マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様   作:黒月天星

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 注意! 途中視点変更があります。

 また、若干のキャラ崩壊があります。


閑話 女吸血鬼の回想

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

(……ここは?)

 

 私が気が付いた時、そこはどこかの部屋のベッドの上だった。

 

(一体何が? 私はどうして……うっ!?)

 

 起き上がろうとした時、全身を襲う不快感に思わずうめき声をあげる。

 

 例えるなら身体の中をごちゃごちゃにシェイクして、強引に一度引っ張りだした挙句無理やり元に戻したような。

 

 そしてそれと同じくして、

 

 

『一度デュエルして手の内を晒した以上、それに対応されるのは当たり前だろ? こんな単純な事も忘れて人間を過小評価した。結果として全防衛システムはこうして破られた。……それがお前の敗因だよ』

 

『さあ。これで今回の一件は終わりだ。諦めて投降しな。そうすればアムナエルにとりなしくらいはしてやる』

 

 

 私の脳裏に奴の、あの忌々しいバランサーの言葉が蘇る。

 

 一つ思い出すと、あとは連鎖的に次々と浮き上がっていく。

 

 幻魔を手に入れるため、大掛かりな準備を整えて始めた儀式。その中で邪魔をしてきた鍵の守り手達を分断した事。バランサーとのデュエル。

 

 そして最後に思い出せたのは、敗北の後幻魔の扉が何故か発動し、私の魂を代償として奪おうとした事。

 

 扉から伸びる半透明の手に首元を掴まれた辺りから記憶がない。しかしそれまでの記憶と今の状況をつなぎ合わせれば、ある程度の推測は出来る。つまり、

 

(負けたのね。私は。そしておそらく学園か、それに繋がりのある医療施設に連れ込まれた)

 

 身体には包帯など治療の跡があった。少なくとも今すぐどうこうしようという訳ではない。

 

 そしてさらに視線を巡らせれば、離れた所のもう一つのベッドに同じく包帯まみれの誰かが眠っているのも見えた。やはり医療施設で間違いない。ただ、

 

(ダメね。我慢すれば動けない事はないけれど、動けるだけで万全には程遠い。逃げるのは難しいか。……んっ!?)

 

 キイキイ。

 

 弱っているので吸血鬼の能力もほとんど使えない。今は機会を待つしかないかと呼吸を整えていると、聞き覚えのある鳴き声が聞こえてくる。

 

 すると窓の外から、私の(しもべ)であるコウモリ達がこちらを心配そうに見つめているのが見えた。

 

「アナタ達!? ……くっ!?」

 

 私は無理やり身体を起こし、どうにか窓を開けて僕達を招き入れる。

 

 キイキイっ!

 

「見守っていてくれたのね。良い心がけよ。……そうよ! アナタ達。私が眠っている間に何があったか見せて頂戴」

 

 僕の一匹がその言葉を聞いてスッと前に出て、私と向き合って同期する。

 

 そうして私が知ったのは、私が倒れた事でセブンスターズがアムナエルのみになった事。そして私が除名された事で、代わりにバランサーが正式に任命された事。

 

 最後のセブンスターズと鍵の守り手達が勢揃いした決戦の日。そして……そこに幻魔を我が物にしようと理事長自身が乗り込んできた事。

 

「……チッ! 完全に出遅れたわね」

 

 影丸が最終的にはセブンスターズの勝敗に関係なく、自ら動く事は予想していた。だから先んじて幻魔の力を我が物とすべくあれだけ手の込んだ仕掛けをしたのだ。

 

 だがその策は破られ、私はこうしてベッドで横たわっている。

 

(なんてこと。肝心な時に動く事も出来ないなんて)

 

 私はギリギリと歯噛みしながら今の状況とこれからを考える。

 

 いかに影丸とは言え、残った鍵の守り手達を蹴散らして幻魔を完全覚醒させるには多少の時間と手間暇がかかる筈。

 

 或いは鍵の守り手達が意地を見せ、被害を出しながらも防衛に成功する可能性も僅かにある。

 

 最後に……私を追い込んだあのバランサーが何かしらの手を打つ可能性も。

 

 今なら時間的にギリギリ割り込む事も出来るかもしれないけれど、それもこの身体がネックになる。

 

(見張りらしき者はいない。邪魔する者はいない。……少しでも良い。身体がまともに動きさえすれば。少しでも力が戻りさえすればっ!?)

 

 

 

『なら、()()()()()()()()

 

 

 

「誰っ!?」

 

 私は突然聞こえてきた声に辺りを見渡す。

 

 ここに居るのはそこのベッドで眠っている誰かと僕達だけ。しかし今の声はどちらからでもなく、敢えて言うなら()()()()()()()()()()()ような。

 

『力が足らぬというのなら喰らえば良いのだ。血を啜り、贄を喰らい、力と成せば良い』

 

 また聞こえた。しかしどうやら僕達には聞こえていないようで、心配そうに私の周りを飛び回る。

 

「贄ですって? そこに眠っている誰かの血でも吸えと?」

『その者は眠ってこそいるが、容易には贄にならぬであろう。抵抗されれば万が一という事もある。それよりも……もっと手ごろな贄が目の前にいるではないか』

「目の前?」

 

 私は軽く目を凝らす。しかしいくら見てもここに居るのはあと我が僕達ぐらいで……まさかっ!?

