マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
吹雪 LP4000 手札2 モンスター 軍隊竜 魔法・罠 伏せ1
万丈目 LP3200 手札2 モンスター アームド・ドラゴンLV7 魔法・罠 伏せ1
(さて。ここまではこっちが有利。……だが、仮にも吹雪さんは操られているとはいえ、カイザーと並び称されたデュエリスト。さあ。次はどう出る?)
上級モンスターが居るとはいえ、このくらいはすぐに逆転される可能性があると、万丈目は油断なく構える。
そしてカイザーもまた、吹雪ならこの程度で終わる筈がないと戦いを見守る中、
「私のターン。ドロー。私は魔法カード『天使の施し』を発動。デッキから三枚ドローし、その後二枚を手札から捨てる」
吹雪が淡々とカードによる手札交換をした時、周囲にゾクッと悪寒のような何かが拡がる。
『アニキ~。今、多分引いたのよ~。あのカード、何かヤバいっ!?』
「ああ。分かってる」
万丈目は薄っすらと冷や汗をかきながら、吹雪の一挙手一投足を見逃さないよう中止する。
そんな中、吹雪が手札から発動したのは、この場の誰も予想だにしなかったカードだった。
「私はフィールド魔法『
そのカードが発動した瞬間、カードからドロドロとした濃密な闇が周囲に溢れ出す。
「アンデットワールド? 何だコイツは……カイザーっ!?」
「……知らない。吹雪がそんなカードを使った記憶はない。つまり」
「ちっ! あのコウモリ野郎の仕業か」
付き合いの長いカイザーが知らないという事実に、悪霊が勝手に吹雪さんのデッキを弄ったなと勘づき舌打ちする万丈目。
「ふん。どんな効果か知らないが、このアームド・ドラゴンLV7の前に妙な小細工は……むっ!?」
並のモンスターでは突破出来る筈がないと、自身の自慢のモンスターを見る万丈目。しかしそこで万丈目はモンスターの異常に気付く。
アームド・ドラゴンの周囲に、まるで人魂のようなモノが纏わりついていた。
「どうなっている? アームド・ドラゴンの種族がドラゴンから
「アンデットワールドの効果。このカードが場に出ている限り、墓地と場の表側表示モンスターは全てアンデット族になる。また、互いのプレイヤーはアンデット族しか生け贄召喚できない」
「互いのモンスターの種族変更に召喚制限だと? 面倒な」
万丈目のデッキの大半はドラゴンや機械族。場のモンスターがアンデット化する以上、機械やドラゴンをサポートするカードは使えない。おまけに上級モンスターを呼ぶ方法がかなり削られた事に、万丈目は歯噛みする。
「慌てるなっ! いくらデッキを弄られたとはいえ、吹雪の主体はあくまでドラゴン。無闇にデッキの内容を変え過ぎれば、それこそ使いこなせず弱体化する筈。縛りがあるのは向こうも同じだ」
カイザーの言うように、吹雪の場の軍隊竜も人魂が纏わりついてアンデット化している。これではドラゴンのサポートカードは使えない。しかし、吹雪が手札のカードを一枚手に取った事で状況は更に一変する。
「このカードはレベル7。本来生け贄が二体必要になるが、効果によりアンデット族を生け贄とする場合一体で召喚できる。私はアンデットとなった軍隊竜を生け贄に捧げ、現れろっ! 『
死霊の魂を喰らい、堕ちた黒竜が場に出現した。
真紅眼の不死竜 ATK2400
「レッドアイズ? コイツも
基本の姿は原型である真紅眼の黒竜や派生の闇竜に近い。黒い外殻の表面に、幾筋も紅い線が葉脈のように伸びた姿。名前にもある真紅の瞳も健在だ。
ただ頭部から伸びる蒼い人魂と、翼を羽ばたかせる度に揺らめく同色の炎が、どこか幻想的な美しさと恐怖感を両立させていた。
闇竜のそれとはまた別の闇の力に、万丈目も驚きを隠せない。
「さらに私は手札から『
鋼の外皮が装着され、強くなったのが分かったのか不死竜が咆哮する。
不死竜 ATK2400→3000
「手札から直接装備出来るモンスターとは珍しいな。しかし攻撃力3000。アームド・ドラゴンを上回ったかっ!?」
「バトルフェイズ。不死竜でアームド・ドラゴンを攻撃!」
万丈目 LP3200→3000
吹雪の指示の下、不死竜は大きく息を吸い込んで口から青炎のブレスを放つ。アームド・ドラゴンは炎に包まれ、そのまま地面に崩れ落ちた。
さらに青炎はそのまま万丈目に襲い掛かり、映像の筈なのに急激な熱さを感じて万丈目は素早く腕で振り払う。すると、
「うおっ!?」
「万丈目っ!?」
『アニキっ!?』
見た目に比べれば些細。精々調理中に油が跳ねた程度の軽いもの。しかし間違いなく実際にダメージを受けた事に万丈目は困惑する。
