マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 今回は少し独自設定タグが仕事します。


制裁タッグデュエルに向けて出来ること

「う~ん。やはり多いな」

 

 俺はその日、授業が終わってから図書室に籠っていた。机にいくつかの本と地図を開き、交互に見ながら軽くため息をつく。

 

『ねえねえお兄ちゃん? 何の本を読んでるの?』

「うんっ? レティシアか。……この島のことやデュエルアカデミアのことを調べていたんだよ」

 

 俺の傍らから半透明の姿でレティシアが現れる。幸い今図書室を利用してる人は居ないようだ。なので少し声を抑えながら普通に答える。

 

「この学校は島一つを丸々使ってるだけあって、やたら施設やら何やらが多いんだよ。今も島の地図を見ながら確認している所だ」

 

 マンガ版を読んだ時はフィクションだからと流していたが、常識的に考えてこの島は割と滅茶苦茶である。

 

 どこぞの無人島に建てられているまではまだ良いとしよう。ヘリや船を使わないと行き来出来ないのは不便だが、それだけなら規模は違えど似たような学校はある。全寮制だから長い合宿と考えても良い。

 

 だがそもそも学校の近くに活火山があることからまずおかしい。火山灰とかが降ってくる可能性もあるし、日常生活を送るには結構不便だ。

 

 他にも灯台に送電施設、港なんかはまだ分かるのだが、島の奥地には何かの研究所らしき物まである。学業メインならそんなのは要らないだろう。……こっそり変な研究でもしてんじゃないのかね?

 

 他にもどうやら、本棟から軽いハイキング気分で行ける場所に妙な遺跡まであるのだから本当に分からない。何でこんな場所に学校を造ろうとなど思ったのか。考えた人の顔が見てみたい。

 

「さらにこの前やった怪談話みたいに、島のあちこちにいわくつきの場所があるみたいでな。ざっと確認するだけでも一苦労だ」

 

 アニメの世界が基になっているのなら、他愛ない噂話が普通に本当だったという流れは良くある。

 

 前に翔が怪談で語った北に断崖にある洞窟の件や、実際に闇のデュエルの研究をしていたらしき特待生寮。他にもさっき調べた弱小カードの墓場とされている枯れ井戸の話なんかもある。

 

 他にもそれらしい噂話なら数えきれないほどだ。全てが本当ではないだろうが、他にも一つ二つ本物が混じっている可能性は高い。

 

『ふ~ん。なんだか分からないけど、大変なんだね』

「まあな。でも、どのみちこの島のことを知っておくのは悪いことじゃないし、いずれやることを今先にやっておくってだけさ」

『……うん。分かった。笑顔を忘れずに無理しないでね』

 

 レティシアはそこでニッコリ笑って姿を消した。やはりディーの言葉通りレティシアは良い子らしい。こんな子が何故幻想体として存在しているのだろうか?

 

 ……おっといけない。今はこの島のことを調べるのに集中集中っと。

 

 

 

 

 大雑把にだがこの島の立地を頭に入れ、時間もそれなりに経って暗くなってきたので俺は図書室を出る。

 

 そう言えば、明後日は十代達の制裁タッグデュエルの日だったな。それに向けて、今頃十代達は追い込みをかけている頃だろうか? ……たまには購買に行って何か差し入れでも買ってきてやるかな。ドローパンとか。

 

 ちなみにこの学園内において、生徒は学園側から定期的にDPというポイントが支給される。これは生徒のランクやテスト、実技の成績などで額が増減し、購買などで現金の代わりとして使用できる。言わば学園側から支給される小遣いだ。

 

 寮の食事はそれぞれ無料だが、購買でカードや嗜好品を買う際は貧乏学生にとって必須となる。俺の場合はオシリスレッドなので額がやや少なめだが、カードをほとんど買わないため結構溜まっている。たまには奮発してあいつらに奢っても良いだろう。

 

 という訳で自分とアイツらの分のドローパンと、軽く摘まむための菓子などをいくつか買っていく。

 

「毎度あり~。いつもありがとうね!」

「こちらこそすみませんトメさん。俺はあんまりカード買わなくて」

「良いんだよぉそれくらい。遊児ちゃんオシリスレッドだろ? ポイントだってカツカツだろうし、その代わりによくドローパンなんかを買って行ってくれるしね!」

 

 以前のテストの時の縁もあって、購買に行く時はよくトメさんと話す。よく一緒に居る店員のセイコさんは今は居ないようだな。

 

「そうだ丁度良かった! ちょっとこれを見ておくれよ」

「何ですか?」

 

 トメさんは何か思い立ったような顔をして、カウンターの奥からチラシのような物を取り出す。

 

「これは……明日の購買部主催タッグデュエル大会のお知らせですね」

 

 このチラシ自体は購買部の掲示板にも張ってある。こうした小規模な大会は、授業とは別に時々開催されているのでそこまで珍しくはない。

 

 腕試しには悪くないし、優勝者や上位入賞者には少額ではあるがDPが授与されるので意外と人気がある。元の世界のショップ大会のようなものだ。

 

「そうなんだよ。いやね、じつは明日だっていうのに参加人数が振るわなくてねぇ。良かったら遊児ちゃんも参加しないかなって」

「……折角誘ってもらって申し訳ないんですが、俺はあんまりこういったデュエル大会には興味ないんですよ」

 

 実際こういった小規模なデュエル大会は、学園主催ならともかく学校の成績とは特に関係がない。あくまで自由参加だからだ。

 

