マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
さて。乗り込んだは良いものの、これからどうしたものか。
再び封印が解けかけている七精門の前で、俺は内心困っていた。
今ここに居るのは俺、万丈目、カミューラ(コウモリの姿)、そして吹雪さんに取り憑いている何者かに、吹雪さんの事を追ってきたカイザー。
これだけならなんとかしようがある。何者かを吹雪さんの中からまず追い出す必要があるが、それに
は罪善さんの力が有効なのが以前の戦いから分かっている。
抵抗してきても幻想体の皆や万丈目に協力してもらえば抑え込む事も可能だろう。
だが、
「貴様らぁっ! よくもまた我らの邪魔をっ!」
「それを言いたいのはこっちの方だっ! 何度も何度も幻魔を呼び出そうとしやがって。いい加減ワンパターンなんだよっ!」
激昂する何者かの言葉に万丈目が力強く返す。そこに関しては思いっきり同感だ。
「もうお前が吹雪さんじゃないって事は分かっているんだ。正体を明かしたらどうだ? カミューラに潜んでいた誰かさん?」
『ええ。そこは私も同意見ね。どこの誰かは知らないけれど、よりによって私を操って可愛い僕達を取り込んだ罪は重いわっ! 名を名乗りなさいっ!』
「ふっ。依り代風情が生意気な事をほざく。……良いだろう。よく聞くが良いっ! 我らこそはっ!」
その何かは、吹雪さんの姿で大きく腕を広げて宣言する。
「貴様ら人間に貶められ、滅ぼされたヴァンパイア一族の化身っ! 恨み、怒り、憎んだ一族の思念そのものであるっ!」
『……ふ、ふざけないでちょうだいっ!』
一瞬の間の後、怒りを露わにしてカミューラがパタパタと飛び掛かってくってかかる。
『何を言うかと思えばそんな戯言をっ! 私こそが栄えあるヴァンパイア一族の末裔。人間達の迫害を生き延び、一族の再興のため永い眠りにつき、そして目覚めた者。アナタのような者は私は知らないっ!』
「はっ。貴様なぞ端から我らの依り代に過ぎぬ。いかに我らとて、依り代も何もなく長い時間を過ごすのは困難だったからな。でなければ貴様のような小娘に一族の復興を託すものか。え~いうっとおしいっ!」
『きゃっ!?』
まるで虫でも払うようにカミューラを地面にはたき落とし、その何かは吹雪さんの顔で嘲る様に嗤う。おいそのゲス顔止めろっ!
『……では、私は最初から期待されていなかったとでも? でも、影丸は私のヴァンパイア一族としての力を欲してセブンスターズにスカウトしたはずっ!?』
「ふん。大方影丸も、真にセブンスターズとして欲していたのは
『そんな……嘘よ。そんなの嘘よぉぉっ!?』
心身ともに傷つけられ、地に伏したままカミューラは力なくコウモリの姿で慟哭する。
これにはほんの少しだけ同情する。カミューラのこれまでやった事はお世辞にも褒められた事ではなく悪事ばかりだったが、少なくとも彼女なりに真剣だった。
真剣に策を練り、全力を尽くしていた。それを根本から否定されるというのは……。
「だがそれももう終わりだ。おとなしく貴様が最初のように、あらゆる手段を持って一族の復興を成そうとするのであればこれからも依り代として使ってやっても良かったがなぁ。
「……おい。いい加減にしろよ」
流石に腹が立ってきたのでこっちも口を出させてもらう。実際コイツの言い分は聞くに堪えず、カミューラだけでなく万丈目もカイザーも気分を害しまくっているからな。
「散々言いたい事を言ってくれたがな、これまで俺や鍵の守り手達が接してきたのはお前じゃない。カミューラの方だ。お前みたいなぽっと出の奴がごちゃごちゃ言ってもそんなの知らんっ!」
俺はビシッと勢いよく指を吹雪さんの中の何かに向ける。
「僕を贄にする覚悟だと? 笑わせるな。
『……バランサー』
カミューラが力なくそう呟く。何を傷心してんだよ。普段ならこの程度切れ味たっぷりの皮肉交じりに言い返すのにまったく。
「と、まあ本来ならカミューラ自身が言い返す所だが、今回は俺が代弁させてもらった。あとでその辺りはじっくり話し合ってくれ。そしてだ」
色々言っていたが、奴の名乗りが正しいなら話は簡単だ。
「詰まる所、お前はヴァンパイア一族全体の幽霊とか悪霊という事だろ? それがカミューラにくっついてこれまで力を蓄えていたと。そうと分かれば……頼むぞ皆っ!」
俺の号令に合わせて、罪善さんと葬儀さん、そしてどさくさでレティシアに抱かれた状態のネクも実体化する。
「まだ万全じゃないが、こうして短時間幻想体を呼び出せるぐらいには回復している。幽霊退治のプロならこっちにも揃っているんだっ!」
カタカタっ!
