マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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賢者の石が導く奇跡

 

「むぅ……貴様達は」

「紅葉さんっ!? それと……誰だ?」

 

 デュエル中の影丸理事長と十代が少し驚いたような顔をしてデュエルを中断する。そりゃそうだ。俺も驚いている。

 

「よう十代。学園祭ぶりだな。助太刀に来たぞ。こっちは俺の姉のみどり姉さんだ」

「初めまして。ふふっ。君の事は紅葉や鮫島校長から聞いているわよ。他の皆の事もね。……それと、助太刀は私達だけじゃないわよ」

 

 紅葉さんが人好きのする笑顔を見せ、みどりさんは腕で後ろを指し示す。そこには、

 

「大丈夫かい万丈目君? 茂木君はこちらでサポートするから、君は久城君の方に専念するんだ」

「アンタは……そうか。すまない。よろしく頼む」

「もう少し大人への言葉遣いには気を付けてほしいのだが、今はひとまず置いておこうか」

 

 デュエル理論担当の佐藤先生が、全身青い鎧のような外殻に覆われた半獣半人の精霊を連れて幻魔の抑えに加勢していた。……佐藤先生も精霊使いだったのっ!?

 

「ふぅ。どうにか間に合ってくれましたか」

「……そうか。貴様の企みか。鮫島校長」

 

 コホンと咳ばらいを一つすると、鮫島校長が一歩前に踏み出して理事長を見据える。

 

「理事長。セブンスターズの件が片付いたとしても、貴方がそのまま潔く諦めると思ってはいませんでした。なのでこちらも、幾つか対抗策を練る必要がありました。その一つがこの方々です」

 

 校長先生に何か策があるというのは、以前大徳寺先生を交えた話し合いで聞かされていた。しかしこういう事だったとは。

 

「遅かれ早かれいつかは幻魔が解き放たれる。そしてそれを操る理事長相手では、普通のデュエリストでは太刀打ちできない。そう。そこに居る久城君や十代君、万丈目君のような精霊の力、或いは闇のデュエルに対抗出来る何かを持つ者でなければ。なので私はセブンスターズとの戦いの中、秘密裏に対抗出来る人材を集めていたのです」

 

 そうか。みどり先生と紅葉さんは、マンガ版でもそうだったけど精霊を視認する力があった。

 

 そして佐藤先生の事は知らなかったが、精霊がついている所を見るとそれだけの力があるのだろう。これだけの面子が居れば少しは対抗できる。

 

「紅葉のマネージメントも落ち着いてきたし、そろそろ本業に戻ろうかと思っていた矢先、鮫島校長から呼び出しがかかったの。それで学園祭に合わせて学園に戻り、今回の件について知ったという訳」

「それで姉さんが微力ながら加勢するって言いだすからさ。そういう事なら俺も付き合おうかなって。丁度大会が一つ片付いてしばらく余裕があるし、十代ともまたデュエルしたかったしな」

「校長から依頼された時は驚きましたが、大人として子供を守るのは当然の事ですからね。……そう。当然の……事ですから」

 

 響姉弟がこちらを安心させるようにそう話すのに対し、佐藤先生はどこか歯切れが悪い。だが何はともあれこれは心強い援軍だ。

 

「本来なら他にも依頼した方が居たのですが、まさかここまで早く理事長が乗り込んでくるとは予想外でした。しかし良く間に合ってくれましたね。先ほど場所を連絡したばかりなのに」

「ああ。()がその少し前に知らせてくれたんですよ。理事長の手によって七精門の封印が解かれたと。なのでこうして間に合ったのです」

 

 彼? と不思議そうな顔をする鮫島校長に対し、みどりさんはそっと横を指差す。そこには、

 

「……吹雪君じゃないですかっ!?」

「ああ。皆の危機に居ても立ってもいられなくてね。こうして援軍に駆け付けたという訳さ」

 

 ()()()()()()()吹雪さんが、近くの茂みからそっと姿を現した。

 

 それを見てカイザーや三沢が急いで駆け寄る。

 

