マンガ版GXしか知らない遊戯王プレイヤーが、アニメ版GX世界に跳ばされた話。なお使えるカードはロボトミー縛りの模様 作:黒月天星
「吹雪っ! 目を覚ましたんだなっ!」
「ああ。さっきまで半分夢うつつだったのが、レッドアイズのキツイ一撃と万丈目君の熱い言葉で目が覚めたよ。……それに亮。君の声も聞こえていた。目を覚ますのが遅れてすまなかったね」
カイザーに軽くウィンクして返す吹雪。だが、その顔色は微妙に良くない。
「それと君にも謝罪を。ダークネスの時から間もないというのに、またしても操られて怪我をさせてしまった。手の火傷は大丈夫かい?」
「ふん。こんな程度、ノース校の日々に比べれば怪我の内にも入らない。それに操られたのもそもそもアンタが前の後遺症で弱っていたからだ。気に病むような事はないぜ。吹雪さん」
「ありがとう。……うん。状況はぼんやりとだけど把握している。一応この一撃を考えるに、闇のデュエル自体はもうアンデットワールドと不死竜が壊された時点で解除、或いは弱まっていると見るべきか。でなければレッドアイズの炎を受けて、ここまで僕が無事でいるというのはおかしいからね」
どうって事ないとばかりに万丈目が手をひらひらさせるのを見て、吹雪は一度大きく頭を下げてから本題に入る。
実際吹雪は身体に痛みこそ感じているものの、先ほど万丈目が不死竜のブレスを受けた時は軽く火傷したのに対し、特に火傷を負ったとか服が焦げたという事は起きていない。
「となると後は、いったん僕が
『させぬっ!』
吹雪がデッキの上に手を置いてサレンダーしようとした瞬間、デュエルディスクごと腕に纏わりついていた黒い靄から声が響き渡る。
「この声はさっきの悪霊かっ!? 本体が残しておいた分身ってとこか」
『降参などさせぬ。催眠が解けたのなら、また掛け直して我らの傀儡にしてくれるわっ!』
黒い靄は大きく伸び上がり、再び吹雪を絡め捕ろうとする。だが、
「吹雪さんっ! これをっ!」
咄嗟に万丈目が投げ渡したのは、遊児から渡されていた墓守のペンダント。本体にも効いたこれならば、分身を退けることも可能だろうと。
吹雪はすぐ意図を理解して掴み取ろうとするが、
『させるか馬鹿めっ!』
黒い靄は鞭状に伸びてペンダントを弾く。いくら闇のアイテムとは言え、誰かが持っていなければ力は発動せずただの物。故に、
ガシッ!
「うおおおおっ!」
「吹雪から……離れろっ!」
『うっ……ウギャアアアッ!?』
身体の中に潜んでいる訳でも、
「亮っ!? こんな状況で飛び込んでくるとは無茶をする」
「……何。直接デュエルでお前を叩き起こす役目は万丈目に譲ったからな。友人にこのくらいはさせてくれ」
「ふふっ。ありがとう」
吹雪はそう言って朗らかに笑うと、ペンダントを受け取って身に着け万丈目に向き直る。
「さてと。操っていた靄も取り除かれ、もうデュエルを続ける意味はなくなった……のだけど、どうやら君はその限りじゃないみたいだね」
「……まあな」
万丈目からの闘志はまるで消えていなかった。寧ろ先ほどよりも燃え盛っていると言っても良かった。
「確かにデュエル自体はまだ途中だ。だが決着をつけたいというのであれば、僕が降参するのが一番早いんじゃないかい?」
『万丈目のアニキ。戦う意味はなくなったんだし、さっさと止めちゃおうよぉ。向こうも降参してくれるみたいだしさぁ。状況だってアニキの圧倒的有利だし、もうこれで勝ちって事で良いじゃん』
「いいや。やる意味はある。それにな……アンタは降参すると言ってこそいるが、
万丈目は見抜いていた。イエローの言う通り盤面は圧倒的に自分が有利だというのに、吹雪はまるで動じていないという事に。
「あくまでこんな状況だから。迷惑をかけたのは自分の方だから降参するってか?