『ああ。奴こそ紛れもなく私が
『コウモリのお姉ちゃん。とっても悲しい顔をしてたの。だから……お姉ちゃんを苛める悪い人を懲らしめるよ! ネクちゃん!』
『我が復活の為に駒は欲しい所だが……こういう怨念の塊は無理やり従わせるのも骨だ。ならここで潰しておくに限るな』
幻想体達もやる気充分。万丈目もおジャマ達を従えて臨戦態勢を取る。
「いかに悪霊だろうが、これだけの戦力相手ではどうにもならないだろう? おとなしく降参して吹雪さんから出ていけ。……ちなみに弾き飛ばした幻魔は拾わせないぞ。下手に
ジリッとカードの方に足を進めようとする悪霊に、俺は銃を向けながら先んじて宣言する。
そう。大問題なのは、そこに落ちている幻魔は封印されている訳でもないから呼び水さえあれば
そして一回出てしまえば、周囲の精霊の精気を吸い取って実体化を続けるから戦闘以外で自身の力をほとんど消費しない燃費の良さ。
おまけに外側から幻魔に暴れられれば他の封印も解けかねない。つまり何が何でも顕現させちゃいけない。
なので落ちているカードにも最大限の集中をしつつ、少しずつ包囲を狭めていく。多分ギリギリになったら吹雪さんの身体で抵抗してくるだろうが、どうにか出来るだけ怪我をさせないように。
「……良いだろう。こうなっては仕方ない。そちらの要望通り、この身体を返すとしよう」
「何?」
それはある意味予想外の言葉だった。
その言葉通り、次の瞬間吹雪さんの身体からぶわっと黒い靄のような物が湧き出て宙に浮き、人型のような姿へと形を変えていく。
「ふん。やけに素直だな」
万丈目が訝しげな声を上げる。
そうだよな。こういうタイプの奴はネクと同じく、最後の最後で何か悪あがきをしてくると睨んでいたんだが。……おっと。その前に、
「吹雪さん。大丈夫ですか?」
俺は糸が切れた人形のようにがくりと膝を突いた吹雪さんを急いで受け止める。勿論その間も悪霊や幻魔への警戒を怠らずに。
「……うっ!? うぅ……」
吹雪さんがうめき声をあげて目を開く。だがまだ意識がはっきりしていないようだ。
「確かに吹雪さんは返してもらった。じゃあこのまま諦めて降参し……うぐっ!?」
突如喉元に強烈な圧迫感を感じる。俺は悪霊達に向けていた視線を下に向けると、そこには、
「久城っ!?」
『ハハハハハ! 確かにそいつの身体は返したぞ。何の仕込みもしていないとは言っていないがなぁっ!』
はい。カミューラの中に潜んでいたのは、永い眠りにつく時にくっついてきた一族の恨みつらみの集まった悪霊という設定です。昔の描写を見るに相当えげつない事をされたようなので。
実際作中でも書いたように、カミューラだけ原作では幻魔の扉を持っていてやけに待遇が良いんですよね。おまけに吸血鬼なのに霧やコウモリではなく幽体に分裂して翔に噛みつくなんてこともやってますし。
その辺りを考察した結果、最初から幽体的な何かがくっついていて、自分でも知らない内にその力を使っていた。影丸はなんとなくそちらにも勘づいていて、いざという時幽体ごと処理できるように幻魔の扉を使わせていたというとんでも設定が組み上がりました。
いやいくら何でもとんちきすぎるだろうと思われる読者様もいらっしゃるかと思いますが、あくまでこの作品内の独自設定だと温かい目で見守っていただければ幸いです。