マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
それは、まさしく死闘だった。
「受けよ十代。幻魔の力をっ! 『ハイパーブレイズ』っ!」
「くうぅっ!? テンペスターの特殊効果発動っ! 場のカードを墓地に送る事で、バトルでの破壊を無効にする。伏せていた『進化する翼』を墓地へっ!」
専用構築が必要な幻魔を、むしろ向こうに選ばれたとも言うべき豪運でやすやすと召喚して猛攻を仕掛ける影丸に対し、十代はカードを消費しながらも必死に食らいついていく。
そして、その周囲では、
カタカタっ!
「万丈目っ! 罪善さんの所がちょっと手薄になっている。そちらに力を流してくれ」
「任せておけっ!」
もけもけ~っ!
「万丈目君。今度はもけもけの方が破られそう。こちらにもちょっと回して」
「分かってるっ!」
幻魔の影響を少しでも減らすべく、万丈目を始めとした精霊使いが必死に奮戦していた。
幻魔の力は周囲の精霊の力を吸い上げるもの。しかしもけもけ等の一部の精霊であればある程度抵抗、中和が出来る。
そのため七精門の結界に沿うようにもけもけ、罪善さん、セイさんといった精霊を配置し、それぞれに万丈目が俺や茂木を経由して力を注ぎこみ、どうにか幻魔の力を抑えていた。だが、
「はぁ……はぁ」
「大丈夫か万丈目っ!? やはり俺もっ!」
「うるさいっ! 久城は黙って少しでも休んでおけっ!」
「そうだよ久城君。この中じゃ一番消耗してるのは君なんだから……ふぅ」
この通り。全員が疲労困憊だった。
茂木はクロノス先生の戦いの時から抑え続けているし、俺も幻魔の本気の一撃でもうグロッキー状態。一番余力があるのは万丈目だが、それでもガス欠の俺の代わりに罪善さんとセイさんに行動可能ラインまで力を注いでなお今もサポート中。その負担はとんでもない。
「フフフ。お前の残りのLPはもはや風前の灯火。どこまで耐えられるかな? ゆけいハモンっ! 『フレンドッグ』に攻撃っ! 『地獄の贖罪』っ! さらにハモンの効果により、モンスターを破壊した時1000の効果ダメージを与えるっ!」
「ぐあああっ!? けど……この瞬間、フレンドッグの効果が発動するぜっ! 俺は墓地の『バブルマン』と『融合』のカードを手札に戻すっ!」
マズいな。どうにか手札を切らさないように立ちまわっているが、状況的には十代が劣勢だ。影丸理事長め。重量級の幻魔を普通にポンポン呼び出しやがって。
場に幻魔が増える度に、こっちの負担も大きくなっていく。普段なら皮肉の一つでも飛ばすセイさんが、何も言わずに集中して祈りを捧げているのがその証拠だ。
「くそっ! 俺にも精霊の力があれば、少しでも手助けが出来るのにっ!」
「……無念だ」
その辺りの素養がない三沢とカイザーが、拳を握り締めて嘆いている。無力なのは俺も同じだ。この大一番に見てるしか出来ないとは。これならもう少し力を温存して置けば良かった。
鮫島校長はさっき持っていた何かの機械を操作したっきり、険しい顔のまま戦況を見守っている。
「速攻魔法『クリボーを呼ぶ笛』っ! ハネクリボーをデッキから守備表示で特殊召喚っ!」
「しぶといな。だがこれでもう壁も尽きる。ウリアよっ! ハネクリボーを焼き払えっ!」
ハネクリボーが破壊され、遂に十代の場は完全にがら空きに。だが、
「これは……大徳寺先生がくれたカード!?」
一瞬だけ絵柄がちらっと見えたが、そこにあったのは『賢者の石-サバティエル』のカード。
本来ならハネクリボーが墓地にある時だけ使えるという効果だった筈だが、アニメ版効果なのか破壊をトリガーにデッキから引っ張ってこれたらしい。
しかしあのカードは使えるぞ。LPを半分払う事で、融合かフュージョンと名の付く魔法カードなら何でもデッキからサーチできる。これなら十代の引きと合わせて逆転の目が出てくる。そこへ、
「影丸理事長っ! 大徳寺先生はアンタの事を心配していた。身体はもうボロボロだってのに、死んじまうかもしれない事も覚悟の上で俺を試し、アンタを止めてくれって頼んできた。それを何とも思わないのかよっ!」
十代はそう影丸に問いかける。少なくとも、他のセブンスターズに比べて大徳寺先生は影丸と多少深い付き合いがあったと思えた。いわば腹心の部下だ。なら多少なりとも思う事がある筈だと。だが、
「大徳寺か……所詮奴も手駒の一つに過ぎん」
「何っ!」
「……その言葉は聞き捨てならねぇな。影丸理事長ぉっ!」
すまないが十代。そこは俺も口を挟ませてもらう。
「おい久城っ! 休んでいろと」
「ごめんな万丈目。だけどこれだけは言わなきゃいけない」
止める万丈目をよそに、俺は重たい身体に鞭を打って影丸に向けて叫ぶ。
「バランサーとして言わせてもらうぜ。あの人はどこまでも真剣だった。命を燃やし、魂を削り、アンタへの恩義と世界への倫理の板挟みになりながらもだ。それでもただの手駒だと言うのかっ!」
「ならば何故裏切ったっ!」
そう返した理事長の言葉には、怒りとほんの少しだけの悲しみが感じられた。それを感じ取ったのか、俺を含め周囲が一瞬静寂に包まれる。
「……裏切りさえしなければ、最後まで俺に付き従うというのなら、俺とて長年の部下を無碍に扱うつもりはなかった。幻魔の力を完全に掌握した暁には、余剰分の力で多少なりとも奴を延命させる算段もあった。だが結果はこれだ。そんな男を手駒と呼んで何が悪いっ!」
決して愛着がない訳ではなかったのだろう。だからこそ、理事長は自分に逆らった事に怒りだけではなく悲しみを覚えた。
だがそれは、あくまで裏切ったという一面
「そうじゃねえだろがっ! それはアンタのためを思っての行動だった筈だ。言う事を聞くだけが良い部下じゃないっ! アンタ達はもっとその辺りを話し合うべきだったんだ」
「はっ。戯言をほざくなっ! バランサーよ。十代よ。文句があるというなら、この俺を倒してから言うが良いっ! 勿論……倒せればの話だがな」
「上等だっ!」
そうバッサリと切り捨てる理事長に、十代は力強く吼える。そして俺も続こうとして、
クラっ!
(マズイっ!? 急に叫んだから立ち眩みが)
ガシッ!
少しよろめいて倒れかけた時、誰かが腕を掴んで支えてくれる。
「大丈夫か?」
「あとは私達に任せて。ゆっくり休みなさい」
「ありがとう……って、アナタ達はっ!?」
それは万丈目でもなく、茂木でもなく、罪善さんやセイさんでもなく、予想外だったが俺もそれなりによく知っている人物。そう。
「気合入ってるねぇ
「それはそうよ。生徒を守るのも教師の務めだもの。
マンガ版の重要人物である、響紅葉と響みどりの姉弟だった。何でこんな所に居るんだよっ!?
デュエルの流れは原作と変わらないのですが、これまでの様々な要因から周囲が色々と変化しています。