マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 お待たせいたしました!


戦うのは一人。しかし支えるのは皆で

 

 バサッ!

 

 突如として現れた二対四枚の黒翼は、まるで役目は果たしたとでもいうかのように大きく一度羽ばたき、そのまま粒子となって消滅していく。

 

 死ぬかと思った。咄嗟に準備できる全てを防御に回しても尚そう思えた幻魔の一撃。だけど、それを無事しのぎ切ったのは間違いなくコイツのおかげだ。

 

 ペスト医師。さっき時が止まったような空間で、俺に話しかけてきたそいつの置き土産らしき黒翼。

 

 罪善さんやセイさんがあれだけ警戒するとなると余程の奴らしいが、どうにも嫌いになれないし少なくとも借りが出来た。何か企んでいるのかもしれないが、いずれまた会う事があったら話くらいは聞いてみるか。

 

 しかし、今はそれどころじゃない。

 

『……はぁ……はぁ……ぐっ!?』

 

 命は助かったとはいえ、ダメージは間違いなく甚大だ。俺はまともに立つ事すら出来なくなり、そのままがっくりと膝を突く。

 

 そしてその衝撃で、カランと音を立てて着けていた仮面が地面に落ちた。

 

『…………児っ!? ……遊……っ!?』

 

 ……カタ……カタっ!?

 

 見れば、罪善さんとセイさんがこちらに声を掛けようとしているが、それすらままならないほどにすっかり半透明になって消えかけている。

 

 今の一撃を防ぐのにありったけの力を出し尽くしたからだろう。そこまでしてくれた事には本当に頭が上がらない。

 

「バランサーっ!? アナ~タは……どっちにしてもしっかりするノ~ネっ!?」

「……はぁ……クロノス先生こそ……無事ですか? 無事でなかったら……こうして身体を張って防いだ意味がないもので」

 

 俺のすぐ後ろからクロノス先生が近づいてくる。少し足元がふらついているが、目立った外傷は見当たらない。

 

 パタパタっ!

 

 そして、代わりに()()()()()()()()()クロノス先生を守り切った罰鳥は、最後に大きく羽ばたいてフッと姿を消した。実体化が保てなくなったんだろう。よく頑張ってくれた。

 

「遊児っ!? しっかりしろ遊児っ!?」

 

 そこへ十代を始めとした皆も駆け寄ってくる。俺の素顔を見て皆大なり小なり驚いているようだが、今は深く説明している暇もない。

 

「ああ。黙ってて悪いな十代。だがまぁ話は後だ。今は」

「そうだ。バランサーよ。……いや、今更正体を隠すこともあるまい。久城遊児よ。いかにお前が幻魔皇の一撃を満身創痍ながらも凌いで見せたとはいえ、デュエルの勝敗は変わらぬ」

 

 今も尚威風堂々と立つ影丸理事長は、ラビエルを従えたままそうはっきりと宣言する。

 

 その言葉通り、肉体は無事だったもののクロノス先生のLPはもう尽きている。最後にラビエルに一撃打ち込んだ古代の機械巨人も、限界を迎えたのか既に消滅している。

 

 むしろ勝負がついたのに顕現を続けているラビエルの方が異常というべきか。

 

「これにより……むんっ!」

「……くぅっ!?」

 

 理事長が軽く気合を入れると、ぶわっと周囲に軽い波動のようなものが広がり、幻魔の力を中和していた茂木が苦し気な表情を浮かべる。

 

 もけもけもふらふらだし、もう幻魔の力を中和するのは限界か。……仕方ない。なら、

 

「この通りだ。戦いの中で幻魔は力を蓄え、俺自身も完全ではないにせよ若さを取り戻し、操れる精霊の力も上昇している。クロノスとの戦いは丁度良い肩慣らしとなった。その実力も含め褒めてやろう」

「そこを褒められてもあんまり嬉しくないノ~ネっ!?」

 

 どこまでも上から目線のその言葉に、クロノス先生はグヌヌと顔を歪める。

 

「だが、まだ精霊の力も若さも完全ではない。やはり当初の予定通り、強い精霊の力を持つデュエリストを倒して力を奪わねば。……さあ。遊城十代よ。万丈目凖よ。どちらでも良い。俺と戦え。断るというのならまず手始めにこの結界内、そして次にこの島の全てのデュエルモンスターズの精霊の精気を喰らい尽くすのみだっ!」

 

 理事長め。好き勝手言いやがる。

 

 正直ここで十代と万丈目が勝負を受けなければ、被害は最悪この島のみで済むだろう。理事長も中途半端に若返るだけで終わり、三幻魔も完全覚醒までには至らない。

 

 しかしそれでも被害はとんでもない事になるし、なにより、

 

「ああっ! やってやるぜ影丸理事長っ! クロノス先生や遊児をこんな目に遭わされて黙ってられねぇっ! それにお前なんかにデュエルモンスターズの精霊達を好き勝手させてたまるかよっ!」

 

 

 十代(主人公)はこんな時逃げたりしない。

 

 

 ザッと一歩前に踏み出し、デュエルディスクを構えて臨戦態勢をとる。それを見た理事長は、予定通りとばかりにニヤリと笑う。

 

「それで良い。理論上は一人分で充分だが……お前はどうする? 万丈目よ。何なら二人がかりでも俺は一向に構わぬぞ」

 

 それは自分の力。及び三幻魔の力に対する絶対の自信によるもの。言葉通り二人がかりでかかってきたとしても負けはしないという、おそらく一年生編のラスボスにふさわしい風格。