 実際オシリスレッドや一部のラーイエローと言った、DPにあまり余裕のない層からは高い人気が有るが、それ以外であまり参加するものは居ない。デッキ調整のためや腕試しといった理由で参加する者も居るが少数だ。

 

 俺は元々使えるカードが幻想体縛りなのでカードを買う必要があまりないし、嗜好品なんかを買うだけなら今の支給DPで充分賄える。腕試しに興味がない訳じゃないが、それなら学園主催でやる大会の方を優先するしな。

 

 なのでこれまでこういった大会には一度も参加していなかったのだ。

 

「しかもタッグデュエル()()ですからね。パートナー選びは重要ですし、意外に敷居が高かったのかもしれません」

「う~ん。たまにはいつもと違うやり方にしようってセイコちゃんと相談して決めたんだけど、やっぱり次からは元のルールに戻そうかしら」

「ただタッグデュエルも決して参加者が居ない訳じゃないんですよね? なら次からは限定じゃなくて、部門ごとに分けたらどうでしょうか? それならまったくの企画倒れにはならないと思います」

 

 トメさんがどことなく落ち込んでいるように感じたので、フォローにならないかもしれないがそう言っておく。

 

「そうだねぇ。一度にやるとなるとちょっと難しいかもしれないけど、次からはちょっと考えてみようかね。……ありがとうね遊児ちゃん」

「いえ。参加は確か大会30分前まで受け付けてましたよね。俺も暇そうな知り合いが居たら一声かけてみますよ。じゃあこれで失礼します!」

 

 と言ってもそんな暇そうな奴居たかな? まあ寮に戻ったら聞いてみるか。俺は一応チラシをトメさんから一枚もらい、購買部を後にした。

 

 

 

 

 そうして俺は寮に戻り、差し入れを持って十代達の部屋に突撃した。……したのだが、

 

「普段とまるで変わらないじゃないかっ! もう明後日制裁タッグデュエルだっていうのに」

 

 そう。十代達ときたら、普段通りソロのデュエルばっかりでほとんどタッグの練習をしていなかったのだ。

 

「まあそう怒るなって! やったことはないけど何とかなる。あっ! ドローパン一つも~らいっ!」

「こらっ! 十代だけ勝手に取るんじゃないってのっ! ……ったく。翔や隼人も食うか?」

「あ、ありがとう久城君!」

「ありがとうなんだな遊児」

 

 内心こんなので明後日大丈夫かと不安に思いながらも、とりあえず皆でドローパンをパクつく。……今日は甘栗パンか。これはこれで嫌いじゃない。

 

 こうして頭に栄養を行き渡らせたところで、これからのことについて話し合うことにする。

 

「十代が強いのはよく分かってる。しかしそれはあくまでソロの話だ。制裁タッグデュエルの相手が誰になるかは知らないが、ペナルティなんだから向こうもそれ相応の相手を出してくるに決まってる。それに対して何の準備も無いってのはマズいだろう」

「そうだよね。アニキ。久城君の言う通りっすよ!」

「その通りなんだな! 俺だって父ちゃんと戦う時には入念に準備をしたんだな。……それでも負けちゃったけど、あれはきっと無駄じゃなかったんだなあ」

 

 翔と隼人が俺の言葉に追随する。自信家の十代と違って翔は準備をしっかりするタイプだからな。大方十代に付き合って練習しなかったが、やはり不安ではあったのだろう。

 

 以前のパワー・ボンドの一件からは大分立ち直ってきているが、それにしたってまだ完全に吹っ切れたわけじゃなさそうだ。それをいきなり使えるようになれというのはしんどいし、慣れないタッグデュエルでとなれば尚更だ。

 

 隼人もそうだったけど、時間があるのなら練習して何が悪いという話だ。準備不足で負ける方がよっぽどマズいからな。

 

「……そうだな。何が来ても全力で楽しむだけだけど、楽しみ方は人それぞれだもんな。よし! そうと決まればさっそく練習だ! 翔! お前の今のデッキを見せてくれよ」

「うん! もちろんだよアニキ」

 

 こうして十代もタッグデュエルの練習に意欲的になり、さっそく互いのデッキの内容を確認し合う。何が入っているのか? こんな状況になったら互いにどう動くか? 話すことは沢山有るからな。これはもうしばらくかかるかもしれない。……そうだ!

 

「そう言えば皆、明日の授業のあとの予定はどうなってる?」

「えっ!? 僕は特に決めてないよ」

「俺もなんだな」

「俺もない。なんだよ遊児。何かあんのか?」

 

 よおし。都合の良いことに全員空いているな。……普段なら明後日に迫った制裁タッグデュエルの方に集中させるべきだが、偶然にもこっちもタッグデュエル形式。それなら本番前の調整も兼ねて誘わない手はない。

 

「いやなに。タッグデュエルの練習なら、丁度明日こんなものがあるからさ。練習を兼ねて試しに出てみないかって話だ! まあこれで勝てないようじゃ明後日の本番どうするのって話だけどな」

 

 俺はチラシを取り出して皆に見えるように広げると、軽く挑発する様にニヤリと笑ってみせた。

 




 DPの設定は、以前感想欄において少しだけ説明したのですが一部ゲームから流用しています。

 ちなみにDPしか使えないのではなく、当然現金払いも可能です。万丈目など一部の金持ちの生徒はそちらの方が多いくらいですね。




 次回も明後日投稿予定です。

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