(悪いな久城。本当なら早くお前を追って助太刀に行くのが筋なんだろうが、ここまで火が付いてしまったら止められない)
「……仕方ないな」
「吹雪。良いのか? 正気に戻ったとはいえ、体力を消耗しているのは間違いないだろう?」
気を取り直してデュエルディスクを構える吹雪に対し、カイザーが少し心配するように声をかける。
「大丈夫と言いたい所だけど、やはり少々身体はキツイかな。しかし一デュエリストとしては、後輩の熱意に応えない訳にもいかない。それに……どうやら彼は明日香に惹かれているみたいだからね。少し兄としては試してみたくなったのさ」
そう言った瞬間、吹雪から発せられる圧の種類が微妙に変わったのを察してカイザーは苦笑する。普段の飄々とした態度からは読み取りづらいが、吹雪が本当に妹を大切に思っている事を知っているからだ。
「万丈目君っ!」
「何だ?」
万丈目に声をかけ、そのまま吹雪は指を一本空へと向けて伸ばす。
「
「面白い。それで行こう!」
こうして、二人のやる必要はないがやる意味はあるラストターンが幕を開ける。
吹雪 LP600 手札2 モンスター0 魔法・罠0
万丈目 LP1600 手札0 モンスター アームド・ドラゴンLV7 真紅眼の黒竜 魔法・罠0
「では僕のターン。ドロー。僕は魔法カード『魔法石の採掘』を発動。手札を二枚捨て、自分の墓地の魔法カード一枚を手札に加える。僕は強欲な壺を手札に加え発動。カードを二枚ドロー」
「手札交換か」
「ああ。そして僕はドローしたカードを二枚とも伏せてターンエンド。……そして、エンドフェイズに墓地の真紅眼の飛竜の効果を発動」
「なんだとっ!?」
飛竜の効果を知っている万丈目は驚く。蘇生対象である黒竜はまだこちらの場にあるからだ。だが、
「誰も
真紅眼の黒竜 ATK2400
ギャオオオオンっ!
二体の黒竜が敵味方で睨み合う。
「さあ万丈目君。どう攻める?」
「今見せてやる。俺のターンっ!」
このターンで勝負がつかなければ吹雪は自分から降参する。しかしそれは万丈目にとって勝ちとは言えない。
この盤面を突破すべく万丈目が気合を入れて引いたのは、
「装備魔法『ヘル・アライアンス』。このカードを俺の場の真紅眼の黒竜に装備」
カードの発動により、万丈目の黒竜は青黒いオーラを纏う。
「このカードを装備したモンスターは、場の同名モンスター一枚につき攻撃力が800アップする。本来同名カードを呼び出すリクルーター用のカードだが、ここには丁度
そう。このカードの範囲はあくまでフィールド全体。つまり相手の場のカードもカウントする。奇しくも黒竜同士が並んだ事で条件は満たしていた。
真紅眼の黒竜 ATK2400→3200
「バトルフェイズっ! 真紅眼の黒竜で、吹雪さんの黒竜に攻撃っ! これで終わりだっ!」
号令を受け、互いの黒竜がブレスの準備に入る。装備カードの分、万丈目の黒竜の方が攻撃力は上。決まれば戦闘ダメージで吹雪のLPは尽きる。だが、
「攻撃宣言時に速攻魔法発動っ! 『サイクロン』っ! ヘル・アライアンスを破壊する」
「ぐっ!?」
真紅眼の黒竜 ATK3200→2400
伏せられていたサイクロンが装備カードを吹き飛ばし、黒竜の攻撃力を元に戻す。しかし攻撃はもう止まらない。
「「『黒炎弾っ!!』」」
二体の黒竜の放ったブレスは空中でぶつかり合う。陣営は違えど同じカード。そして攻撃力も同じ。つまり結果は当然……相打ちとなる。
ブレスの余波は双方のカードを破壊して地面の砂埃を巻き上げ、互いの姿を僅かな時間遮った。
(片方はサイクロンだったか。しかし相打ちに持ち込んだ所で、こちらにはまだアームド・ドラゴンが残っている。砂埃が止み次第この攻撃で)
万丈目が自分の勝利への道筋を組み立て終えたその時、
「罠発動。『レッドアイズ・バーン』。自分の場の表側表示のレッドアイズが戦闘・効果で破壊された時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを互いに受ける。真紅眼の黒竜の攻撃力は2400。よって、互いに2400のダメージを受ける」
「何っ!? うおおおっ!?」
そう聞こえてきたかと思うと、強烈な爆炎と閃光が砂埃越しに炸裂した。
吹雪 LP600→0
万丈目 LP1600→0
万丈目対吹雪 両者LP0によりドロー。
片や途中まで操られていたので全力を出せず、片や目を覚まさせる事を重視した戦い方。という訳で互いに本気ではなかったという事でこういう落としどころとなりました。
尚、最後の吹雪の動きはダークネス状態での遊児とのデュエルが無意識に参考にされています。
次回は遂に遊児サイドの話になる予定です。お楽しみに。
この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。評価を保留されている読者様。
ブックマーク、評価、感想は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!