マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
仕事の事情と人生二度目のコロナウィルスで大分遅れましたが続きです。
注意! 今回独自設定タグが仕事します。
ズシン。ズシン。
一歩ごとに森の木々をメキメキとなぎ倒し、ワッと恐慌状態になって離れていく動物達を尻目に、実体化した幻魔皇ラビエルはアカデミア本棟に向け前進する。だが、
(……ちっ。何故こう我らの思う通りにいかんのだっ!?)
その肩に乗った悪霊は、内心現状に歯噛みしていた。それと言うのも、
(
っ!)
確かにラビエルは悪霊の指示を聞いて遊児達を引き離し、アカデミア本棟に向かっている。だがその歩みはどうひいき目に見てもゆったりとしたものだった。
その巨体故の歩幅の大きさもあってそれなりに速度は出ているが、悪霊の想定していた物から考えると大分遅い。
率直に言って……
ただ幻魔からすればそれも当然。なにせ幻魔の元々の持ち主は影丸である。
影丸は幻魔のカードを手に入れた後、完全に覚醒させるために数年かけて準備を整えた。覚醒の為の土壌としてアカデミアを創り、制御のための闇のアイテムを数多く準備。そして高齢の為衰えていたとはいえ、その肉体と精神は全盛期ならば超人級。
つまり精霊である幻魔の側からしても、
対してこの悪霊は幻魔からすればただのぽっと出。入手手段も堂々と鍵の守り手を破って封印を解いた訳でもなくただのカードのすり替えで、先ほどデュエルで自分達を打ち負かした十代のような強者でもない。
闇の力を有してはいるが絶大と言うほどでもなく、感じ取れる精神性も妄執や怨念が大半。影丸のような覇気も感じられない。
要するに、闇のアイテムの力で最低限従いこそするが、
それは幻魔固有の能力である、周囲の精霊からの精気吸収がほぼ自身にしか行っていない事からも明らかだった。
『え~い抵抗するなっ! おとなしく我らに従え幻魔よっ!』
業を煮やして再び悪霊がチョーカーを翳して波動を放つと、渋々ラビエルは歩みを早める。
それで良いと少し満足げな顔をする悪霊だったが、
『
『食らいなさいっ!』
『何っ!? 防げラビエルっ!?』
突如森の中から放たれた極太のビームと、それに追随する幾本もの細剣に、慌ててラビエルに防御させる。
その巨腕はビームと細剣をしっかりと受け止めるが、さしものラビエルも無傷とはいかなかった。
直撃した腕はぶすぶすと音を立てて焦げ、突き刺さった細剣はじわりとまるで毒のようにラビエルを蝕む。しかし、
『グオオオオオンっ!』
怒りを込めた咆哮と共に、ラビエルは周囲から現在進行形で吸収しつつある精気を腕に集中。突き立つ細剣を筋肉の隆起で弾き飛ばし、見る見る内に焼け焦げた皮膚も再生していく。
『何者だっ!? 我らの邪魔をする愚か者はっ!?』
幻魔にこれだけのダメージを通してみせた攻撃を、下手をすれば自分が受けていたと冷や汗をかきながら、悪霊は何者かに向けて叫ぶ。すると、
『そこまでよっ! 悪党達っ! ……やあっ!』
『待ってセンパ……仕方ない。はっ!』
二つの影が勢いよく森から飛び出し、幻魔の進行を妨げるように木々のてっぺんに飛び乗る。
『愛と正義の名の下に、魔法少女ココロここに参上っ! さあ悪党達。おしおきを受ける準備は良いっ?』
『……はぁ。森の中に潜んで、遊児が追いつくまで足止めに徹する算段だったでしょうにまったく。……良いわ。ここまで来たら、真正面からどこまで時間を稼げるかやってみましょう』
そう。魔法少女がやってきた。
「……はい……よろしくお願いします。では……ふぅ」
真っ暗な森の中を、ランタンの灯りを頼りに疾走する大鳥の背に乗ったまま、遊児は通信を切って軽く息を吐く。
グルアァっ!?