 

『そうだ。その僕達を喰らえ。一匹ずつでは少なくとも、これだけの数なら多少の足しにはなろう』

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『何を躊躇う事がある? 僕達など所詮は替えの効く使用人。我らの大願の為の礎になれるのだ。むしろ光栄な事だろう?』

 

 ……そうだ。この胸に刻んだ大願。憎き人間達に迫害され、滅びを待つだけとなったヴァンパイア一族の復興。

 

 幻魔さえ手に入れればそれが叶う。その為なら僕の犠牲など取るに足らない些事。

 

 私は内なる声に従い、僕達に手を伸ばし、

 

 

 

「ふざけないで」

 

 

 

 ぎゅっとその手を握り締め、怒りを込めてそう叫ぶ。

 

「私は誇りあるヴァンパイア一族の末裔カミューラ。夜の貴族。敵の血を啜るならまだしも、自身の僕を喰らうなんて(ケダモノ)のような品のない行為はお断りよ」

『そのような奇麗事を言っている場合か? 人間に虐げられた怒りを、恨みをっ! 忘れたというのかっ!? 我らはいかなる手段を使っても大願を』

()()()()()()()()()()()()? それこそ本末転倒というものね」

 

 この胸に宿る怒りも、恨みも、片時たりとも忘れた事はない。私は一生涯人間を憎み続ける。恨み続ける。……でも、

 

 キイキイ!

 

 コウモリの一匹を優しく撫でながら、私は力強く宣言する。

 

「私はその為に使用人を犠牲にするようなことはしない。どこの誰かは知らないけれど、当てが外れたわね。まあ幻魔を手に入れる手段はまた別の策を練るとして、今は体力の回復を」

 

 

 

『仕方ない。なら、()()()使()()()()()

 

 

 

 何を? と思った時にはもう手遅れだった。逃げてと命ずる暇もなかった。

 

 次の瞬間私の身体から黒い靄のように広がり、室内に居たコウモリ達を飲み込んだ。それと同時に何かが身体に流れ込んでくる。これは!?

 

「止めて……止めてっ!? なんて事をっ!? がぁっ!?」

『おとなしく全てを大願成就の為に捧げていれば良いものを、たかが使用人の命を惜しむ愚かな依り代め。無駄な手間を駆けさせる』

 

 身体に力が漲ると共に、酷い嫌悪感が襲ってくる。

 

「ぐっ……おのれ。よくも……私の僕達をっ!? 何者かは知らないが、私の身体から出ていけっ!?」

『黙れ。もうお前などに任せておけぬ。かくなる上は自意識を破壊して操り人形に……むっ!?』

 

 その時、外からコツコツと足音が聞こえてきた。誰かが部屋に入ってこようとしている。この忙しい時にっ!?

 

『……ほぅ。この気配覚えがある。……ふっ。良いことを思いついたぞ。どうせこの依り代にこだわる必要はもうなくなった。なら、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

『そうして私の身体から出た黒い靄は、私の力の大半を引きちぎって今度は天上院吹雪の身体に入り込んだという訳。酷い話よね』

「それはまた……ぶっとんだ話だなオイ」

 

 俺と万丈目は、コウモリの姿のカミューラから話を聞きながら七精門への道を駆けていた。

 

 傷だらけのコウモリを拾った時はまさかカミューラだとは気づかなかったが、この状態でも頭の中に直接語り掛ける事が出来るとは驚きだった。

 

『起きたアムナエルと操られた吹雪の戦いのどさくさで逃げ出せたは良いけれど、力の大半を持って行かれたためか人の姿も取れず。体調も万全でないから飛びながらあちこちぶつけて傷だらけ。惨めなものね』

「その惨めさを交渉に役立てようとする強かな女が何を言う。……本当にコイツの言葉を信じる気か? 全てでたらめで、七精門で罠を仕掛けているかもしれないぞ?」

 

 万丈目の言葉ももっともだ。なにせカミューラには前科があるし、幻魔への執着も極めて高い。

 

 話に信憑性を持たせるために、わざと自分の身体をぼろぼろにしたという場合もあり得る。だけど、

 

「俺も完全に信じている訳じゃないよ。だから医務室に行くメンバーとこっちの二手に分かれた訳だしな。でも……本当だったら本当だったでなんか納得できるっていうか」

 

 本当は俺一人だけで見に行く予定だったが、一人で無茶をするなと万丈目に見とがめられて同行してもらう事にした。流石に向こうは怪我人も多いし、護衛も考えるとこれ以上は引き抜けないからな。

 

 また、これまでもカミューラには妙な違和感があった。特に大きかったのは、明日香とのデュエルの時と俺とデュエルした時の事だ。

 

 一度目は墓守の首飾り。二度目は罪善さんの光を浴びた時。どちらも一瞬だけカミューラの姿が二重にブレて見えた。

 

 しかもどちらもその直後声にノイズがかかったようになり、カミューラとそれ以外の誰かが同時に喋っている風だったしな。()()()()()()と言われたらそれはそれで納得する。

 

 その場合操られた吹雪さんが敵という嫌な展開になるが。

 

「それに、あのコウモリ達の件が本当だったら世話してたレティシアが悲しむしな。確認ぐらいはしておこうかなと」

『世話……ねぇ』

 

 何故かそれを聞いてカミューラが少し考えこんでいたようだったが、「ならさっさと確認に行くぞ」と万丈目に急かされ先を急ぐ事に。そして、

 

 

「まさか本当だったとはな」

『アナタが信じていなかったのは勝手だけど、どうする? まさかこのまま放っておくなんて事はないわよねぇ?』

「まあ当然だな。俺の平和的な学園生活の為にも、口車に乗せられるとするさ」

 

 

 何か様子がおかしくなっている吹雪さんの手から幻魔のカードを弾き飛ばし、俺達は静かにその場に踏み出した。

 




 という訳で、カミューラサイドのお話でした。

 いくら何でも性格変わりすぎだろと思われる方は、今作のカミューラの素はこうであると温かい目で見守っていただければ。

 また、来週は都合により休ませていただきます。次話は少々お待ちいただければ幸いです。
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