクトは終わる。しかし今の俺にとってはその数秒があまりにも長い。

 

 いよいよ立っていられなくなり、気が付けばがくりと足がもつれて手の力も抜ける。

 

(あっ……こりゃダメだ)

 

 無防備になった俺に向けて、最後に特大の衝撃が襲い掛かる。これを乗り切れば終わるのだが、直感的に防ぎきれないと悟る。

 

 セイさんが半透明のまま必死に盾になろうとしているが、それすらも届かない。

 

 これまで何度もピンチになってきたが、今回こそはまさしく絶体絶命の大ピンチ。もうまともに立つ力さえない。それでも、

 

 ズンっ!

 

 足りない分は気合でカバー。根性論が万能とは言わないが、最後の一押しになるのは確かだから。

 

『こんな所で……倒れてるわけにはいかないんだよっ!』

 

 どうにか足に力を込めて踏み込み、せめて最後まで抗ってやると倒れこむのだけは防ぎ、

 

 

 

“ああ……()()()()()()

 

 

 

 ピカっ!

 

 突如胸のペンダントが光を放ち、周囲の世界が灰色となって停止した。

 

 

 

 

『……これは?』

 

 目の前の幻魔の一撃も、横目で見えるクロノス先生や鍵の守り手達も動かない。

 

 音すらも大半が静まり、聞こえるのは自分の鼓動くらい。

 

(もしかして……ディーが何かしたのか?)

 

 似た状況には覚えがある。この世界に来る前、死の直前でディーが時間を限りなくゆっくりにしたアレだ。アイツが手助けにでも来たのかと思ったが、さっき聞こえた声は明らかに違っていた。

 

 すると、どこかからまた優しく痛ましい声が響いてくる。

 

“あなたに洗礼を。あなたに祝福を。あなたに救済を。さあ……()()()()()()()()

 

 ドクンっ! ドクンっ!

 

 どんどん鼓動が強くなり、俺のペンダントが強い熱を持つ。そして、俺はふらふらと返事を返した。

 

『えっ!? お断りだけど?』

 

“……何故?”

 

 その声は不思議そうに聞いてくる。いやそんなに不思議な事でもないだろうに。

 

『いきなり姿を見せないまま名乗りもせず、良く分からない事を言って私を受け入れろも何もないだろ? ……アンタが敵じゃないのは分かるけどさ』

 

 そう。その声からはまるで悪意も敵意も感じなかった。むしろ善意とか友好とかそういったものが感じられた。

 

 だけど、それでいてどこか()()()()()()()()()。こいつにとっての救済は、人にとっての救済にならないみたいな。

 

 俗な言い方をすれば、世界規模のありがた迷惑というか善意の押し売りというかそんな感じだ。

 

『まずは姿を見せて名前を教えてほしい。話はそれからだ。勿論見せられない理由があるなら聞くが』

 

“……良いでしょう”

 

 すると、目の前にふわりと朧げな光が現れる。ディーの光球とは違い、あくまで人型のようだが姿ははっきりしない。

 

“私の本体はここには居ない。しかし()ならそこに届く。そして、私の名前は”

 

『ペスト医師っ!? 遊児から離れてっ!?』

 

 ヒュンっと見覚えのある細剣が俺とそいつの前に突き立つ。この剣は……セイさんっ!

 

『大丈夫遊児!? ……ゴメン。私の加護で防ぎきれないなんて』

 

 カタカタ!?

 

 セイさんは半透明のまま俺を守るように割り込み、さらに罪善さんも俺の肩の上にふわりと浮かぶ。

 

『二人共っ! ……セイさんが気に病むことないって。俺もまさか幻魔があそこまでとは思っていなかった。そう言えば二人はここでも動けるんだな?』

『ええ。これはあくまで貴方の思考が走馬灯のように高速化して、それにペンダントを経由して私達が同調しているのよ』

 

 なるほど。……って!? 走馬灯ってつまり死にかけって事じゃんっ!? まああれだけの一撃だもんな。死にかけるのは当然か。

 

『え~っと、ペスト医師だっけか? 名前と姿を明かしてもらったから改めて聞くけどさ。さっき私を受け入れてって言ったけどどういう事?』

 

 カタカタっ!?

 

『ダメっ!? 奴の言葉に耳を貸してはっ!?』

『いや。どうもヤバい奴って事は分かるけどさ。一応話を聞くって言っちゃったし』

 

 罪善さんとセイさんが慌てて止めるって事はよっぽどだ。しかしこんな時にわざわざ話しかけてきたんだから、何かしら向こうも伝えたい事があるんだろう。

 

 だからこっちも腹を括り、どんなぶっとんだ内容でもひとまず聞くだけは聞こうとしたのだが、

 

“いいえ。ここは一度退くとしましょう”

 

 そう言って、ペスト医師はその朧気だった姿をさらにぼやけさせていく。

 

『えっ!? 良いのか?』

 

“はい。こう睨まれていてはどうにも。それに……そうですね。あなた達の言葉で言うのなら、()()()()()()()()。似た名前などというこじつけではなく、あなたとの縁が”

 

 ペスト医師は一度罪善さんの方をちらりと見ると、

 

“では、元の時間軸でいずれお会いしましょう管理人。いえ、()()()()()()()()()()使()()()。せめてもの手助けに、あなたに我が()()があらんことを”

 

 最後に何か変な事を言って消えて行った。使徒? 祝福? なんのこっちゃ?

 

『祝福……まさかっ!? 罪善っ! 今すぐ遊児に加護を掛け直』

 

 

 

 

 その瞬間、再び世界は色を取り戻して動き出した。

 

 落ち着いていた身体の疲労や痛みも元通り。セイさんと罪善さんは半透明のまま。そんな限界ギリギリの状態で幻魔の最後の一撃が迫ってくる。

 

 焼け石に水かもしれないが、俺は少しでもダメージを減らすべく外套を掴もうとして、

 

 バサッ!

 

 その前に、何かが俺を包み込むように広がった。その何かは幻魔の一撃にぶつかると、受け流すように衝撃を空へと逃がしつつ自らも霧散していく。そして、

 

「……見事だ。バランサーよ。幻魔皇の渾身の一撃を受け、五体満足で耐え凌ぐとはな」

『……はぁ……こちらも……耐え凌げるとは思ってなかったよ。……何だか分からないが、コイツに感謝しないとな』

 

 攻撃エフェクトが全て終了した時、俺は満身創痍ながらそこに立っていた。

 

 何故か外套から新たに生えて俺を守った、()()()()()をポンポンと叩きながら。

 




 デュエル決着! 最後の戦闘シーン一回に一話使う遊戯王作品があるらしいよ?

 どのデュエルも頭を悩ませなかったものはないのですが、今回は完全オリジナルの対戦だっただけあって本気で疲れました。ただアンティーク・ギアで幻魔を殴り倒すのは書いている内にちょっぴりスカッとしました。原作でもやってほしかった。

 そして悲報。管理人、変な医師から変な祝福を押し売りされました。実際かなり強力なバフは掛かっています。ただしその代わりに、変な医師との嫌な縁が発生しました。

 次回は私用により、少しお休みさせていただきます。読者様には少々お待ちいただければ幸いです。




 この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。

 お気に入り、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!
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