「ああ。現地でも対処を急いでる。奴の狙いは本棟に仕舞ってある闇のアイテムだ。それが分かっているならやりようはある」
大鳥の唸り声に応えながら、遊児は必死に考えを巡らせていた。
(今顕現している幻魔はラビエルだけ。闇のアイテムを取られない限り幻魔の追加召喚は出来ない筈。なら闇のアイテムをどこかに移動させればいい)
先ほど大鳥がやったようにアイテムを破壊するという手もあるが、あれは本来危ない一手。下手に壊せばその時点で周囲に影響を与える可能性も0ではない。
なので現在本棟から離れた場所にアイテムの移送中であり、また一般生徒等は夜中の避難訓練の名目で現在退避中。
あと本棟に残っているのは、事情を知っている一部の教員や十代達鍵の守り手、紅葉さんといった実力者ばかりだ。
(この戦力なら撃退自体は可能だ。しかし十代でも連戦は消耗が激しすぎるし、ラビエルが本棟に到着したらそれだけで周囲に被害が出る。それに避難の事を考えると、少しでもラビエルを足止めする必要がある)
今は十代達に同行させていたココロとセイさんが道を取って返して迎撃中。足止めに徹するよう遊児は指示を出していたが、それでも精霊特攻持ちの幻魔相手にどれだけ保つかは分からない。
そんな相手を従える悪霊に対して、追いついた後自分が出来る時間稼ぎ。幾つか考えた上で、遊児は大きくため息を吐く。
「……
幻魔が出る前に勝つのが理想。幻魔が出ても勝つのが次点。最悪負けたとしても、時間さえ稼げればあとは仲間達に任せれば良い。
しかし先ほど感じた幻魔の圧、そしてクロノス先生を庇った時の一撃を思い出し、遊児は軽く身震いする。あれだけ防御をガチガチに固めたのにあのダメージ。それをもう一度と言われたらたまらない。
(正直全部十代達に丸投げして逃げたい。だけど今幻魔を放っておいて被害が拡大したら目覚めが悪すぎる。それに)
ちらっと遊児は肩に止まるコウモリ……カミューラを見る。
『……何かしら?』
「いや。別に」
『なら急ぎなさいな。奴にはしっかりと報いを受けさせてやるわ』
そう息巻くカミューラに怯えた様子はない。……いや、恐怖はしっかりあるのだろう。しかしそれでも尚、
(元とはいえセブンスターズの一員と、その中に潜んでいた奴の因縁だ。なら
一応の覚悟を決め、遊児は大鳥に乗って疾走を続けていた。
一方その頃。
「実を言うとな、俺はこの状況を丁度良い機会だと思っている。正直前々からカイザーとは別にアンタとも戦ってみたかったんだぜ? 吹雪さん。かつて噂に聞いた、カイザーのライバルにしてアカデミアのブリザート・プリンスとな」
七精門の前。カイザーが見守る中で、万丈目と吹雪のデュエルが始まろうとしていた。
語り掛ける万丈目に対し、吹雪は何も言わずただデュエルディスクを構えるのみ。
「ふん。だんまりか。まあ良い。出来れば操られた状態じゃない万全のアンタを打ち負かしたかったんだが、それは次の機会としてだ。……ファンに啖呵を切った手前、きっちり勝たせてもらうぜっ! 俺がアカデミアのトップに立つ為にもなぁっ!」
「「デュエルっ!!」」
今、万丈目は
いかがでしたでしょうか?
幻魔の使用資格などは前話に続き本作の独自設定です。
幻魔も精霊だと考えれば、当然使い手にもそれなりにこだわっていると解釈しています。影丸は格で言えば人間にしてはかなり高いですからね。逆に言えばそれくらいじゃないと幻魔的には嫌がるんじゃないかと。まあ悪霊には一応アイテムのせいで従いはしますけど不満たらたらです。
次回は万丈目対吹雪戦を予定しています。原作にはなかった組み合わせなので自分でも不安なのですが、自分なりの解釈で書かせていただきます。
この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。評価を保留されている読者様。
ブックマーク、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!