「大丈夫か吹雪? 具合が良くなさそうに見える。それに明日香はどうした?」

「ああ。心配ない。急いできたから少し疲れただけさ。明日香は……あの状態だからね。置いてきた」

「……そうか」

「何にせよ助かりました吹雪さん!」

 

 一瞬カイザーは何か考え込むような顔をするが、三沢の言葉にすぐ気を取り直してそうだなと頷く。

 

 元デュエルチャンプに、それと対等に戦える姉。そして精霊使いのデュエルアカデミア教師。これだけの安心感漂う面子が揃えば百人力……なのだが、

 

 

「はっ! 有象無象が何人集まった所で無駄な事よっ!」

 

 

 影丸理事長にはまるで焦る様子はなかった。

 

「なるほど。鮫島よ。確かにこれだけの人材を揃えたお前の手腕は認めよう。それこそ縛りさえなければ、生徒無しでセブンスターズを迎え撃てただろうとな。……しかし、事ここに至っては無意味っ! この十代とのデュエルに俺が勝利した時点で、精霊の力と三幻魔の力は完全に我が物となるっ! かつての若さを取り戻した俺に敵うと思うか?」

 

 その自信たっぷりの影丸の言葉に、鮫島校長も渋い顔をする。確かに今でさえ強大な影丸がさらに全盛期の力を取り戻したら、それこそ厄介極まりないだろう。

 

 

「それはどうかな?」

 

 

 だが、その絶望的な状況に紅葉さんが待ったをかける。

 

「影丸さん。アンタの言ってる事はまず前提が間違ってるぜ。……()()()()()()()()()()。なあ十代? そうだろう? お前はここで素直に負けるようなデュエリストか?」

「そんな訳ないだろ紅葉さんっ!」

 

 それは疑問ではなく確認。紅葉さんの言葉に、十代はへへっと笑って力強く腕を上げる。

 

「幻魔をこのままほっといたら、世界はあちこち滅茶苦茶になっちまう。なら勝つしかないだろっ! それに……こんな強いモンスターと戦えてさ。言っちゃあ悪いんだけど、俺ワクワクが止まらねえっ!」

 

 そう。これが十代の本質にして強み。どんな危機的状況であろうとも、デュエルを楽しむという精神。

 

 間違いなく辛く苦しいのに、それでいて尚不敵に、十代は笑みをこぼす。

 

「ああ。それで良いっ! なら周りの事は俺達に任せて、お前は思いっきり理事長をぶっ倒せっ! な~に心配するな!」

 

 紅葉さんはそう言って、飄々と笑って見せる。

 

「最悪お前が負けたら俺達の出番。責任取って大人の力を見せてやるよ!」

「おうっ! ……待たせたな影丸。デュエル再開だっ!」

「ほぉ。舐めた口を叩くものだ。ならばその蛮勇。その無謀さ。この力でへし折ってやらんとなぁっ!」

 

 

 

 

 そして、戦いは加速する。

 

「フハハハハハ! 見るが良いっ! これこそが幻魔を統べる者っ! 『幻魔皇ラビエル』っ! ああ漲る。……漲るぞぉっ!」

 

 激戦の中、再び三体の幻魔を場に揃えた影丸理事長は、全盛期の肉体を取り戻す。

 

 精気漲る二十代の肉体。その溢れ出る威圧感は、もはやカードの精霊一歩手前と言ってもおかしくはなかった。

 

「お前に分かるか十代。かつてはここまでの肉体を誇った俺が、どれだけ老いさらばえていく事に絶望を覚えたかっ!? 自分の足で地を駆ける事も歩く事も叶わず、機械に縋らねばならぬ事に屈辱を味わったかっ!?」

 

 そうして理事長は、自分が先ほど両腕で持ち上げたロボットを今度は片腕で持ち上げて見せる。

 

「正直に言おう。俺はお前達が羨ましかった。妬ましかったっ! 幻魔を復活させるべくこの学園を創り上げてからも、そこで友と語らい日々を生きる生徒達の姿を見る度に、もう一度青春を謳歌したいという願いは強くなっていったっ!」

 