 

 だが今の言葉で墓穴を掘ったな。漫画版GXでは、ラスボスことトラゴエディアに十代と万丈目のタッグで立ち向かい勝利している。

 

 つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言っても良い。おまけに主人公(十代)推し(万丈目)のタッグだ。

 

 これで一気に有利になる。そう思ったのだが、

 

 

「当然受けて立つっ! ……と言いたい所だが、十代。()()()()()()()()()()()()

 

 

 万丈目は珍しく勝負を避けた。それには理事長も少し予想外だったのか、僅かに眉を上げる。

 

「おうっ! でも良いのかよ万丈目?」

「ああ。たとえ一人でも俺様は負けるつもりはないが……コイツがこのザマでな」

 

 不思議そうな顔をする十代に対し、万丈目は苛立ち混じりにデッキから一枚のカードを取り出して見せる。それは、

 

『アニキィ……タスケテェ』

 

 さっきの波動で精気を吸われ、普段よりガリガリの絵柄になっているおジャマ・イエローの姿だった。姿こそ見えないが、おそらくグリーンやブラックも同じような目に遭っているのだろう。

 

「この通り。雑魚共がすっかりグロッキーだ。この調子では普段よりさらに雑魚に磨きがかかってしまう。よって俺様は少しでも力を温存する。もっとも」

 

 そこで万丈目は十代、及び理事長に向けてニヤリと不敵に笑ってみせる。

 

「もしお前が負けて情けない姿を晒すようであれば、その時は俺様の出番だがな」

「へっ! 言ってくれるじゃんか。任せとけって! 幻魔だろうが何だろうが、俺が勝つからよ!」

 

 そこで十代が拳を突き出すと、万丈目は意図を理解したのか呆れたように、しかししっかりと自身の拳を合わせる。

 

 う~む。実に良い。気のせいかさっきから、理事長までもが何か眩しくも感慨深いものを見るかのようにほんの少しだけ雰囲気が和らいでいる。……すぐに元に戻ったが。

 

 しかしそれはそれとして、タッグデュエルの方が勝率が上がるのは事実。幻魔相手には少しでも勝ちの目を増やしておきたい。あと普通に主人公と推しのタッグが見たい。なので、

 

「……はぁ……待て……待つんだ万丈目っ! 三幻魔は強大だ。わざわざ向こうが二人がかりでも良いって言ってるんだし、精霊への負担なら多少ならこのペンダントを使えば軽減できる。ここはお前と十代のタッグで……うわっ!?」

「無理はそこまでにしておけ久城」

 

 どうにか軌道修正しようと説得しようとしたが、ガッと万丈目に纏っていた外套を掴まれそのまま引きずられていく。そしてかなり疲労している茂木の所まで連れてこられた。

 

「茂木。もけもけと一緒にあとどのくらい三幻魔を抑えられる?」

「正直もう限界かも。どれだけ頑張ってもあと一戦。下手するとデュエルの最中に限界を迎えるかも」

「やはりな。……それで久城よ。お前の事だ。そのズタボロの身体に鞭打って、茂木のサポートに回ろうと考えているだろう?」

「……鋭いな。流石名探偵」

 

 普通にやる事を読まれてたよ。唯一この中で幻魔の力を中和できる茂木が途中で万が一倒れでもしたら、それこそ幻魔の影響がどれだけ広がるか分からないからな。

 

 最悪に備えていざとなったらカバーに入るつもりだったんだが。

 

「それは止めといた方が良いんじゃないかな? 僕もとっても疲れているけど、久城君も相当だよ」

「そうだ。お前は充分過ぎるほど良くやった。なので茂木のサポートは俺様に任せろ。お前は身体を休めながらやり方だけ指示すれば良い」

 

 ……まいったな。あのプライドの高い万丈目が十代に戦いを任せたのも驚きだったっていうのに、今度は俺様に任せろと力強く言ってくれるとは。ファン冥利に尽きる。

 

 ならファンとしては、ここはその決意を信じるとしようか。

 

 

 

 そして、

 

「行くぜっ! 影丸理事長っ!」

「来るが良いっ! お前を倒し、その時こそ俺は永遠の若さと精霊の力を手に入れるのだっ!」

 

 いよいよ、十代と影丸理事長のデュエルが始まる。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 アカデミア本棟の医務室にて、二人の人物がそれぞれベッドに横たわっていた。

 

 一人は今も尚意識が戻らないカミューラ。そしてもう一人は、極度の疲労状態でここに担ぎ込まれた大徳寺先生だった。

 

 本来なら理事長を止めるべく、最後の力を振り絞ってでも乗り込んでいった可能性が高いが、幸か不幸か疲労により途中で意識を失い、こうして点滴を打たれて穏やかに眠っていた。

 

 ベッドの横には、彼の所持品が一つにまとめられている。

 

 キイキイ。

 

 窓の外ではコウモリの群れが、自身の主と新たなる部屋の住人をそっと見守っていた。

 

 そして今もまた、遊児の部屋付近で見張り(という体の滞在)をしている少数のコウモリと群れの一部が定期交代をしようかという所で、

 

 

 パチリ。

 

 

 吸血鬼が、目を覚ました。

 




 仕事のごたごたと身内のあれこれが重なり、気が付いたら前回から二か月ほど経っているという事態になりましたが、こうして戻ってまいりました。

 まだしばらくはこれまでのように定期投稿とはいかないかもしれませんが、また暇つぶしに読んで頂ければ幸いです。
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