「リアルダメージ有りの闇のデュエルだと!? まさかそのカードが出たからっ!?」
ふと万丈目が見ると、先ほど遊児から手渡されたペンダントが光を放っている。
(今のリアルダメージが軽く済んだのはコイツのおかげって訳か。助かったぜ久城)
「私はこれでターンエンド」
「……だが、こんな程度で屈する俺ではないっ! これでアンタの手札は尽きた。あとはそのドラゴンを何とかすれば良い。俺のターンっ!」
万丈目は勢いよくカードを引く。引き当てたのは、
「俺は魔法カード『強欲な壺』を発動し二枚ドロー。さらに魔法カード『死者への手向け』を発動! 手札を一枚捨て、場のモンスター一体を選択して破壊する。当然対象は不死竜だ。アンデットはあの世に帰るが良いっ!」
「効果で破壊するカードかっ! これなら」
追加ドローからの逆転の一手。カードに描かれたミイラから包帯が凄まじい勢いで伸び、不死竜に絡みついてそのまま引きずりこんで破壊する。
「はっ。不死竜というからには破壊耐性か復活能力でもあるのかと思ったが拍子抜けだな」
「装備されていた黒鋼竜の効果発動。このカードが場から墓地に送られた時、デッキからレッドアイズと名の付くカードを一枚手札に加える。私は『真紅眼の飛竜』を手札に」
「モンスターの補充をしてきたか。なら場ががら空きの内に攻めるっ! 俺は手札から『X-ヘッド・キャノン』を攻撃表示で召喚」
X-ヘッド・キャノン ATK1800
「良いぞ! 畳みかけろっ!」
「言われずとも。バトルだ! X-ヘッド・キャノンで直接攻撃!」
カイザーの言う通り今こそ攻め時。万丈目はモンスターに攻撃指示を出すが、
「永続罠発動。『リビングデッドの呼び声』。墓地の真紅眼の不死竜を攻撃表示で特殊召喚」
真紅眼の不死竜 ATK2400
「くっ……攻撃は中止だ。俺はこれでターンエンド」
再び墓地から蘇った不死竜を相手にするには攻撃力が足りないと、万丈目は仕方なく攻撃を中断する。
(攻撃力が元に戻ったとはいえ、それでも2400。今の手札では突破は出来ん。耐えるしかない)
吹雪 LP4000 手札1 モンスター 真紅眼の不死竜 魔法・罠 アンデットワールド リビングデッドの呼び声
万丈目 LP3000 手札1 モンスター X-ヘッド・キャノン 魔法・罠 伏せ1
「私のターン。ドロー。私は真紅眼の飛竜を攻撃表示で召喚」
真紅眼の飛竜 ATK1800
「攻め手を増やしてきたか」
「バトルフェイズ。真紅眼の不死竜で、X-ヘッド・キャノンに攻撃」
万丈目 LP3000→2400
「ぐうううっ!?」
それは先ほどと同じ光景。
不死竜によってX-ヘッド・キャノンが焼き払われ、そのブレスの余波が実体となって万丈目に襲い掛かる。
ダメージ量が増えれば当然リアルダメージも酷くなる。先ほど遊児から渡されたペンダントによって大分カットされているが、それでも炎の熱気と息苦しさで僅かにふらつく万丈目。
『あ、アニキ~っ!? しっかりしておくれよぉっ!?』
「うろたえるな。少しくらっとしただけだ。この程度のダメージどうという事はな……何?」
そう。同じ光景の筈だった。
「不死竜の効果。自身がアンデット族を戦闘で破壊し墓地に送った時、そのモンスターを
「何だと? まさかアンデットワールドで場のモンスターを全てアンデットに変えたのは、この能力を活かすためっ!?」
驚愕する万丈目に対し、吹雪はやはり淡々と説明する。
「そう。先ほどのアームド・ドラゴンのように“進化以外で特殊召喚出来ない”効果でもない限り、倒されたアンデットは全て不死竜に支配される」
不死竜がギャオオンと咆哮をあげると、X-ヘッド・キャノンはまさに幽鬼のような挙動で吹雪の場に移動した。
それを見て万丈目は、何故あのカードが再生能力も破壊耐性もないのに不死竜と呼ばれているのか理解する。つまり、
「
「その通り。そして、今私の場に特殊召喚されたモンスターにも当然攻撃権がある。X-ヘッド・キャノンで直接攻撃だ」
「万丈目っ!?」
敵となったX-ヘッド・キャノンのキャノン砲がガシャンと音を立てて装填され、そのまま万丈目に向けて放たれた。
という事で、悪霊の魔改造によりアンデットワールドと真紅眼の不死竜が追加された吹雪です。
不死竜は見た目は好きなんですけど、効果がイマイチドラゴン主体デッキと嚙み合わないんですよねぇ。だけどあれもレッドアイズだし使ってみたい。なら種族変更すれば良いじゃないという流れでこんな感じに。
ちなみに当初アームド・ドラゴンが進化以外で特殊召喚出来ないのをすっかり忘れていて、途中慌ててプロットを書き直したという裏設定が有ったり。エースを奪われて慌てる万丈目も書いたのに悔しいっ!