 そう吠える理事長の姿は、見かけこそ若返った筈なのにどこか老いを感じさせるものだった。

 

 超人ではなく、ただの人間として、理事長は思いの丈をぶちまける。

 

「ああそうとも。幻魔の力を最大解放し、世界中のデュエルモンスターズの精霊の精気を吸収すれば、永遠不滅の若さと肉体が約束されるっ! 故に……こんな物もう要らんっ!」

 

 理事長はそのまま苦々しい顔をして腕を振りかぶる。そして今にも放り投げようという所で、

 

「理事長。アンタ可哀そうな奴だな」

「何だと?」

 

 目の前で対する十代は、そう静かに語りかけた。予想外の反応だったのか、理事長はいったんロボットを地面に降ろす。

 

「俺にはまだ老いとかそういうのは良く分かんねえ。でもさ、デュエルモンスターズが無くなったら、誰もお前の事を仲間だなんて思わない。それは結局、若返っても孤独って事だろ? いくら長生きしても、仲間が誰も居ないんじゃつまらないに決まってる」

「仲間など必要ないっ! 立てつく奴は全てねじ伏せるのみ」

「精霊達や、俺の仲間を酷い目に遭わせることは許さねえっ! アンタを何が何でも止めてやるぜっ!」

「やれるものなら……やってみるが良いっ! この三体の幻魔を倒せるというのならなっ!」

 

 

 

 

 その後も激戦は続いた。

 

 先ほどの『賢者の石-サバティエル』のアニメ版効果。()()()()LPを半分にする度にカードをデッキからサーチするという滅茶苦茶な効果で幻魔に食い下がる十代。

 

 切り札として出した『E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン』の効果でLPを削り切ろうとするが、影丸はハモンの“破壊されたターンダメージを0にする”効果で回避。

 

 反撃に出る影丸の猛攻を、サバティエルの効果で持ってきた『融合解除』で凌ぐ十代だったが、またもや場はがら空きに。

 

 

「まだ足掻くか。いい加減諦めて楽になれ。場のカードは0。この状況で三幻魔相手に何が出来るというのだ?」

「LPが0になるまで、デッキが尽きるまで、俺は諦めないぜ。……俺のターン。ドローっ!」

 

 

 そして、諦めない心が遂に奇跡を起こす。

 

「俺は『クレイマン』を攻撃表示で召喚。そして魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動!」

 

 サバティエル三度目の効果でデッキからサーチしたミラクル・フュージョン。場と墓地のヒーロー達を融合し、十代の場に現れたのは究極のヒーローと言わしめた『E・HEROエリクシーラー』。

 

 そしてそこで手札のサバティエルの最後の効果。()()使()()()このカードを装備することで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というアニメ版限定効果が発動する。

 

 

「ぐっ!? まさか、先ほどクレイマンを敢えて召喚してから融合したのは、ラビエルが効果でトークンを出すのを誘発するためだというのかっ!?」

「ああ。今のお前の場のモンスターは5体。よってエリクシーラーの攻撃力はっ!」

 

 エリクシーラー ATK2900→14500

 

「14500だとっ!?」

 

 ラビエルが他の幻魔を糧にした時の打点をさらに上回った事に、影丸は驚きを隠せなかった。そして、

 

「これで最後だっ! エリクシーラーでラビエルに攻撃っ! 『究極剣サバティエル』っ!」

「ぐわああああっ!?」

 

 剣の形を取ったサバティエルを振るい、エリクシーラーがラビエルを一刀両断。

 

 こうして、十代と影丸の死闘は、十代の勝利で幕を下ろしたのだった。

 

 

 

 

(……計画通り)

 

 そう。()()()()()()死闘は……。

 




 これにて十代対影丸戦(ダイジェスト版)は終了です。デュエルの内容は変わらない代わりに、周囲の動きや会話フェイズマシマシでした。

 ちなみに描写外では、みどりさんや紅葉も加えて総動員で幻魔の力を中和していたため、理事長が若返った以外で島の外への影響はほとんどなかった模様。国中のカードの絵柄が消える事件も起きていません。
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